陸上コラム 号砲it!② 窮地に立つ福島千里

福島千里(SEIKO)が窮地に立たされている。日本陸上選手権の参加標準記録の資格有効期限が9月14日に迫る中、まだ標準記録11秒80を突破できていない。
今シーズン初のレースとなった7月23日の東京選手権100m予選では本人曰く「練習でも無いタイム」という12秒56で屈辱の組最下位。日本選手権100m7連覇を含め8度も制したかつての輝きは褪せていた。その後も8月15日、8月29日と2回順天堂大学競技会に出場しているがそれぞれ12秒36、12秒29と状態は一向に上向いていない。
9月6日、山梨県富士北麓公園陸上競技場で行われる富士北麓ワールドトライアル2020の女子100mのエントリーリストに、福島千里の名が有る。おそらくこのレースが標準記録の突破に挑める最後のチャンスになるだろう。ここを逃すとトップアスリートの証である日本陸上選手権の出場が事実上断たれる事となる。

「あのときの走りは良かったな」と考えてしまうと、その先にある「もっといいもの」が生まれる可能性を失ってしまう。日本選手権での連覇は新しい自分に出会いたいと思っていた結果。

以前SEIKOのWEBマガジンで福島はそう語っている。彼女の早く走る事への探求心、取り組み、哲学がここに集約されている。トップアスリートでありながら、常にその先にある「新しい自分」に出会うために走り続けてきた。
その福島が東京選手権で最下位に沈んだ際、記者の問いかけに「そういうレベルで(競技を)やっていない。次にもしそういう事があったら、ちゃんと答えます」と話した。

富士北麓で現在の窮地を脱し、そしてその先の「新しい福島千里」が日本選手権のスタートラインに姿を現す事を願って止まない。

文/芝 笑翔

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