本大会進出10校が決まる!第97回箱根駅伝予選会を振り返る

10月17日、第97回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)予選会が、陸上自衛隊立川駐屯地内を周回するハーフマラソンコースにて開催された。各校12名の選手のうち、上位10名の合計タイムによって争われ、来年1月2日、3日に開催される本大会へ出場する10校が決まった。駐屯地内の起伏の無い平坦コース、小雨ながら気温12度とハーフマラソンには絶好のコンディションとなった事も有り、稀に見るハイスピード決着となった今大会の結果を上位の大学から順に振り返ってみたい。

第1位 順天堂大学 10時間23分34秒

3000m障害で東京五輪代表候補の1年三浦龍司が1時間1分41秒のハーフマラソンのジュニア日本記録で個人総合5位、日本人選手トップと心配されたハーフマラソンの距離をものともしない圧巻の走り。チーム2番手が1時間1分51秒で12位の2年野村優作、1時間2分09秒で3番手の21位にも1年石井一希が入るなど下級生が期待以上の大活躍。チーム10番手の4年野口雄大でさえ1時間2分40秒の39位という総合力の高さで他校を寄せ付けない完勝だった。

第2位 中央大学 10時間26分13秒

日本インカレ5000mで1年生ながら居並ぶケニア人留学生選手を圧倒して制し、脚光を浴びていた吉居大和がここでも日本人トップ争いを演じ、1時間1分47秒の期待に違わぬ見事な走りでチームトップの個人10位。中大にとっては待望久しいエースの誕生だ。昨年の予選会で力走を見せた3年森凪也が今年は吉居同様日本人トップ争いに加わる成長をみせ、最後は少しばててしまったものの、1時間2分08秒のチーム2番手で20位、チーム3,4番手の3年三浦拓郎が1時間2分27秒で25位、3年三須健乃介が1時間2分33秒の29位と上位に雪崩れ込み、10番手の4年 池田勘汰も1時間3分05秒で79位と、走力の底上げがしっかりと出来ていた。

第3位 城西大学 10時間29分37秒

昨年、主力級に不振が相次ぎまさかの15位に沈んだ城西大が、1年で箱根路に復活だ。ダブルエースの4年菊地駿弥、菅原伊織がそれぞれ個人8位の1時間1分45秒、18位の1時間2分06秒と力を見せ、更に3年砂岡拓磨が、18㎞地点では日本人トップに躍り出る激走でこの二人に割って入る1時間1分52秒の13位と大健闘で貯金作りに大きく貢献。10番手の1年野村颯斗が159位と全員が大きなブレーキを起こす事無く走り切り、予選通過を引き寄せた。

第4位 神奈川大学 10時間29分59秒

こと予選会に関しては、一昨年が3位、昨年が2位と安定感がある神大が今年も手堅く4位に食い込んだ。エース格の3年川口慧がチーム9番手と奮わなかったが、それでも個人112位、変わってこれまで三大駅伝で実績のなかった3年呑村大樹がチームトップの1時間2分06秒で17位と素晴らしい走りを見せ、主力の4年井手孝一が1時間2分26秒の26位で続き、役割を果たした。50位の高橋銀河を筆頭に、54位に 宇津野篤、68位で佐々木亮輔とチーム3から5番手と奮闘した1年生の活躍も光った。

第5位 国士館大学 10時間30分38秒

近年予選下位通過が指定席だった国士館大が総合5位と躍進。留学生エース、2年ヴィンセントが1時間21秒の個人2位、堂々たる走りで大きく貯金を作れば、チーム2番手の54位と結果を残した4年曽根雅文を中心とする集団走グループが、5㎞地点までは全体15位と、ハイペースで進む他校に対し抑え目に入りながらも以降はしっかりとボトムアップする走りを見せて、15㎞地点では全体9位に浮上。その後も緩むことなく、また大きく脱落する者を出す事無く走り切り、最後は5位まで順位を押し上げていた。

第6位 日本体育大学 10時間30分49秒

エースの4年池田耀平がチームトップの個人7位、日本人3位の1時間1分44秒と計算通りの走りを見せ、昨年上位に食い込んだ2年藤本珠輝が1時間2分13秒の22位と今年も好走、以下チーム7番手、87位の4年野上翔大までが個人二桁順位、10番手の4年森下滉太で149位と全員が大崩れなくしっかりまとめ、初出場からの連続出場記録を73に伸ばした。

第7位 山梨学院大学 10時間30分50秒

留学生エース、2年ムルワが欠場、代わりに入る3年オニエゴは10000mのベストが28分30秒00と日本人選手と大差なく、穴は埋められないと見られていたが、1時間2分07秒の個人19位と予想を上回る大健闘。ロードの経験は乏しいが、10000mのベストタイム28分28秒30とトラックで結果を出し始めていた4年森山真伍(1時間3分06秒でチーム7番手、個人74位)を中心とする集団走グループもスピードを生かして5㎞通過時点で総合5位と前半から飛ばし、15㎞では3位にまで浮上。以降はやや疲れが見え始めたが、チーム日本人トップ、1時間2分37秒の35位でゴールした3年松倉唯斗を筆頭にチーム8番手の4年日影優哉までが二桁順位の96位と粘り切り、総合7位で2年振り34回目の出場を決めた。

第8位 法政大学 10時間33分31秒

昨年までの3年連続シード権獲得に大きく貢献した主力が卒業し、戦力低下が否めなかった法大が、強かな走りで意地を見せた。箱根出走経験も有る4年生をばっさり切り捨て、下級生中心のオーダーで挑み、3年鎌田航生が1時間2分03秒の個人15位でチームトップ、同じく3年清家陸が個人33位の1時間2分35秒と貯金を作る役割を果たした。前半は押さえて入った3番手以下の集団走グループは、10㎞地点でも個人200位までに姿を見せず総合16位と予選通過に赤信号が灯ったかに見えたが、ここから一気のペースアップ。15㎞では12位、18㎞では11位とボーダー付近にまで押し戻し、最終的には8位と劣勢を跳ね返した。チーム3番手の79位に入った松本康汰、109位で4番手に続いた川上有生ら2年生の底上げや、10番手の158位、2年中園慎太朗も63分台で走り切るなど大きなブレーキが無かった事も予選突破に大きく作用した。

第9位 拓殖大学 10時間33分46秒

拓大は前回の箱根駅伝2区2位の実績がある大砲、2年レメティキが個人1位となる1時間0分13秒の快走を披露。日本人集団走グループは5㎞地点では全体4位、10㎞地点も3位と上位をキープをしていたが、日本人エース、4年清水崚汰が途中棄権すると、18㎞では全体8位と激しいボーダー近辺の争いに巻き込まれた。前半のハイペースが祟ったか、個人200位以下のブレーキの選手を3人出したが、主力の一人、4年吉原遼太郎が1時間2分43秒の個人42位と踏ん張り、これまで実績のなかった3年桐山剛は吉原を上回る1時間2分38秒でチーム2番手の37位と快走、レメティキの作った貯金も大きく物を言ってなんとか総合9位に踏みとどまった。

第10位 専修大学 10時間33分59秒

全くと言って良い程下馬評に上がっていなかった専大が10位に入る見事なアップセット。大きくタイムを稼いだ選手こそいなかったが、1年生ながら1時間2分44秒でチームトップの44位に入った木村暁仁を筆頭に、チーム6番手、99位の3年金久保遥までが個人二桁順位。10番手の選手こそ200位台となったが、その他の選手はしっかりと63分代で纏め上げ、第90回大会以来となる通算69回目の箱根駅伝出場を決めた。

ここまでは予選通過を果たしたチームを見てきたが、以降は本選出場を逃した注目チームを振り返っていく。

第11位 筑波大学 10時間34分17秒

前大会で26年振りの本選出場を果たした、第1回大会に出場している「オリジナル4」の一校、筑波大学。本予選会でも大方の予想を覆す善戦を見せたものの、10位と僅か17秒差で涙を飲んだ。4年猿橋拓己が1時間1分43秒の個人6位、同じく4年でエースの西研人も1時間1分46秒で9位、共に一時は日本人トップに立つ激走でチームに貯金を作り、2年岩佐一楽が57位、3年杉山魁声も66位と健闘したが二桁順位はここまで。チーム9番手以降は200位台に沈み、中でも猿橋、西に劣らぬ実績がある4年相馬崇史がチーム最下位に終わり、本来の力が発揮できていたら、或いは予選突破に充分だったかと悔やまれる。

第12位 中央学院大学 10時間34分36秒

予選通過を確実視され、トップ通過の呼び声も高かった中学大が本選出場を逃す大波乱。15㎞までは総合5位と安定した戦い振りを披露していたが、ここから先でペースが上がらず失速、18㎞では9位と激しいボーダー近辺の争いに巻き込まれた。個人に目を向けると前回の箱根駅伝1区で好走した、3年栗原啓吾こそ1時間2分03秒の個人16位と強さを見せたが、後が続かず二桁順位が4名のみ。ケガから復帰したエース、4年高橋翔也が88位と本来の実力を発揮できず、箱根6区58分台の好走で一躍脚光を浴びた2年武川流以名は186位と伸び悩んだ。ハーフマラソンで61分台の記録をもっていた主力の一人、4年戸口豪琉の欠場も結果的には大きく響き、10位とは37秒の僅差で連続出場が18でストップした。

第13位 麗澤大学 10時間36分07秒

ここ2年続けて予選会は11位、特に昨年は10番手の選手のタイムは予選会通過校に劣らなかったが、大きくタイムを稼ぐエースの不在で26秒の僅差に泣いた麗澤大。今年は4年難波天が61分47秒で11位、3年椎野修羅が62分19秒で23位と他校エースに引けを取らない走りを見せたが、チーム8番手以降の選手が集団走グループから脱落して200位台に沈んでしまい、悲願の初出場は今年も適わなかった。

第14位 上武大 10時間36分44秒

エースの4年岩崎大洋が1時間2分29秒で個人28位、2年村上航大は岩崎を上回る1時間2分01秒で14位と貯金を作る役割を充分に果たしたが二桁順位はこの二人のみ。岩崎と並ぶエースと目された4年坂本貫登は127位とやや不振、集団走グループも140位の3年西村暉が最高順位と、高速化への対応という課題が浮き彫りになった。

第15位 駿河台大学 10時間38分05秒

昨年の予選会で12位と健闘し、いよいよ初出場も見えて来た感のあった駿河台大。留学生の3年ブヌカは1時間0分34秒で個人4位と期待通りの走りを見せたが、日本人エースの4年吉里駿が1時間4分07秒の183位と大不振。2年町田康誠が1時間2分58秒の59位と頑張ったが二桁順位は3年清野太成を含めた3人に留まり、4人が200位台に終わるなど、走力の底上げが足りなかった。

第18位 日本大学 10時間43分14秒

事前に複数の主力選手の調整遅れが囁かれていた日大だったがそれでも予選通過は出来るだろうと見る向きが多かった。しかしながら、いざ蓋を開けてみればかつてない大惨敗で、調整の失敗を裏付けただけの結果に終わった。留学生ドゥングは途中コースを離れるアクシデントも有り、62分48秒の48位に終わったが、なんとこの成績でチームの最先着。10000m28分台のスピードランナー2年樋口翔太が118位でチーム3番手、もう一人のエース4年横山徹の214位がチーム4番手では予選会突破は望みようがなかった。ここまでこれといった実績がなかったが、直前の早稲田記録会で10000m28分台を叩き出し、メンバーに選ばれた3年小坂大我が1時間3分10秒で81位と日本人選手唯一の二桁着順に入ったのが、せめてもの慰めか。

今年の箱根駅伝予選会は、これまで大学トップクラスとされていた、ハーフマラソン63分を切る選手が60人を数え、高速化が結果として顕著に表れた。古豪日大や、集団走に強みを発揮してきた上武大などはこの流れへの対応の遅れがはっきりと敗因として突き付けられたように思う。城西大、山梨学院大の2校は短期間でチームの立て直しを図り、専修大は地道に力を付けて見事に箱根路に復活を果たす事となったが、高速化の流れに食らい付く事は出来ており、日大、上武の二校がこの遅れを取り戻す事はなかなか容易ではないだろう。

また8位法大から12位の中央学院大の差は僅かに1分5秒、このタイム差の中に5校がひしめく大激戦だった。今回に関して言えば、大きなブレーキを起こさなかった大学、大きくタイムを稼ぐ選手のいる大学に軍配が上がったが、やはり主力選手に一人でも欠ける選手が出て来たり、ブレーキを起こす選手が現れれば、本選常連校でも予選通過が覚束なくなる事を改めて痛感した予選会ともなった。

第97回東京箱根間往復大学駅伝競走は、96回大会で10位までに入ったシード校に、本予選会を勝ち抜いた10校を加えた全20校によって覇が競われ、また予選会を突破出来なかった大学から個人成績上位選手が選ばれる関東学生連合チームが、順位の付かないオープンチームとして参加する事となる。

文/芝 笑翔

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