箱根を制した青山学院大に、連覇を狙う東海大が迫る!シード争いは熾烈を極める、第52回全日本大学駅伝プレビュー

第52回秩父宮賜杯全日本大学駅伝が11月1日に開催される。今年はコロナ禍により、例年ならば大学駅伝初戦となる、出雲駅伝が中止になったため、ほとんどの参加校が今シーズン初の本格的なロードレースとなる。

今大会の優勝候補の筆頭に挙げられるのは、昨年2位で正月の箱根駅伝を制した青山学院大学。箱根駅伝2区を好走した2年生エース、岸本大紀こそエントリーから外れたが、吉田圭太(4年)、飯田貴之(3年)のエース格の二人に、岩見秀哉(4年)、湯原慶吾(3年)と、10000m28分台のスピードを持ち、3大駅伝の経験が豊富な選手が揃っている。 昨年は前半区間で流れに乗れず2位に甘んじたが、今年は序盤からエース級の投入で勢いを付けたい。

その青学大を追うのが、連覇を狙う東海大学に、昨年3位の駒澤大学。

東海大は黄金世代と言われた、館澤亨次、鬼塚翔太(共にDeNA)らが卒業したが、塩澤稀夕、西田壮士、名取燎太の強力な4年生3人に、前回大会の5区で先頭に立ち、優勝に貢献した市村朋樹(3年)の4人が今年もメンバー入り。中でも名取は9月の記録会で10000m28分10秒51を記録するなど順調な仕上がりを見せ、ここに、黄金世代の壁に阻まれ、3大駅伝未経験ながら、高校時代から都大路、広島駅伝で鳴らし、ハーフマラソン1時間2分台の記録を持つ実力者の本間敬大(3年)や、高校時代に既に10000m28分台を記録し、ロードも強い1年生喜早駿介らが加わり、青学大の独走に待ったをかける体制が整いつつ有る。

駒澤大は日本インカレ10000mで日本人トップの4位に入ったエース田澤廉(2年)の存在が頼もしく、加えて伊藤颯太、加藤淳、小林歩(3人共に4年)の昨年の伊勢路を経験した10000m28分台ランナーが控える好布陣。この3人の存在により、田澤を前半の流れを呼び込む区間にも、後半の勝負所の区間にも投入できる戦術の幅がある。更に日本インカレ5000mで3位に入る健闘を見せた鈴木芽吹を筆頭に、花尾恭介、赤津勇進ら1年生にも勢いがある。過去12度の優勝に導いた、伊勢路を知り尽くす大八木監督の区間配置に注目だ。

昨年8位でシード権を獲得した帝京大、昨年の10000mの記録を元にした選考により、関東学連の代表となった明治大学も上位争いの有力候補。

帝京大は星岳(4年)、遠藤大地(3年)の2枚エースに力が有り、小野寺悠、鳥飼悠生(共に4年)の箱根好走組はトラックシーズンでも好調を維持。星、遠藤や、やはり箱根での好走が光った中村風馬(3年)らは今年のレース数が少く、仕上がり次第で結果が大きく左右されそうだが、この大学の傾向として、毎年ロードシーズンにはきっちりと合わせる事が出来ている。距離が長ければ長い程力を発揮するのも持ち味だが、苦手とする前半区間を上手く乗り切る事が出来れば、後半区間は楽しみが多くなる。

明大は昨年の全日本でまさかの15位に沈んでから短期間で立て直し、箱根では6位とシード権を獲得、選手達が自信を深めた。エースの鈴木聖人(3年)、主力の小袖英人(4年)、手島杏丞(3年)はトラックシーズンでは10000m28分台をコンスタントに記録し、安定感が増している。鈴木と並ぶもう一人のエース、加藤大誠は距離が長い程良く、最も距離の長い最終8区をしっかりと任せる事が出来る。箱根6区の山下りで実績の有る前田舜平(4年)も健在でスピードタイプ、ロードで力を発揮するタイプをバランスよく配置できるのが強みだ。

順天堂大学、早稲田大学も上位に加わるだけの力は充分だが、共に若干の不安要素を抱えている。

順大は2週前の箱根駅伝で上位10人がハーフマラソン1時間2分台で走る快走を見せ、勢いもあるが、その時の疲労からどの程度回復しているかが鍵。また、チームトップの1時間1分41秒をマークし一躍エース級となった三浦龍司には、12月に3000m障害のオリンピック選考会が控えており、負担を考慮して最も距離の短い1区での起用が濃厚となっている。三浦で流れを作る事は出来るだろうが、他校と比較した際に、大きくタイム差を拡げる事が難しい1区での起用とせざるを得ないのは痛いところだ。三浦に次ぐ存在の清水颯大(4年)野村優作(2年)の奮起に期待したい。

早大はエース中谷雄飛(3年)、太田直希(3年)の存在は心強いものの、3大駅伝の経験が豊富で、長い距離を安定して走れる吉田匠、宍倉健浩(共に4年)がエントリーから外れたのが、選手層が厚くないだけに懸念材料となっている。中谷は9月の日本インカレ10000mではブービーに沈み、その後の記録会では28分19秒27をマークしてみせたが、安定感には欠けている。千明龍ノ佑(ちぎらりゅうのすけ・3年)鈴木創士(2年)の箱根好走組も今季記録会を含めて大会出場が少ないが、こうした選手の状態が上がってこなければ、菖蒲敦司、諸富湧、辻文哉といった記録会で好記録をマークした1年生に頼らざるを得なくなる。

来年の出場権が得られる8位までのシードを巡る争いは以上の大学に加え、強豪東洋大学、箱根3位の國學院大學、昨年初出場で4位と旋風を巻き起こした東京国際大学などが犇めく大混戦だ。

今年の箱根で10位に沈み、立て直しを図る東洋大。長らく不振に陥った西山和弥(4年)が、今期10000m学生トップの28分03秒94を叩き出すなど復調してきたのはプラス要素だが、吉川洋次(4年)、鈴木宗孝(3年)の実績のある主力二人はまだ復調途上。頼りになるのは西山の他に、箱根山登り5区で区間賞を獲得して一躍エースの座を掴んだ宮下隼人(3年)の名が上がるくらいで、大エースだった相沢晃(現旭化成)の穴を埋められず、上位争いは非常に厳しい。大澤駿(4年)前田義弘(2年)ら箱根出走組の意地でシード権は確保したい。

國學院大も、浦野雄平(現富士通)土方英和(現HONDA)、青木祐人(現トヨタ自動車)の3本柱は抜けたが、箱根1区2位と激走をみせた藤木宏太(3年)がエースに成長し、更に中西大翔(2年)が10000m28分35秒70と台頭。やはり10000m28分台のスピードが有る島崎慎愛(3年)、ロードに強い木付琳(3年)、殿地琢朗(どんちたくろう・3年)とシード獲得には充分な態勢が整い、ここからの上積みも充分期待出来る。

東国大は東洋、國學院に比べると、伊藤達彦(現HONDA)、真船恭輔(現八千代工業)ら卒業生の抜けた穴が最も大きい。更に伊藤に代わる日本人エース候補だった芳賀宏太郎がエントリーから外れてしまい、留学生大砲ムセンビの存在を以てしても、厳しい戦いを強いられる事になりそうだ。箱根1区で粘りの走りを見せて流れを作った丹所健(2年)らが踏ん張って、アンカーが予想されるムセンビまでに、シード権ボーダーラインとの差を2分以内に留めて置きたい。

面白い存在になりそうなのが、箱根予選総合3位と勢いに乗る城西大と関西の雄、立命館大学。

城西大の菊池駿也(4年)砂岡拓磨(3年)は箱根予選会でハーフマラソンを1時間1分台で走り、共に一時は日本人トップに躍り出る飛び出しで見せ場を作るなど勝負度胸が有り、菅原伊織(4年)も昨年のこの大会の3区で区間2位の実績がを持ち、他校エースとも比肩し得る実力者。更に梶川由稀(4年)も予選会を1時間2分台で走っており、総合力も高まっている。序盤から主力をつぎ込んで流れに乗れば、シード権を掴み取るチャンスが出て来そうだ。

立命館は今月17日の宮崎兼記録会で前川紘導(4年)が28分34秒59、岡田浩平(4年)が28分34秒61と関東の大学のエース達に劣らない記録を叩き出し、山田真生(2年)も28分55秒90と28分台で続いた。この3人は昨年の伊勢路の経験が有り、加えて吉岡遼人(4年)も昨年の7区で関東勢に割って入る区間7位の健闘を見せている。毎年シード権を独占する関東学連の厚い壁を破る絶好の機会が巡ってきた。

その他、ハーフマラソンで61分17秒と学生トップの実績を持つ、皇學館大學の川瀬翔矢がどの区間に起用され、どのような走りをするかにも注目だ。

全日本大学駅伝は名古屋市の熱田神宮前をスタートし、三重県伊勢市、伊勢神宮の内宮宇治橋前をゴールとする全8区間106.8㎞のコースにおいて、昨年シード権を獲得した8校に、全国各地方学連による予選会(関東のみ書類選考)を勝ち抜いた17チームを加えた全25チームが参加して争われる。 午前8時5分、熱田の杜に静寂を破る号砲が響き、選手たちは母校の襷と共に伊勢路を駆け抜ける。

文/芝 笑翔

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