浪花のド根性娘、松田が尾張名古屋で復活の花を咲かせるか! 昨年の佐藤に続く新星の台頭は! 名古屋ウィメンズマラソン2021プレビュー

名古屋ウィメンズマラソン2021が3月14日、バンテリンドームナゴヤを発着点とし、名古屋市内を巡る42,195㎞のコースで行われる。2012年に前身の名古屋国際女子マラソンから衣替えして以来10回目の節目を迎える今大会は、コロナウィルス感染拡大防止措置のため海外選手の招待は行わず、国内エリートランナーのみが参加しての開催となる。

招待選手で東京五輪代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)が左大腿部の炎症のため大事を取って欠場、変わって注目と期待を集める事になりそうなのが、松田瑞生(ダイハツ)だ。
トラック10000mでは日本選手権で鈴木との名勝負を幾度も演じ、世界選手権ロンドン大会にも出場したスピードランナーで、初マラソンとなった2018年大阪国際マラソンを2時間22分44秒で制し一躍脚光を浴びると、同年秋に出場したベルリンマラソンでも2時間22分23秒と立て続けの好走で、東京五輪マラソン代表の有力候補に名乗りを上げた。
しかしながら優勝候補の筆頭の呼び声も高かった2019年の東京五輪選考会、MGCでは上位で勝負ができないまま4位に終わる失敗レースで、この時点での五輪代表の座を逃してしまう。
マラソン代表最後の切符を賭け、MGC期間中で記録されたもっとも速いタイムであった、自身がベルリンで記録した2時間22分23秒を上回る事が選手達に課せられるファイナルチャレンジの舞台を大阪国際マラソンに設定した松田は、このラストチャンスで2時間21分47秒と見事に設定タイムを突破して五輪代表の座を手繰り寄せたかに思われたが、この記録を名古屋ウィメンズで一山麻緒(ワコール)に更新されて夢は叶わず、東京五輪は代表候補選手(従来の補欠選手)に甘んずる事となった。
今回の名古屋は、代表に不測の事態が生じた際の代役となる候補選手として五輪に備えるためという側面もあるが、同時にパリ五輪へ向けてのマラソンでの再起の一歩でもある。 また、代表の座を譲る因となった、一山が昨年マークした2時間20分29秒の大会記録は当然意識しているものと思われる。
懸念されるのは昨年のクイーンズ駅伝の後、当初予定していた大阪国際を回避した背筋の炎症よりも、むしろ五輪代表を逃して「どん底まで落ち込んだ」というメンタル面。 キャッチフレーズ「ド根性」の復活で勝負どころとなる後半30㎞以降も緩むことなく押し切って、大会記録の更新がなるかに注目したい。

佐藤早也伽(積水化学)は初マラソンだった昨年のこの大会で、ハイペースとなった集団に30㎞まで生き残り、一山のペースアップには対応できなかったものの後半も粘り、2時間23分27秒の好タイムを記録している。
その後は夏のホクレンDCの連戦でトラックスピードを磨き、5000mでは全日本実業団選手権で自己記録もマーク。12月の日本選手権・長距離10000mでは日本記録更新を目指す同僚の新谷仁美からの依頼を受け、序盤の2000mまでを1周72秒のハイペースで刻む先導役を担い、新記録誕生を好アシスト。自身もハイペースで突っ込みながら後半も粘り、ラスト1周で前年覇者の鍋島莉奈(日本郵政グループ)を突き放す見事なラストスパートを決め、31分30秒19の自己新記録で3位入賞を果たしスピード面での成長を大きくアピールした。
今回の名古屋はそのスピード面での成長がマラソンで通用するかの確認の場でもある。前半の追走が楽になり、後半に力を温存する事が出来れば、松田に対抗する事も充分可能だ。

松田と同様、五輪候補選手に選出されている小原怜(天満屋)。リオ五輪の最終選考だった2016年名古屋では、中盤でリードを拡げた田中智美(当時第一生命)を猛然と追い上げたが僅か1秒届かずに無念の落選。MGCでも2位に入った鈴木を追い詰めるも4秒届かずと、2大会続けてあと一歩のところで代表を逃しているが、悔しさを押さえベテランらしく「補欠の責任を全うする」と宣言、難しい立場ながら候補選手として五輪への準備に余念はない。
昨年暮れの山陽ハーフ、先月の実業団ハーフと、2走連続で1時間10分台をマークするなど仕上がりの良さが伺え、小原にとってもリオ五輪を逃した因縁の名古屋で、その時以来の自分越え、2時間23分20秒の更新が視野に入ってきている。

プロランナー、岩出玲亜(千葉陸協)は1月の大阪国際では20㎞過ぎで途中棄権、先月の実業団ハーフも1時間13分台と結果を残せなかった中、短いスパンでのフルマラソン挑戦と試行錯誤をしている様子が伺われる。ここからどれだけ状態を戻せているのか、新しい所属先が決まった事もあり、結果と内容、共に問われるレースとなりそうだ。結果次第ではレースを数多く熟しながらコンディションを整える現在のアプローチから、また別のアプローチへスタンスを変える事を迫られるかもしれない。

パリ五輪に目を向けた際、好記録ラッシュに沸き上がる男子マラソンに比して、女子は上位陣の顔ぶれが固定された感があり新星の登場が待ち望まれるが、その候補の一人が福良郁美(大塚製薬)だ。 昨年の実業団ハーフでは1時間9分58秒で5位、今年の実業団ハーフでは勝負重視のスローペースになった事もありタイムを落としたが、それでも1時間10分21秒で5位と安定感が際立つ。 しなやかでロスの少ない効率的な走りは、より長い距離への適性を感じさせる。これが初マラソンとなるが守りに入らず、トップ選手のマラソンでの走りを学び取るくらいの積極性を見せて欲しい。

上杉真穂(スターツ)と和久夢来(わくみらい、ユニバーサルエンターテインメント)は好記録をマークした1月の大阪国際(上杉2時間24分52秒、和久2時間26分42秒)に続いてのフルマラソン参戦。その大阪では一山、前田穂南(天満屋)の日本記録を狙う五輪代表のグループには付かず、第二グループからレースを進めて自己記録更新を果たしたが、今回はもう一段上のレベルへの飛躍が望まれる。
上杉はもともとマラソンでは格上の選手に怯まず先頭集団に食らい付く積極的な走りを見せるタイプで、今大会でもハイペースの集団で勝負した上で、後半の落ち込みをどの程度抑える事が出来るのかを見てみたい。
和久は2019年の北海道マラソンを制したように夏マラソンに強く、ハイペースでのマラソンへの対応力が加われば、パリへ向けて頼もしい存在になってくる。 短い間隔でのフルマラソン連戦は困難も有ると想像するが、意欲の高さは評価出来る。 この二人は結果よりもむしろレース内容が大切。失敗を怖れずに挑戦して欲しい。

今大会のエントリーを見返して、24才以下の大卒1年目、2年目の「初マラソン適齢期」に当たる、伸び盛りの世代の選手の参加が少ないのは改めて気懸りな点だ。コロナ禍の中、例年通りの練習が積めなかった事も要因となっているのだろうが、こうした世代の選手の挑戦がなければ、日本の女子マラソンの選手層に厚みを持たせる事、停滞が続くレベルの向上を望むのは難しいのではないだろうか。 駅伝は選手強化の一つの手段ではあるが、各実業団ともにマラソン選手の育成ではなく、駅伝選手の育成に力を注いで居はしないだろうか。 やはり長距離選手の育成の根幹はマラソンに取り組むことで、この実践の積み重ねでこれまで日本女子マラソン界は世界的な選手を生み出してきた。時間も手間もかかる事だが、指導者にはもう一度この基本に立ち返ってもらいたい。

そうした意味においても、松田、小原らトップ選手の活躍に留まらず、昨年の佐藤に続くニューヒロインの誕生で、日本の女子マラソンが再び活気づく契機になる大会となることを期待したい。

文/芝 笑翔

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