第24回日本学生ハーフマラソン選手権が、3月14日、東京都立川市・陸上自衛隊立川駐屯地を周回する特設コースで開催される。昨年はコロナウイルス感染拡大のため中止になっており2年振りの大会開催となり、また、今年の大会はコロナウイルス感染拡大防止措置の為、立川市内や昭和記念公園を周回する例年のコースではなく、昨年の箱根駅伝予選会と同じ自衛隊立川駐屯地内を周回するコースに変更する措置が取られ、併催となる市民マラソンの立川シティーハーフは中止となっている。 今大会は8月に開催が予定されている中国・成都ユニバーシアードの選考会を兼ねており、学生有力選手の多くがエントリーに名を連ね、好記録も期待できそうだ。
レース展開の鍵を握る存在になりそうなのが、ケニア人留学生のカマウ・ワンジク(武蔵野学院大1年)。昨年の箱根予選会を欠場しているため、このコースの経験はないが、10000mの持ちタイム27分30秒09はエントリー選手中最も速く、先日のびわ湖毎日マラソンでは第2ペースメーカとして30㎞までを1㎞3分できっちりとペースメイク、細谷恭平(黒崎播磨)、川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)の好記録をアシストするなど、実力は頭一つ抜けている。日本人有力選手達が、カマウ、ジェームス・ブヌカ(駿河台大3年)で形成されると思われるハイペースのトップグループと距離を置くのか、勝負を挑むのかによって、記録の出方も大きく変わって来そうだ。
カマウを追う日本人選手の有力候補の筆頭は川瀬翔矢(皇學館大・4年)。高校時代に大舞台での活躍は無かったが、地元三重の皇學館大で地道に実力を蓄え、昨年の丸亀ハーフでマークした1時間1分18秒は今大会にエントリーした日本人選手中1位の好タイム。全日本大学駅伝2区では箱根駅伝で活躍する関東の有力大学の主力級選手を押さえて区間賞を獲得し「地方大学の星」と称えられ、12月の日本選手権・長距離5000mでは4位に入賞するなど、学生陸上界に留まらず、日本長距離界のトップクラスにまで成長した。 先月のクロスカントリー日本選手権では、ラスト1周まで先頭集団に位置しながら、その後の目まぐるしく先頭が入れ替わった激しい優勝争いに加われず悔しさを味わったが、学生大会では負けられないという思いが有るだろう。
箱根駅伝を制した駒澤大学のエース田澤廉(駒澤大2年)も、他大学の選手には負けてはいられない立場だろう。全日本大学駅伝ではアンカー勝負で東海大・名取僚太(4年、今大会は不出場)を突き放す区間賞の走りで優勝に導いたが、箱根駅伝2区では1時間07分27秒をマークしながら区間7位に終わり、大八木弘明監督から奮起を促されている。昨年の日本選手権10000mでマークした27分46秒09のタイムは、ケニア人留学生にも見劣りはしていない。
昨年の日本選手権・長距離10000mでBレースながら先頭を引き続け、27分54秒06の好タイムをマークした中谷雄飛(早大3年)は積極性が光り、同レースで27分55秒59をマークした太田直希(早大3年)もスピードと粘りが増して、力を付けて来ている。共に箱根では不振に終わっただけに、早稲田のWエースとしての意地と誇りを見せてくれる筈だ。
箱根駅伝1区で8位と好走し、クロスカントリー日本選手権では川瀬を押さえて学生最先着の7位に入った藤本珠輝(日体大2年)は、走りに力強さが加わり一皮剥けた印象。勢いも有り今大会でも侮れない存在だ。
こうした日本人選手達が、カマウらケニア人留学生に食らい付き、後半も粘り切ることが出来れば、平坦な周回コースと相俟って1時間0分50秒の村山謙太(当時駒澤大、現旭化成)の持つ日本人学生記録だけでなく、日本人選手初の59分台の大記録も見えてくる。
女子では、2019年ナポリユニバーシアードハーフマラソンの金メダリストで、10000m31分37秒88の好タイムを持つ鈴木優花(大東大3年)が、思うような成績を残せなかった昨年の故障からの復調となるか、10000mで32分08秒67を記録している小林成美(名城大2年)がハーフでどのような走りを見せるのか、注目したい。
第16回大会優勝の中村匠吾(駒沢大出、現富士通)は東京五輪マラソン代表、第22回大会優勝の相澤晃(東洋大出、現旭化成)も同じく東京五輪10000m代表の座を射止め、また第20回大会優勝の鈴木健吾(神奈川大出、現富士通)も先日のびわ湖毎日マラソンで日本人選手初の2時間4分台となる日本記録を樹立するなど、この大会をステップボードに世界へ挑む選手へと成長を遂げており、今大会からも後に続く選手が現れる可能性は充分だ。日本長距離界の将来を担う、学生達の激走に期待をしたい。
文/芝 笑翔