女子5000m、田中希実と萩谷楓の対決に注目! 第55回織田幹雄記念国際陸上大会プレビュー

4月29日、広島エディオンスタジアムに於いて、第55回織田幹雄記念国際陸上大会が行われる。昨年はコロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言が全国に発令されたため中止となっており、2年ぶりの開催となる。尚外国人選手の招待は、感染拡大防止措置のため今大会では見送られた。グランプリ種目としてトラックでは男女の100m、3000m障害、男子3000m、女子5000m、男子110mH、女子100mHが、フィールドでは男女のやり投げ、男子棒高跳、走幅跳、三段跳に、女子走高跳、砲丸投げが実施され、東京五輪出場を目指す有力選手もエントリーに名を連ねる。

男子100mにエントリーしている桐生祥秀(日本生命)は3月に行われた日本室内選手権に決勝を棄権する事となった左膝裏側の違和感がどの程度解消しているか。 一昨年は肺気胸、昨年は腰痛や足首痛に見舞われ復活を期す年になっている山縣亮太(SEIKO)は3月に宮崎で行われ世界リレー選考会の特別レースに出場、雨で肌寒いコンディションながら今期屋外初レースを10秒36でまとめており、未だ突破をできていない五輪参加標準記録10秒05を目指す。
3月の日本室内選手権で60mの室内日本記録をマークして今期上場の滑り出しを見せた多田修平と、9秒98のPBを持つ小池祐貴の住友電工コンビは、出雲陸上に続けてのGPシリーズ参戦となる。
先日、アジア記録保持者の蘇炳添(中国)が自国の大会で9秒98をマークして復活の気配を示しており、この4人にとっては五輪出場権を得るためにも、その先にある悲願の100m決勝進出を果たすためにも、好記録でアピールをしておきたいところだ。また2019年の世界陸上ドーハ大会の4×100mRで2走を務め、アジアレコード樹立と銅メダル獲得に貢献して以降はやや不振に陥っている白石黄良々(セレスポ)の復調も、リレーメンバーに厚みを持たせる意味相において望まれるところだ。

男子100mHでは、泉谷駿介(順天堂大)、金井大旺(ミズノ)の二人に高山峻野(ゼンリン)に続く五輪参加標準記録(13秒32)突破の期待が懸る。
泉谷は日本室内60mHで予選決勝と立て続けに日本新をマークし、勢いがある。特に決勝のレースは、スタートダッシュに定評のある金井を全く寄せ付けない圧巻の走りを見せており、自力強化が目覚ましい。
金井は昨シーズンに五輪出場に関わる記録適用期間外ながら自己記録を13秒27まで伸ばし、日本選手権でも高山を降し優勝を果たしている。世界陸上ドーハ大会で予選敗退に終わって以降、世界レベルと戦う事を強く意識してきただけに、五輪出場に懸ける思いは強い。
日本記録保持者の高山は、昨年は一度も金井に先着できず、やや精彩を欠いた。世界陸上の準決勝で決勝進出目前まで迫る激走を見せたころの勢いを取り戻したい。昨年に13秒39まで記録を伸ばしてきた石川周平(富士通)も日本室内決勝では金井に先着を果たしており、侮れない。

男子3000m障害にも、東京五輪出場を目指す実力者が顔を揃え激戦は必至。 リオ五輪同種目代表の塩尻和也は長らく故障に苦しんでいたが、今シーズンは金栗記念の5000mで13分22秒80の好記録をマーク、スピード持久力の高さを見せつけている。兵庫リレーカーニバル2000m障害ではやや精彩を欠き、レースごとの内容のばらつきが気になるが、昨年暮れの日本選手権以来の3000m障害で、完全復活となるか。昨年のホクレンDC千歳大会で、記録適用期間外ながら五輪参加標準記録(8分22秒00)を上回る8分19秒37の日本歴代2位の好記録を叩き出した若手のホープ、三浦龍司(順天堂大)は2月のクロスカントリー日本選手権を制した後、金栗記念の1500m、兵庫リレーカーニバルの2000m障害と欠場が続いており、体調面に懸念が残る。万全であれば勿論上位争いに加わってくるだろう。山口浩勢(愛三工業)は昨年の日本選手権を8分24秒19の好タイムで制しながら、2秒ほど届かずに参加標準突破を逃していおり、懸ける思いは強いだろう。阪口竜平(SDホールディングス)は兵庫リレーカーニバル2000m障害で塩尻を抑えて優勝を果たし好調さが伺える。青木涼真(Honda)、楠康成(阿見AC)も昨年一気に記録を伸ばしてきており、五輪参加標準記録に留まらず、2003年に岩永嘉孝(トヨタ自動車)がマークした8分18秒93の日本新記録更新も視野に入るハイレベルな展開が予想される。

フィールド種目に目を移すと、男子走り幅跳びには五輪参加標準を突破している城山正太郎(ゼンリン)、橋岡優輝(富士通)津波響樹(大塚製薬)の3人が揃ってエントリー。
ドーハ世界選手権8位の実績を持つ橋岡は、日本室内選手権で8m19の室内日本記録をマークしているが、1回目から4連続でファールを犯しており、助走スピードと踏切の感覚に苦労している様子が伺えた。参加者が8名だったため競技が続行されたが、3回目までの記録で上位8人に絞る通常の大会であれば記録なしに終わるところだったのは、五輪で入賞以上の結果を目指している橋岡にとっては反省材料だ。本来は1度目の試技から8m近い大ジャンプをきっちり跳ぶことが出来るタイプで、修正が図れているかに注目したい。目指すは城山の持つ日本記録、8m40だ。
その城山ともう一人の実力者、津波は昨年のシーズンで8mジャンプを見せることが出来なかった。特に城山は室内日本選手権でも7m46と精彩を欠いており、不振からの脱却が望まれる。

男子やり投げは3月、南アフリカで82m15をマークしているディーン元気と、リオ五輪代表の新井涼平(スズキ)の優勝争いに、共に81m73の日本歴代6位タイの記録を有している小南拓人(染めQ)と寒川建之介(GRAND STONE)がどこまで迫れるか。80mスローの応酬に期待をしたい。

男子棒高跳びは未だ五輪参加標準記録の5m80を突破した選手が出ておらず、ロンドン、リオに続く3大会連続代表を目指す山本聖途(トヨタ自動車)、ドーハ世界陸上代表の江島雅紀(富士通)、日本室内選手権を5m70で制し、代表争いに加わってきた石川拓磨(TCS陸上部)らがこの記録を目指す。

女子トラック種目の注目は東京五輪5000m代表に内定している田中望実(豊田自動織機TC)の出場する5000mと、実力者が勢ぞろいの100mHだ。

まず女子5000m、田中は今期も昨年同様スピード強化と体力強化を図るために、1500mを中心に毎週のように大会に出場をしながら、金栗記念の1500mで4分09秒31の好タイムをマークするなど、引き続き好調だ。東京五輪本番に向けてのピーキングを意識しながらの今期初の5000m出場になるが、どのような走りをみせてくれるかとても楽しみだ。 その田中を強く意識しているのが萩谷楓(エディオン)。昨年7月のホクレンDCで網走大会では田中に食い下がり、15分05秒78の自己ベストをマークするも、惜しくも五輪参加記録の適用期間外。改めて標準突破に挑んだ日本選手権5000mでは、田中と廣中璃梨佳(日本郵政G)が代表内定を意識して勝負に徹したためスローペースになった中、このペースを嫌っていながら自ら仕掛ける事ことを躊躇って勝機を逃し、標準突破も果たせなかった。このレースが余程悔しかったのか、2月の日本クロスカントリー選手権では序盤からレースを引っ張る独走で田中を寄せ付けず、優勝を果たした。トラックシーズン開幕を間近に控えた調整段階だったとは言え、田中からの初勝利で手応えを掴んでいる筈だ。萩谷も今期5000mは初レース、ここでも自らペースを作って勝利と標準突破を手繰り寄せることが出来るか。

女子100mHは大阪室内60mHで男子の泉谷同様に、予選、決勝と立て続けに日本記録を更新した青木益未(七十七銀行)の充実ぶりが光り、昨年1年をほぼ充電に充てたロンドン五輪代表、木村文子(エディオン)も同大会では青木に及ばなかったものの切れのある走りを披露。5着に沈んだ100mH日本記録保持者の寺田明日香(ジャパンクリエイト)も当然巻き返してくると思われる。
更に昨年13秒13の自己ベストを夏場にマークしながら故障のため秋以降のシーズンを棒に振ったベテラン清山ちさと(いちご)は今大会での復活を期し、若手の田中佑美(富士通)、鈴木美帆(長谷川体育施設)も加わり、風や気温など条件さえ整えば、五輪参加標準記録の12秒84の突破も充分考えられる。

女子100mは、5月1日から開催されるシレジア世界リレー選手権2021に繰り上がりで出場する事が決まり、エントリーしていた4×100mR代表メンバーが回避したが、環太平洋大学に進学した若手ホープの石堂陽奈、昨年やや勢いを落としてしまった2019年の日本選手権チャンピオン 御家瀬緑(住友電工)ら代表から漏れた選手には奮起が望まれている。

その他、3000m障害では2018年アジア大会代表の石沢ゆかり(エディオン)、世界陸上ドーハ大会代表の吉村玲美(大東文化大)が五輪標準突破を目指し、パリ五輪強化指定選手となっている山中柚乃(愛媛銀行)、西出優月(関西外語大)は東京の先を見据えつつ、優勝争いにも割って入りたい。

フィールド種目では、昨年の日本選手権で日本記録保持者の北口榛花(JAL)を破って優勝し、今期も南アフリカで60m34をマークして好調なやり投げの佐藤由佳(ニコニコのり)が、64m00の五輪参加標準記録突破に挑む。

最後に一人の偉大な足跡を残している選手について触れておきたい。
昨年は不振から抜け出せずついに12秒を切るタイムを残せずに終わった福島千里(SEIKO)が主催者推薦で100mにエントリーされた。女子のスプリント種目では若手の台頭が著しいが、ここまで国際舞台で孤軍奮闘し、日本女子スプリントの屋台骨を背負ってきた福島が、東京五輪代表争いにその姿を見る事ができていないのは、寂しい。日本選手権の舞台で次代を託す選手達と共に、もう一度そのスタートラインに立てるだろうか。 勝負のシーズンの第一歩を、記憶に留めて置きたい。

文/芝 笑翔

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