男子相澤、女子新谷に続く五輪内定を得られるか! 第105回日本陸上選手権大会・10000m展望

第105回日本陸上選手権大会・10000mが5月3日、今夏に開催が延期された東京五輪代表選考会として静岡・エコパスタジアムで行われる。東京五輪参加標準記録(男子が27分28秒00、女子が31分25秒00)を突破している出場予定選手は、男子の伊藤達彦(Honda)ただ一人。この伊藤のみ本大会で3位に入賞すれば東京五輪10000mの代表内定が得られ、それ以外の参加標準を突破していない男女の各選手は、これを突破した上での3位入賞が条件になる。
昨年の日本選手権長距離・10000mに優勝し、既に代表に内定している男子の相澤晃(旭化成)、女子の新谷仁美(積水化学)に次ぐ代表内定選手が現れるか、注目が集まる。

今大会では、男子の10000mは最終エントリーが46名と多人数になったため、参加資格記録上位の32名で実施するAレース、33番手以降の15名で実施するBレースの2レース制となっている。昨年暮れの日本選手権長距離・10000mも2レース制で行われたが、これが、相澤が27分18秒75の日本記録を樹立する一つの要因ともなっていた。
持ちタイムの劣るBレースに出場した市田孝 (旭化成)が27分52秒27の好タイムで1着となったため、Aレース組は優勝するにはこのタイムを上回らなければならなくり、スローペースで勝負に徹する事が出来なくなったのだ。
今大会でも、古賀淳紫(安川電機)田口雅也(Honda)、名取燎太(コニカミノルタ)ら27分台を目指す選手たちが、好記録でAレース組にプレッシャーを掛けることができるのか、そのタイムがまず注目される。

参加標準記録の突破には、序盤から淀みないハイペースでレースが展開される事が重要になるが、その点は26分台のベストタイムを持つR・ケモイ(九電工)、ベストタイムが参加標準記録を上回っているC・カンディエ(三菱重工)の二人のケニア人実業団選手が順位の付かないオープン参加として出場し、牽引役を担う手厚い体制となっていて問題はないだろう。とは言えこの二人の刻むペースに日本人選手が付いていくことが出来なければ意味がない。
昨年の日本選手権では1周目、先行するB・コエチ(九電工)らケニア人選手を目の前に、誰が後に続くのか周囲を伺うような雰囲気が多くの選手に有ったなか、マラソンで東京五輪代表に内定している大迫傑(nike、今大会は不出場)がすーっと前に出て3番手に位置取り、コエチと日本人選手に生じそうだった間隔を埋めた。この間隔が少し開いた見ると4000mからは鎧坂哲哉(旭化成)、5000mからは田村和希(住友電工、今回は故障で欠場)、6000mからは伊藤と入れ替わりにペースを上げて外国人選手に食らいつき、参加標準ペースから遅れることを防ぐことが出来た。7000m以降はそれまで脚を溜めることに徹していた相澤が生き残り、最終的に日本記録誕生に繋げたが、こうした「共闘態勢」でペースの落ち込みを防ぐことを、最終選考の今大会でも選手達がレース中の瞬時の判断で取ることが出来るかどうかも、参加標準記録を突破する上でのポイントになりそうだ。

出場者中唯一の参加標準記録突破者である伊藤は、そのタイム、27分25秒73を叩き出して2位に食い込んだ日本選手権以降のロードシーズンは、激走の疲れもあったかやや精彩を欠くレースが続いていたが、4月10日の金栗記念では5000mで13分45秒12をマークし、この大会に向けてやっと状態が上向いてきた。レースでは後半に差し掛かると、フォームを乱してでも絞り出してくるタイプで、表情が厳しくなり、無理やり腕を振っているような動きになっても大きくペースを落とすことは無く、この状態からでもラスト1周での切り替えが出来る驚異的なスパート力を持ち合わせており、優勝候補の筆頭だ。

27分29秒74の自己ベストを持つベテラン鎧坂は、参加標準を突破する記録を持ちながら最終選考会で大敗しリオ五輪代表を逃しており、東京五輪への思い入れは強い。ここ数年はなかなか結果が出ていなかったが昨年の日本選手権10000mでは積極的な走りで27分36秒29の好タイムをマークして存在感を示した。その後も好調を維持しており、悲願の代表内定へ向けて機は熟している。

侮れない存在なのは市田孝。今年2月の全日本実業団ハーフマラソンでは日本歴代4位の60分16秒をマーク。今期乗っている選手の一人だ。後半失速しがちなフルマラソンと異なり、トラックレースであれば粘りが利き、伊藤同様にラストスパートで絞り出すことも出来る。終盤までハイペースに食らい付く事ができれば、自己ベストを大幅に上回る標準突破のチャンスが出てくるだろう。

昨年の日本選手権で27分34秒86で4位と、鎧坂、大迫に競り勝つ激走を見せた河合 代二 (トーエネック)。一昨年からじわじわ頭角を現してきていたが、一気にブレイクを果たした。格上の選手にも怯まず、持ちタイムを大きく上回るようなハイペースでも果敢に付いていくタイプのため安定した結果が残せていない嫌いがあるが、良い方の目がでれば優勝をさらってもおかしくないだけの力を持っている。

駒澤大学3年の期待の若手、田澤廉は落ち着いたレース運びに大器の片鱗が伺え、学生時代から将来を嘱望されながら、大舞台にはなかなか届いていない村山謙太(旭化成)も代表への強い思いを滲ませており、注目しておきたい。

女子10000mに目を転じると、新谷に続く2枠目、3枠目の代表を巡る争いは、昨年の日本選手権長距離10000mで2000mまで1周72秒のペースで牽引して新谷の日本新記録の快走を後押ししながら、自身も31分30秒19と参加標準記録に5秒まで迫る粘りの走りで3位に食い込み、今大会でも優勝候補と目されていた佐藤早也伽(積水化学)が故障で欠場となり、代わって浮上してきたのが廣中璃梨佳(日本郵政G)だ。

廣中は5000mの参加標準記録を突破しており、この種目一本に絞って五輪出場を目指すものと思われていたが、金栗記念では10000mに参戦。初挑戦とあって序盤はスローペースのやや慎重な入りだったが2000mからビルドアップしてどんどんペースを上げて行きながら後半も落とさず、ゴール後も息を乱さない余裕のあるパフォーマンスだったにも拘らず31分30秒03の好タイムをマークし、10000mにおいても底知れないポテンシャルの高さを見せつけた。五輪の選考会である今大会に出場してきたのは、5000mを戦う上での体力強化という意味合いばかりでなく、2種目での代表の座を掴み取るという意思の表れだろう。外国人選手に頼らずとも、自身でレース展開を自在に操る事ができるところも強みとなる。

廣中を追う存在の1番手は安藤友香(ワコール)か。マラソンでの東京五輪出場を目指して来たが適わず、ターゲットを10000mに変えてきた。昨年の日本選手権で31分37秒71のPBをマーク、スピードにも磨きが掛かってきた。金栗記念では、5000mから廣中に替わって先頭を引き、その後の廣中のペースアップには先々への疲労の持ち越しを考慮したのか対応しなかったものの、31分46秒80の好タイムでレースを終え、順調な調整の程が伺えた。マラソン選手だけにスタミナは充分で、標準記録を突破するだけの力は充分に有る。

2019年のドーハ世界陸上で10000mの代表に選ばれながら、故障のために出場が適わなかった鍋島莉奈(日本郵政G)も本来ならば優勝候補の一人として数えられても良い存在だ。故障からの復帰後は、昨年の全日本実業団選手権10000m優勝、日本選手権10000mでは31分31秒52で4位と復調してきていたが、春のトラックシーズンに入り金栗記念の5000mでは16分台と精彩を欠いており、万全のコンディションで臨めるかに不安が残る。

2018年から台頭し、2019年には31分29秒29と標準突破まで4秒余りに迫るタイムをマークしながら昨年はやや精彩を欠いていた岡本春美は、地元群馬のヤマダHDに移籍、高校時代の恩師である高木雅一監督の指導のもと、不振から抜け出しつつある。岡本の同僚の筒井咲穂、2014年の仁川アジア大会10000mで銅メダルの実績がある萩原歩美(豊田自動織機)もレースの流れに乗ることが出来れば、上位に食い込めるだけの実力は有している。

アテネ大会から続く5大会連続での出場を目指す福士加代子(ワコール)の、恐らく最後になるであろう五輪への挑戦も、しっかりと見届けておきたい。

文/芝 笑翔

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