日本記録の更なる更新はあるか!木南記念は男女の1500mに大注目! 五輪代表を巡る争いの男子400mH、五輪出場権獲得を目指す女子100mHからも目が離せない!

第8回木南道孝記念陸上競技大会が6月1日、大阪・ヤンマースタジアム長居に於いて開催される。当初は5月5日に予定されていたが、コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言により延期された為、東京五輪最終選考会となる6月24日からの第105回日本陸上選手権(会場は同じヤンマースタジアム長居)が目前に迫る中での実施となった。選手達にとっては却って調整の最終段階としても前哨戦としても、この大会の位置付けに重みが増したのではないかと思われる。そんな木南記念の注目種目に迫ってみたい。

ある意味、この大会直前に来てモチベーションを高める要素が加わったのが男女の1500mではないだろうか。
5月29日、アメリカ・ポートランドトラックフェスティバルの男子1500mに出場した荒井七海(Honda)が、2004年に小林史和(当時NTN、現・愛媛銀行監督)がマークした3分37秒42を17年ぶりに更新する3分37秒05の日本記録を樹立、国内で大会出場を続ける有力選手達も大きな刺激となった筈だ。
金栗記念で3分38秒84をマークした河村一輝(トーエネック)、同レースで3分39秒37で河村に次ぐ2着に入った森田佳祐(小森コーポレーション)の二人は今期の進境が目覚ましく、勢いがある。ここにREADY STEADY TOKYOの1500mで1着となった勝負強い館沢亨次(横浜DeNA RC)や、エントリー選手中最も速い持ちタイム3分38秒65のある舟津彰馬(九電工)ら実力者が加わり、荒井が打ち立てたばかりの日本記録を念頭に置いたハイレベルなレースとなる予感が漂っている。若手期待の星の一人飯沢千翔(東海大)は金栗記念こそ好タイムで3着に入ったが、その後READY STEADY TOKYO、関東インカレと失速するレースが続いており、不振からの脱出に期待したい。

女子の田中希実(豊田自動織機AC)にとっても男女の違いこそあれ、荒井の偉業に刺激を受け自身の持つ4分05秒27の日本記録更新、更には4分04秒20の東京五輪参加標準記録突破をより強く意識して臨むレースとなりそうだ。今期は3月下旬より800mから5000mまでの様々な距離で毎週のように大会出場を重ねながら1500mでは4分10秒を切るタイムを2度マーク、今大会は5月15日の中部実業団選手権の3000m出場から2週間ほど間隔が開いており、リフレッシュした状態で臨めそうだ。勝負のかかる日本選手権を前に、記録重視で挑めるレースは日程的にも今大会が最後になると思われる。
もう一人の有力選手、卜部蘭(積水化学)は、WAのワールドランキングによる東京五輪出場も可能な位置に付けており、資格記録の期限までの1レース1レースが非常に大事になってくる。今期は自己記録の4分11秒75こそ敗れていないが、迫る記録を複数回出しておりコンディションに不安がなく好調なシーズンを送っていると言えるだろう。後半のスパートの切れの良さに持ち味がある選手だが、4分10秒を切るためにはレースの進め方にもう一工夫欲しいところだ。

READY STEADY TOKYOの一環として開催されたWAコンチネンタルツアーゴールド東京で、黒川和樹(法政大)、山内大夢(早稲田大)、豊田将樹(富士通)の三人が一挙に五輪参加標準記録を突破し、代表を巡る争いが一気にヒートアップしている男子400mH。今大会では参加標準を突破している4選手のうち、黒川和樹(法政大)を除く3名がエントリー、中でも2019年の日本選手権で48秒80をマークし、いち早く五輪参加標準記録を突破しながら追いつかれてしまった恰好の安部孝駿(ヤマダHD)が再び存在感を示す事が出来るかに注目。静岡国際では黒川、山岡の、コンチネンタルツアーゴールドでは、二人に加えて豊田にも後れを取る事となり、現状は若手の勢いに押され気味だ。三度後塵を拝すようであればいよいよ追い込まれる事にもなり、リオ五輪以降この種目をけん引してきた日本の第一人者としての奮起を期待したい。逆に山内、豊田の二人としてはここでも安部を抑えて、日本選手権での決戦に一層の弾みを付けて臨みたいところだろう。
こうした五輪代表を巡る争いに割って入りたいのが、山川竜大(日本大大学院)。
昨年は日本インカレで黒川との激戦を制し、日本選手権では最後のハードルを越えてからの猛烈な追い上げで安部をあと一歩まで追い詰めたが、今期は静岡国際で本来の走りが出来ずにコンチネンタルツアーゴールド出場を逃し、関東インカレも回避。コンディション面での不安は拭えないところだが、日本選手権にピークを合わせる為に大事をとっていたとするならば、ここでのレース内容が重要になってくる。昨年に見せた粘り強い走りを取り戻し、更に混戦に拍車をかける存在に浮上できるか。

女子400mHに出場する宇都宮絵莉(長谷川体育施設)はREADY STEADY TOKYOで56秒50の自己ベストをマークし、WAのランキングポイントでも東京五輪出場の目安となるターゲットナンバーの40位に対し、41位と出場圏内にあと一歩のところまで迫ってきている。記録はもとより、今大会とその先にある日本選手権を勝ち切ってポイントを積み増す事が、五輪出場への必須条件だ。

100mHのランキングポイントで五輪出場圏内(ターゲットナンバー40位)に位置している29位の100mHの青木益未(七十七銀行)、31位の木村文子(エディオン)、36位の寺田明日香(ジャパンクリエイト)の3人にとってもこの大会の位置付けは宇都宮同様で、まずは勝ち切ってポイントを積み重ねる事が重要となり、そのうえで五輪出場を確実なものとするためにも、参加標準の突破を狙っていきたい。1500mの田中と同じく、勝負のかかる日本選手権の前に思い切って記録の狙えるレースが多く残されてる訳ではない。

110mHの日本記録保持者の金井大旺(ミズノ)と、先日の関東インカレで参加標準突破を果たした泉谷駿介(順天堂大)にとっては、五輪本番での決勝進出を視野に、その手応えを得られる大会とすることが出来るか。参加標準突破まであと僅かに迫っている石川周平(富士通)、走るたびに記録を伸ばしている成長著しい若手の村竹ラシッド(順天堂大)の二人にも注目をしておきたい。

フィールド種目では男女のやり投げから目が離せない。
今期好調を維持しているのは小南拓人(染めQ)で、織田記念で82m52の自己ベストを叩き出し優勝を飾ると、続くコンチネンタルツアーゴールドでは80m98をマークして2連勝、コンディションの上がってこないリオ五輪代表の新井涼平(スズキ)を押し出すかたちで、五輪出場圏内(ターゲットナンバー32位)のWAランキング25位に浮上した。好記録をマークしても後が続かず、大会ごとの成績にムラのあるタイプだったが今年は安定感が増しており、さらにワールドクラスの大会で決勝に残るためには、1投目から80mオーバーを投げるだけの集中力が必要となってくる。一方、後が無くなってきた新井と、ロンドン五輪代表のディーン元気(ミズノ)は五輪出場権を得るために、85m00の参加標準記録を上回る投擲を目指さなければならない。

女子は3月初旬に南アフリカで始動し、金栗記念で61m08の好記録をマークしている佐藤友佳(ニコニコのり)と、5月19日にチェコで行われた競技会で初戦を終えたばかりの北口榛花(JAL)の、今期対照的な始動となった二人の一騎打ちが濃厚だ。
佐藤は今期60mオーバーを3度投げているが、それでも五輪参加標準記録の64m00に届いていない。WAランキングは31位でぎりぎりターゲットナンバーである32位以内にいるが、やはり参加標準を突破しておきたいところだろう。
一方の北口は既に五輪参加標準を突破しており、本番での決勝進出を目指し、独自の調整を進めている。シーズン初戦は57m18と不本意な内容に終わっており、ここでも本来の力が発揮できないようであれば先行きに暗雲が立ち込めてくる。60mでは佐藤に勝つことは難しいと思われ、これを大きく上回る内容の伴った勝利を目指したい。

この他、ロンドン、リオ五に続く3大会連続五輪出場を狙う山本聖途(トヨタ自動車)未だ参加標準記録の5m80がクリア出来ておらず、このあたりで突破をしないといよいよ苦しくなってくる。男子200mの飯塚翔太(ミズノ)も同様だ。
また自己ベストを日本歴代4位タイの6m65まで伸ばしてきた女子走幅跳の秦澄美鈴(シバタ工業)や、今期2分03秒05をマークしてようやく長い不振からの抜け出した女子800mの北村夢(エディオン)ら、勢いのある選手のエントリーもあり、コロナ禍で無観客での開催となるが、選手たちによる勝負と五輪出場権獲得を巡っての、諦める事のない戦いが展開されていくだろう。

文/芝 笑翔

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