秩父宮杯第53回全日本大学駅伝対校選手権の関東学連推薦校選考会が6月19日、相模原ギオンスタジアムで行われる。昨年はコロナウィルス感染拡大の影響で、本選出場校が10000mのタイムを元にした書類選考となったため、予選会の開催は2年振りとなる。昨年の本大会でシード権を得ている駒澤、東海、青山学院、明治、東洋、早稲田、帝京、順天堂の8大学を除き、定められた期間内に記録された10000m8人の合計タイム上位20大学が出場し、関東学連に振り分けられた残り7つの枠を巡り、4組に各校2名ずつが出走する10000mの合計タイムによって争われる。
予選会の上位通過が見込まれるのは、國學院大学、中央大学、中央学院大学の3校。
昨年の本戦で9位に留まり2大会守っていたシード権を逃した國學院大学は、全員が予選会初出場。しかしながら、藤木宏太(4年)中西大翔(3年)のエース格二人が28分10秒台、続く主力の木付琳(4年)、島崎慎愛(4年)の二人も28分30秒を切るベストタイムがあり、加えて1年の平林清澄も入学早々の4月の日体大記録会で28分38秒38をマーク、関東インカレで28分台に突入した伊地知賢造(2年)を加えた6人が28分台のベストを持ち、更には箱根5区を8位で走っている殿地琢郎(4年)もエントリーされ穴のない盤石の布陣でトップ通過も見えている。
中央大学は2年生ながらエース格の吉居大和、その吉居に次いで2番目に10000mの持ちタイムが良い千守倫央(4年)がエントリーを外れたが、それでも今年の箱根駅伝を区間一桁順位で走った三浦拓朗(4年)、若林陽大(3年)ら6人が28分台のベストを持つ。エントリー中チーム8番手の選手でもでも29分06秒と粒ぞろいの分厚い戦力で2012年以来久々の本戦出場を果たせるか。
中央学院大学は中央大学とは逆にここ8年続けて本戦出場を果たしており、ここで途絶えさせる訳にはいかない。全20大学のエントリー日本人選手中もっとも速いベストタイム28分03秒39を有する栗原啓吾(4年)を筆頭に、武川流以名(3年)、小島慎也(3年)ら28分台を持つ選手は6名で國學院、中央と並ぶ。中でも堀田晟礼、吉田礼志の二人は1年生。まさかの本戦出場を逃した箱根予選の雪辱を期す上級生に強力な1年生の力が融合し、フレッシュイエローが伊勢路に姿を見せる事になりそうだ。
上記3校に続くのは日本体育大と神奈川大か。
日体大は3年藤本珠輝が関東インカレ10000mで日本人2位と、チーム内に留まらず学生陸上界でもエース格と呼べるまでに成長を見せており、直近でも日体大記録会5000mで13分32秒58をマークし絶好調だ。関東インカレ10000mでは9位と惜しくも入賞を逃したが藤本と共に好走した大畑怜士(4年)ら28分台は4名と上位候補3校には及ばないものの、絶対的エースの存在はチームにとって頼もしく、他校にとっては脅威だろう。
神奈川大は日体大とは対照的に、箱根駅伝1区で4位と好走した呑村大樹(4年)、28分48秒33とチーム2番手のベストタイムのある川口彗(4年)とエース格2枚を欠く状況だが、チームトップの28分48秒23の記録を持つ西方大珠(4年)、箱根で力の有る事を示した宇津野篤、佐々木亮輔の2年生に、関東インカレ2部10000mで28分52秒30をマークした同じ2年の巻田理空ら持ちタイム以上に勝負強い選手が多く、総合力の高さで安定した試合運びが可能だろう。
残りの2枠を巡っては、今年の箱根で最終盤まで優勝を争い旋風を巻き起こした創価大、強力な留学生を擁する東京国際大、国士館大、拓殖大、日本大、日本人エースの存在が光る法政大、城西大などがその座を伺う大混戦だ。
創価大は旋風を巻き起こした箱根駅伝で主力を担った複数の選手が卒業した事に加え、島津雄大(4年)と並ぶ日本人エース格の葛西潤(3年)のエントリー漏れの影響が出てきそうだ。27分台のベストタイムがある留学生のP・ムルワ(3年)に安定感が有るのが救いだが、そのムルワと島津、関東インカレ2部10000mに出場した箱根駅伝5区2位の三上雄太(4年)に続く選手の奮起が予選突破の鍵を握りそうだ。箱根6区7位の濱野将基(2年)8区8位の永井大育(4年)の二人は10000mの実績に乏しいが、出場圏内に踏み止まって、ムルワ、島津に後を託せる展開となれば悲願の伊勢路初出場が見えてくる
東京国際大は10000m27分30秒24のタイムを持つ留学生Y・ヴィンセントは強力だが、箱根1区を担った丹所健、10000チーム日本人トップの28分29秒36をマークしている山谷昌也(共に3年)の日本人エース格と他のエントリー選手との間にやや力の開きがある。
日本大も東国大と似たチーム構成で、実業団の経験もあるC・ドゥングがかつての力を発揮し始めた事に加え28分09秒06の日本人エース樋口翔太、関東インカレ5000m7位入賞の松岡竜矢(共に3年)、今年の箱根駅伝では学生連合の一員として力走を見せた小坂太我(4年)に続く人材に難が有る。過去に予選会で好走歴のある鈴木康平(4年)や小野修平(3年)がエントリーから外れたのも、決して層の厚くない日大にとっては大きな痛手だ。
国士館大にも10000m27分39秒80を誇り、関東インカレハーフマラソンで優勝した大砲、R・ヴィンセント(4年)が控えるが、日本人エース格の三代和弥(4年)が28分55秒29、小榑杏佑(4年)が28分58秒07とライバル校のエースに比べややパンチ不足。
このボーダーライン4校は最終組に控える留学生、日本人エースの力に加え、各選手の持つ力を十分に引き出だせるだけの調整が出来たかどうかで明暗がはっきり分かれそうだ。
拓殖大は前任の岡田監督時代はロードに振り切った印象が有ったが、山下監督が引き継いで以降は少しづつトラックでも好タイムを出す選手が出始めている。日本人トップタイムの28分58秒72の合田椋(4年)以下チーム8番手の選手でも持ちタイムが29分25秒95と走力にバラつきがないのが強みだが、肝心の留学生J・ラジニ(3年)関東インカレで精彩を欠き、不安が残る。
法政大は10000mの上位8選手の合計タイムが20チーム中15位だが、他校に比べ記録会に出場する機会が少ない事が響いているものと思われ、それでも箱根駅伝予選会を突破して本戦出場を果たしているように、トラックの持ちタイム以上の走力が感じられる不気味な存在。箱根1区と学生ハーフを制した大エース鎌田航生(4年)を配すると予想される最終組までに、他校に離されず食らい付く事が出来れば面白い。
昨年の本戦で前半に見せ場を作った城西大は、1区2位の力走を見せたエース砂岡拓磨(4年)が関東インカレを欠場しており、ここも間に合わないようだと4年連続出場に赤信号が灯る。箱根を経験した野村颯斗(2年)、藤井正斗(3年)らの意地に期待をしたいが、ライバル校に比べやや苦しい布陣を強いられそうだ。
当予選会は6月後半の梅雨の真っ只中に開催され、競技開始は夕刻からといえどもこの時期特有の蒸し暑さが出場選手を苦しめる。熱中症や脱水症状などのアクシデントに見舞われることも珍しくなく、こうした事態が起きてしまえばその時点で本戦出場が潰える厳しい戦いだ。
11月、伊勢路で母校の襷を繋ぐ7校は、果たして。
文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)
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