いよいよ東京五輪最終選考会! 代表の座を掴むのは山縣か、多田か、桐生か、そてともサニブラウンか! 女子は4×100mリレー代表を巡り混戦必至! 第105回日本陸上競技選手権男女100m展望

第105回日本陸上競技選手権大会が6月24により4日間の日程で大阪・ヤンマースタジアム長居で開催される。東京五輪の最終選考会も兼ねており、各種目とも代表の座を賭けた激戦となる事が予想される。

まずは最も注目を集めている男子100m。五輪参加標準記録(10秒05)を突破している選手は以下の5人。
山縣亮太(SEIKO)9秒95
サニブラウン・アブデルハキーム(TumbleweedTC)9秒97
小池祐貴(住友電工)9秒98
桐生祥秀(日本生命)10秒01
多田修平(住友電工)10秒01

この5選手は、今大会で3位までに入れば五輪出場が内定。 まだ五輪参加標準を突破していない有力選手の一人、ケンブリッジ飛鳥(nike)らそれ以外の選手は今大会で五輪参加標準記録を突破したうえで、決勝で3位以内に入らなければならない。

五輪最終選考会を前にして、調子を上げてきたのが山縣亮太。10秒00をマークし銅メダルを獲得した2018年のジャカルタアジア大会以降は肺気胸や度重なる故障に悩まされてきたが、今年に入り復調。4月の織田記念を10秒14で制すと、6月6日の布勢スプリントでは9秒95の日本記録をマークして五輪参加標準記録を突破。故障の原因は体のバランスが崩れていたためと考え、補正するためにヴォイストレーニングを取り入れてみたり、慶応大学のコーチを務める高野大樹氏にアドバイスを求めたりといった発想の転換が今期の復調に繋がっているものと思われる。山縣の過去の成績を振り返ると、一度好調期に入ってしまえばそのシーズンが終わるまで持続出来ていることが多く、今年もそのゾーンに入っていると見てよいだろう。ここ一番でもけして揺らぐことのないメンタルコントロールの卓抜さもこの選手ならではだ。

多田修平も好調だ。始動となった大阪室内60mでは予選、決勝と日本記録を連発、東京五輪のテスト大会となったREADY STEADY TOKYOではタイムは平凡ながらJ・ガトリン(米国)と最後まで競り合って2着、山縣が日本記録をマークした布勢スプリントでもスタート良く飛び出すと最終盤まで山縣を抑えて先行し、あわやの見せ場を作った。GGPでガトリンを上回る飛び出しで、あのヤングボーイは誰だとまで言わしめ脚光を浴びた2017年シーズン以降、終盤の落ち込みを留めるためにそり気味だった中間疾走時の姿勢を前傾に変えるなど試行錯誤を繰り返していたが思うように記録が伸びず、元の走りに戻して結果がまた出始めた。Aパウエル(ジャマイカ)直伝のスタートの飛び出しも鋭さが加わっているが、むしろトップスピードに入るまでの加速のスムーズさこそが多田の大きな武器だろう。終盤に競りかけられた時に自分の走りに徹し切る事ができれば、五輪代表の座がぐっと近づいてくる。

昨年は安定して10秒0台をマーク出来ていた桐生祥秀だが、今期初戦の大阪室内で膝の裏に違和感を感じて決勝を欠場し、大事なシーズンの序盤で躓いた。READY STEADY TOKYOの予選でもフライングを犯し失格となるなど今一つ噛み合っていなかったが、布勢スプリントでは予選で追い風参考(2,6m)ながら10秒01をマーク。決勝はアキレス腱の違和感で大事をとって欠場したものの、状態は上向きで、今大会にはしっかりと合わせてきた。その布勢スプリントの走りは、日本人初の9秒台をマークした頃の走りと比べると膝の角度がしっかりと立っており、地面にしっかりと力を伝えてその反発を足さばきに利用しようとする意図が伺えた。より速く走るために従来のピッチを生かしながら、ストライドを伸ばすことも意識した走法の改造と思われ、一応の結果を見た事に手応えを掴んでいるだろう。気懸りな点が有るとすれば、今期ここまで順調さを欠いたため、実戦が例年より少なかった事か。コンディションが万全であれば、優勝候補の一角有る事に変わりはない。

小池祐貴は9秒98をマークした2019年頃と比較すると、スタートからの数歩の動きがぎこちなく、スムーズさを欠いているように見える。ここが改善されていないと勝負に持ち込むのは厳しい。

前日本記録保持者となってしまったサニブラウン・アブデルハキーム。実力者で有る事に変わりはないが、今期はここまで5月31日にフロリダで行われた大会で追い風3,6mの条件で記録した10秒25のリザルトが残るのみで、有力選手のなかでは明らかに順調さを欠いている。海外に拠点を移したことも有り動向が不明な点も多々あるが、スタートに課題の有る選手だけに、実戦感覚が戻っているのか、またコンディションの上積みが出来ているのか、予選の走りが注目される。

昨年に五輪選考に関わる記録の認定期間外ながら10秒03で五輪参加標準を突破する水準のタイムを叩き出していたケンブリッジ飛鳥は、今期もう一つ上がってこないコンディションが上向いてきたかどうか。ここという場面で見せる集中力は山縣に比肩するものが有り、万全の状態に戻っていれば後半までスピードが落ちない走りと競り合いの強さで逆転の一発もあり得る。

実力も実績もあるこの6人以外の選手が上位争いに加わるのは厳しいと見るが、関東インカレで2連覇を果たした鈴木涼太(城西大)、学生個人選手権を制したデーデーブルーノ(東海大)、昨シーズン10秒14をマークした水久保漱至(第一酒造)といった学生、社会人1年目の若手、さらには高校3年生ながらシレジア世界リレーの4×100mリレーでアンカーを務めた栁田大輝(東京農大二高)が、東京五輪後、パリ五輪見据えてどこまで記録を伸ばせるかにも注目しておきたい。

女子の100mではここまで五輪参加標準記録(11秒15)を突破した選手は出ていないが、5月に開催されたシレジア世界リレー選手権で4×100mリレーで五輪出場権を手にし、その代表メンバーが懸る事もあり、俄然白熱の度合いが増している。世界リレーでアンカーを務めた鶴田玲美(南九州ファミリーマート)が今大会では200mに種目を絞った事も有り、リレーメンバーに選出されるためには、最低限決勝で4位ではなく3位までに入っておく必要がありそうだ。

昨年に11秒36をマークした兒玉芽生(福岡大)、世界リレーは1走を務め、五輪出場権獲得に大きく貢献した青山華依(甲南大)、結果的には出場権を得られなかったが前大会リオ五輪を目指すリレーメンバーでも有り、今期復調してきた斎藤愛美(大阪成蹊大)ら世界リレーメンバーに加え、その世界リレーメンバーに選ばれながら本番では出番のなかった悔しさをバネに今期11秒48まで記録を伸ばしてきた石川優(青山学院大)、スタートダッシュが冴え渡り、今期11秒53の自己ベストを記録するなど絶好調なベテラン名倉千晃(NTN)、布勢スプリントを11秒57で制し、昨年の不振から脱しつつある御家瀬緑(住友電工)ら、今期急成長した選手、好調な選手も多く、混戦の度合いで言えば男子にも劣らない。

更に、北京からの4大会連続五輪代表を目指す福島千里(SEIKO)も布勢スプリントで日本選手権出場資格をもぎとり、滑り込みで最終選考会に間に合った。往年の切れは流石に戻っていないが、日本選手権出場資格が得られない中にあっても古傷の再発を怖れてどこか体の動きにセーブを掛けてしまう心理的抑圧もあったかもしれない。五輪出場への最後のチャンスとなる今大会で、抑圧から解き放たれた福島が見られるか。予選のレースから目が離せない。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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