東京五輪代表だけじゃない!オレゴン世界陸上参加標準突破が見えて来た男子800mが熱い!天皇賜盃第90回日本学生陸上競技対校選手権大会の見どころを紹介

学生陸上競技の祭典、天皇賜盃第90回日本学生陸上競技対校選手権大会が9月17日より、埼玉県・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場を会場に開催される。未だ終息の見通せないコロナ禍の影響も有り、昨年同様に三日間の短縮日程、無観客での実施となるが、予選2本、決勝2本、あるいは試技回数を8回までとして実施されたフィールド種目は、今年は通常通りに行われる。東京五輪代表となった学生選手も多く顔を揃え、来年に控える世界陸上オレゴン大会や3年後に控えるパリ五輪へ向けての新たなスタートとなり、また多くの4年生にとっては長期に及ぶコロナ禍の制約の中、日々努力をしてきた成果を発揮する最後の学生大会ともなる本大会の注目競技、注目選手を挙げて行きたい。

東京五輪で入賞を果たした男子3000m障害の三浦龍司(順天堂大2年)、男子110mHで決勝進出目前にまで迫った泉谷駿介(順天堂大4年)のリスタートも勿論注目されるが、オレゴン世陸やパリ五輪を見据えた闘いも既に始まっており、そうした意味では今年7月に北海道で行われたホクレンディスタンスチャレンジの男子800mで1分45秒75の日本タイ記録をマークし、オレゴン世界陸上参加標準記録(1分45秒20)突破も視界に入ってきた環太平洋大学4年の源裕貴に注目だ。今期はシーズンイン当初から静岡国際、デンカチャレンジと日本グランプリ大会を制すなど成長を見せ、期待された日本選手権こそラストに失速してしまったものの、タイムを意識した積極的な入りなど飛躍を予感させる走りは見せていた。日本選手権では源に先着する2位に食い込み、ホクレンでも大激戦を演じた金子魅玖人(中央大2年)と共に、この種目を国際大会レベルにまで引き上げて行く可能性は充分。競い合って、日本記録更新がなるかに期待したい。また男子800mは、北海道大4年の高橋佑輔、東京大2年の高橋創の国立大選手も力を付けてきており、表彰台に届くのかといったところにも注目したい。

女子の注目種目は、ホクレンデイスタンスチャレンジの10000mで既にオレゴン世陸の参加標準記録(31分25秒00)を突破する31分22秒34をマークしている小林成美(名城大3年)と、U20世界選手権代表に選ばれながらコロナ禍のため派遣が見送られた不破聖衣来(拓殖大1年)の対決する5000mが楽しみだ。6月の学生個人選手権でも見応えのある好勝負を演じたこの二人が、世界選手権の参加標準記録15分10秒にどこまで迫る事ができるか期待が高まる。

また6月のデンカチャレンジで61m75をマークし世界ランキングを33位まで押し上げて五輪出場ラインに際どく迫りながら果たせなかった上田百寧(福岡大4年)とやはり6月に行われた学生個人選手権で日本歴代4位となる62m39のビッグスローを見せた武本紗栄(大阪体育大4年)の出場する女子やり投も、世界陸上への出場を意識したハイレベルな争いが繰り広げられそうだ。

五輪代表組では、3000m障害の三浦龍司は疲労の蓄積やロードシーズンの開幕が目前に迫っている事も有り、この大会に100%仕上げてくるとは考えにくいが、それでもしっかりと勝ち切ったうえで、日本選手権で8分27秒80で5位に入賞と急速に力を付けて来た小原響(青山学院2年)ら国内選手のレベルを押し上げる 役割を担って欲しい。小原には三浦の胸を借り、世界陸上参加標準記録(8分22秒00)の突破を目指してもらいたい。記録の狙える機会というのは多く有りそうに見えても、実際に条件がそろう事はなかなか訪れるものでは無く、絶好のチャンスと捉えて欲しい。

110mH代表の泉谷駿介や、400mH代表で準決勝まで駒を進めた山内大夢(早稲田大4年)予選敗退に終わった黒川和樹(法政大2年)の3人も三浦同様に疲労からの回復具合が気懸りだが、オレゴン世陸の標準記録の資格期間が今年の6月28日からとなったため、参加標準記録を上回っていた日本選手権の記録が数日違いで期間外となり(山内は5月の東京五輪テスト大会での記録)、出場する為には参加標準記録の突破が必要(110mHは13秒32、400mHが38秒90)となっており、日本選手権の準決勝で五輪参加標準記録の13秒28を記録しながら決勝はフライングにより失格となった110mHの村竹ラシッド(順天堂大2年)も合わせたこの4人には勝負に拘るだけでなく、今後も見据えての記録を意識した走りを望みたい。

また、男子4×100mリレーのメンバーに選ばれながら出場機会のなかったデーデー・ブルーノ(東海大4年)は、100mにエントリーをしており、若手中心のメンバーで組まれたシレジア世界リレーの4×100mリレーでエース区間の2走を務め、関東インカレでは優勝を攫われた鈴木涼太(城西大4年)と雌雄を決する。ブルーノは五輪前最後の実戦となった7月の実学対抗で東田旺洋(栃木県スポーツ協会)に敗れているように、高校時代に陸上競技に本格転向したというキャリアの浅さが時折顔を覗かせ、粗さもまだ残っているが、2位に入ってあっと言わせた日本選手権の様な爆発力にポテンシャルの高さが感じられる。一方の鈴木涼も関東インカレ覇者として、また城西大学勢としても昨年のこの大会を制した水久保漱至(現第一酒造)に続く連覇が賭かっており、一歩も譲る訳にはいかないところだ。また東京五輪の4×400mリレーでアンカーを務め、3分00秒76の日本タイ記録に大きく貢献し、今大会ではスピード強化のために100m一本に絞って挑戦する鈴木碧斗(東洋大2年)が優勝争いに加わる事が出来るかにも注目だ。鈴木碧は五輪直後にも拘わらず、8月の東京選手権の100mを制し、今期の好調さと勢いは維持できている。

東京五輪で貴重な経験を積んだ、女子4×100mリレーメンバーの兒玉芽生(福岡大4年)、齋藤愛美(大阪成蹊大4年)、青山華依(甲南大1年)の3人はこの経験を今後に繋いでいくために、世界陸上でも4×100mリレーの出場権を獲得する事が至上命題として課せられてくるだろう。そのためにも個人の走力を高め、100mではそれぞれの持つ自己ベストを更新するくらいの走りを見せて欲しい。代表に選ばれなかがら出場機会の無かった石川優(青山学院大1年)、補欠選手として五輪に帯同した壹岐あいこ(立命館大3年)は無念の思いを注ぐためにも、学生最高峰のタイトルを手にし、五輪出場メンバーとそん色のない実力がある事をアピールしておきたいところ。女子100mでは他にも今期に入って記録を伸ばしてきている三浦愛華(園田学園女子大2年)にとっては飛躍のチャンスであり、今期前半は環境が変わったためか本調子には遠かったが、高校時代から大器の呼び声の高い石堂陽奈(環太平洋大1年)の潜在能力も侮れない。

男子のその他のトラック種目では、長距離の5000m、10000mでは田澤廉(3年)、鈴木芽吹(2年)ら駒澤大学勢を始め、東海大、青山学院大の主力選手がエントリーを外れており、5000mではY・ビンセント(東京国際大3年)W・C・カマウ(武蔵野学院大2年)らの強力な留学生に早稲田大のエース、中谷雄飛(4年)、中央大のエース吉居大和(2年)らが、10000mでは2種目エントリーのカマウ、この種目にエントリーを絞ったP・ムルワ(創価大3年)に創価大の日本人エース格、嶋津雄大(4年)、東洋大の主力の一人で箱根5区の山登りで名を馳せる宮下隼人(4年)らがどこまで勝負出来るかといった構図になっている。
また10000m競歩は東京五輪の補欠に選ばれていた古賀友太(明治大4年)と今年の関東インカレを制した住所大翔(順天堂大4年)の争いとなりそうだ。

男子フィールドでは今期8mジャンパーの仲間入りを果たした吉田弘道(立命館大4年、SB8m14)、伊藤陸(近畿大工業高専S1、SB8m00)の出場する走幅跳、堀井遥樹(新潟医療福祉大4年)が2m24の好記録をマークしている走高跳、8月の筑波大学の記録突破会で5m52を跳んだばかりの古澤一生(筑波大1年)と5m50で今年の関東インカレを制した大崎洋介(日本体育大3年)と5m50オーバーが二選手出ている棒高跳でハイレベルな争いが展開されそうで、投擲種目は、77m05をマークした鈴木文人(九州共立大4年)、76m46まで記録を伸ばしている巖優作 (筑波大1年)に80mオーバーの期待が掛るやり投からも目が離せない。

女子のトラック種目では、五輪直線まで世界ランクでの出場圏内を維持し、日本選手権で自己ベストをマークしてポイントの上積みをしながら、最終のランキング発表で他国の選手に上回られて惜しくも五輪出場を果たせなかった吉村玲美(大東文化大3年)のエントリーしている3000m障害にも注目。同年代の山中柚乃(愛媛銀行) が五輪出場を果たした事は大きな刺激になっていると思われ、オレゴン世陸へ向けての再スタートとなる吉村だけでなく、昨年の日本選手権で9分55秒01と10分台を切る好走を見せて飛躍を果たし、パリ五輪の強化選手に指定された西出優月(関西外語大4年)、まだこの種目の経験は少ないが、5月の東京五輪テスト大会の1500mでハイペースに上手く乗り、4分13秒82の好タイムを出すなど地の走力が高い樫原沙紀(筑波大2年)がどのような走りを見せるのかもチェックしておきたい。西出は4月の織田記念で、素晴らしいペースで先頭争いをする積極性を見せながら、終盤に身体が動かなくなり水濠に落下をするアクシデントに見舞われて以降、3000m障害では思うような記録が出せていないが、1500mでも多くの大会に出場するなど地道にスピード強化にも励んでおり、試練を乗り越えて好結果を出したいところ。また樫原は、2種目エントリーとなっているもう一方の種目の1500mでは、今期学生中距離界で絶好調だった道下美槻(立教大2年)にエントリーが無く、優勝候補の一人でもある。

フィールド種目では、女子走幅跳で今期6m41を記録している東祐希(日本体育大4年)と、関東インカレ3連覇中で、日本インカレ初優勝を狙う高良彩花(筑波大3年)に現役選手では秦澄美鈴(シバタ工業)に次ぐ6m50オーバーの期待をしたい。また、三段跳に出場する東大医学部の6年生、内山咲良は集大成として悲願の日本インカレ制覇を目指す。

男女の混成競技では、女子七種競技の大玉華鈴(日本体育大4年)が今期5633点まで記録を伸ばしており、現日本記録保持者の山﨑有紀(スズキ)が九州共立大在籍時の2017年に樹立した5500点の更新の可能性も充分に有り、男子十種競技では、5月に7764点の好得点を叩き出しながら、五輪選考会である日本選手権混成の出場を先々を見据えて見送った田上駿(順天堂大M2)と、7653点の自己ベストを持ちながら、日本選手権では実力を発揮しきれなかった川上ヒデル(関西学院大4年)が、国内での一流の目安と言える8000点に迫る事が出来るかに注目をしたい。

台風14号が東へと進路を変え、今週末はその影響も心配されるが、選手たちが悔いる事無く存分に力を発揮できるよう、可能な限り良い気象コンディションとなる事を願って止まない。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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