女子5000mで萩谷楓が15分切り!男子5000mでは青木涼真が大会新!第69回全日本実業団対抗陸上競技選手権

第69回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会が9月24日から3日間の日程で、大阪・ヤンマースタジアム長居で開催され、今夏の東京五輪を沸かせた代表選手達の多くが顔を揃え、次の目標へ向けた新たなスタートを切った。

1500m表彰式の萩谷(左)

取り分け動きの良さが際立っていたのが、女子5000m代表の萩谷楓(エディオン)で、大会初日の1500mでは4分11秒34、最終日の5000mでは日本人選手5人目の15分切りで日本歴代4位の14分59秒36と立て続けの自己ベストで、出場日本人選手中トップの2位、4位に入り、大会MVPに選出された。
1500mではオレゴン世界選手権の参加標準記録(4分04秒20)も狙えるペースで飛び出したH・エカラレ(豊田自動織機)をこの種目で五輪を経験した卜部蘭(積水化学)が追い掛けたが付き切れず、終盤にペースを上げきれなかったのとは対照的に、残り1周でしっかりと切り替えてゴール直前で卜部を捉え、持ち味のラストスパートの切れを味を存分に発揮。
5000mでは1000mまで1周72秒とこちらも15分10秒00の世界陸上参加標準突破ペースを刻んだJ・ジュディ(資生堂)がペースを落としたと見ると果敢に先頭に立って集団を引っ張り始め、淀み掛かったペースを梃入れ、レースの流れを作り出した。勝負どころの4000mを迎えると、じわじわと仕掛けに入る1500mを制したエカラレに先頭を譲って足を溜め、スパートへの備えを見せる。残り2周でラップは70秒に上がり、ジュディ、M・レベッカ(ダイソー)には水を開けられ始めたが、最後の1周を65秒で上がる絞り出しを見せて、15分切りを達成した。
これまでの萩谷は5月のREADY STEADY TOKYOの5000mで10000mの日本記録保持者の新谷仁美(積水化学)、この後東京五輪10000mで7位入賞を果たす廣中璃梨佳(日本郵政G)らを破るなど、淀みの無い流れの中でのスパート勝負となれば一歩も引かないだけの実力を備えていながら、昨年の日本選手権5000mのような勝負重視のスローペースになった時に、自らレースを動かしに行く事が出来ず、なしくずしに脚を使わされて勝負に挑めないままレースを終えてしまう脆さが顔を覗かせる事も有った。
自身が自己ベストをマークしながら、予選を突破できず世界の壁に跳ね返された五輪の舞台で、同年代の廣中、田中希実(豊田自動織機TC)の五輪入賞(田中は1500m8位)という世界の強豪相手にも一歩も引かない活躍を目の当たりにして相当な意識の変化があったのだろう、五輪後も緩める事無く走り込みを行い、今大会ではレースの流れを作るモデルチェンジしたその走りで、この距離では田中、廣中の五輪入賞組に引けを取らない実力が有る事を、改めて示した。

この萩谷同様に、五輪での経験を糧にして今後の飛躍に繋げようとする強い決意をその走りで見せていたのが、スピードの要求される1500mで3位、持久力が試される5000mでは大会日本人選手新記録の13分21秒81をマークした東京五輪男子3000m障害代表の青木涼真(HONDA)だ。
こちらは五輪へのラストチャンスとなった6月の日本選手権で参加標準記録を突破し、滑り込みで代表の座を掴み取ったその際に「自分の目標はパリ五輪、東京五輪はその過程なのでまだ実力が足りないが、出場する以上は本番までに更に力を付けて良い経験を積めるよう頑張りたい」と語っていたが、その言葉を裏付けるように、五輪後初めてとなる大会で一層ギアを踏み込んだ。5000mでは途中何度も集団から遅れかけたが踏み止まり、鮮やかなスパートで日本人再先着を果たした。走力もしっかり向上してきており、次の目標に向けて目線にぶれがない事を感じさせた。ここに現在の青木の心の強さが現れているように思う。

五輪を境に目の色が変わった萩谷、ぶれることなく目標に邁進する青木。田中や廣中、そして男子3000m障害7位入賞の三浦龍司(順天堂大)だけではない、日本に萩谷、青木有りと高らかに宣言する走りを、そう遠くない将来に見せてくれるのではないか、第69回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会は、この二人から大きな可能性を感じた大会だった。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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三日間の決勝種目の結果は以下の通り(3位まで)

第69回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会

大会初日トラック種目
女子1500mタイムレース総合結果
①H・エカラレ(豊田自動織機)4:06.38
②萩谷 楓(エディオン)4:11.34※日本人大会新
③卜部 蘭(積水化学)4:11.89

女子10000mタイムレース総合結果
①K・タビタジェリ(三井住友海上)31:52.08
②佐藤早也伽(積水化学)31:52.34
③加藤 岬(九電工)32:03.38

大会二日目
トラック種目
男子1500mタイムレース総合結果
①J・ソゲット(HONDA)3:39.91
②河村一輝(トーエネック)3:40.41
③青木涼真(HONDA)3:40.94

女子400m決勝
①青山聖佳(大阪成蹊学園職)52.60※大会新
②松本奈菜子(東邦銀行)53.02
③久保山晴菜(今村病院)53.62

男子400m決勝
①佐藤風雅(那須環境技術センター)45.84※大会新
②河内光起(大阪ガス)46.17
③池田弘佑(あすなろ会)46.20

女子100m決勝(-0.1)
①青木益未(七十七銀行)11.60
②君嶋愛梨沙(土木管理総合)11.63
③大石沙也加(セレスポ)11.67

男子100m決勝(-0.5)
①小池祐貴(住友電工)10.19
②坂井隆一郎(大阪ガス)10.21
③東田旺洋(栃木スポ協)10.33

女子3000m障害決勝
①K・ジョアン(九電工)9:33.42※外国人参考大会新
②小池彩加(大和田住宅仙台)10:09.68
③大宅 楓(大東建託パートナーズ)10:10.62

男子3000m障害決勝
①J・ディク(日立物流)8:25.94
②楠 康成(阿見AC)8:28.43
③荻野太成(旭化成)8:31.51

女子5000m競歩決勝
①岡田久美子(ビックカメラ)21:24.95
②藤井菜々子(エディオン)21:45.38
③河添香織(自衛隊体育学校)21:53.90

男子5000m競歩決勝
①高橋英輝(富士通)19:14.42
②近藤良亮(塩谷町役場)19:25.32
③髙橋和生(ADワークスグループ)19:40.99

女子4×100mリレー決勝
①東邦銀行(紫村、武石、青木、松本)45.49
②七十七銀行(齋藤、松本、森、佐々木)46.08
③長谷川体育施設(鈴木、宇都宮、剱持、山本)48.29

男子4×100mリレータイムレース総合結果
①富士通(高瀬、佐藤、橋元、北川)39.66
②ユティック(岩崎、村田、平野、倉部)39.73
③NTN(九鬼、諏訪、小林、梨本)39.92

男子10000mタイムレース総合結果
①R・キムニャン(日立物流)27:44.51
②B・コエチ(九電工)27:44.80
③K・C・カランジャ(NTN)27:45.23
⑦小山直城(HONDA)28:01.42※日本人選手最先着

フィールド種目
女子やり投決勝
①久世生宝(コンドーテック)57m44
②桑添友花(日本栄養給食協会)56m36
③西村莉子(三菱電機)55m51

女子砲丸投決勝
①尾山和華(今村病院)14m86
②山本 遥(大体大職員)13m94
③中田恵莉子(四国大職員)13m69

男子ハンマー投決勝
①保坂雄志郎(埼玉医科大学G)67m94
②柏村亮太(ヤマダホールディングス)67m64
③古旗崇裕(みかん山)67m13
女子棒高跳決勝
①諸田実咲(栃木スポ協)4m00
②那須眞由(籠谷)4m00
③竜田夏苗(ニッパツ)4m00
※順位は試技数の差による

女子走幅跳決勝
①秦澄美鈴(シバタ工業)6m46(-0.1)
②中野 瞳(和食山口)6m17(+0.4)
③山本 渚(長谷川体育施設)6m09(-0.5)

男子棒高跳決勝
①竹川倖生(マルモト)5m50
②石川拓磨(東京海上日動)5m50
③山本聖途(トヨタ自動車)5m30
※順位は試技数の差による

男子円盤投決勝
①湯上剛輝(トヨタ自動車)58m72
②堤 雄司(ALSOK群馬)57m46
③安藤 夢(みはる矯正歯科医院)55m15

男子走幅跳決勝
①小田大樹(ヤマダホールディングス)7m79(+0.1)
②山川夏輝(東武トップツアーズ)7m68(+0.4)
③城山正太郎(ゼンリン)7m64(+0.1)

大会最終日
トラック種目
女子400mH決勝
①梅原紗月(住友電工)57.74
②横田華恋(籠谷)58.18
③伊藤明子(セレスポ)58.74

男子400mH決勝
①豊田将樹(富士通)49.75
②岸本鷹幸(富士通)50.39
③松下祐樹(ミズノ)50.48

女子800m決勝
①卜部 蘭(積水化学)2:06.39
②内山成実(アイ・エス・シー)2:07.90
③陣内綾子(九電工)2:08.38

男子800mタイムレース総合結果
①田母神一喜(阿見AC)1:49.13
②瀬戸口大地(アースグロー)1:49.84
③林 貴裕(新潟アルビレックスRC)1:50.30

男子200m決勝(+2.9)
①小池祐貴(住友電工)20.55
②東田旺洋(栃木県スポーツ協会)20.76
③小澤 優太(ATC)20.89

女子200m決勝(-0.4)
①大石沙也加(セレスポ)23.76
②鶴田玲美(南九州ファミリーマート)23.86
③松本奈菜子(東邦銀行)23.88

女子100mH決勝(-0.5)
①青木益未(七十七銀行)13.34
②福部真子(日本建設工業)13.35
③清山ちさと(いちご)13.39

男子110mH決勝(+1.1)
①金井大旺(ミズノ)13.48※大会新
②石川周平(富士通)13.50※大会新
③藤井亮汰(三重県スポーツ協会)13.61

男子4×400mRタイムレース総合結果
①富士通(佐藤、橋元、高瀬、北川)3:11.98
②ATC(根岸、小澤、板鼻、椋下)3:12.32
③TGK(辻、水谷、稲垣、千種)3:13.76

女子5000mタイムレース総合結果
①J・ジュディ(資生堂)14:57.55
②M・レベッカ(ダイソー)14:57.90
③K・N・ムッソーニ(ユニバーサル)14:58.15
④萩谷 楓(エディオン)14:59.36※日本人選手最先着、日本歴代4位
⑦佐藤早也伽(積水化学)15:08.72※世界陸上オレゴン参加標準記録突破

男子5000mタイムレース総合結果
①J・ソゲット(HONDA)13:17.21
②青木涼真(HONDA)13:21.81※日本人選手大会新
③J・ディク(日立物流)13:22.00
⑤清水歓太(SUBARU)13:22.25※日本人選手大会新

フィールド種目
女子円盤投決勝
①辻川美乃利(内田洋行)53m26
②清水麻衣(アサイ)49m46
③川口紅音(ウィザス)48m08

女子三段跳決勝
①森本麻里子(内田建設)13m43(+2.5)
②坂本絵梨(日本室内)13m08(+1.3)
③中野 瞳(和食山口)12m97(+1.0)

女子ハンマー投げ決勝
①渡邊 茜(丸和運輸機関)64m12
②藤本咲良(コンドーテック)61m25
③勝山眸美(オリコ)60m16

女子走高跳決勝
①竹内 萌(栃木県スポーツ協会)1m73
②浅井さくら(伊勢学園教員)1m73
③青山夏実(ダイテックス)1m70
※順位は試技数差による

男子砲丸投決勝
①森下大地(ウィザス)17m81
②村上 輝(日本体育施設)17m78
③佐藤征平(新潟アルビレックスRC)17m57

男子三段跳決勝
①藤内誠也(日経大AC)15m95(+1.5)
②山下祐樹(クレスト)15m85(+0.9)
③中山昂平(渡辺パイプ)15m63(+1.9)

男子やり投決勝
①小椋健司(栃木県スポーツ協会)75m40
②ディーン元気(ミズノ)73m28
③石山 歩(ティラド)72m48

男子走高跳
①真野友博(九電工)2m22
②長谷川直人(新潟アルビレックスRC)2m19
③佐藤 凌(タカトミクラブ)2m19
※順位は試技数の差による

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