学生三大駅伝開幕戦!三冠を目指す箱根王者駒大、大砲・ヴィンセントを擁する東国大が挑む!第33回出雲全日本大学選抜駅伝競走のみどころ

いよいよ2021年ロードシーズンの到来だ。
学生三大駅伝の口開けとなる第33回出雲全日本大学選抜駅伝競走が10月10日、出雲大社正面鳥居前をスタートし、出雲ドーム前をゴールとする6区間45.1㎞のコースで開催される。
ひとくちに学生三大駅伝と括られて語られる出雲駅伝では有るが、箱根駅伝の片道や、全日本大学駅伝の総距離の半分に満たず、最長でも区間10.2㎞のスピード駅伝のため、序盤に出遅れてしまうと立て直す事が厳しいという特徴がある。
各大学共に夏場はロードシーズンに向けての体力作りやチーム力の底上げの為に、集団走での走り込みなど距離を踏むトレーニングが中心となるが、その成果が試される最初の舞台でもある。最初であるがゆえに各校の出方を含めて手探りの部分も多く、今後に勢いを付ける為にも優勝を果たしたいが、6人のうち1人は新戦力も試したい、今後もレースが続くため主力選手に大きな負担がかかることも出来れば避けたいと、監督、コーチ陣にとっても区間配置など戦略的にも頭を悩ませる事となる、位置付けの難しい大会とも言えるだろう。
加えて、今大会には2年前に1区を走り、2位以下に1分以上の差を付けたL・グレ(札幌国際大4年)、今年の箱根で2区を1時間5分49秒と桁外れの区間新をマークしたY・ヴィンセント(東京国際大3年)とレース展開を左右する留学生の存在が有り、札幌国際大はチーム内で突出した実力を誇るグレを前回同様1区に起用するのか、ロードでは爆発的な走りを見せる規格外の大砲ヴィンセントは最長区間のアンカーを務めるのか、ヴィンセントに繋がるまでに差はどのくらい必要なのか、対応する戦略やチームの総合力が試される事になりそうだ。

優勝候補筆頭は駒澤大学、三大駅伝完全制覇も期待される

関東学連の代表を中心に激戦が予想される今大会の優勝候補の筆頭は、年頭の箱根駅伝を制し、今シーズンは三大駅伝完全制覇も視野に入れる駒澤大学だ。
今年5月の日本選手権・10000mで27分台の好タイムをマークし、2、3位を占めた田澤廉(3年)鈴木芽吹(2年)の二人は学生という範疇に留まらず、日本長距離界でもトップクラスの実力の持ち主でもある。
この強力な二枚看板に加え、4月の日体大競技会の10000mで27分台が目前に迫る28分02秒52をマークし、関東インカレ二部10000mでも28分05秒76で3位表彰台に上るなどエース格の力を付けた唐沢拓海(2年)、先月の日本インカレ5000mで他校のエース級に怯む事無く2位に入りあっと言わせた篠原倖太朗(1年)の急成長組、山野力(3年)花尾恭輔(2年)の箱根好走組の存在も有り、層の厚さは群を抜く。
今や大エースと言っても過言ではない田澤は、トラックで遺憾なくその実力を示しているが、三大駅伝でも2度区間賞を獲得し、昨年の全日本でもゴールテープを切っており、余程のことが無い限りアンカーでの起用が濃厚。しかしこの田澤の力を以てしても、東京国際大・ヴィンセントの爆走は脅威といえ、出来ればそれまでに安全圏と言える1分、最低でも45秒差を保っておきたい。

規格外の大砲ヴィンセントを擁する東京国際大

東京国際大はそのヴィンセント頼みからの脱却が課題となっているが、3年の丹所健が7月のホクレンDC網走大会の10000mでB組ながら積極的なレース運びを見せて28分19秒17の自己ベストをマークするなど、今期は4度走った10000mでいずれも28分台と安定感が増し、また日本インカレの5000mでも3位に入る力走を見せており、日本人エースとしての自覚が芽生えてきている。
丹所に続く存在で、10000mで28分29秒36の自己ベストを持つ山谷昌也(3年)は春シーズンや夏のホクレンで記録が伸びず調子を落としていたが、9月の日体大記録会では5000mで自己ベストを出すまでにコンディションが上がってきた。
箱根経験者の宗像聖(3年)に加えて、佐藤榛紀、白井勇佑の期待の1年生コンビが上手く集団の流れに乗り、5区を終えて先頭からの差を1分程度に抑えてヴィンセント砲が炸裂、これが大志田監督が描く悲願の三大駅伝初優勝の青写真だろう。

3人の27分台ランナーが揃う早稲田大学

10000mの自己ベストが27分54秒06の中谷雄飛(4年)27分55秒59の太田直希(4年)、27分59秒74の井川龍人(3年)と、学生トップクラスの27分台ランナーを3枚揃える早稲田大も有力候補。
この3選手に加え、関東インカレ5000mで3位に入りようやく真価を発揮しだした千明龍之佑(4年)、ホクレンDC千歳大会の5000mで13分52秒46のPBで組1着になるなど、得意の3000m障害以外でも力のあるところを見せている菖蒲敦司(2年)、当時高校歴代2位となる13分36秒57の5000m自己ベストを引提げて鳴り物入りで入学したスーパールーキー伊藤大志もエントリーに入り、優勝を争うだけの陣容は整ったかに映る。ただ近年のロードシーズンでは全日本から箱根とレースを重ねて調子上げて行く傾向も見られ、どれだけ出雲に照準を合わせ切る事が出来ているか、また、日本インカレにエントリーをしながら欠場となったエースの一人、中谷のコンディションが戻っているかという不安要素も抱えている。

オリンピアンの三浦だけじゃない、層の厚さが光る順天堂大学

東京五輪3000m障害予選で8分09秒92 と日本人選手初の8分10秒切りを果たし、決勝でも7位入賞と奮迅の活躍を見せた三浦龍司(2年)を擁する順天堂大学。その三浦は3000m障害だけでなく、5000mのPBも13分26秒78と地の走力も高い。五輪でも見せたラストの切り替えの爆発力を生かせる1区か、最短区間で負担が少なく、スピードを生かしながらレースの流れを作る事が託される2区辺りに起用される可能性が高いが、五輪の疲労を抜きながら、どの程度ロード対応への準備を進めて来られたかが、好走の鍵となりそうだ。
とは言うものの今年の順大は、4月の日体大記録会で10000m28分06秒26をマークした伊豫田達弥(3年)を筆頭に、箱根2区を任され、28分19秒01のPBを持つ野村優作(3年)、箱根4区で5位と好走を見せた石井一希(2年)らエントリー10選手中10000m28分台が7名と、三浦に頼らずとも勝負が出来るのでは、と思わせるほどに戦力が充実している。序盤から流れに乗って主導権を握りたい。

前回覇者の國學院大学

昨年の大会がコロナ禍で中止となり、「 ディフェンディングチャンピオン」としての出場となる一昨年の覇者、國學院大も万全のエントリー。優勝時の大黒柱だった浦野雄平(現トヨタ自動車)、土方秀和(現HONDA)のような爆発力には欠けるが、1区、2区を務めて流れを作り、優勝メンバーとなった藤木宏太(4年)、中西大翔(3年)の二人は経験を積み、10000mでは藤木が28分10秒30、中西大が28分17秒84と、他校のエースと見劣りのしない持ちタイムが有り、箱根6区4位島崎慎愛が28分27秒98、箱根10区3位木付琳が28分27秒59と、箱根復路で一桁順位だった4年生二人も28分中盤のスピードを持つ。
箱根8区を9位で纏めた伊地知賢造(2年)も5月に28分56秒08と29分切りを果たし、更には7月のホクレンDC網走大会で、1年の平林清澄が28分38秒26をマークする急成長でエース候補に名乗りを上げるなど好メンバーが揃い、古代紫の襷が再び出雲路を席巻する可能性も充分有りそうだ。

エース岸本大紀(3年)を欠く青山学院大学

昨シーズンは遂に三大駅伝優勝を果たせず2013年以来の無冠となり、巻き返しを図る青山学院大は、4月の日体大競技会の10000mで28分10秒50をマークすると、7月のホクレンDC士別大会5000mでは13分34秒88の好タイムでベテラン佐藤悠基(SGホールディングス)に先着を果たして成長をアピール、秋に入ると日本インカレ5000mで優勝を果たし、エースと呼ぶに値する強さを身に付けた近藤幸太郎(3年)の存在が頼もしいが、もう一人のエース、岸本大紀(3年)のエントリー漏れが些か痛い。
岸本は1年時の箱根2区好走後は三大駅伝を走れておらず、名将原監督にとってはこうした事態も想定の範囲内かと思われるが、優勝争いに加わる為には、今年の箱根で1年生ながら2区を任された佐藤一世(2年)、三大駅伝の経験が豊富な主将、飯田貴之(4年)らの奮起が必要だ。

東洋大、東海大といった三大駅伝優勝争いの常連校も青学と同様にエース格を欠いた状況を抱え、厳しい闘いを強いられそうだ

東洋大は箱根5区で区間賞の経験も有る宮下隼人(4年)、今年の箱根で2区を任され好走して流れを作った松山和希(2年)の主力中の主力が二人もエントリーから外れ、大幅な戦力低下が否めない。
格上の実業団選手の胸を借り、7月のホクレンDCシリーズを転戦した前田義弘、及川瑠音(共に3年)のひと夏を越えての成長や、先日、洛南高校の佐藤圭汰に更新をされてしまったが、13分34秒74の高校記録を持って入学し、これが三大駅伝デビュー戦となるスーパールーキー石田洸介の活躍で上位進出がなるかどうかといったところ。

東海大は、10000m28分03秒37、5000m13分37秒50と学生トップレベルのPBを誇る市村朋樹(4年)が健在だが、ロードではこれまでのところ安定感を欠く結果がやや多く、昨年の全日本4区、今年の箱根3区と連続で区間賞を獲得し、ロードに強く、10000mでも28分05秒91の自己記録があるスピードランナー石原翔太郎(2年)不在の穴は大きいように思われる。
近年は鬼塚翔太(NTT西日本)、館沢了次(DeNA)の黄金世代や、塩澤稀夕(富士通)、名取燎太(コニカミノルタ)ら特定の選手が長く主力を務めていた事も有り、現在のメンバーは駅伝経験が乏しいところも懸念材料だ。昨シーズン、3年時でやっと駅伝初出場を果たし、全日本、箱根で共に区間一桁に纏めた本間敬大(4年)、箱根6区5位の川上勇次(3年)らで石原不在の影響を最小限に食い止めたい。

2021年箱根駅伝準優勝の創価大学

今年の箱根駅伝で最終的には2位となったものの、10区途中まで首位をひた走り、旋風を巻き起こした創価大も、P・ムルワ(3年)という強力な留学生に、10000m28分34秒40のスピードを誇り、駅伝でも安定感のある島津雄大、箱根5区2位とロードに強い三上雄太と頼もしい4年生の存在も有り、今年も更なる躍進が期待されたが、日本人エース格の一人、葛西潤(3年)がエントリーから外れ、今年の出雲に関しては、陣容を整えきれなかったか。

個人では北海道大・高橋佑輔らの走りに注目

関東学連以外の各地区学連のチームが上位争いに加わるのは、グレを擁する札幌国際大でも総合力の観点から難しいと見るが、個人に目を向けると、6月の日本陸上選手権の1500mで4位に食い込んだ高橋佑輔(北海道大4年)、日本インカレの1500mで4位に入賞した山﨑優希(広島経済大3年)、日本インカレの10000mで創価大の嶋津、東洋の前田ら関東勢を抑えて日本人最先着の5位入賞を果たした関西学院大4年の上田颯太らが、駅伝でも区間上位争いに割って入る事が出来るかどうかが注目となりそうだ。

昨年はコロナウィルスの感染拡大の影響で大会が中止となっており、2年ぶりに学生ランナーが駆け抜ける秋の出雲路に、どのようなドラマが展開されるだろうか。出雲ドーム前にクライマックスが訪れるのは、14:15頃と見込まれている。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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