田澤廉に続け!今週の注目はたけびしスタジアム京都の長距離競技会二連戦!新たな世界陸上参加標準突破選手は現れるか!

首都圏では先月末に八王子ロングディスタンス、12月4日、5日には日体大長距離競技会と2週続けて長距離競技会が開催され、オレゴン世界陸上の参加標準記録の突破を目指す男子有力選手が出場、日体大の初日に行われた男子10000mでは、あと一つ順位が届かず惜しくもWAランキングでの東京五輪出場を逃していた駒澤大学の田澤廉が27分23秒44をマーク、27分25秒00の標準記録を突破し、5000m、10000mの男子トラック長距離2種目では世界陸上参加資格取得一番乗りを果たした。

年内の競技会が残り僅かとなる中、関西でも12月10日、11日とたけびしスタジアム京都に於いて、エディオンディスタンスチャレンジ、関西実業団ディスタンストライアルと連日に渡り、標準記録の突破にチャレンジできる舞台が用意された。
特に10日のエディオンDCには、男子5000m、女子は5000m、10000mの有力選手がエントリーしており、注目の大会となっている。新たな標準記録突破選手の誕生が期待されるこの二大会のみどころをお伝えする。

男子5000m

10日に開催されるエディオンDCの男子5000mには、先日の八王子ロングディスタンス10000mB組で27分42秒73の自己ベストをマークした松枝博輝、A組で27分45秒18をマークしてこちらも4年振りの自己ベスト更新となった塩尻和也、好調な富士通所属の2名がエントリー。

東京五輪5000m代表の松枝は、10000mでも27分台をマークし、距離を伸ばしても国内トップレベルで戦えるだけの走力を示す事が出来、精神的にも乗って来ているのではないだろうか。勝負強さと駆け引きの上手さで五輪出場を手にしたが今期のベストタイムは13分30秒21とこの選手にしてはまだ物足りない。5000mは惨敗を喫した五輪以来で、久々の「持ち場」でも八王子の勢いを持続できるかに注目したい

リオ五輪3000m障害代表の塩尻は本職の3000m障害で東京五輪を逃したが、前述の10000mの他、4月の金栗記念の5000mでも、トラックシーズン初戦に拘らず、13分22秒80の自己ベストであのY・ヴィンセント(東京国際大)を抑えて1着になるなど、むしろ地の走力は上がってきている。速いペースを維持しながら押していく能力が高く、先日の八王子LDではラスト1周でのスパート勝負にこそ屈したが、そこまでの動きの良さは際立っていたので、今シーズンは調子に波が有る点は気になるものの、この種目での標準突破があっても不思議ではない。

エントリー選手中最も速い持ちタイムがあるのは遠藤日向(住友電工)。
昨年のホクレンDCで13分18秒99と五輪参加標準まで5秒程に迫り、いよいよその才能が本格的に開花したかと期待を抱かせたが、その後に疲労骨折が判明、五輪選考会だった昨年の日本選手権は欠場となり、今年も故障の影響からシーズン当初は不振、6月の日本選手権にはようやく間に合わせたが、参加標準突破とはならず、五輪代表を逃している。
学法石川高時代から大器と目され、箱根駅伝強豪校からの誘いも多かったが、東京五輪のトラック長距離代表を目指すために全てを断り、アトランタ五輪代表渡辺康行監督率いる住友電工の門を叩いた。東京五輪代表を逃した悔しさはパリ五輪で晴らすしかない。オレゴン世界陸上参加標準突破が新たな目標への第一歩、渡辺監督の熱心な指導に応えたい。

また、今年7月のホクレンDCの1500mで3分35秒42をマークして日本記録を更新、世界陸上参加標準記録まで0秒42と迫っている河村一輝(トーエネック)が、5000mでどのような走りを見せてくれるのかにも注目してみたい。
昨年の日本選手権でレースを引っ張ったA・クルガト(中電工)がPMを担い、標準記録突破の舞台は整っている。

女子5000m

東京五輪1500m8位入賞で5000mの世界陸上標準記録を既に破っている田中希実のエントリーもあるが、指導する田中の父、健智氏は、15分04秒83をマークした先日の日体大記録会を「今期の締め括り」と話しており、ここは欠場の可能性が高い。しかしながら、この内容に本人が納得していないような事が有り、必要と考えれば今年のうちに修正のために出場する可能性もなくはないと思うのだが、どうだろう。

J・ジェプングディチがPMに配され、他にもM・シンシア(日立)、K・タビタジェリ(三井住友海上)らスピードの有るケニア人実業団選手が出場するこのレースで参加標準記録の突破を狙うのは木村友香(資生堂)。
2019年のドーハ世界陸上5000mの代表も、昨年は故障により大会出場もままならず、実力が有りながら全く五輪争いに絡めず、その間に若い田中や廣中璃梨佳(日本郵政G)らが大きく成長し、五輪代表の座を射止めた。新国立競技場で躍動した、田中、廣中の活躍をどのような思いで見ていただろう。
9月の全日本実業団選手権では15分15秒70と、標準突破まで5秒程に迫り、先月のクイーンズ駅伝では1区を務め、序盤から独走でレースを引っ張りながら、追いつかれた後のラストスパート勝負でも一歩も引かず、最後は敗れはしたが僅差の2位で襷を繋ぐなど、調子の良さが窺える。レベルの高い代表争いに加わるだけの力は戻ってきている。

女子10000m

東京五輪で7位入賞を果たした廣中の他、クイーンズ駅伝1区で木村とのラスト勝負に競り勝った岡本春美(ヤマダホールディングス)、同じクイーンズ駅伝の5区で10000m日本記録保持者、新谷仁美(積水化学)を1秒抑える区間新をマークした実業団2年目の五島莉乃(資生堂)、2019年に31分37秒88の好記録をマークしながらその後やや不振に陥るも、今年の9月に日本インカレを制して復調傾向の鈴木優花(大東大)が出場し、31分22秒00の標準記録突破を目指す。                                                   9月の全日本実業団陸上の5000mで14分59秒36をマークした、東京五輪5000m代表の萩谷楓(エディオン)のエントリーも有り、出場すれば初めてのトラック10000mのレースとなるが、クイーンズ駅伝1区での転倒もあり、その影響が懸念される。

関西実業団DT女子10000mは拓大・不破に注目

女子10000mは翌日に行われる関西実業団DTにも注目選手がエントリーしている。拓殖大学の1年生、不破聖衣来だ。
不破は、中学3年時に全国都道府県駅伝の3区区間賞を獲得、昨年のインターハイ代替大会となった全国高校競技会3000m6位、5000m自己記録15分37秒44の好タイムを引提げて拓大に進学すると、5月に関東インカレ5000m優勝、6月の学生個人選手権5000mこそ後に10000mの世界陸上参加標準を突破する小林成美(名城大)に敗れはしたが、U20日本選手権を15分26秒09で制し、U20世界選手権代表に選ばれた。コロナ禍のため派遣は見送られて幻の代表に終わったが、腐らずに以降も夏のホクレンDCで5000mの自己記録を15分20秒68まで伸ばし、9月の日本インカレ5000mでは小林にリベンジを果たす優勝で成長をアピール。
ロードシーズンに入り、迎えた10月の全日本大学女子駅伝ではアップダウンのある5区9.2㎞を28分00秒と、トラック、ロードの違いはあれど10000m換算で31分を切ろうかという凄まじいタイムの区間新、先月の東日本女子駅伝の最終区間10㎞でも31分29秒と31分台で駆け抜け、トラックではまだ経験のない距離への対応力も実証済み、現在、日本の女子長距離界に有って最も勢いが有り、右肩上がりの成長を見せている選手だ。
年末に富士山女子駅伝を控えているため、どの程度この記録会に力を割いているか掴みづらいところがあるが、出場となれば駅伝で見せる走りで明らかなように、ライバル不在でのハイペースの単独走となっても、しっかりとそれを維持できるだけの能力は有しているものと考えられる。初のトラック10000mの結果を楽しみに待ちたい。

関西実業団DTの女子10000mにはこの不破の他、佐藤成葉(資生堂)関谷夏希(大東大)、渡邊桃子(天満屋)のエントリーも有り、他に男子5000m、女子3000m、女子5000mが実施される。女子5000mには、今期飛躍的に力を付け、東京五輪女子3000m障害代表の座を掴み取った山中柚乃(愛媛銀行)が出場する。

冒頭に触れたように、首都圏の大会では田澤が男子10000mの参加標準記録突破を果たし、無観客開催ながらSNSではそのニュースで大いに沸いた。京都2連戦では、どのような記録が飛び出すか、選手達による、寒風をものともしない熱い走りに期待したい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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