第52回防府読売マラソンが、ソルトアリーナ防府（防府市体育館）を出発点とし、防府市内を巡り、キリンレモンスタジアムをゴールする42.195kmのコースで行われ、一般参加選手のD・ニャイロ（NTT西日本）が初のフルマラソンながら2時間9分34秒のサブテンで初優勝を飾った。最後の直線であわや逆転優勝かという執念のスパートを見せるも、同タイムで僅かに届かなかったプロランナー、神野大地（セルソース）が日本人選手最上位の2位となり、2023年に開催されるパリ五輪代表選考会、MGCの出場権を獲得した。4度の優勝を誇り、今年の大会が11度目の出場だったプロランナーの川内優輝（あいおいニッセイ同和損保）が2時間10分11秒で3位、一般参加で鹿児島県の日置市役所所属の飛松佑輔が2時間10分47秒で4位に入る健闘をみせた。
女子の部はプロランナーの岩出玲亜（千葉陸協）が2時間31分32秒、視覚障がいのある選手による男子IPC登録の部は高井俊治（D2C）が2時間29分39秒、女子IPC登録の部は、東京パラリンピック金メダリストの道下美里（三井住友海上）が2時間58分06秒で、それぞれ優勝を果たした。道下は自身の持つ世界記録の更新はならなかった。
「山の神」復調のきっかけもやはり箱根
競技場に真っ先に姿を現したニャイロとの詰まりそうで詰め切れない差が、ゴール前100mを過ぎてからの全身全霊の切り替えで一気に詰まり、並びかけようとしたところがゴールだった。フルマラソンでは珍しい、優勝者と同タイムでの2位。
神野大地は優勝こそ逃しはしたが、サブテン達成と2大会連続のMGC出場権獲得という結果を出し、周囲の期待に応えた。神野のフルマラソンでの活躍を待ち望んでいたファンにとっては、少し早めの嬉しいクリスマスプレゼントになっただろう。
レースは2週前の福岡国際マラソンを制したスズキのM・ギザエと、埼玉医科大学ACのT・ワンブアの2人のペースメーカーが1㎞3分04秒、5㎞15分20秒のスプリットをきっちりと刻み、中間点の通過は1時間4分46秒。日本人選手最上位となればMGCの出場権が獲得できるこのペースの先頭集団は17人。その後招待選手の福田穣（NNランニングチーム）、過去3度の優勝を誇るS・バトオチル（三重陸協、モンゴル）ら有力選手が次々と脱落し、ペースメーカの外れる30㎞地点で先頭集団は、ニャイロ、神野、川内ら7人となった。その後35㎞地点までにニャイロ、神野の二人に絞られてのマッチレースとなっていた。
今大会の結果により、他の選手に先んずる早い段階でMGC出場権を手にした事で、今後は課題であるトラックスピードを磨いたり、2時間7分台、6分台を狙って海外レースに挑んだりと、準備、強化のための選択肢が増える事が予想され、また心理的な重圧が軽減出来た事も、神野にとって非常に大きなアドバンテージだ。
東京五輪選考会だったMGCの後、アジアマラソン選手権でフルマラソンでの初優勝を果たした後、深刻な不振に陥っていた神野だが、11月、自身の原点とも言える箱根で行われた激坂最速王決定戦@箱根ターンパイク13.5km登りの部で優勝。そこには初心を取り戻して一からの出直しを図る強い決意があったのだろう。そして、このレースをMGCにまで繋げる事が出来た。
霧に包まれていたと思われたパリへと続く道を、視界にはっきりと捉えた神野大地の第2章は、青山学院大時代の第1章と同じように、箱根の坂から始まっていた。
文／芝 笑翔 (Emito SHIBA)
記事への感想お待ちしております！twitterもやっています。是非フォローおねがいします！（https://twitter.com/ATHLETE__news）
第52回防府読売マラソン大会
男子の部
①D・ニャイロ（NTT西日本）2:09:34
②神野大地（セルソース）2:09:34
③川内優輝（あいおいニッセイ同和損保）2:10:11
④飛松佑輔（日置市役所）2:10:47
⑤鈴木 忠（スズキ）2:12:12
⑥福田 穣（NNランニングチーム）2:12:26
⑦平田幸四郎（SGホールディングス）2:12:37
⑧大石 巧（スズキ）2:13:09
⑨S・バトオチル（三重陸協）2:14:03
⑩藤村行央（住友電工）2:15:25
10位以降の主な選手
⑫吉村大輝（旭化成）2:17:14、㉔白頭徹也（八千代工業）2:21:30、㉙國司寛人（旭化成）2:23:03、㊺石田亮（自衛隊体育学校）2:25:44
女子の部（3位まで）
①岩出玲亜（千葉陸協）2:31:32
②佐藤奈々（スターツ）2:33:42
③藤澤 舞（札幌エクセルAC）2:37:43
男子IPC登録の部優勝
高井俊治（D2C）2:29:39
女子IPC登録の部優勝
道下美里（三井住友海上）2:58:06