2年振りの大会は京都が制す!不破は4区区間新、杉森、米澤ら高校生の活躍が光った皇后杯第40回全国都道府県対抗女子駅伝競走大会

皇后杯第40回全国都道府県対抗女子駅伝競走大会が1月16日、たけびしスタジアム京都を発着点とする9区間42.195㎞のコースで行われ、地元京都が2時間15分05秒の大会歴代2番目の好タイムで2大会連続18回目の優勝を果たした。
区中学生区間(3㎞)で川西みち(永犬丸中)が区間新記録をマークする力走を見せた福岡が2時間15分25秒で2位に入り、昨年末の全国高校駅伝を制し都大路を沸かせた仙台育英高の選手を中心に若手主体のチームを編成した宮城が、2時間15分42秒の3位と続いた。
昨年12月に10000mで30分45秒21の日本歴代2位、オレゴン世界陸上参加標準記録突破の好タイムをマークし、一躍脚光を浴びる存在となった群馬の不破聖衣来(拓殖大)は、4区(4㎞)で東京五輪5000m、10000m代表の廣中璃梨佳が長崎商業時代の2018年にマークした12分32秒の区間記録を12分29秒に塗り替えたが、チームは総合17位に留まった。
昨年はコロナウィルスの感染拡大のため中止となり、2年振りの開催となった本大会も、年明け以降の急激な感染拡大による影響が心配されたが、一人の欠場者も出す事もなく47都道県全チームがスタートに揃い、ゴールテープを切った。

圧倒的勝利、とは少し違った。しかし、終わってみれば「今年も強かったな」という他チーム関係者の嘆息が聞こえるような駅伝巧者ぶりを発揮した、京都チームの見事なレース運びだった。
序盤の区間で主導権を握る事は出来ず、入れ替わりの激しかったトップからの差は常に40秒以内に保ちながらなかなかその差を詰められない我慢の区間が続いていたが、終盤の7区、先頭の兵庫から34秒差で襷を受けた細谷愛子(立命館宇治)の区間賞の快走で、兵庫に変わって先頭を奪った宮城との差を8秒にまで縮めて2位に浮上すると、8区、中学生区間で山田祐実(加茂川中)が宮城を捉えてここで初めて先頭にたち、2位に上がってきた福岡には8秒差で9区のアンカー、東京五輪代表安藤友香(ワコール)に襷が渡った。この8秒と言う、距離にして40mほどの差が勝負の明暗を分けた。
これが男子の駅伝であれば、襷を受けた瞬間から一気に突っ込んで並びかけて行くような「勝負に出る」ケースも有り得るのだが、女子の場合、10㎞という残りの距離を考えても、突っ込み過ぎるのは躊躇われる微妙な差だ。2位で襷を受けた福岡のアンカー木村友香(資生堂)も、おそらくは事前に監督から受けた指示の通りに序盤は落ち着いたペースで入り、後半勝負を選択した。この選択に非を求めるのは、トラック10000mにリザルトが無く、10㎞ロードも2018年以来の久々で、距離面で若干の不安を残す木村にとっては酷に過ぎるだろう。ただ、2秒後ろから追い付いてきた宮城の木村梨七(積水化学)、兵庫の太田琴菜(日本郵政グループ)と集団になった時に、共にペースアップを図りながら前の安藤を追う事が出来なかったのは誤算だったかもしれない。
ここは、まるで追ってくる選手の心理を見透かしたように、最初の1㎞を3分6秒、10㎞換算で31分ジャストという、飛ばし過ぎる事なく後続の追随も許さない絶妙の入りを見せた、安藤の経験からくる勝負勘と巧みなペース配分に軍配が挙がったと見るべきだろう。
3㎞地点では2位グループに15秒と差を拡げ、福岡の木村が5㎞付近で2位グループから抜け出し、追い上げを開始した時には、懸命に追っても体感的に差が縮まった感覚が得にくい状況になっており、この時点でほぼ勝負は決していた。

京都はゲームチェンジャーの役割を果たした細谷、トップに躍り出た山田、いぶし銀の巧みな走りを見せた安藤の後半3区の活躍は大きかったが、大きなブレーキ区間を作る事無く粘り切り、上位に踏み止まる事が出来た前半区間の選手を含めた総合力で18度目の優勝を捥ぎ取った。全選手が自身に与えられた役割をしっかりと把握し、走りで実現できるところに、伝統の強さを感じる。

2位の福岡は、2011年の第29回大会で3位になって以来の久々の表彰台で大健闘とも言えるが、5000mでオレゴン世界陸上参加標準を突破して勢いがあった木村を10㎞区間よりは適性が高いと思われる1区に配し、今回は4区を任されたが、長い距離に不安のない逸木和香菜(九電工)をアンカーに据えていれば或いは優勝も有ったのではと惜しまれるが、これは結果論。
3区の岡本彩希(曽根中)も区間賞と、8区の川西とともに中学生区間の1位を独占、また2区を走った筑紫女学園高の柳楽あずみも区間賞と、その頑張りが光った。

3位宮城は1区で実業団の有力選手が揃う中、飛び出しを見せた石川の五島莉乃(資生堂)、兵庫の田中希実(豊田自動織機TC)に続き、この二人を追う集団でのスパート勝負を制し3位に飛び込んだ杉森心音、4区で区間新をマークした不破から僅か5秒差の区間2位でチームをトップに押し上げた米澤菜々香ら、仙台育英勢が前評判の高さに違わぬ走りでその実力を見せつけた。こうした若い選手が中心となって、第13回大会以来の優勝を果たすのも、そう遠い未来の話ではないだろう。

個人で活躍が光ったのは1区で兵庫の田中を18秒突き放し、区間賞を奪った石川の五島だ。4㎞付近から田中を振り切ったペースアップは圧巻で、小気味よく刻むピッチを落とすことなく6㎞を押し切り、昨年12月にオレゴン世界陸上10000mの参加標準記録を突破する31分10秒02をマークした力が本物である事を実証した。
春のトラックシーズンに向けて、この時期はさほど追い込んだ練習を積んでいないとは言え、東京五輪1500m8位入賞の田中に先着した事は相当な自信に繋がると思われ、更なる飛躍を予感させる充実した内容のレースとなった。

大会前の時点では、9区アンカー区間を担う事になると思われた群馬の不破は、年末に行われた富士山駅伝後の疲労を考慮して4区に回り、期待されていた青森の福士加代子(ワコール)越えとなる9区区間記録更新は次回以降に持ち越しとなった。ただ廣中が持っていた4区の区間記録はあっさりと更新し、改めてそのポテンシャルの高さを存分に見せつけた。世界陸上10000mの代表を巡る廣中、五島らとの直接対決が益々楽しみとなってきた。

東京五輪代表組は、3000m障害代表の愛媛・山中柚乃(愛媛銀行)が1区6位とチームの主力として勢いを付ける役割をしっかりと果たした。長い距離にも意欲的に取り組みながら結果を出し始め、すっかりと頼もしくなってきた。

10000m7位入賞の廣中は、11月のクイーンズ駅伝以来のレースながら5人を抜く31分27秒の区間賞で長崎を5位まで押し上げた。 マラソン8位入賞の鹿児島・一山麻緒はアンカー区間で11位と本来の走りでは無かったが、9月の全日本実業団選手権、11月のクイーンズ駅伝から比べれば少しづつ状態は上向いてきているように思われる。1区で五島から18秒の遅れを取った1500m8位入賞の兵庫の田中を含めたこの3人は、追い込んだ練習を積めていないと思われるこの時期での結果でも有り、どのような課題をもってレースに臨み、この後にどう修正して今後のレースでの結果に繋げて行くのかが重要と思われるが、それでも区間賞を獲得した廣中は、流石という他ない。

1月30日の大阪ハーフでの引退を表明している福士は、青森のアンカーとして駅伝ラストランを迎え、福士の姿を認めた8区の中学生がにっこりとほほ笑むと、優しい笑顔で襷を受け取った。ときおり頬を拭う仕草を見せながら、沿道の声援に手を振って応え、最後の都大路を愛おしむように走り、最後は満面の福士スマイルで関係者の迎えるゴールに駆け込んだ。

アテネ大会以降、北京、ロンドン、リオデジャネイロと、4大会に渡りトラック、或いはマラソンで五輪代表となった福士から手渡された日本女子長距離の魂の襷は、田中、廣中、一山といった、福士の背中を追い続けてきた選手たちにしっかりと受け継がれた。そして不破を筆頭に、宮城の米澤、杉森に続き1区で4位に飛び込んだ大阪の水本佳菜(大阪薫英女学院高)、福岡の柳楽、5区、6区で区間賞の兵庫・道清愛紗と石松愛未加(ともに須磨学園高)、京都の細谷といった、新たに襷を受け継ぐ次世代の選手の萌芽を感じさせた、今年の全国女子駅伝だった。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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皇后盃第40回全国都道府県対抗女子駅伝競走大会
9区間42.195㎞
①京都 2:15:05
(筒井、井手、川上、三原、太田、村松、細谷、山田、安藤)
②福岡 2:15:25
(野田、柳楽、岡本、逸木、戸田、松本、中才、川西、木村)
③宮城 2:15:42
(杉森、清水、長岡、米澤、山中、壁谷、渡邉、伊藤、木村)
④兵庫 2:16:13
⑤長崎 2:17:08
⑥大阪 2:17:10
⑦愛知 2:17:32
⑧福島 2:17:58
※以上の8チームが入賞
⑨神奈川 2:18:05
⑩長野 2:18:21
⑪鹿児島 2:18:24
⑫千葉 2:19:09
⑬岡山 2:19:18
⑭静岡 2:19:23
⑮茨城 2:19:59
⑯埼玉 2:20:08
⑰群馬 2:20:14
⑱愛媛 2:20:25
⑲宮崎 2:20:30
⑳東京 2:20:32
㉑広島 2:20:35
㉒熊本 2:20:50
㉓北海道 2:21:17
㉔栃木 2:21:21
㉕徳島 2:21:25
㉖滋賀 2:21:33
㉗山口 2:22:03
㉘青森 2:22:10
㉙大分 2:22:14
㉚秋田 2:22:32
㉛佐賀 2:22:50
㉜石川 2:22:55
㉝三重 2:23:00
㉞奈良 2:23:24
㉟高知 2:23:46
㊱岩手 2:23:50
㊲岐阜 2:24:01
㊳富山 2:24:14
㊴和歌山 2:24:30
㊵福井 2:24:37
㊶山梨 2:24:43
㊷新潟 2:24:56
㊸山形 2:25:23
㊹島根 2:26:05
㊺香川 2:28:30
㊻鳥取 2:28:37
㊼沖縄 2:36:24

区間賞
1区(6㎞)五島莉乃(資生堂、石川)18:41
2区(4㎞)柳楽あずみ(筑紫女学園高、福岡)12:28
3区(3㎞)岡本彩希(曽根中、福岡)9:25
4区(4㎞)不破聖衣来(拓殖大、群馬)12:29※区間新
5区(4.1075㎞)道清愛紗(須磨学園高、兵庫)12:57
6区(4.0875km)石松愛未加(須磨学園高・兵庫)12:52
7区(4㎞)細谷愛子(立命館宇治高・京都)12:38
8区(3㎞)川西みち(永犬丸中・福岡)9:30※区間新
9区(10㎞)廣中璃梨佳(日本郵政G・長崎)31:27

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