福岡の雪辱を期す大六野、MGC5位の橋本、初マラソンの古賀、そして原晋監督の送り込む青山学院大勢に注目!2年振り開催の別府大分毎日マラソンプレビュー

第70回別府大分毎日マラソン大会が2月6日、大分市のうみたまご前をスタートし別府市へ向かい、別府市亀川漁港前を引き返して大分市街地を通り、三佐田交差点前を折り返し大分市営陸上競技場をゴールとする42.195㎞のコースで行われる。
昨年はコロナ禍のため延期となり、2年振りの開催となる。
東京五輪後に創設されたジャパンマラソンチャンピオンシップ(以下JMC)シリーズのグレード1(G1)大会に指定され、オレゴン世界陸上選考競技会、パリ五輪代表を争うMGCチャレンジの指定大会ともなっており、コロナ禍のため海外選手の招待はないものの、2時間7分53秒の世界陸上派遣設定記録突破を目指す国内有力選手や、有望な若手選手によるハイレベルなレースとなる事が期待される。

優勝争いの中心はエントリー選手中1番の自己ベスト、2時間7分12秒を保持する旭化成の大六野秀畝となるだろうか。
10000m27分46秒55のPBを持ち、2018年には日本選手権も制した屈指のスピードランナーでありながら、単独走を淡々と走れるロードの走りからマラソン向きとの評判が早くから上がっていたが、初マラソンと2度目のマラソンは足に豆が出来るなどアクシデントもあって苦戦。3度目のフルマラソンとなった昨年2月のびわ湖毎日マラソンでは1㎞2分58秒ペースの集団で33㎞まで追走し、脱落してからペースの落ち込みを最低限に留めて2時間7分12秒をマークし6位に入賞。これでいよいよマラソンでも本格化と思わせたが、優勝を狙って出場した昨年暮れの福岡国際では、20㎞辺りから集団後方に下がり苦しい走りとなり、その後間もなく集団から脱落、2時間13分45秒の18位に沈み、MGCの出場権も獲得できずに終わっている。
これが相当悔しかったのか、約60日の短い間隔ながら今大会にエントリーしてきた裏には、不本意な走りに終わった福岡の雪辱を果たすと共に、何としても世界陸上代表の座を掴み取りたいという確固たる意志が込められていると強く感じる。ニューイヤー駅伝はアンカーを担い区間4位となったが、大六野にしてはやや物足りない走りで、コンディションが上向いてきたか気になるところだ。

MGCを5位と好走し、東京五輪マラソンの代表補欠となったGMOインターネットグループの橋本崚は、勝負どころの見極めとレース勘の良さ、格上選手が相手でも怯まず勝負を仕掛ける事が出来る度胸の良さが光る選手だが、冬場のスピードレースの対応に課題がある。MGCの後、久々のマラソンとなった昨年のびわ湖では2時間22分46秒と、これまで安定感を見せていたフルマラソンで初めて大きく崩れてしまった。
自己ベストは2019年の別大で記録した2時間9分29秒、この時にMGC出場権を獲得しており、当時としては胸を張れるタイムだったが、現在はこの記録を上回る選手が続出し、相対的に記録の価値も下がっている。橋本としても、出遅れてしまったがレベルが上がった国内選手の記録水準に追い付いておきたいところだ。
また、青山学院大時代の同級生、神野大地(セルソース)が昨年暮れの防府読売マラソンで2時間9分34秒で2位に入って2大会連続のMGC出場権を獲得したことも大きな刺激となっているものと思われる。
30㎞以降も先頭争いに加わっていれば、持ち前の勝負根性を発揮できる場面もでてくるだろう。
出身は別府市の隣の由布市、マラソンコースのすぐ近くの大分西高校を卒業しており、地元の声援を力に変えられるか。

橋本の青山学院時代の1学年先輩、中国電力の藤川拓也も2019年のMGCを経験している実力者だ。東京五輪ファイナルチャレンジとして行われた2020年の東京マラソンでは順位は22位ながら2時間8分45秒をマークして8分台ランナーの仲間入りを果たし、更なる飛躍を期して臨んだ昨年のびわ湖では25km過ぎまで先頭集団に残っていたが30㎞以降に失速、2時間10分58秒と自己記録更新はならず、スタミナ面での課題を残した。
橋本同様、国内選手の記録ラッシュの波に飲み込まれる訳には行かず、2018年の大会で6位に入り、その後の躍進のきっかけとなった別大で存在感をアピールしたい。

小森コーポレーションの25歳、市山翼は、2度目のフルマラソンだった昨年のびわ湖で2時間7分41秒をマークする大躍進。25㎞付近で第1集団から遅れたが、その後は集団から零れた選手を拾いながら粘り強く走り抜いた。昨年のびわ湖の好走組で、このレースの記録を上回る結果を残している選手がまだ出ていない中、真価を問われるレースとなる。2レース続けて7分台で走る事が出来れば、4回連続で記録している高岡寿成(当時カネボウ)、2回連続の大迫傑(当時nike)、小椋祐介(ヤクルト)、菊地賢人(コニカミノルタ)に次ぐ5人目の記録となるが、達成なるか注目してみたい。

招待選手最年少の24歳、トヨタ自動車九州の藤曲寛人も昨年のびわ湖好走組の一人で、2時間8分30秒を記録している。その後は11月の日体大記録会10000mで27分50秒57をマークして27分台ランナーの仲間入りを果たし、スピード面の裏付けあってのマラソン好走である事を証明し、ニューイヤー駅伝ではエース区間の4区を任されて、井上大仁(三菱重工)と同タイムの3位に入るなど目下絶好調。まだまだ伸びしろもありそうで、今大会での期待度の高さではナンバーワンと言っても良い存在だ。

一般参加選手も有力選手が目白押しだが、少し異色なのが、旭化成のベテラン、鎧坂哲哉のエントリー。10000m27分29秒74の自己ベストが有り、昨年11月の八王子ロングディスタンスの10000mでも27分41秒78の好タイムを出してベテラン健在をアピール、オレゴン世界陸上は当然トラックで代表を狙うものと思われたが、やや唐突にも感じられる今回のフルマラソンへの挑戦は、路線変更の布告なのか体力強化の一環なのか、興味深いところだ。
2018年に1度メルボルンでフルマラソンを走り、2時間24分40秒というリザルトが残っているが国内のマラソンは初となり、そのレース運びが注目される。

ハーフマラソンで60分49秒の日本歴代8位の記録を持つ安川電機の25歳、古賀淳紫は待望の初マラソンだ。一昨年の丸亀ハーフは日本人選手トップに入り、昨年の実業団ハーフは日本人選手2位とハーフマラソンで抜群の強さを誇る。しかもこの2レースで古賀が降したHondaの木村慎、黒崎播磨の細谷恭平、今大会にも出場する大六野が直後のマラソンで2時間6分台、7分台をマークしており、弥が上にも期待が高まる。
両肩が前後に揺れるやや力みの入った走りが特徴で、そうした面ではスタミナ配分に気懸りな面も有るようにも思うが、流れにしっかりと乗る事ができれば、JR東日本の作田将希の持つ2時間7分42秒の初マラソン日本記録更新も夢ではない。

その他、初マラソン組では10000m27分56秒78、ハーフ60分55秒の自己ベストを持ち、上下動の少ない効率的な走りがマラソンに向きそうなトヨタ自動車の西川雄介、今年のニューイヤー駅伝の5区で区間賞を獲得し勢いに乗る旭化成の22歳小野知大、ベテラン勢では八王子ロングディスタンスの10000mで27分46秒26をマークするなど、トラックで存在感を見せている中電工所属、広島大学出身の相葉直紀の久々のフルマラソンにも注目だ。

忘れてはならないのが、今年の箱根駅伝を制した青山学院大の原晋監督が送り込む選手達で、中でもエース区間の2区を任された3年生の近藤幸太郎、箱根では4年間全て違う区間を任されながら2位が3度、3位が1度と安定感が光った飯田貴之の二人はマラソンの適性も有りそうで楽しみだ。
原監督がかつてマラソンに挑戦させた学生は、ロンドン五輪選考会だった2012年びわ湖に出場した出岐雄大が2時間10分02秒で9位、リオ五輪選考会の2016年東京で下田裕太(現GMOインターネットグループ)が2時間11分34秒で日本人選手2位、一色恭志(現GMOインターネットグループ)が2時間11分45秒で日本人選手3位、そして記憶にも新しい、一昨年の別大での吉田祐也(現GMOインターネットグループ)の2時間8分30秒で3位と好走する例も多く、近藤、飯田もこうした選手たちに続く可能性は高い。
吉田が上回る事が出来なかった、現中央大監督の藤原正和が持つ、2時間8分12秒の日本人学生記録の更新も充分考えられる。

最後にもう一人、気になる存在として、今回PMを任される事になったかつての日本記録保持者、Hondaの設楽悠太の名前を挙げておきたい。昨年の福岡国際マラソンでは15㎞手前で途中棄権、ニューイヤー駅伝も欠場しており、PMではあるが、実質の再起レースとなる。2016年別大、びわ湖でPMを担った経験を、翌年東京での初マラソンサブテン達成にしっかりと生かしていただけに、もう一度初心に立ち還ってきっちりとマラソンの流れを作る事で、復調への足掛かりとして欲しい。
大迫が競技の第一線から退いた現在、設楽が男子長距離界で果たさなければならない役割はまだまだ大きい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

記事への感想お待ちしております!twitterもやっています。是非フォローおねがいします!(https://twitter.com/ATHLETE__news

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close