男子は市田孝に日本人初の60分切りを期待、女子は新谷の調整振りに注目!第50回全日本実業団ハーフマラソンのみどころ

第50回全日本実業団ハーフマラソン大会が、2月13日、山口の維新みらいふスタジアムを発着点とする21.0975㎞のコースで開催される。2月中旬の開催とあって、男女ともこの後に開催される東京マラソン、名古屋ウィメンズなどのステップレースと位置付けられ、また男子では2012年の宮脇千博(トヨタ自動車)、女子では2019年の佐藤早也伽(積水化学)がこのレースをきっかけに飛躍を遂げており、各実業団の若手選手にとってはロードレースの登竜門とも言えるだろう。
今大会も今月27日開催される大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会や、東京マラソンにエントリーのある選手に加え、6日に開催の予定されていた香川丸亀国際ハーフマラソンが中止になった事を受け急遽エントリーした選手も多数いる。また今大会に限り、丸亀ハーフにエントリーの有った学生選手で今大会出場を希望する10名を日本学連推薦選手として受け入れており、実業団、学生トップクラスの選手による、ハイレベルなレースとなる事が予想される。

■ 男子は日本人選手初のハーフ1時間切りが見られるか

男子の優勝争いの筆頭は、昨年のこの大会で1時間00分19秒の日本歴代4位の好記録を叩き出した旭化成の市田孝。全般的にはほぼフラットなコースながら、だらだらとした登り下りも有り、また国内実業団に所属する選手のみで行われるため、海外から有力選手を招待する丸亀と比較すると記録の出にくい印象のあったこの大会で、60分台前半を記録しているのは市田孝ただ一人。
大阪・びわ湖統合大会、東京マラソンのいずれにもエントリーをしておらず、後々の負担を考慮にいれずこのレースに全力を注ぎこめる利点もある。
ニューイヤー駅伝ではこの選手には珍しく力を発揮できなかったが、ここからどのくらい持ち直しているかが気になるところ。
万全の状態であれば日本人選手初のハーフ1時間切りを狙うだけの実力は充分に有り、別大のPMとして爆走を見せた中央発條のジョセフとNTNのカマウの二人のカランジャや、愛三工業のF・キプラガットら、ケニア人選手が強敵となるが、2013年の丸山文裕(旭化成)以来となる日本人選手優勝という結果を携えて、潜在能力を高く評価されながら実力を発揮しきれていないフルマラソンでもMGCシリーズに殴り込みをかけて欲しい選手だ。

トヨタ自動車の太田智樹は昨年11月の八王子ロングディスタンスの10000mで27分33秒13と自己ベストを一気に20秒以上更新。ニューイヤー駅伝でも3区で区間2位と好調を持続させている。スピードに磨きがかかってきており、久々のハーフマラソンだが、結果が楽しみな一人。
そのほかトヨタ自動車の23歳、西山和弥もトラック10000mの記録を27分48秒26まで伸ばしてきており、27分台が目前となっている三菱重工の高卒2年目の林田洋翔と共に若手のホープとして、好レースを期待したい。

フルマラソンのステップレース組では、1時間00分丁度の日本記録を持つヤクルトの小椋祐介が、2020年の丸亀ハーフでこの記録を出したあとの東京マラソンで2時間7分23秒の当時の自己記録をマーク。昨年は故障もあったようで、今大会ではそこまでの記録は本人も意識はしていないと思われるが、ここまでの調整度合を測る上でどのようなレース振りを見せるのか注目したい。

Hondaの木村慎は2020年の大会の1時間00分54秒で5位となった直後の東京マラソンでの2時間7分20秒と、この大会をフルマラソンでの好走に結び付けた一人。以降は予定していたフルマラソンを回避した事も有り、久々のフルマラソンへ向けての仕上がりが気になるところ。

2020年の大会で1時間00分58秒の好記録で9位となり、昨年の大会は先日の別大で初マラソンながら2時間8分30秒の好タイムをマークした安川電機の古賀淳紫と激しい日本人2位争いを展開し、1秒及ばず1時間1分14秒の3位となった大阪ガスの野中優志は、大阪・びわ湖統合大会か、東京マラソンのいずれかでの初マラソンを予定している。
昨年2秒先着した細谷恭平(黒崎播磨)が直後のびわ湖で2時間6分35秒を記録したように、フルマラソンへの弾みとする事ができるか。古賀や細谷への対抗心も当然持っているだろう。

予定していた丸亀ハーフが中止となり、「救済措置」が取られるかたちとなった学生陣は、箱根2区で東京五輪3000m障害7位入賞の三浦龍司(順天堂大)を振り切る力走を見せた日体大のエース藤本珠輝や、箱根3区で区間3位と好走を見せた順天堂大の伊豫田達弥ら10名が推薦された。ハイペースが予想されるレースの流れに上手く乗り、1時間01分台の記録を目指してもらいたい。

また、東京五輪マラソン代表のトヨタ自動車、服部勇馬もエントリー。直後のフルマラソンにエントリーは無く、どのタイミングでMGCシリーズに参戦してくるか定かではないが、ニューイヤー駅伝では5区で14位と服部らしからぬ結果に終わっており、状態が上向いて来ているかチェックをしておきたい。

女子は新谷仁美の仕上がりに注目

女子の注目は何と言っても、ハーフマラソン1時間06分38秒の日本記録保持者で、東京五輪10000m代表の積水化学の新谷仁美。東京マラソンの招待選手となっており、おそらくフルマラソンでの日本記録を狙うための最終調整としての出場と思われ、仕上がり具合とともに、どこまで強度を入れた走りをするのかも興味深いところ。後の疲労を考慮して軽めの調整となるのか、実戦さながらにフルマラソン日本記録の中間点通過の目安となる1時間9分30秒くらいで走ってしまうのか、その選択に注目だ。

東京五輪3000m障害代表、愛媛銀行の山中柚乃や、昨年暮れにオレゴン世界陸上の5000m、の参加標準記録を突破した木村友香、10000mの参加標準記録を突破した五島莉乃の資生堂の二人は、トラックシーズンに向けての冬場の体力強化の一環としての意味合いが強いと思われるが、将来的な路線変更への含みも考えられ、その内容、結果を注意して見ておきたい。

突き抜けて欲しい若手選手が、2020年12月の山陽女子ロードハーフマラソンで1時間10分21秒の4位に入った第一生命グループの原田紋里と、1時間10分25秒で5位に入ったデンソーの小笠原朱里。このレースの後、更なる成長が期待されていたが、昨年はトラック、ロードともに存在感を示すには至らなかった。1時間9分台を目標に新谷の胸を借り、飛躍のきっかけを掴んでもらいたい。

先月末の大阪国際女子マラソン、先日の別大と、男女とも6名ずつの選手がMGCの出場権を獲得し、長距離界は引き続き活気付いている。今回の実業団ハーフも昨年、一昨年同様の、後のマラソン好記録ラッシュを予感させるレースとなるか、スタートを楽しみに待ちたい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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