統合大会として初の開催!設楽悠太、川内優輝、村山謙太らが集結!初マラソンの野中優志も大注目!第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会のみどころ

2019年の第9回大会以降コロナ禍に有って延期を余儀なくされていた大阪マラソンが、昨年の大会を以て長きに渡る大津開催の幕を閉じたびわ湖毎日マラソンと統合する形で時期を秋からずらし2月27日開催される。大阪府庁前をスタートし、大阪城公園をゴールとする42,195㎞のコースで行われる。
国内では東京マラソンと並ぶ大規模な市民マラソンである同大会だが、コロナウィルスの感染拡大第6波のあおりを受け、海外からの選手招待は行われず、また、エリート選手のみの出場と希望を縮小して実施される。
昨年の福岡国際から始まったパリ五輪マラソン代表を決定するMGCへの出場権が得られるMGCチャレンジの指定大会、7月に開催されるオレゴン世界陸上代表の選考競技会でもあり、新たなスタートとなる大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会の門出にふさわく、代表を狙う男子の国内有力選手が数多くエントリーに名を連ねた。

復活なるか、設楽悠太

招待選手中1番の実績を誇るのは設楽悠太(Honda)。
2018年の東京マラソンで設楽が止まっていた日本男子マラソンの記録の歩みを16年ぶりに前に進めて以降、それまでの停滞が嘘のように記録が更新され、今やサブテンではなく、8分台が一流ランナーの水準に変わりつつあるなど国内選手の競技レベルも一気に向上、言わばその口火を切り、勢いを付けた立役者が設楽だった。
その設楽も2019年のMGCで東京五輪代表を逃して以降はやや精彩を欠いており、2020年の東京マラソン以来久々のフルマラソンだった昨年12月の福岡国際マラソンでは、15㎞を過ぎた辺りから苦しい走りとなり、一度は集団から遅れながら追いついたものの20㎞地点でキャリア初の途中棄権、ニューイヤー駅伝も欠場と多くの長距離ファンが気を揉む状況が続いた中、あっと驚かせたのが2月6日の別大マラソンでのPM起用の発表だった。
この依頼を受けた真意は定かではないが、レースでインパクトを残せていない現状への危機意識や、勝負レースに向けてのプロセスの見直し、2017年東京マラソンでの初マラソンの前に、2016年のびわ湖など2度ほどPMを務めていた事も有り、初心に立ち還る意味合いもあったかもしれない。いずれにせよ、別大では前半に折り返しが有り風向きが変わる難しいコースのうえ、強風に悩まされながらも25㎞まで落ち着いたレースメークを見せ、MGC出場権獲得者6名に上った好結果を後押しし、久々に設楽らしさをアピールした。PMとはいえこの走りに本人が手応えを得て気を良くしていれば、実戦を重ねて乗ってくるタイプだけに、本大会での復活への期待も膨らんでくる。

昨年のびわ湖の2時間7分台の再現を狙う川内優輝

この大会に向け調子の良さが窺えるのは、プロランナーの川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)。2月13日に山口で行われた全日本実業団ハーフで1時間02分13秒で2012年の丸亀ハーフ以来となる自己記録更新。同じローテーションで挑んだ昨年は実業団ハーフ1時間03分21秒からびわ湖で2時間07分27秒の自己ベストだっただけに、今大会でも昨年の再現以上の結果を残せるだけの仕上がりにあると見て良いだろう。
ただ、2012年に丸亀でハーフの自己ベストを出した際は、その後ロンドン五輪代表を目指し東京マラソンに挑んだが、2時間12分51秒に終わっているのは少し気になるところ。
とはいえ、コロナ禍も有り、プロランナーになる以前に毎週のようにロードレースに出場して地力を蓄えて来た「川内ルーティン」が思うに任せなくなったなか、国内マラソンのスピード化への対応をしっかりと図ってきた冷めやらぬ競技への情熱には頭が下がる。今大会もファンを沸かせる走りをしてくれるだろう。

川内同様、びわ湖で7分台を記録した村本一樹、青木優

川内同様に、昨年のびわ湖で好走しているのが村本一樹(住友電工)、青木優(カネボウ)、山下一貴(三菱重工)、土井大輔(黒崎播磨)の4人。村本、青木は7分台、山下と土井は共に初マラソンながら8分台前半の記録を残している。この4人の中で2時間7分40秒を記録した青木はすでに昨年の福岡国際マラソンに挑み、1㎞2分58秒設定の第1集団のハイペースに挑んだが、中間点を過ぎて脱落、その後は大きく失速し2時間20分16秒と跳ね返されており、今大会はリベンジを期す正念場のレースとなる。

2時間7分36秒で11位だった村本は、今年のニューイヤー駅伝ではエース区間の4区を任されながら20位と好走とは言い難い結果に終わっていたが、1月末の大阪ハーフでは1時間1分46秒で8位と立て直してきており、順調というよりはむしろ上昇の気配を感じさせる中でスタートラインに立つことになりそうだ。

初マラソンで8分台をマークした若手、山下一貴、土井大輔は2走目のジンクスに挑む

山下、土井は共に2回目のマラソンとなり、今後への期待が高い選手。初マラソンで8分台、9分台の好記録を残した選手の中で立て続けに記録を伸ばした例は、

吉田祐也 2時間8分30秒(2020年別大)→2時間7分05秒(2020年福岡)

聞谷賢人 2時間9分07秒(2020年別大)→2時間7分26秒(2021年びわ湖)

設楽悠太 2時間9分27秒(2017年東京)→2時間9分03秒(2017年ベルリン)

五十嵐範暁 2時間9分38秒(1998年福岡)→2時間9分26秒(2000年福岡)

高岡寿成 2時間9分41秒(2001年福岡)→2時間6分16秒(2002年シカゴ)

土方英和 2時間9分50秒(2020年東京)→2時間6分25秒(2021年びわ湖)

の6例。初マラソンサブテンは先日の別大を含めて26人、このうち2度以上マラソンを走っているのは14名なので続けて記録を伸ばした例は半数に満たず、初マラソンから連続して成功を収めることが思いのほか簡単ではないとお判り頂けたと思うが、二人にはこの大会で多くの選手が陥る「2走目のジンクス」を跳ね除け、若手有望選手からパリ五輪代表有力選手へと更なる成長を示して欲しい。
昨年のびわ湖は山下が3秒先着、ニューイヤー駅伝は共に5区を走り同タイムの4位と好勝負を演じており、お互いを意識し合うライバルとして勝負の行方も勿論だが、張り合う事による相乗効果にも期待したい。

実力者一色恭志は2年振りのフルマラソン

2時間7分39秒の自己ベストを持つ一色恭志(GMOインターネットグループ)は、そのタイムを叩き出した2020年の東京以来、久々のフルマラソン。一度集団から遅れて単独走となっても走りを立て直し、順位を上げて行く粘り強い走りが出来るタイプだが、苦労して手に入れた東京五輪代表を争うMGCの出場権を故障の為フイにしてしまったように、実業団に入って以降はケガに悩まされる事が多くなっているのがいかにも勿体ない。ニューイヤー駅伝は5区を任され、山下、土井とは7秒差の6位とまずまずの走りで、ここから更にコンディションの上積みが出来ているかが好走への鍵となりそうだ。

覚醒なるか、村山謙太

一般参加で最も注目を集めそうなのが村山謙太(旭化成)。
予定していた昨年12月の福岡国際を欠場、ニューイヤー駅伝でも走る姿を見せる事は無く心配されたが、先月末の大阪ハーフでは1時間1分45秒の6位に入り、今大会に向けてコンディションは上向いて来ている。
駒澤大学時代の2014年の丸亀国際ハーフで1時間00分50秒の当時の日本学生記録を出して以降、周囲の期待を集め続けているが、ことマラソンにおいてはその期待に十分に応えるだけの成績を収めているとは言い難い。
駅伝やハーフマラソンで好走しても、その感覚を上手くマラソンにトレース出来ずに苦戦している印象も有り、それが距離に対する苦手意識から来るものなのかは判らないが、ロードレースで強さを見せて来た割には、ペースの変化にナーバスになり、几帳面に対応しすぎて体力を消耗するパターンが多くみられ、集団の中でスムーズに流れに乗る事を苦手にしている感もある。意外に距離の異なるレースへの対応に器用さが欠けるところも大成を阻んでいるように思われ、その辺りの課題が、昨年のびわ湖でペースメーカーを経験した事により解消されているのかを見てみたい。
先に触れたハーフの学生記録を樹立した頃は、厚底シューズが長距離界を席捲する以前のもので、フルマラソンでもきっかけとコツさえ掴めれば、6分台、5分台をいつ出しても驚かないのだが、ここ大阪での覚醒を期待している。

浦野雄平、角出龍哉、照井明人ら好メンバーの初マラソン組

別大では優勝した西山雄介(トヨタ自動車)の2時間7分47秒を始め、4位の古賀淳紫(安川電機)、6位の中西亮貴(トーエネック)らが8分台でMGC出場権を獲得し、MGC出場圏内には届かなかったものの赤崎暁(九電工)、山口武(西鉄)が9分台をマークするなど初マラソン組がレース上位を席捲した。今大会でも学生時代は箱根駅伝で國學院大の山登りを担ってその名を轟かせた浦野雄平(富士通)、設楽とは東洋大時代の同期ながら箱根の経験はなく、マツダ入社後にじわじわと力を付け、ハーフでは1時間00分56秒と61分を切るまでにスピードを身に付けた延藤潤、延藤同様に、明治大時代に箱根の経験はないものの、大阪ハーフでは1時間1分46秒で村山とは1秒差に迫り、招待選手の村本には同タイムながら先着している愛知製鋼の成長株、角出龍哉、ニューイヤー駅伝5区では土井、山下を抑える区間3位の好走でチーム史上最高順位の2位フィニッシュに貢献、別大のペースメーカとしても第1集団を引き離してしまう大爆走で話題を攫った照井明人(SUBARU)、10000m27分54秒06を持つ早稲田大のエース、中谷雄飛ら、別大組にも劣らない好メンバーが揃うが、取り分け注目したいのは野中優志(大阪ガス)だ。

期待の大きいスピードランナー、野中優志

2020年の実業団ハーフで60分58秒と好走して頭角を現すと、昨年の実業団ハーフでも古賀と好勝負を繰り広げて1秒敗れるも1時間1分13秒で日本人選手3位に入り、2週間後のびわ湖毎日マラソンでは1㎞3分設定の第2集団のPMを担い、25㎞通過を1時間14分57秒と完璧なまでに努め上げ、年末にはトラックの10000mでも27分58秒38と28分切りを果たしている。直近でも実業団ハーフで60分48秒と自己記録を更新し、マラソン未経験の選手では最も勢いを感じさせるランナーだ。昨年のびわ湖で2時間6分35秒をマークした細谷恭平(黒崎播磨)はステップレースとなった実業団ハーフで1時間1分16秒で日本人5位になっており、この好走パターンを踏襲する点、しかもこのレースで細谷に2秒先着している事もあり、野中の初マラソンに期待が高まっているのはむしろ必然と言えるだろう。
これまでに2時間8分台を記録した日本人選手は、先日の別大の中西亮貴までで98人、記念すべき100人目は大阪で、ここに名前を挙げた初マラソンの選手の中から生まれる事もあるかもしれない。

上位争いに加わるか、山本憲二、岡本直己、口町亮

その他、2018年東京、2019年びわ湖とフルマラソン2走連続で8分台を記録し、MGCにも出場した実力者の山本憲二(マツダ)、ニューイヤー駅伝やひろしま駅伝で数々のごぼう抜き記録を打ち立てて駅伝職人の異名を取り、2020年の東京マラソンでは2時間8分37秒を叩き出し、当時の史上最年長、35歳でのマラソンサブテンを記録したベテラン岡本直己(中国電力)、ニューイヤー駅伝のアンカー区間で一時は優勝したHondaを猛然と追い上げて見せ場を作り、ステップレースの大阪ハーフでも、角出、村本と同タイムの1時間1分47秒で9位に入り勢いを持続している口町亮(SUBARU)も、上位争いに加わる力は充分にある。

世界陸上代表へ、2時間7分47秒が最低条件

また、女子の部は東京マラソンや名古屋ウィメンズが直後に控えている事も有り、男子に比べるとメンバーの小粒な感は否めないが、リオ五輪マラソン代表の伊藤舞(大塚製薬)やハーフマラソンで1時間9分21秒を持つ初マラソンの鷲見梓沙(ユニバーサルエンターテインメント)らが大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会としての新たなスタートに華を添える。

当日は最高気温14℃と平年よりはやや高めの予想となっているが、スタート時は10℃前後と昨年の7℃ほどではないにしろ、まずまずの気候コンディションで迎えることが出来そうだ。今大会と同じコースでレースが実施されたのは2019年の第9回大会からで、大会記録はエチオピアのアセファがマークした2時間7分47秒、奇しくも先日の別大で優勝した西山の記録と同タイムであり、世界陸上代表を掴むためにはまずこのタイムを上回る事が第一条件となる。PMの設定タイムはまだ発表になっていないが、おそらく1㎞3分から3分2秒の別大と同じ設定になるのではないかと思われる。P・M・ワンブイ、D・ニャイロ(ともにNTT西日本)の両ペースメーカーが外れる30㎞地点で15名から20名くらい選手が集団に残っていれば、自ずと記録の期待も膨らんでくる。
大阪マラソンのコース図を見るとコーナーが多く、曲がる度に集団が縦に伸び縮みする事が予想されるので、細かいペース変動が起こり、思った以上に体力を消耗してしまうかもしれない。いかに体力を温存するか、集団の中でストレスを溜めずに走るか、ポジション取りも重要なポイントになりそうだ。

早春のびわ湖畔から舞台を移し、大阪から始まる統合マラソン大会の新時代の幕開けを飾る選手たちの激走を期待したい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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