男子は松枝が貫録のV、女子は小林が大逆転の劇的勝利!第105回日本陸上競技選手権大会クロスカントリー競走

第105回日本陸上競技選手権大会クロスカントリー競走が2月26日、福岡・海の中道海浜公園で行われ、男子シニア10㎞では東京五輪5000m代表の松枝博輝(富士通)が28分46秒で、また女子シニア8㎞ではオレゴン世界陸上10000mの参加標準記録を突破している学生の小林成美(名城大)が26分34秒でそれぞれ初優勝を飾った。
男子は学生の葛西潤(創価大)が2位と健闘、3位には池田耀平(カネボウ)が入り、リオ五輪3000m障害代表の塩尻和也(富士通)が4位、松枝と同じく東京五輪5000m代表の坂東悠汰(富士通)が5位に続き、高校生のシニア挑戦が話題となっていた佐藤圭汰(洛南高校)は8位だった。
女子はラスト1周で小林と火花を散らす並走から一度は抜け出した猿見田裕香がゴール直前で逆転を許して2位、川口桃佳(豊田自動織機)が昨年の5位に続く好走で3位に入り、残り1周まで日本人トップグループを引っ張った東京五輪3000m障害代表の山中柚乃(愛媛銀行)が5位でゴールした。

男子優勝の松枝はこれまでにトラックレースで良く見せていた、後半まで体力を温存し、スパート勝負に持ち込むという得意の組み立てから一転し、2周目から先頭に出て周囲の反応を窺うなど、積極的に主導権を握りに行くレースを見せた。
3周目途中でコースを間違え、正規のコースから外れてしまうアクシデントもあったが、焦る事無く集団に戻り、走りに乱れを生じさせる事無くすぐさまリズムを立て直した。
4周目後半からじわじわとペースアップを図り集団を篩いにかけ、最後の1周の残り1㎞辺りで最後まで食い下がった創価大の葛西潤を引き離しそのまま押し切った。
海の中道名物の強い風が吹く中でのレースで28分46秒とタイムも良く、終始他の選手の様子を窺う余裕を見せながらのレース運びには、東京五輪までの松枝と異なり、ラストスプリント頼みからの脱却を模索しているように感じられた。2位に5秒というタイム差以上の強さがあった。

女子は優勝タイムこそ平凡だったが、残り1周を切ってからの小林と猿見田の攻防はスリリングで非常に見応えが有った。
先にペースアップを図ったのは小林で、それまでの3周で集団の先頭を引っ張ていた山中をビッグパワーヒルで振り落とし、粘りを見せていた川口も徐々に離れていったが、猿見田は小林の揺さぶりに一歩も引かず、むしろ自ら更にペースを上げにかかるが、小林は並ばれはしても猿見田を前に出すまいと気迫で抑え込んでいるように見えた。
最後の勝負所、三つのこぶのようなアップダウンが連なる日本クロカン名物のキャメルヒルズの登りで、二人の並走から猿見田と小林に1mほど間隔が出来始め、少しづつだが差が広がり、流石に猿見田がそのまま押し切るかと思われた。
しかしここからが小林の真骨頂で、最後の長い直線に向かうと必死の絞り出しで差を詰め始め、ゴール目前で猿見田を捉えて見事な逆転勝利を収めた。
猿見田か不破聖衣来(拓殖大)と相手こそ違うが、まるで昨年6月の学生個人選手権の再現のような小林の執念の激走であり、常識的にはロングスパートを掛け合う勝負の中で、思い切って一端足を溜めて最後にもう一段切り替えてラストスプリントに懸けるとは考え難く、これを敢えてやっていたのであれば、その勝負根性の凄まじさに驚くばかりだ。
昨年秋以降のロードシーズンの駅伝では、名城大が圧倒的に強く、小林に繋がるまでに勝負が大方決まっていたために安全運転の走りが多くなり、なかなか小林らしさを発揮するレースに恵まれなかった印象だったが、このレースを見る限り、春のトラックシーズンでは昨年の夏ごろのような活躍を見る事が出来そうだ。
世界陸上の10000m代表を巡っては、東京五輪7位入賞の廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)、世界陸上の参加標準記録を突破している五島莉乃(資生堂)、不破とライバルが多いが、小林はこの3人に決して劣らない強烈な個性を持っており、代表争いがますます過熱しそうでとても楽しみになってきた。

松枝、小林以外にも、男子2位の葛西、女子2位の猿見田は今日のレース内容から飛躍の足掛かりとなったように思われ、また世界陸上代表を狙う塩尻、山中らはここまでの順調な調整ぶりと仕上がりの良さが感じられ、代表争いが本格化するトラックシーズンでも、これまで以上の活躍が期待できそうだ。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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競技結果

第105回日本陸上競技選手権大会クロスカントリー競走
男子シニア10㎞
①松枝博輝(富士通)28:46
②葛西 潤(創価大学)28:51
③池田耀平(カネボウ)28:56
④塩尻和也(富士通)29:00
⑤坂東悠汰(富士通)29:06
⑥市田 孝(旭化成)29:09
⑦篠原倖太朗(駒澤大学)29:12
⑧佐藤圭汰(洛南高校)29:18
⑨梶⾕瑠哉(SUBARU)29:22
⑩⽥村友佑(黒崎播磨)29:29

以下、主な選手の結果
⑪宇津野篤(神奈川大学)29:30、⑫⼤塚祥平(九電工)29:31、⑬塩澤稀⼣(富士通)29:42、⑲川⽥裕也(SUBARU)29:54、㉕安原太陽(駒澤大学)30:04、㉙⽯⽥洸介(東洋大学)30:15、㊹潰滝⼤記(富士通)30:55

第105回日本陸上競技選手権大会クロスカントリー競走 シニア女子8㎞
①小林成美(名城大学)26:34
②猿見田裕香(ユニバーサルエンターテインメント)26:35
③川口桃佳(豊田自動織機)26:45
④出水田眞紀(第一生命)26:54
⑤山中柚乃(愛媛銀行)27:02
⑥倉岡奈々(鹿児島銀行)27:04
⑦山ノ内みなみ(鹿児島陸協)27:06
⑧北川星瑠(大阪芸術大学)27:08
⑨⼭本有真(名城大学)27:14
⑩⽯澤ゆかり(日立)27:21

以下、主な選手の結果
⑨⼭本有真(名城大学)27:14、⑩⽯澤ゆかり(日立)27:21、⑪木村梨七(積水化学)27:26、⑫兼友良夏(京セラ) 27:26、⑬⽴⼭莉緒(宮崎銀行)27:27、⑭⾦丸芽⽣(宮崎銀行)27:30、⑮⼩笠原朱⾥(デンソー)27:34、⑲⾕本七星(名城大学)、㉒吉川侑美(ユニクロ)27:41

第37回U20⽇本陸上競技選⼿権⼤会クロスカントリー競⾛
U20男子8㎞
①吉岡⼤翔(佐久⻑聖⾼校)23:36
②南坂柚汰(倉敷⾼校)23:39
③⻑嶋幸宝(西脇工業高校)23:46
④溜池⼀太(洛南高校)23:49
⑤荒巻朋熙(大牟田高校)23:53
⑥⻄村真周(自由ケ丘高校)23:54
⑦⼭崎 丞(中越高校)23:56
⑧⽟⽬ 陸(出水中央高校)24:02

第37回U20⽇本陸上競技選⼿権⼤会クロスカントリー競⾛
U20女子6㎞
①⽔本佳菜(⼤阪薫英⼥学院⾼校)19:55
②松本明莉(筑紫女学園高校)20:03
③並⽊美乃(常盤高校)20:08
④溝上加菜(ルーテル女学院高校)20:09
⑤中才茉⼦(筑紫女学園高校)20:10
⑥村岡美玖(長野東高校)20:15
⑦細⾕愛⼦(立命館宇治高校)20:18
⑧⻄澤茉鈴(大阪薫英女学院高校)20:31

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