オレゴン世界陸上代表へ安藤友香が挑む!ニューヒロイン候補は細田あい、鈴木優花の学生記録更新なるか!名古屋ウィメンズマラソン2022プレビュー

名古屋ウィメンズマラソンが3月13日、バンテリンドームナゴヤ前をスタートし、名古屋市街地を周り、バンテリンドーム内をゴールとする42.195㎞のコースで行われる。昨年はコロナ禍のため、国内の陸連登録エリート選手のみの大会となったが、今年は2年振りに海外招待からの選手招待も実現し、多くの市民ランナーも参加しての大会実施となる。国内エリート部門の選手にとっては7月に開催が予定されるオレゴン世界選手権の選考会、またパリ五輪マラソン代表選考会への出場権が懸るMGCシリーズの一戦でも有り、優勝争いのみならず、上位争いとそのゴールタイムが注目される。

人数こそ少ない海外招待選手だが、ケニアのR・チェプンゲティチ、イスラエルのL・C・サルピーターの二人は強力で、チェプンゲティチは2019年ドーハ世界陸上優勝の実績を誇り、サルピーターは先日行われた東京マラソンで世界記録保持者のB・コスゲイに更新されるまで、2時間17分45秒の大会記録保持者だった実力者だ。両者ともに2時間17分の自己ベストを持ち、途中棄権となった東京五輪マラソンの雪辱を期しての来日だ。

国内招待選手の注目はやはり東京五輪10000m代表の安藤友香(ワコール)だ。2時間21分36秒の自己ベストを持つ安藤が、マラソンでの五輪出場を逃した後に方針を転換し、短い準備期間だったにも拘らず東京五輪代表となったのは流石と言う他なく、またこの間にスピードに磨きを掛けてきた事は、先月の全日本実業団ハーフでの日本歴代7位となる1時間8分13秒の大幅自己ベスト更新という副産物を齎している。これだけのタイムでハーフを走れるのであれば、フルマラソンのハーフ通過が1時間10分台の速いペース設定であっても、精神的な負担が軽減できアドバンテージになるだろう。
五輪出場を境に競技者として一回り大きく成長し、実業団ハーフを見れば現在絶好調。
世界陸上代表を巡っては、松田瑞生(ダイハツ)が大阪国際女子を2時間20分52秒で制し、東京五輪女子マラソン8位入賞の一山麻緒(ワコール)が東京マラソンで2時間21分02秒で日本人トップ、マラソンでの世界陸上代表争いに参入してきた東京五輪10000m代表の新谷仁美(積水化学)も2時間21分17秒で東京マラソンの日本人選手2位になるなどかつてないハイレベルな争いとなっており、最低でも新谷のタイムを上回り日本人トップとなる事が求められるが、現在の安藤であればそれも充分可能で、20分台を狙えるチャンスが来ている。

2020年の大会でハーフ通過を1時間10分27秒というハイペースの集団に25㎞手前まで食い下がり、最後はやや疲れたものの、2時間26分34秒の8位と粘りを見せた細田あい(エディオン)からは、ハイペースを厭わない積極性や、自身の持ちタイムを大きく上回る選手たちに対しても怯む事のないハートの強さが窺え、大阪国際女子で2時間22分29秒で2位となった上杉真穂(スターツ)のような飛躍の予感が漂う。2020年当時所属していたダイハツから移籍、故障などもあったが、昨年の7月には10000mで31分39秒32の自己ベストをマーク、クィーンズ駅伝でもエース区間の5区を任され、五島莉乃(資生堂)、新谷、松田に続く4位と力を付けてきている。今大会も持ち前のスピードと積極性で安藤に食らい付き、2時間23分18秒の世界陸上派遣設定記録の突破を目指してもらいたい。

川内理江(大塚製薬)は大阪国際女子で2時間25分35秒の大幅自己ベストをマークしたものの日本人選手7番手となり、順位で規定に届かずMGC出場権獲得はならなかった。
約1か月という短い間隔でのフルマラソン再挑戦になるが、そこには勿論MGC出場権を確実にものにするという意図があり、二本のマラソンの平均で2時間28分00秒切りというワイルドカードでの出場権獲得を狙う選択肢もあるが、出場する以上は日本人選手の上位争いを演じ。2時間28分切りの6位以内できっちりとMGC進出を決めたいところだろう。

大塚製薬からは一般参加で福良郁美もエントリー、ハーフマラソンで1時間9分58秒のベストタイムを持つロードタイプで、前陸連長距離・マラソン強化ディレクターである河野匡監督からも「うちのエース」と信頼され、期待も寄せられている選手。
昨年の大会は初マラソンながら、松田瑞生向けに設定されたハイペースの第1集団からのレースを挑むも10㎞過ぎで遅れ始め、その後は時折突風が吹く中での単独走となりながら後半も何とか持ち堪えて2時間28分31秒と、次に繋がる内容の走りを見せた。
事前の実業団ハーフでは昨年ほどの勢いが見られなかったが、ここに送り込んだ河野氏としては、同僚の川内の好記録を発奮材料に、同じレースに挑ませる事で二人の間に相乗効果が生まれる事を期待しているのかもしれない。

一般参加選手では大学4年生、鈴木優花(大東文化大)の初マラソンも楽しみだ。
2019年、大学2年時に出場した実業団連合主催の長距離記録会10000mで学生歴代2位となる31分37秒88の好記録をマークし、東京五輪代表候補の声も上がっていたがその後に故障も有り、代表選考会となった2020年暮れの日本選手権長距離の10000mでは力を発揮しきれなかった。
昨年もシーズン序盤は調子が上がってこなかったが、秋の日本インカレ10000mを32分04秒58の大会新で制し完全復活。暮れに行われたエディオンディスタンスチャレンジの10000mでは年末に富士山駅伝が控える中、世界陸上参加標準記録突破を目指すペースに果敢に挑み4000m過ぎで集団から遅れたものの、より高いレベルを目指す気迫が戻ってきた事を窺わせた。
2019年のユニバーシアードのハーフマラソンで金メダルを獲得するなどロード適性が高く、前田彩里(ダイハツ)が佛教大学時代に2014年の大阪国際女子で記録した2時間26分46秒の日本学生記録の更新を睨んでのマラソン挑戦でもあるだろう。
卒業後は第一生命グループへ進む事が決まっており、慣れ親しんだ伝統のライトグリーンのユニフォームを着る最後のレースとなる。

そのほか、大阪国際女子で松下菜摘、谷本観月が23分台の好走を見せた天満屋が送り込む期待の新鋭渡邉桃子、ハーフで1時間9分12秒の好タイムを持つ竹山楓菜(ダイハツ)、日本郵政グループ期待のホープ、若干21歳の大西ひかりの初マラソン3人や、実績のある選手ではこの冬のシーズンで既に防府、大阪国際女子の2度マラソンに挑戦し、大阪国際女子ではマラソンへのアプローチを変えて調子が上向きになりつつあることが窺われたプロランナーの岩出玲亜(千葉陸協)のMGC出場権獲得なるかにも注目したい。

記録の行方を左右するペースメーカーについては、先に行われた東京マラソン同様に、チェプンゲティチ、サルピーターの海外勢向けの17分台ペースと、安藤を中心とする日本人選手向けのペースの二つの設定に分かれるものと予想するが、国内招待選手の中でも実力が抜きんでている安藤が、ペースメーカーが離れた後に単独走となってもそれまでのペースを維持できるかどうかが東京マラソンでの新谷の記録越えを果たす上でのポイントになるだろう。

昨年は折からの突風が選手の行く手を遮った尾張名古屋で、今年はどのようなドラマが展開されるのか、スタートを楽しみに待ちたい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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