第105回日本陸上競技選手権大会・室内競技 が3月12日から二日間、大阪城ホールで開催され、昨年の東京五輪代表を含む国内トップ選手たちが、7月に開催されるオレゴン世界陸上代表を目指すシーズンのスタートを切った。
大会初日、大阪城ホールの空気が一瞬凍り付いたように思われた。
男子60mH決勝、昨年の東京五輪で決勝進出まであと0秒03に迫り、この日も切れのある動きで予選を全体トップ通過の7秒54と今シーズンの好スタートを切ったかに見えた日本の110mHのエース泉谷駿介(順天堂大)が、決勝ではレース半ば辺りから大きく遅れ、歩くようにゴールしたのだ。
「ちょと脚を痛めたか」
3台目のハードルで脚をぶつけてバランスを崩したとの事で大事には至らなかったが、多くの陸上ファンが肝を冷やした事だろう。
レースは前半から鋭い飛び出しを見せた野本周成(愛媛陸協)が中盤から追ってきた村竹ラシッド(順天堂大)を抑え、7秒58で制した。3月18日からセルビア・ベオグラードで開催される2022世界室内陸上競技選手権の代表に選ばれており、活躍が期待される。東京五輪110mH代表の高山峻野も追い込んだが3着だった。

女子60mHはエントリーの有った100mH日本記録保持者で東京五輪代表の寺田明日香(ジャパンクリエイト)は欠場となったが、寺田と同タイムの日本記録保持者で東京五輪の舞台を経験した青木益未(七十七銀行)が8秒07で貫録の三連覇を果たした。2位には予選から素晴らしいハードリングを披露していた大学生の岡崎汀(甲南大)が飛込んだ。寺田、青木を追いかける選手たちの実力が拮抗している100mHにまた一人新星が飛び出し、世界選手権代表選考会となる6月の日本選手権決勝進出をめぐる争いは益々激しさを増してきそうだ。

大会二日目、トラック種目の男子60mには東京五輪100m代表の多田修平(住友電工)が登場、6秒70の組1着で無難に予選を通過したが、決勝は出場を回避。多田も野本と同じく世界室内代表に選ばれているが、出来ればもう一段階状態を上げて本番に臨みたいところだろう。決勝は坂井隆一郎(大阪ガス)が好スタートで飛び出すと追い縋る宮本大輔(東洋大)を抑え、6秒63で昨年のシレジア世界リレー4×100mリレー銅メダルメンバー対決を制した。

女子60mは4×100mリレーの1走として東京五輪の舞台を踏んだ青山華依(甲南大)が予選から7秒36の大会新記録をマークすると、決勝でもスタートの良い三浦愛華(園田学園女子)らを抑え7秒41で優勝を飾った。シーズン早々ながらきっちりとした仕上がりを見せており、また2着の三浦由奈(筑波大)、3着の三浦愛華も予選から動きの良さが感じられ、本格的な屋外トラックシーズン開幕後の活躍が楽しみだ。

二日間通して活躍が目立ったのは女子のフィールド種目の選手たち。大会初日には三段跳の森本麻里子(内田建設AC)が13m31の室内日本記録をマークして二連覇を達成すると、大会二日目の走幅跳では秦澄美玲(シバタ工業)がシーズン初戦から6m50オーバーとなる6m52㎝の大会新でこちらは三連覇。女子走高跳では高橋渚(日本大)1m80をクリア、日本人選手では2020年9月に行われた全日本実業団選手権で津田シェリアイ(築地銀だこAC)が1m85を跳んで以来、久々の1m80オーバーを見せてくれた。いずれも世界とは記録に開きがある種目だが、今大会での好スタートをきっかけに、屋外シーズンでも世界との差を縮める活躍を期待したい。

男子フィールドで魅せたのは、東京五輪棒高跳代表の山本聖途(トヨタ自動車)。5m60をクリアして優勝を決めると、世界陸上参加標準記録の5m80に挑み、惜しくもバーを落としたが、今後この高さをクリアする可能性と、世界陸上代表への意気込みの高さ見せてくれた。
文/ATHLETE News編集部
記事への感想お待ちしております!twitterもやっています。是非フォローおねがいします!(https://twitter.com/ATHLETE__news)
今大会の決勝8位までのリザルトは以下の通り
第105回日本陸上競技選手権大会 室内競技
大会初日
フィールド種目
女子三段跳決勝
①森本麻里子(内田建設AC)13m31※日本室内新記録、大会新記録
②髙島真織子(福岡大)13m14
③船田茜理(武庫川女子大)13m07
④浅野紗弥香(東海学園TC)12m85
⑤中村紗華(順天堂大)12m31
⑥内山咲良(東京大)12m17
⑦坂本絵梨(日本室内)11m94
⑧宮畑さくら(旭油業)11m08
女子棒高跳決勝
①諸田実咲(栃木県スポーツ協会)4m21※大会新記録
②那須眞由(籠谷)4m00
③古林愛理(園田学園女子大)4m00
④安宅伽織(REAC)4m00
⑤南部珠璃(中京大)3m90
⑥所 杏子(ラフィネ陸上部)3m80
⑥前川 淳(日本体育大)3m80
⑥田中伶奈(香川大)3m80
⑥竜田夏苗(ニッパツ)3m80
トラック種目
女子60mH決勝
①青木益未(七十七銀行)8.07
②岡崎 汀(甲南大)8.16
③田中佑美(富士通)8.22
④藤森菜那(ゼンリン)8.28
⑤玉置菜々子(国士館大)8.29
⑥鈴木美帆(長谷川体育施設)8.32
⑦中島ひとみ(長谷川体育施設)8.34
※福部真子(日本建設工業)DQ
男子60mH 決勝
①野本周成(愛媛陸協)7.58
②村竹ラシッド(順天堂大)7.63
③高山峻野(ゼンリン)7.67
④藤井亮汰(三重県スポーツ協会)7.68
⑤横地大雅(法政大)7.70
⑥河嶋亮太(旭油業)7.72
⑦石田トーマス東(勝浦ゴルフ倶楽部)7.74
⑧泉谷駿介(順天堂大)14.40
大会二日目
フィールド種目
①秦 澄美鈴(シバタ工業)6m52※大会新
②嶺村 優(オリコ)6m06
③竹内真弥(チームミズノアスレティック)6m00
④小玉葵水(東海大北海道)5m99
⑤中野 瞳(筑波分析センター)5m99
⑥北田莉亜(関西学院大)5m85
⑦松永理沙ジェニファー(関西学院大)5m85
⑧吉田花鈴(摂津高)5m83
女子走高跳決勝
①高橋 渚(日本大)1m80※大会新
②武山玲奈(環太平洋大)1m74
②伊藤 楓(東京高)1m74
④大玉華鈴(日本体育大)1m74
⑤青山夏実(ダイテックス.AT)1m71
⑥徳本鈴奈(友睦物流)1m71
⑥竹内 萌(栃木県スポーツ協会)1m71
⑧川邊美奈(北稜高)1m68
男子走幅跳決勝
①津波響樹(大塚製薬)7m67
②手平裕士(オークワ)7m65
③藤原駿也(レデイ薬局)7m56
④城山正太郎(ゼンリン)7m55
⑤小田大樹(ヤマダホールディングス)7m41
⑥永峰健斗(九州共立大)7m32
⑦松本彗佑(同志社大)7m24
⑧藤原陸登(環太平洋大)7m20
①真野友博(九電工)2m24(大会新)
②赤松諒一(アワーズ)2m21
③瀬古優斗(滋賀レイクスターズ)2m21
④長谷川直人(新潟アルビレックスRC)2m18
⑤藤田渓太郎(佐竹食品陸上部)2m05 同順位
⑤堀井遥樹(新潟医療福祉大)2m05 同順位
※渡辺 尚(東海大)記録なし
※出場7名
男子棒高跳決勝
①山本聖斗(トヨタ自動車)5m60
②江島雅紀(富士通)5m40
③大崎洋介(日本体育大)5m30
④重藤慶多(マックスバリュ西日本)5m20
⑤笹瀬弘樹(TOMO RUN)5m20
※土井翔太(三観陸協)、竹川倖生(丸元産業)、石川拓磨(東京海上日動CS)記録なし
男子三段跳決勝
①伊藤 陸(近畿大工業高専)16m20
②黒木雄太朗(東海AC)15m73
③安達雄斗(福岡大)15m70
④中山昂平(渡辺パイプ)15m61(セカンド15m56)
⑤許田悠貴(アスリートリンク)15m61(セカンド15m15)
⑥藤内誠也(日経大AC)14m97
⑦岩﨑孝史(鹿屋体育大)14m42
※出場7名
トラック種目
女子60m
①青山華依(甲南大)7.41
②三浦由奈(筑波大)7.44
③三浦愛華(園田学園女子大)7.44
④君嶋愛梨沙(土木管理総合)7.45
⑤鶴田玲美(南九州ファミリーマート)7.51
⑥細谷優美(阿見AC)7.51
⑦壹岐いちこ(ユティック)7.52
⑧景山咲穂(筑波大)7.63
男子60m
①坂井隆一郎(大阪ガス)6.63
②宮本大輔(東洋大)6.67
③竹田一平(スズキ)6.70
④矢橋寛明(ヴィアティン)6.74
⑤桑田成仁(法政大)6.75
⑥林 拓優(日本体育大)6.76
⑦佐々木啓輔(立命館大)6.76
※多田修平(住友電工)DNS