今年は異例の4月開催!ユニバーシティーゲームズ代表を賭ける若手選手たちの熱き戦い!2022日本学生陸上競技個人選手権大会のみどころ

2022日本学生陸上競技個人選手権大会が、神奈川・レモンガススタジアム平塚を会場に4月15日から三日間の日程で行われる。例年は各地区インカレが終了後の6月初頭に開催されるこの大会だが、今年は世界陸上オレゴン大会が7月に開かれるためその選考の場となる日本選手権の日程も例年より早まった事、また今年の6月30日からに開催がずれ込んだ、中国・成都で行われるワールドユニバーシティゲームズ2021(旧呼称ユニバーシアード)の代表選手選考を行うため、屋外シーズン開幕当初であるがこの時期に日程が前倒しされて行われる事となった。学生選手に加え、昨年の東京五輪女子4×100mリレー代表の兒玉芽生(ミズノ)斎藤愛美(大阪成蹊AC)らワールドユニバーシティーゲームズの資格年齢を満たす社会人1年目の選手らも出場、本大会のみどころをお伝えする。

今大会で最も注目を集めそうな種目は、学生の枠に収まらず、既にオレゴン世界陸上女子10000mの参加標準記録を突破している小林成美(名城大4年)と不破聖衣来(拓大2年)の対決が実現しそうな女子5000mだろう。
二人は昨年6月の学生個人選手権、9月の日本インカレと同種目で2度対戦し、学生個人では激しい鍔迫り合いの末先に仕掛けた不破を残り200mからの渾身のラストスプリントで捲った小林が制し、日本インカレでは不破がリベンジを果たしている。
昨年10月の全日本大学女子駅伝、12月の富士山女子駅伝とロードで驚異的な走りを見せ、その合間に出場した関西実業団DTの10000mでも日本歴代2位となる30分45秒21を記録するなど、成長著しい不破に勢いがあるが、小林も昨年の学生選手権や今年2月の日本クロカン選手権で見せたように、並ばれても抜かせない、離されても諦めない勝負への執念とラストの絞り出しが凄まじく、持ちタイム以上に強さを感じさせる。小林は10000mにもエントリーが有るが、不破と共に世界選手権10000mの最終選考会となる日本選手権10000mが5月7日に控えており、負担を考慮し、5000mのみに出場してくると思われる。
対決が実現すれば日本選手権の前哨戦ともなり、ピークはそちらに考えているとしても、これまでの経緯からもお互いに譲れない熱い名勝負がまた繰り広げられるのではないだろうか。
またこの実力者二人に対し、仙台育英高時代に高校駅伝や全国女子駅伝で鳴らした米澤奈々香(名城大1年)がどこまで絡んで行くことが出来るのかも楽しみだ。

男子の注目は800mにエントリーのある金子魅玖人(中央大3年)と、1500m、5000mにエントリーしている佐藤圭汰(駒澤大1年) 。
金子は昨年7月のホクレンDC千歳大会で日本歴代3位となる1分45秒85をマーク、今期も既に3月にシドニーでシーズン初戦ながら1分47秒29を記録、帰国後も中距離に特化して行われた大会THE MIDDLEを制するなど世界陸上参加標準記録の1分45秒20の突破を見据えての意欲的な姿勢が際立っている。学生大会ではしっかりと勝ち切ってユニバーシティーゲームズ代表を掴み取る事に留まらず、世界陸上代表の可能性を感じさせるタイムも求めたい。

佐藤は二種目のエントリーとなったが、洛南高校3年生だった昨年の日本選手権で8位に入賞すると、続く7月のホクレンDC千歳大会では積極果敢な走りで佐藤清治(当時佐久長聖高校)が記録した3分38秒49のU20日本記録を22年振りに更新する3分37秒18を叩き出してあっと言わせた1500mの方に、将来性と魅力をより感じる。
高校生活最後のレースとなった3月のTHE MIDDLE1500mでは、2月の日本クロカンでシニアの部に挑戦した疲れもあったのか、3分43秒77で3位に留まり、力を出し切れたとは言い難かった。
4月からは大八木監督の指導する駒澤大学の門を叩き、今大会は入学後の初レースながら早くもその真価が試される舞台となる。高校時代の実績からやや過熱気味の注目を集めているが、焦る事無く、世界レベルへ大きく育って欲しい選手だ。

男子フィールド種目では昨シーズン走幅跳で8m05、三段跳では日本歴代3位となる17m00を跳ぶなど二種目で高いレベルの記録をマークした高専ジャンパー、伊藤陸(近畿大工業高専専攻科2年)の更なる成長を期待したい。また走幅跳には競技会ごとのリザルトのムラが大きいが、立命館大学在籍時の昨年7月の兵庫県選手権で世界陸上参加標準記録の8m22まであと8㎝に迫る8m14を跳び、一発大ジャンプの魅力がある吉田弘道(神崎郡陸協)も出場、8mオーバーでの決着となるか、楽しみにしたい。

女子のフィールド種目では、やり投の上田百寧(ゼンリン)、武本紗栄(佐賀県スポーツ協会)の二人が、4月初めのWAランキングで共に世界陸上出場の目安となるターゲットナンバーで圏内に位置し、今後出場する一つ一つの大会が重要になって来ており、この大会でも注目だ。上田はシーズン当初ながら4月10日の西日本記録会で60m32を投げており好調さが感じられ、優勝ラインが60mを超えて来るのは必至、武本と共にレベルの高い投擲が見られるだろう。

東京五輪代表組では男子3000m障害で7位入賞を果たした三浦龍司(順天堂大3年)は出場を見送ったが、男子400mH代表の黒川和樹(法政大3年)は同種目にエントリー、やはり勝つばかりでなく、まだ果たせていない世界陸上参加標準記録の48秒90を突破しておきたいところだろう。黒川同様にユニバーシティーゲームズ、世界陸上の両方の代表を狙う日大出身の山川竜大(SEKI A.C)が好敵手となってきそうだ。

女子4×100mリレーの東京五輪代表では兒玉、齋藤の他1走を務めた青山華依(甲南大2年)、本番では出場機会のなかった石川優(青山学院2年)もエントリー。ユニバーシティーゲームズの個人種目代表ばかりでなく、既に出場資格を得ている世界陸上4×100mリレーの代表入りへ向けての大事なアピールの場でもある。11秒35のPBを持つ兒玉には日本のエースとしての更なる飛躍を、青山、齋藤、石川には兒玉に並び立つ事が出来るだけの存在感を示してもらいたい。五輪では補員に留まった壹岐あいこ(立命館大4年)や、スタートの良い三浦愛華(園田学園女子大3年)五輪代表組に割って入り上位争に加わる実力は充分に備わっている。

その他、男子110mHの村竹ラシッド(順天堂大3年)、WAランキングでターゲットナンバーの近辺に位置している女子3000m障害の吉村玲美(大東文化大4年)もユニバーシティゲームズだけでなく、世界陸上代表も視野に入れる選手として結果が注目され、男子100mにエントリーしているシレジア世界陸上4×100mリレー代表となった城西大出身の鈴木涼太(スズキ)、鈴木と共にシレジア世界リレーを走り、東京五輪では4×100mリレーの補員としてリレーメンバーに帯同した栁田大輝(東洋大1年)には世界陸上でのリレーメンバー争いに加わるような走り、出来れば10秒1台前半のタイムを期待したい。

青木益未(七十七銀行)の日本記録更新に沸き立つ女子100mHは学生でも今期すでに玉置菜々子(国士館大4年)が国士館大記録会で13秒26をマークするなど仕上がりが良く、昨年の日本インカレを13秒23で制した芝田愛花(環太平洋大)との争いが熾烈で、また、田中希実(豊田自動織機)が牽引し競技レベルの向上が感じられる女子1500mでも柳樂あずみ(名城大1年)が入学早々にも関わらず、金栗記念で4分15秒71の好タイムをマーク、昨年4分12秒72をマーク、エントリー選手中最も速いPBを持つ道下美槻(立教大3年)、3月のTHE MIDDLEの1500mでその道下に先着した樫原沙紀(筑波大3年)も加わり、4分10秒切りの可能性もある、目の離せないレースとなりそうだ。

小笠原諸島沖に季節外れの台風が接近しており、その影響による天候の悪化が懸念されるが、ユニバーシティーゲームズ代表を巡る熾烈な争いと共に世界陸上イヤーでも有り、シーズン早々の開催というコンディション面での難しさを乗り越え、陸上界全体に弾みを付けるような好記録を選手たちには期待したい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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