世界陸上へ向けて、有力選手の現状をチェック!GWに開催される日本GP前半戦、 第56回織田幹雄記念国際陸上競技大会と 第9回木南道孝記念陸上競技大会のみどころ

昨夏の東京五輪でのアスリート達の躍動がまだ記憶に新しいところだが、早くも2022年は次のパリ五輪へ向けての中間年。東京五輪と共に開催が1年ずれ込んだオレゴン世界陸上を7月に控えた屋外シーズンはまだ序盤戦だが、例年6月末に開催されていた代表最終選考会である日本陸上選手権が世界陸上の日程に合わせて6月初旬となり、代表を目指す選手たちにとっては短い期間の中、決して多くはない機会で代表の座を得るための戦いがすでに始まっている。そのような中で今年のGWも日本GPの日程が集中し、標準記録突破を目指す有力選手達のパフォーマンスに期待が高まる。
本稿ではGW中に行われる日本GP大会の前半日程、織田記念と木南記念の見どころを追っていくが、その前に世界陸上を目指す日本人選手の現在の状況を抑えて置きたい。

■ 現時点での世界陸上参加標準記録突破者とWAランキングでの出場が望める選手

既に代表が発表されている競歩、マラソン代表を除くトラック&フィールドの種目で世界陸上の参加標準記録を突破している選手は、日本GPシリーズである兵庫リレーカーニバル、出雲陸上が終了した4月24日の時点で以下の通り

オレゴン世界陸上参加資格 有資格選手

◇男子
10000m
田澤廉(駒澤大)27:23.44※2021/12/04日体大記録会
110mH
泉谷駿介(当時順大、現住友電工)13.28※2021/08/03東京五輪
3000m障害
三浦龍司(順天堂大)8:09.92※2021/07/30東京五輪
◇女子
1500m
田中希実(当時豊田自動織機TC、今期より豊田自動織機)3:59.19※2021/08/04東京五輪
5000m
廣中璃梨佳(JP日本郵政G)14:52.84※2021/08/02東京五輪
萩谷楓(エディオン)14:59.36※2021/09/26全日本実業団陸上
田中希実 14:59.93※2021/07/30東京五輪
木村友香(資生堂)15:02.48※2021/12/10エディオンDC
佐藤早也伽(積水化学)15:08.72※2021/09/26全日本実業団陸上
10000m
不破聖衣来(拓殖大)30.45.21※2021/12/11関西実業団DT
廣中璃梨佳 31:00.71※2021/08/07東京五輪
五島莉乃(資生堂)31:10.02※2021/12/10※エディオンDC
安藤友香(ワコール)31:18.18※2021/05/03日本選手権10000m
小林成美(名城大)31:22.34※2021/07/10ホクレンDC網走

この12名が既に参加標準記録を突破して参加資格を有しており、男女の10000mは5月に、それ以外の種目の選手は6月に行われる最終選考会となる日本選手権で3位以内に入れば代表に内定する。
他に男女の4×100mリレー、男子4×400mリレー、混合4×400mリレーが昨年のシレジア世界リレー選手権の結果により、オレゴン世界陸上への出場権を獲得している。

次に最新の4月19日付けWAランキングで各種目の出場の目安となるターゲットナンバー内にいる選手を挙げて行く。尚、ターゲットナンバー以内の選手がいない種目はWAランキング100位以内の最上位の選手を記している。

男子100m(TN=48)
33)桐生祥秀(日本生命)
35)山縣亮太(SEIKO)
41)多田修平(住友電工)
男子200m(56)
23)小池祐貴(住友電工)
52)飯塚翔太(ミズノ)
男子400m(48)
TN内なし
※63)佐藤拳太郎(富士通)
男子800m(48)
TN内なし
※88)川元奨(スズキ)
男子1500m(TN=45)
TN内なし
※74)河村一輝(トーエネック)
男子5000m(TN=42)
TN内なし
※53)遠藤日向(住友電工)
男子10000m(27)
10)伊藤達彦(Honda)
15)相澤晃(旭化成)
17)田澤廉(駒澤大)
男子110mH(40)
16)泉谷駿介(住友電工)
36)高山峻野(ゼンリン)
男子400mH(40)
21)安部孝駿(ヤマダHD)
22)黒川和樹(法政大)
31)山内大夢(東邦銀行)
男子3000m障害(40)
10)三浦龍司(順天堂大)
26)山口浩勢(愛三工業)
男子走高跳(32)
12)戸邉直人(JAL)
16)衛藤昂(ULTIMATE)
32)真野友博(九電工)
男子棒高跳(32)
32)山本聖途(トヨタ自動車)
男子走幅跳(32)
5)橋岡優輝(富士通)
男子三段跳(32)
TN内なし
※68)伊藤陸(近畿大工業高専)
男子砲丸投(32)
TN内、WAランキング100位以内共になし
男子円盤投(32)
TN内なし
※79)湯上剛輝(トヨタ自動車)
男子ハンマー投(32)
TN内なし
※72)柏村亮太(ヤマダHD)
男子やり投(32)
14)小南拓人(染めQテクノロジィ)
22)小椋健司(栃木県スポーツ協会)
24)ディーン元気(ミズノ)
男子十種競技(24)
TN内なし
※36)中村明彦
女子100m(48)、200m(56)、400m(48)800m(48)
TN内、WAランキング100位以内共になし
女子1500m(45)
14)田中希実
女子5000m(42)
19)廣中璃梨佳
35)田中希実
42)萩谷楓
女子10000m(27)
5)廣中璃梨佳
8)新谷仁美(積水化学)※マラソン代表内定
23)安藤友香(ワコール)※マラソン代表補欠
女子100mH(40)
30)寺田明日香(ジャパンクリエイト)
女子400mH(40)
TN内なし
※45)宇都宮絵莉(長谷川体育施設)
女子3000m障害(40)
TN内なし
※47)山中柚乃(愛媛銀行)
女子走高跳(32)、女子棒高跳(32)はTN内、100位以内共になし
女子走幅跳(32)
25)秦澄美鈴(シバタ工業)
女子三段跳(32)
TN内なし
※72)森本麻里子(内田建設AC)
女子砲丸投、女子ハンマー投
TN内、100位以内共になし
女子円盤投(32)
TN内なし
※78)斎藤真希(東京女子体育大)
女子やり投(32)
25)上田百寧(ゼンリン)
26)北口榛花(JAL)
31)武本紗栄(栃木県スポーツ協会)
女子七種競技(24)
TN内なし
※47)山崎有紀(スズキ)

整理すると、既に参加標準記録を突破している選手を除くWAランキングでの世界選手権の目安となるターゲットナンバーで出場圏内に位置する選手は、男子は100mの桐生、山縣、多田、200mの小池、飯塚、10000mの伊藤、相澤、110mHの高山、400mHの安部、黒川、山内、3000m障害の山口、走高跳の戸邉、江藤、棒高跳の真野、棒高跳の山本、走幅跳の橋岡、やり投の小南、小椋、ディーンの20名、女子は100mHの寺田、走幅跳の秦、やり投の上田、北口、武本の5名で計25名。

また、世界陸上の資格記録適用期間の前の昨年の日本選手権110mHの準決勝で13秒28(+0.5)と参加標準を突破に相当する記録を出している村竹ラシッド(順天堂大)を始め、男子800mの川元、源裕貴(NTN)、金子魅玖人(中央大)1500mの河村、5000mの遠藤、塩尻和也(富士通)、10000mの清水歓太(SUBARU)、110mH石川周平(富士通)、野本周成(愛媛陸協)といった選手たちが、女子では4月10日の北陸実業団陸上の100mHで青木益未(七十七銀行)が日本新となる12秒86(-0.2)を記録するなど参加標準記録突破に迫って来ており、男子3000m障害の青木涼真(Honda、WAランキング44位)、塩尻(46位)、棒高跳の竹川倖生(丸元産業、36位)、江島雅紀(富士通、38位)、女子1500mの卜部蘭(積水化学、47位)、400mHの宇都宮、3000m障害の山中、吉村玲美(大東文化大、56位)、やり投の斎藤真理菜(スズキ、38位)、佐藤友佳(ニコニコのり、40位)はWAランキングでの出場が目指せる順位に付けている。

ここに列挙した選手たちには、速い段階での参加標準記録突破やランキングポイントを確実に上積みしていく事が望まれ、またこうした選手以外の新勢力の躍進も無論期待される。
それでは、このGW前半に行われる日本GPシリーズ、4月29日に広島広域公園陸上競技場で行われる第56回織田幹雄記念国際陸上競技大会と、4月30日、5月1日の二日間に渡って大阪・ヤンマースタジアム長居で行われる第9回木南道孝記念陸上競技大会の見どころを紹介して行く。

第56回織田幹雄記念国際陸上競技大会

織田記念で実施されるGP種目はトラック種目が男女100m、男子110mH、女子100mH、男女の3000m障害と5000m、フィールド種目が男女の三段跳と女子走高跳、男女ハンマー投となっている。

男子100mは桐生、多田、小池の実績ある三選手に加え、今期からSEIKO所属となったデーデーブルーノが招待され、その他2018年のジャカルタアジア大会200m決勝で小池と激戦を演じ銀メダルとなった台湾の楊俊瀚、シレジア世界リレー選手権4×100mリレー代表の坂井隆一郎(大阪ガス)、鈴木涼平(スズキ)、柳田大輝(東洋大)もエントリーとメンバーが揃った。桐生は今期は4月9日にオーストラリアで初戦を迎えた後、帰国後の4月24日の出雲陸上では予選を10秒12(+2.1)、決勝を10秒18(+1.5)と流石の実力を見せ、小池も4月1日にアメリカで行われたスタンフォード招待で10秒21(+2.0m)4月9日のトリトン招待でも10秒21(+1.1)とまずまずの調整ぶりで帰国初戦の今大会での走りが楽しみだ。その一方、多田は3月の世界室内60mで準決勝に進出し、乗ってくるかと思われたが、その後は4月10日にオープン参加で出場した岩壁杯で10秒30(+0.2)、出雲陸上で10秒27(+1.5)とまだエンジンが掛かってきていないようで、好敵手の揃う今大会で本領を発揮したいところ。また、3月6日に沖縄で行われた記録会でシーズン早々ながら10秒20(+1.2)で多田を破る大金星を挙げた立命館大卒、社会人3年目の遠藤泰司(新日本住設)の勢いも侮れない。ここでも実力者たちに割って入り、世界陸上代表候補に名乗りを上げることが出来るか注目だ。

男子の110mHは東京五輪代表の泉谷、高山が招待され、村竹、石川、野本もエントリー、またオーストラリアから13秒59のPBを持つN・アンドリューズら三人が参戦し激戦が予想される。4月15日に行われた学生個人選手権の準決勝では気温が上がらずコンディションに恵まれなかった中13秒30でゴールしながら、追い風2.2mのため世陸参加標準記録突破が幻となった村竹、3月に行われた世界室内選手権の60mHで準決勝進出し、進境を窺わせた野本、昨年の日本選手権準決勝で、五輪参加標準記録に肉迫しながら、決勝では村竹と共にフライング失格と悔しい思いをしている石川の標準記録突破を期待したい。

近年記録の競技力向上が目覚ましい女子100mHは先日日本記録を更新した青木、今期初戦となる寺田の東京五輪代表組に加え、安定感のあるベテラン清山ちさと(いちご)が招待された他、世界室内60mH代表となった鈴木美帆(長谷川体育施設)、今期13秒26の自己ベストタイをマーク、学生個人選手権を制し勢いのある玉置菜々子(国士館大)、4月10日に広島で行われた高校生の競技会にオープン参加して13秒22(+1.4)を記録した地元広島の福部真子(日本建設工業)長年在籍した東邦銀行を退職して心機一転の大ベテラン紫村仁美(静岡陸協)らがエントリー、青木、寺田に日本記録の更なる更新に期待が掛かる中、若手の玉置、復調してきた福部がどこまで迫れるかに注目だ。昨シーズン自己記録を13秒00まで伸ばした鈴木には、日本人選手3人目の12秒台を目指して欲しい。

女子の3000m障害には4月24日の兵庫リレーカーニバルの2000m障害で積極的なレース運びを見せて自身の持つ日本記録に迫る6分20秒21を記録し、今期も好スタートを切った東京五輪代表の山中、学生個人を9分53秒64で制しワールドユニバーシティゲームズ代表に内定した吉村が招待され、兵庫リレカで6分20秒63をマークし山中に続く2位となり、五輪代表へ勝負を懸けた昨シーズンの不振から復調してきたベテランの石澤ゆかり(日立)、こちらも兵庫リレカの2000mで6分21秒52の好タイムで3位に入り、昨年のこの大会で前半を積極的に飛ばしながら疲れの出た後半に身体のコントロールを失って、水濠に頭から転落した「恐怖心」を乗り越えたように見える西出優月(ダイハツ)、昨年は1500m、5000mで自己ベストをマーク、地の走力が上がった事を三障でも生かしたい森智香子(積水化学)と好メンバーが揃った。九電工のケニア人選手、J・キプケモイの力を借りて、山中、吉村の二人は9分40秒台の前半から40秒切りを目標に、他の選手はこの二人から出来るだけ離されないようにレースを進めたい。

男子3000m障害では東京五輪代表の山口、ロンドン世界陸上代表で昨年は8分25秒49をマークしてかつての力が戻ってきた潰滝大記(富士通)、兵庫リレカの2000m障害で5分29秒41の日本最高記録をマークした楠康成(阿見AC)らが世界陸上参加標準記録、8分22秒00の突破を目指す。馬力のあるケニア人実業団選手、P・キプラガットを上手く利用したい。

女子5000mには東京五輪代表の田中、萩谷が招待された。田中は五輪の経験から1500mに置けるスピードの重要性を痛感し、更なるスピード強化を図るために800mでも世界選手権代表を狙っていく事を明かしており、今期に入りその800mに加えて慣れない400mの記録会にも出場しているが、その一方では兵庫リレカでは1500mに出場して東京五輪同種目代表の卜部を降した20分後には10000mに出場するなど、5000mで世界の舞台で決勝を目指すためのスタミナ強化も怠りなく、こうした独自の試みがどのような形で結実していくのか興味深い。金栗記念の5000mではまだ自身のコンディションを確認しているような走りだったが、今回はどのくらい「力を入れて」走るのかが楽しみだ。萩谷は出場すれば転倒した昨年11月のクィーンズ駅伝以来のレースとなり、どの程度体調を整えられたのかが気懸りだ。

男子5000mは13分16秒40の遠藤、13分16秒53の塩尻、13分19秒96の砂岡拓磨(コニカミノルタ)と13分10秒台のPBを持つ3人に、東京五輪代表の松枝博輝、坂東悠汰(ともに富士通)のエントリーが有るが、塩尻を除く4人は5月4日のゴールデンゲームス延岡にもエントリーが有り、S・ワイザカ(ヤクルト)、B・コエチ(九電工)ら強力なケニア人選手がエントリーし、引っ張ってもらう事の出来そうな、そちらの方で世陸参加標準記録の突破を狙っている可能性も有る。塩尻には、4月9日の金栗記念の様に途中でペースが淀んでしまった際には、今度は躊躇わずにレースを作って行く覚悟が求められる。本職の3000m障害ではなく5000mにエントリーをした順天堂大の後輩、三浦の存在が好記録を狙う上では心強い。

その他、女子の100mでは東京五輪4×100mリレー代表の兒玉芽生(ミズノ)、青山華依(甲南大)が揃ってエントリー、学生個人選手権で11秒47(+2.0)をマークした青山に対し、今期兒玉はここまでのところは調整途上に見受けられ、もう少し元気を出してもらいたいところ。また同僚の男子スプリンターの小池と共に海外を転戦した御家瀬緑(住友電工)も復活の気配が感じられ、好結果で出場権を獲得している4×100mリレー代表争いに加わる力が有る事を示せるかに注目したい。

フィールド競技では、女子三段跳の森本と高島真緒子(九電工)による13mオーバーの優勝争い、女子ハンマー投げのホープ、村上来花(九州共立大)が62m88の自己記録を伸ばせるかに期待。また男子ハンマー投げも柏村、福田翔大(日本大)、木村 友大(ゼンリン)、中川達斗(九州共立大)らによる70mオーバーの激戦となりそうだ。

■ 第9回木南道孝記念陸上競技大会

木南記念では、9月に中国・杭州で開催されるアジア大会代表選考会として2日間にわたって実施される男子十種競技、女子七種競技の混成種目に、トラックでは男女200m、400m、400mH、800m、男子110mH、女子100mH、フィールドでは男女の棒高跳、走幅跳、やり投がGP種目として実施される。

注目は何と言っても男子の走幅跳で東京五輪6位入賞を果たした橋岡が登場する。昨年は東京五輪後にこの種目での大会出場が無く、まだ参加標準記録を突破していないが、WAランキングでは今期日本人選手最高の5位にランクされている。今シーズンは世界室内選手権では修正力の高いこの選手には珍しく3回連続ファウルで記録なしに終わったが、8mを優に超える跳躍を見せていた。屋外初戦となった4月9日の日大記録会では1回目の試技で8m07(+0.1)を跳ぶと残り試技はパスしている。勿論この大会での目標は世界陸上参加標準記録、8m22突破を確実に果たす事になるが、現段階でどのくらいこの記録を上回る事が出来るかが世界陸上で東京五輪を上回る結果を残せるかどうかの試金石となるだろう。城山正太郎(ゼンリン)の持つ8m40の日本記録更新を期待したい。

女子の走幅跳も4月19日付のWAランキングで25位と世界陸上出場権内に付けている秦の出場に注目。昨年6m65の自己記録をマークした兵庫リレカで今年も6m60(+1.8)を跳んでおり、この6m50オーバーの記録を安定して跳ぶ事が出来るようになれば世陸参加標準記録、6m82の突破や池田久美子が2006年に記録した日本記録、6m86の更新も夢では無くなってくるが、現実的には着実にWAランキングのポイントを重ねる事で「出場安全圏」を手繰り寄せていけるところがより重要な点であるだろう。世界陸上出場への可能性を繋ぐための、勝負の大会が続く。

男子やり投と女子やり投はWAランキングでターゲットナンバー内に位置する選手、出場圏内が見える位置にいる選手の多くが顔を揃え、レベルの高い争いが繰り広げられそうだ。男子は小南、小椋、ディーンの3人、女子は上田、北口、武本の3人が現在出圏内で、追い掛ける立場にある男子の新井涼平(スズキ)、女子の佐藤、齋藤は上位にいる選手達を上回る投擲が必要になってくる。特に昨シーズンに首の故障から思うような成績を残せていない、ロンドン、リオの五輪2大会代表の新井にとっては、世界陸上までに出場できる残りの大会数を考えるといずれの大会でも80mオーバーの大投擲を見せるか、一発で参加標準記録を突破しなければ逆転が難しい状況に有り、今大会に今後が掛かっている選手の一人だ。

その他のフィールド種目では、ロンドン、リオ、東京の3大会連続五輪代表の山本、東京五輪代表の江島、WAランキングでターゲットナンバーに迫っている竹川に、室内ながら5m70の自己記録を持つ石川拓磨(東京海上日動)がエントリーしている男子棒高跳でもハイレベルな争いが展開されそうで、女子棒高跳では兵庫リレカで自己記録を4m33に伸ばし今期好調の那須眞由(KAGOTANI)の更なる記録更新に期待をしたい。

トラック種目では東京五輪代表の山内、安部、黒川に、ロンドン五輪代表で昨年復調を遂げた岸本鷹幸(富士通)、ドーハ世界陸上で準決勝に進出した豊田将樹(富士通)らがエントリーに名を連ねる男子400mHで、世界陸上参加標準突破の可能性が高まっている。ドーハ世界陸上で決勝進出にあと一歩まで迫り、東京五輪では悲願の代表となったが、ピークを合わせ切れずに不完全燃焼となった安部、東京五輪をステップボードにパリ五輪での飛躍を期す若手の山内、黒川、もう一度世界の舞台に返り咲きたい岸本、豊田とそれぞれに世界陸上への想いは強いと考えられ、誰が激戦の中から抜け出してくるのか、見応えのあるレースになりそうだ。故障から復活してきた山本竜大(SEKI A.C.)、昨年成長を示した川越広弥(JAWS)もここに加わってくるだけの力を秘めており、台湾の陳傑も侮る事の出来ない存在だ。

男子800mでは源が1分45秒75の日本タイ記録をマークした、川元、金子との三つ巴の大接戦となった昨年7月のホクレンDC千歳大会の再現を期待。村島匠(TWOLAPS)ら大会側からPMも用意され、世界陸上参加標準記録1分45秒20突破へ、これを逃したら後はないと言って良いくらいの絶好のチャンスだ。

男子1500mでも昨年のホクレン千歳で3分35秒42の日本記録をマーク、世界陸上参加標準記録まであと0秒42まで迫った河村がエントリーしているが、出場大会で連戦連勝だった昨年と打って変わって、今期初戦の兵庫リレカでは最下位に沈んでおり、現状はレースを重ねてコンディションを上げて行こうかと言うところ。河村に破られる前の日本記録保持者の荒井七海(honda)、学生個人選手権を制した飯澤千翔(東海大)、昨年の日本選手権で4位に入賞した高橋佑輔(北海道大)らは今期好調で安定感があり、もう一段ギアを上げる事が出来れば、参加標準記録の突破への視界も開けてくる。

女子は東京五輪に続き、世界陸上の代表の座を掴み取りたい1500mの卜部、世界陸上代表へのチャンスが訪れている400mHの宇都宮、織田記念の5000mに続きここでは800mにエントリーしている田中に注目だ。800mではPMに細井衿菜が起用され、記録へのお膳立ても整っている。

アジア大会選考会でもある男女の混成競技、男子十種競技では経験豊富な右代啓祐(国士舘クラブ)中村明彦(スズキ)のベテラン勢にワールドユニバーシティゲームズ代表に内定している田上駿(陸上物語)、社会人2年目となった丸山優真(住友電工)ら若手が挑む構図、女子七種競技はアジア大会だけでなく世界陸上代表も視野に入れる、山﨑有紀(スズキ)が日本選手史上初の総合6000点へ挑み、度重なる故障と向き合いながら諦める事無く競技に挑む、ヘンプヒル恵(アトレ)のアスリートとしてのひた向きな姿勢にも注目したい。

4月に入り、金栗記念、日本学生個人選手権、出雲陸上、兵庫リレーカーニバルと主要な大会が続いたが、これまでのところ新たに世界陸上の参加標準を突破した選手は出ておらず、東京五輪出場後に引退をした金井大旺(ミズノ)が昨年の織田記念の110mHで13秒16の破格の日本記録をマークして、オリンピックへ向けた陸上界の盛り上がりに火を付けたように、今年の織田記念と木南記念、それぞれの大会に挑む選手たちからその後に続くセイコーGGP、勝負の日本陸上選手権へ向けて弾みを付けられるような勢いを感じてみたい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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