男子は800mの大学院生薄田健太郎、1500mの飯澤千翔ら中距離種目の選手に注目、女子走幅跳高良彩花の4連覇はなるか!第101回 関東学生陸上競技対校選手権大会の注目ポイント!

関東学生陸上競技の祭典、第101回関東学生陸上競技対校選手権大会が5月19日より四日間の日程で行われる。コロナ禍によって断念を余儀なくされていた一般観客を3年ぶりに受け入れ、また昨年東京五輪陸上競技が実施された国立競技場がメイン会場となり、今回で101回目と次の100年に向けて新たな歴史を紡ぎ出すにふさわしい最高の舞台が用意された。

東京五輪3000m障害7位入賞で、今大会1部5000mにエントリーした三浦龍司(順天堂大3年)、同じく東京五輪400mH代表で5月1日の木南記念でオレゴン世界陸上参加標準記録を突破した黒川和樹(法政大3年)、今季4度目の挑戦となる今大会こそ世界陸上参加標準記録の突破を果たしたい110mHの村竹ラシッド(順天堂大3年)など注目選手、注目種目は枚挙に暇がないが、学生選手の躍進で国内の競技水準を押し上げ、各大会での勝負が熱を帯びてきているトラック中距離種目、ともに世界陸上参加標準記録が手に届きそうなところまで迫ってきている男子800m、1500mの選手たちにも注目だ。

まず距離の長い方、1500mで今季一際活躍が目立つのは飯澤千翔(東海大4年)だ。
昨年の日本インカレ800mでは、その年に1分45秒75の日本タイ記録をマークしていた源裕貴(当時環太平洋大、現NTN)ら有力選手が牽制し合うスローペースの展開の中、2周目バックストレート中盤辺りから不意を突くようにロングスパートを敢行し、そのまま後続を寄せ付けず逃げ切ったように、大舞台でも怯まない度胸の良さと勝負強さが光っていた。
1500mに軸足を移した今季は初戦の金栗記念こそ三浦龍司、この後GGのべおかで5000mの世界陸上参加標準記録を突破した遠藤日向(三菱重工)に屈し9位に終わったが、その後の日本学生個人選手権と木南記念を立て続けに制した。
学生個人では金栗記念で後塵を拝した昨年の日本選手権同種目4位の実力者、高橋佑輔(北海道大学)にきっちりと勝ち切り、木南記念は内容も素晴らしく、日本記録保持者の河村一輝(トーエネック)や前日本記録保持者の荒井七海(Honda)ら国内トップ選手が顔を揃え、記録も目指し二人のペースメーカーが配された中で、ペースメーカが外れるまでは集団中ほどで脚を溜めながらじわじわと前方に進出し、やはりここでもバックストレート中ほどからロングスパートを仕掛けると追い縋る荒井を振り切って3分38秒55で自己記録を更新、狙っていたと言うよりは、勝利を模索する中で自然と出た記録という印象を受けたほど切れのある動きを見せており、この種目で連戦連勝だった昨年の河村を彷彿とさせる勢いがある。
関東インカレは対校戦とあってタイムよりは勝つことが重視されるが、本命の重圧が圧し掛かる今大会で勝ち切ってこそ、6月に控える日本選手権の大一番の舞台に上がる有力選手と認められる、飯澤にとっては試金石となる大会だ。

800mはこのGWに行われた静岡国際のタイムレースで、全3組中持ちタイムの劣る2組目での出場ながら日本歴代5位となる1分46秒17と45秒台にあと一歩に迫る好タイムをマークし、勢いに乗ったGGPでもアメリカ、イギリスの東京五輪代表選手や、静岡国際を制したB・マサス(ニュージーランド)らを相手に果敢に勝負を挑み、リオ五輪代表の川元奨(スズキ)らの追撃を抑えていずれも日本人選手最先着となる2位に食い込む大健闘を見せた薄田健太郎(筑波大大学院2年)の躍進が目覚ましい。
院生のため3部への出場となるが、静岡国際で1分46秒73の自己ベストをマークし、GGPでも4位に入った今季好調の根本大輝(順天堂大大学院1年)のエントリーも有るため競い合う存在があり、予選なしの決勝一発勝負で日本選手権に向けての負担が大きくならない事、1部、2部の対校戦ポイントに絡まない事などから、1分45秒台の記録を念頭に入れた思い切ったレースとなる可能性は充分あるだろう。

1部では、学生選手の中で世界陸上参加標準記録の1分45秒20に最も近い1分45秒85のベストタイムを持つ、金子魅玖人(中央大3年)が注目だ。
昨年に参加標準記録に迫ったことも有り、今年は始動の時期を早めて3月初旬にオーストラリアの大会を転戦するなど競技に取り組む姿勢に変化が見られる。帰国初戦のTHE MIDDLEを制してからは学生個人選手権を取りこぼすなど、上位争いを展開しながら勝ち切れないレースが続いているが、いずれのレースでも出力を上げ切らないままレースを終えているような印象も有り、日本選手権を目標に長期ビジョンでここまで実戦を重ねながらピークをもっていこうとしている途上のようにも見受けられた。おそらくここが日本選手権に向けた最終調整の段階に入っていると思われ、きっちりと勝利を得て気分良く世界選手権代表を巡る大一番に臨みたいところだろう。この金子に学生個人で土を付けた松本純弥(法政大4年)、今季800m初の実戦ながら、1500mとの二冠を狙う飯澤、薄田の後輩で1分48秒33の自己ベストを持つ二見優輝(筑波大2年)が強敵として、立ちはだかる。

女子の注目選手のキーワードは「連覇」


女子走幅跳には大会4連覇のかかる高良彩花(筑波大4年)が登場する。高校時代に記録した6m44の自己ベストをなかなか更新する事が出来ていないが、大きな故障で長期間欠場するようなこともなく、毎年コンスタントに6m30前後を跳ぶ事が出来ており、安定感は増してきている。このことは技術的なぶれが解消されつつあることの証左でもあり、なにか一つきっかけさえ掴むことが出来れば、6m40前後の跳躍を何度も繰り返しながら、6m69まで記録を伸ばした秦澄美玲(シバタ工業)のような一気のブレイクスルーがないとも限らない。4連覇と共に4年ぶりの自己ベスト、そして6m50オーバーの大ジャンプも期待してみたい。
また円盤投げで日本歴代4位の56m58を自己記録に持つ斎藤真希(東京女子体育大4年)も高良同様に昨年まで3連覇を果たしており、4連覇を目指す。

女子400mHでは一昨年まで小山佳奈が4連覇を果たし、昨年は卒業した小山の後を引き継いだ村上夏美が初優勝を遂げ、早稲田大学が現在5連覇を継続中。村上の卒業した今年、その後を引き継ぐ存在は一昨年の1年時に共に日本選手権で決勝に進んだ現在3年の川村優佳と津川 瑠衣。シーズン当初は学生個人選手権を揃って欠場するなどなかなか調子が上がらなかったが、静岡国際では川村が59秒09、津川が58秒56をマークし、ここにきてエンジンが掛かってきた。
早稲田勢の6連覇か、静岡国際の予選で川村、津川を上回る58秒23のシーズンベストをマークしている好調な青木穂花(青山学院大3年)がそれを阻むのか、注目となりそうだ。

女子3000m障害には昨年に続く連覇と3度目の制覇を目指す吉村玲美(大東文化大4年)がエントリー。
今季の目標としていた中国・杭州でのワールドユニバーシティゲームズの再度の延期が決まり、手中に収めていた代表の座がフイになってしまったが、オレゴン世界陸上でもWAランキングで出場圏内の目安となるターゲットナンバーで出場可能な位置に付けている。
昨年は最終盤までWAランキングで東京五輪出場圏内にありながら、日本選手権で山中柚乃(愛媛銀行)に敗れて逆転を許し代表に届かず悔しい思いも味わったが、9月に行われた日本インカレではライバルのいない単独走ながら、日本選手権での山中のタイムを上回る日本歴代2位となる9分41秒43の好記録を叩き出して、意地と強さを見せつけている。
今季のベストタイムは織田記念での9分52秒16と、まだ9分50秒台を切っていないが、6月末に開催が予定されていたユニバーシティゲームズへピークを合わせることを考慮にいれていたものと思われ、これまでスケジュール上両睨みだった目標を世界陸上一本に絞り、好記録を狙っていくのか注目が集まる。

この吉村の他にも男子100mの稲毛碧(早稲田大3年)、800mの松本、1500mの飯澤、女子100mHの玉置菜々子(国士館大4年)、円盤投の齋藤ら幻のユニバーシティゲームズの代表たちにとっては、目標とする大会が失われた喪失感や悔しさをいささかなりともぶつける舞台となりそうだ。

また、シレジア世界リレー代表の男子100m柳田大輝(東洋大1年)、今大会では1500m、5000mの高校記録保持者で、今大会は5000m一本に絞った佐藤圭汰(駒澤大1年)、昨年の福井インターハイを制した走幅跳北川凱(東海大1年)ら、近い将来日本陸上界の中核を担う事が期待される1年生世代が、東京五輪の会場となった国立競技場でどのようなインカレデビューを飾り、またパリ五輪、その次のロサンゼルス五輪の代表候補に名乗りを上げる事が出来るのかにも注目したい。

このシーズンに入ってからなかなか好天に恵まれず記録も期待されたほど伸びていなかったが、予報では今週末は良好な気候コンディションとなりそうで、風雨と肌寒さに3度世界陸上標準記録突破を阻まれた村竹ラシッドに限らず、今季ここまでやや消化不良気味だった選手たちも、今季最高のパフォーマンスを見せてれるのではないだろうか。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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