第99回関西学生陸上競技対校選手権大会が5月25日から四日間、たけびしスタジアム京都に於いて開催される。コロナ禍に見舞われて以降、一昨年、昨年は秋に開催がずれ込む変則日程で行われており、通常通り春のトラックシーズンに開催されるのは2019年の第96回大会以来3年ぶりとなる。全国的に見れば男子はやや関東学連勢に押され気味ながら、過去には朝原宣治(同志社大→大阪ガス)、近年では多田修平(関西学院大→住友電工)といった五輪代表を輩出しており、女子に関してはスプリント種目に於いて現在進行形で学生レベルに留まらず、国内の競技シーンを引っ張る選手も複数みられる、関西学生陸上界の花形舞台である今大会の注目競技、選手を見ていきたい。
男子100mは昨年の大会を制した桒原拓也(関西大、現Accel)、日本インカレ3位の佐々木啓輔(立命館大、現Steam)ら全国レベルで活躍を見せた選手たちが卒業したなか、大学院生として残った梶川颯太(立命館大院1年)が核となる。4月の学生個人選手権100mで関東学連勢の独占を他地区の学連勢としてただ一人阻止して決勝へ進出し4位と意地を見せているその梶川と、資格記録10秒32の宮内和哉(関西大3年)、200mでも力の有る高木恒 (近畿大4年)の争いになりそうだ。
200mは昨年2位で100mにもエントリーしている高木が20秒81と唯一20秒台の資格記録を有しており、力が抜けている。今季男子200mはこの高木とほぼ同じ20秒代後半の自己ベストだった選手たちの記録が伸びてきており、この流れから取り残されたくないところだ。

400mは昨年8月の近畿選手権で46秒09をマークし、45秒台が目前に迫っている岩崎立来(大阪体育大4年)に注目だ。
今年も4月の学生個人選手権を制したあと、今月3日の静岡国際も3位に入賞と安定した力を発揮しており、もう1段ギアを上げて45秒台に入ってくれば、出場権を得ているオレゴン世界選手権のマイルリレーのメンバー争いに加わる芽も出てくる。6月に控える日本選手権へ向けて手応えの得られる大会としたい。
野瀬大輝(立命館大4年)は自己ベストが46秒35と岩崎のライバルと言って良い存在だが、昨年の日本インカレ、関西インカレ、今年の学生個人選手権と主要大会で力を出し切れないレースが続いて岩崎には水を開けられた感が有り、奮起が望まれる。
800mは松本駿(関西大4年)が今季成長を見せ、4月の学生個人選手権で3位に入ると5月1日の木南記念では自己記録を1分48秒12まで伸ばして来た。
今季日本人選手トップタイム、1分46秒17をマークしている薄田健太郎(筑波大院)には学生個人で先着しており、またこのレースで互角の勝負を演じた松本純弥(法政大)は先日の関東インカレを制しており、この二人の活躍も刺激になっているだろう。
今度は「西の松本」が存在感をアピールする番だ。
津田竜太朗(大阪体育大4年)は昨秋にTWOLAPSのミドルディスタンスチャレンジに出場するなど力があるが、今季は調子が上がってきておらず、復調に期待したい。
2部に出場する戸澤悠介(摂南大学4年)も木南記念、静岡国際のGPシリーズに連続参戦するなど全国クラスの力を有している。

5000mはゴールデンゲームズinのべおかのE組に出場し13分56秒19と好走した亀田仁一路(関西大3年)、兵庫リレーカーニバルのアシックスチャレンジ10000mで28分47秒34で1着となった上田颯汰(関西学院大4年)の関西長距離界の誇るエースに、西脇工業卒の寺本京介、滋賀学園卒の入江聖空の全国高校駅伝で鳴らしたびわこ学院大の新1年生が挑む。
関東の箱根駅伝強豪校からの勧誘を断り、トラックを中心に選手の育成に取り組んでいるびわこ学院大に進んだこの二人が、学生長距離界に新風を吹き込む事ができるか、注目となる。
また上田は10000mにもエントリーが有り、こちらでも優勝候補の筆頭だ。
障害種目、400mHでエントリー選手中ただ一人、49秒台の資格記録を持っているのが村上翔(同志社大3年)。関東インカレでは東京五輪のこの種目代表の黒川和樹(法政大)がレースを引っ張り、上位4人が49秒台をマークする高水準のレースとなったが、関西インカレでは村上がその役割を担って関東勢何するものぞという気概を見せてもらいたい。
男子のフィールド種目、走幅跳は本命無き混戦模様だが、高校時代はほぼ無名の存在から8mジャンパーとなるなど昨年まで関西学生陸上界を引っ張った吉田弘道(立命館大→神崎郡陸協)のように飛躍を遂げる選手の出現に期待したい。
棒高跳ではリオ五輪代表の荻田大樹(現メイスンワーク)を輩出している関西学院大の三戸田湧司(4年)が自己記録5m31の更新なるかに期待がかかり、走高跳は2m17の自己記録を持つ京都大学2年生、山中駿の優勝がなるかに注目が集まる。
投擲種目は男子やり投の末次仁志(大阪体育大4年)が自己記録72m80と全国クラスの力を持つ。
混成種目、十種競技では7250点の自己ベストを持つ昨年の覇者、川元莉々輝(立命館大3年)をやはり昨年2位の高須賀蓮(同志社大4年)が追う。川元はこの後6月4日から開催される日本選手権混成競技も控えており、どのくらいの強度で今大会に挑むのかといったところも優勝争いを左右しそうだ。

女子100mは東京五輪女子4×100mリレーで1走を務めた青山華依(甲南大2年)がやはり注目だ。今季は各大会で気候に恵まれず、当日のコンディションに悩まされる選手が多い中、学生個人選手権で早くも11秒47の自己記録をマークするなどフィジカルコンディションが良さそうで、尚且つ昨年から1段の成長も伺われ、ここから更に記録を伸ばすこともかなりの高さで期待できる。
200mにエントリーせず、ここ一本に照準を合わせて打倒青山を期す壱岐いちこ(立命館大4年)からは並々ならぬ闘志が伺われ、3月の室内日本選手権60mを制した三浦愛華(園田学園女子大3年)は得意のスタートダッシュでこの二人に割って入りたい。
昨年のインターハイを制した永石小雪(立命館大1年)はこの大会に向けての仕上がり具合が好走の鍵となる。
200mに壱岐がいないのであれば、本命は23秒73の自己記録をもつ井戸アビゲイル風香(甲南大3年)となるだろう。100mにもエントリーがある三浦が対抗候補の筆頭で、同じく100mとの二種目エントリーの臼井文音(立命館大4年)は大学入学直後の不振からは脱したが、完全復調まではもう一息といったところで一進一退を繰り返しており、今大会までのプロセスで良い方向に向かっていれば上位争いに加わるチャンスは出てくるだろう。
400mは昨年の日本選手権の予選で53秒59の好タイムをマークし、決勝も7位に入賞している松尾季奈(立命館大4年)に昨年ほどの勢いが見られなかったが、木南記念で54秒77をマークして3位に入るなど5月に入って徐々にエンジンが温まり出している。
二種目エントリーとなっている400mHとの兼ね合いもあるが、中野菜乃(武庫川女子大3年)が松尾を追いかける1番手だ。
800mは昨年までの4年間、塩見綾乃(立命館大→岩谷産業)、川田朱夏(東大阪大→ニコニコのり)の二人が高いレベルで競い合うことで他の選手たちの競技水準も向上し、二人が卒業した今年の大会も2分7秒73の自己ベストを持つ下畑文乃(京都教育大4年)を中心とする、2分8秒56の窪美咲(東大阪大3年)、渡辺愛(園田学園女子大2年)、安藤百夏(園田学園女子大4年)、松元菜笑(大阪教育大4年)の2分10秒を切る選手たちに、高校時代に2分7秒78をマークしている長谷川麻央(京都教育大1年)、2分7秒97を自己記録に持つ河内瀬桜(立命館大1年)の強力な1年生が加わり、ハイレベルな激戦が予想される。予選から決勝進出を巡り駆け引きに火花を散らす熱いレースが見られそうだ。
女子の長距離、5000mでは明治国際医療大のケニア人留学生、シェイラ・C(2年)に日本人選手で唯一15分台の資格記録を持つ松村灯(立命館大2年)が挑み、10000mは32分56秒71と唯一33分を切る自己記録を持っている飛田凜香(4年)をエースとし、中地こころ(2年)小林朝(3年)の強力な3人をエントリーしてきた立命館大勢に、学生個人選手権ではこの3人を打ち破って2位に入った大阪芸術大学の北川星瑠(3年)が再び激突する。
3月の室内日本選手権60mHで青木益未(七十七銀行)に次ぐ2位に入り今季の飛躍を予感させていた100mHの岡崎汀(甲南大4年)だが、その後はエントリーのあった大会はすべて欠場となっており、体調面での不安が残る。
昨年に13秒49まで自己記録を伸ばしてきており、同じくらいのPBを持つ選手が犇めく同種目に有って日本選手権の決勝進出を果たすために、今大会を再浮上のきっかけとしたいところだ。
昨年のインターハイで13秒53をマークして2位となった浅木都紀葉(立命館大1年)、13秒62の自己ベストが有る古西清乃( 園田学園女大3年)も表彰台を窺う。
女子400mHは57秒04の自己ベストを持つ昨年の日本選手権覇者の山本亜美(2年)、静岡国際陸上で自己記録となる58秒04をマークするなど力を付けて来た工藤芽衣(2年)の立命館大二人の争いが濃厚だが、400mにもエントリーの有る武庫川女子大の中野が割って入ることが出来るかにも注目したい。
女子フィールドに目を移すと、棒高跳は共に4m10の資格記録を持つ園田学園女子大の大坂谷明里と古林愛理(共に2年)、走幅跳でも6mオーバーの自己記録を持つ関西学院大の北田莉亜(3年)、松永理沙ジェニファー(2年)と同じ大学で切磋琢磨する選手の一騎打ちになりそうな一方で、三段跳では齋藤遥(武庫川女子大院1年)、 宮繁愛葉(武庫川女子大1年)、八田真奈(関西大4年)、幅跳との2種目エントリーの北田ら12m50オーバーの記録を持つ選手が顔を揃え、激戦は必至。
ここに名前を上げた選手外にもそれぞれの選手たちが母校の誇りを胸に仲間と共に戦い、躍動する光景が、たけびしスタジアム京都で目の当たりにできることだろう。様々な目標を持った選手がその達成に挑む姿を見つめるのも、学生スポーツの醍醐味の一つだ。
文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)
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