オレゴン世界陸上選手権の代表選考会を兼ねた、第106回日本陸上選手権・混成競技が6月4日から二日間の日程で行われる。昨年まで10年間激闘が繰り広げられた長野市営陸上競技場から会場を移し、本年は秋田県営陸上競技場がその舞台となる。
オレゴン世界選手権の参加標準記録は、男子十種競技が8350点、七種競技が6420点と共に日本記録を上回る高い壁となるが、キングオブアスリート、クイーンオブアスリートの座を賭ける男子9名、女子20名の選手たちがどこまでこの記録に迫ることが出来るかも、大会の焦点の一つとなってくるだろう。
男子十種競技は2010年の第94回大会から右代啓祐（国士舘クラブ）が六連覇を果たし、2016年の第100回大会で中村明彦（スズキ）が七連覇を阻止して以降は、ロンドン・リオ二大会代表の右代、リオ大会に右代と共に出場した中村の五輪代表経験者二人により優勝が占められる「二強時代」が長く続いていたが、昨年の日本選手権ではWAランキングでの五輪出場を賭けて高ポイントの得られるヨーロッパの大会を転戦した右代が欠場していたものの、奥田啓祐（第一学院高教）が7833点で優勝果たした中村と接戦を演じ7768点をマークして2位に入り、また今年の5月に行われたGPシリーズの木南記念では丸山優真（住友電工）が日本歴代5位となる7807点を叩き出して優勝、2位に片山和也（烏城塗装工業）、3位田上駿（陸上競技物語）と続き、まだ調整途上とはいいながらも4位中村、5位右代を上回り、パリ五輪を2年後に控えたここにきて世代交代の芽も感じられる。
今大会は木南記念で右手親指を痛めた丸山が欠場となったが、優勝争いは世代交代を迫る奥田、田上、片山に対し、右代、中村が競技を知り尽くしたベテランならでは戦いぶりで対抗する構図になるものと予想する。
100m、400mのスプリント系の種目で高得点を稼ぐ事のできる奥田としては、昨年同様に1日目を好位置で終える事が出来れば、勝機が出て来る。
穴の少ないオールラウンダーの田上や片山にとっては、体力的に厳しくなってくる二日目の終盤、特にミスが出れば記録なしで0点に終わる恐れも有る棒高跳を無難にクリアできるかが一つの課題となってくるだろう。
一方の右代、中村のベテラン組は、長年に渡り競技の一線に立ち続けたなかでの故障なども有り、ベストのコンディションに持っていくことに苦労しているようにも感じるが、そうしたなかでも二日間自身の体調としっかり向き合いながら、その時に出せる力を最大限まで引き出すコツのようなものを心得ているように思われる。
また右代は投擲系の種目ではまだまだ力が有り、ここで大きくポイントを稼ぐ事が出来る事も、長くトップに立ち続けている要因となっている。
一日目に強い奥田、二日目に強い右代を軸に、誰が勝つことになっても、最終種目の1500mのゴールまで目が離せない僅差の激戦となるだろう。
女子七種競技は2018年の第102回大会以降4連覇を継続中の山﨑有紀（スズキ）、その山﨑を木南記念で破り、度重なる大きなケガを乗り越えて復活してきたかつての三連覇女王のヘンプヒル恵（アトレ）、再延期となってしまったが、今年開催予定だったワールドユニバーシティゲームズの代表選考会となった学生個人選手権を制し、力を付けてきている大玉華鈴（日体大ＳＭＧ横浜）の3人の力が抜けている。
各種目満遍なく力を発揮し、また昨年は6000点に迫る5900点台を3回マークするなど安定感も抜群な山﨑に対し、100mH、走幅跳の単独種目でも日本選手権に出場出来る力の有るヘンプヒル、走高跳でヘンプヒル同様日本選手権に出場出来る実力の持ち主である大玉とポイントを大きく稼げる種目を持つ二人の、異なる特徴を持ったこの三人の選手が競り合うことによって、日本人女子選手前人未到の総合6000点突破を果たす瞬間を目にすることが出来るかもしれない。
尚、当日は今年8月1日から南米コロンビアのカリで開催されるU20世界陸上選手権代表選考会を兼ねた第38回U20日本陸上競技選手権大会・混成競技も行われる。次世代を担う若手選手達の活躍にも期待をしたい。
文／芝 笑翔 (Emito SHIBA)
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