オレゴン世界陸上代表選考を兼ねる、第106回日本陸上選手権いよいよ開幕!現在のWAランキングから、各種目の日本人選手の世陸へ向けた現在地を確認してみる

オレゴン世界陸上の代表選考会を兼ねる第106回日本陸上競技選手権大会が、6月9日より四日間の日程で大阪・ヤンマースタジアム長居で行われる。やはり注目は東京五輪後に初めて行われる世界選手権の代表を目指す選手たちの動向となるが、そうした選手たちが現在の代表へ向けての立ち位置を、今大会での代表内定条件とともにおさらいをしておきたい。

■ 代表内定には2つの条件の達成とWAポイントランキング

今大会で世界選手権の代表内定を得るには、既にWAの定める参加標準記録を突破し、参加資格を持つ選手に関しては3位までに入る事、それ以外の選手は今大会で参加標準記録を突破し、決勝で3位以内に入ることが条件となる。
今大会の実施種目で既に参加資格を持つ選手は以下の通り。

男子5000m(13:13.50)
遠藤日向(住友電工)13:10.69※2022/05/04ゴールデンゲームズinのべおか

男子3000m障害(8:22.00)
三浦龍司(順天堂大学)8:09.92※2021/07/30東京五輪予選

男子110mH(13.32)
泉谷駿介(住友電工)13.28※2021/08/03東京五輪予選

男子400mH(48.90)
黒川和樹(法政大学)48.90※2022/05/01木南道孝記念競技会

女子1500m(4:04.20)
田中希実(豊田自動織機)3:59.19※2021/08/04東京五輪準決勝

女子5000m(15:10.00)
廣中璃梨佳(日本郵政グループ)14:52.84※2021/08/02東京五輪決勝
萩谷 楓(エディオン)14:59.36※2021/09/26全日本実業団選手権
田中希実 14:59.93※2022/07/30東京五輪予選
木村友香(資生堂)15:02.48※2021/12/10エディオンディスタンスチャレンジ
佐藤早也伽(積水化学)15.08.72※2021/09/26全日本実業団選手権

この男子4名、女子5名の選手は今大会の決勝で3位以内に入れば代表内定が得られる。
一方で東京五輪男子100m代表の多田修平、小池祐貴(ともに住友電工)、4×100mリレー代表の桐生祥秀(日本生命)、男子走幅跳6位入賞の橋岡優輝(富士通)といった人気の高い有力選手でも、未だ参加標準記録を突破出来ておらず、今大会で内定を得るためには参加標準記録を突破して尚且つ決勝で3位までに入る事が絶対条件となっている。

また、オレゴン世界陸上は東京五輪と同様に、参加標準記録を突破した選手と併せて、規定人数枠内に入るそれ以外のWAポイントランキング上位選手にもWAより出場権が与えられる。

現在、WAが公表している出場資格者とポイントランキング上位選手を併せたRoad to Oregon 2022のランキングにおいて、出場への目安となる人数枠(ターゲットナンバー)で圏内に位置している選手は、

男子100m(TN=48、現在のボーダーは1176P)
36位 桐生祥秀 1212P

男子200m(56、1139P)
33位 小池祐貴 1189P

男子400m(48、1154P)
33位 川端魁人(中京大クラブ)1178P
45位 佐藤風雅(那須環境)1162P

男子110mH(40、1189P)
32位 村竹ラシッド(順天堂大学)1219P
39位 野本周成(愛媛陸協)1198P
※39位相当 高山峻野(ゼンリン)1195P*参加資格を持つ泉谷を含め日本人4番手のためランク対象外

男子400mH(40、1162P)
36位 豊田将樹(富士通)1182P
39位 岸本鷹幸(富士通)1167P

男子3000m障害(45、1140P)
37位 山口浩勢(愛三工業)1176P
40位 青木涼真(Honda)1158P
※41位相当 楠 康成(阿見AC)1150P*日本人選手4番手

男子走高跳(32.1150P)
14位 戸邉直人(JAL)1224P
18位 真野友博(九電工)1202P
26位 赤松諒一(アワーズ)1162P

男子棒高跳(32、1177P)
31位 山本聖途(トヨタ自動車)1180P
32位 江島雅紀(富士通)1177P

男子走幅跳(32、1159P)
19位 橋岡優輝(富士通)1254P
29位 吉田弘道(神崎陸協)1174P

男子やり投(32、1116P)
23位 ディーン元気(ミズノ)1133P

女子1500m(45、1158P)
40位卜部 蘭(積水化学)1166P

女子100mH(40、1171P)
33位 青木益未(七十七銀行)1190P

女子400mH(40、1142P)
39位 宇都宮絵莉(長谷川体育施設)1143P

女子3000m障害(45、1146P)
43位 山中柚乃(愛媛銀行)1149P
45位 吉村玲美(大東文化大学)1146P

女子走幅跳(32、1157P)
21位 秦澄美鈴(シバタ工業)1188P

女子やり投(32、1073P)
18位 北口榛花(JAL)1159P
25位 上田百寧(ゼンリン)1114P
30位 武本紗栄(佐賀県スポーツ協会)1093P
※31位 斉藤真理菜(スズキ)1081P*日本人選手4番手

と、現在日本人4番手のため3番手以内に浮上する必要の有る男子110mHの高山、男子3000m障害の楠、女子やり投の斎藤を含めて男子19名、女子10名に上る。(このリストには既に参加標準記録を突破した選手を除いている)
この選手たちは資格記録の最終期限となっている6月26日以降に発表されるWAの最終ランキングに名を留める事が出来ていれば、晴れて世界陸上の参加資格取得選手となる。この選手の中ではボーダーから100点近く離している男子走高跳の戸邊、走幅跳の橋岡、女子やり投の北口の三人は出場の安全圏内に入ったと思われるが、それ以外の選手にとっては現在はダイヤモンドリーグ、コンチネンタルツアー、そして日本同様に各国でナショナルチャンピオンシップが開催され、昨年の東京五輪直前のようにランクが大きく変動する事も予想されるため、今大会でまず参加標準記録を目指すとともに、標準記録には届かずともきっちりと好記録をマークして3位以内を確保し、高いポイントを得る事が世界陸上出場の可能性をより高めるために必要となってくる。
安全圏内に近づきつつある女子走幅跳の秦とて油断は禁物だろう。

■ 参加標準記録を突破ならずとも好記録ならば代表内定の可能性も

また現在WAのランキングではターゲットナンバーの圏外だが、日本選手権の結果によっては届きそうな位置に付けている選手は

男子100m
56位 小池祐貴 1165P※TNの48位まで11P

男子200m
59位 染谷佳大(大和ハウス)1138P※56位まで1P
60位 上山紘輝(住友電工)1136P※3P

男子400m
56位 ウォルシュ・ジュリアン(富士通)1136P※48位まで18P

男子110mH
45位相当 藤井亮汰(三重県スポーツ協会)1181P※日本人選手5番手、3番手の野本まで17P
45位相当 石川周平(富士通)1179P※10P、※日本人選手6番手、野本まで19P

男子400mH
42位相当 山本竜大(SEKI A.C.)1152P※日本人選手4番手、3番手の岸本まで15P
42位相当 松下祐樹(ミズノ)1149P※※日本人選手5番手、岸本まで17P

男子走幅跳
41位 山川夏輝(佐賀県スポーツ協会)1143P※32位まで18P

男子やり投
37位 小椋健司(栃木県スポーツ協会)1106P※32位まで10P

女子800m
55位 田中希実 ※48位まで10P

女子100mH
45位 福部真子 (日本建設工業)1162P ※40位まで9P

女子3000m障害
46位 石澤ゆかり(日立)1146P ※45位と同ポイント、ランクに反映される3レースのうち、最も高いポイントの違いによる

となっている。

こうした選手たちも、参加標準記録の突破を狙いつつ、ランキングでの出場に望みををつなぐために、少しでも良い記録を出して3位までに入っておきたいところだ。
特に注目しておきたいのが、日本の女子選手として史上初となる同一大会800m、1500m、5000mの中、長距離3種目出場を視野に入れている田中の800mと、今季大きく記録を伸ばしている100mHの福部。この2種目は資格記録期間内の5レースで得られるポイントの平均がランキングポイントとなるが、田中は現在の1126Pのうち5番目が1059Pと低く、優勝すれば100点と高いポイントが付加される今大会で自己ベストの2分2秒36を記録して勝つことが出来れば、1220Pを獲得することになり、このポイントが1059ポイントと入れ替わた場合ターゲットナンバー48位圏内の38位に相当する1158点にまで伸ばすことが可能だ。
また5月のセイコーGGPで13秒05の自己ベストで2位に入りランキングを大幅に上昇させた福部も今大会でも自己ベストで優勝できれば、1243点以上を獲得する事になり、5番目のポイントと入れ替えるとポイントは1187点となりランキングも34位まで浮上する。

■ 日本選手権後の戦略によってはさらなる代表内定者

ここまで名前の上がっていない男子200mの飯塚翔太(ミズノ)、400mHの山内大夢(東邦銀行)、安部孝駿(ヤマダホールディングス)といった東京五輪代表の選手たちは、ランキングポイントでターゲットナンバーまでの差が開いており、世界陸上代表を得るためには、参加標準記録を切って決勝で3位以内に入る以外には道がない、厳しい状況にあると言うことが出来る。

飯塚と同様、WAランキングで圏外となっている多田、サニブラウン・ハキーム(TumbleweedTC)を含む男子100mの選手に関しては、今大会で3位を確保し、6月25、26の両日に行われる、昨年山縣亮太(セイコー)が9秒95の日本記録をマークした布勢スプリントでラストチャンスに賭ける道も残されている。
布勢スプリントでは男子100m以外にも女子の100m、男子110mH、女子100m、男女走幅跳、男女三段跳が行われ、これらの種目の選手にとっては男子100mの選手同様にこちらがラストチャンスとなる。
男子走幅跳の山川にとっても、日本選手権で参加標準記録に届かなくとも、8m00を超える記録を出して置けば、布勢で更に出場圏内までランキングを上昇させる事が可能になってくる。

布勢と併せてWAランキングを出場圏内まで浮上させる事を期待したい選手に、女子走幅跳の高良彩花(筑波大学)もいる。勿論、参加標準記録を突破するのが1番の道で、まずそちらを目指すのが大前提だが、現在高良は1123点でランキング45位、ターゲットナンバーまで36点とやや離されているが、今季は関東インカレで6m38を記録するなど調子が上がってきている。田中、福部同様、ランキングポイントに反映される4番目、5番目のポイントが1086点、1080点と高くないので、日本選手権で自己記録の6m44を上回る6m50まで記録を伸ばし、さらにもう一度布勢で同様の記録が出せれば、現在のボーダーである1159点付近まで迫ってくる。ランキングでの出場安全圏内に迫りつつある秦と共に、高良がユージンの地に立つ姿が見てみたい。

男女の800m、1500m、3000m障害、5000m、そして5月に日本選手権を終えた男女10000mの選手達にもラストチャンスの舞台として、北海道・深川で行われるホクレンディスタンスチャレンジ20周年記念大会が用意されており、男子800mで1分45秒85と世陸参加標準記録の1分45秒20の突破が見えてきている金子魅玖人(中央大学)、今季1分46秒17まで記録を伸ばしてきた薄田健太郎(筑波大学)、男子5000m東京五輪代表の松枝博輝(富士通)といった選手たちにとっては、日本選手権でまず順位を確保して、大阪より気温も涼しいホクレンDCにすべてを賭けるというように、選択肢が拡がったが、どちらの大会でも攻めの走りをする覚悟がなければ、世界陸上代表への道が開けないのではないだろうか。

注目種目と選手 複数選手が参加標準突破を見せるかもしれない400mHと女子5000mの代表争い

最後に今年の日本選手権で最も注目している種目を一つ挙げるならば、それは男子の400mHだ。
世界陸上代表へ向けては東京五輪代表の黒川が世界陸上の参加標準を突破して最も有利な立場にいるが、先の関東インカレではその黒川に引っ張られるように、陰山彩大(日本大学)、 出口晴翔(順天堂大学)、 岡村州紘(日本大学)の3選手も49秒台をマーク、特に49秒31まで一気に伸ばしてきた陰山からは勢いが感じられ、前年の黒川のように一気に代表まで上り詰めるだけのポテンシャルを秘めていそうだ。
黒川は世界選手権の本番を想定した突っ込んだ入りを見せるものと思われ、WAランキング2番手を巡ってはロンドン五輪代表の岸本、ドーハ世界陸上代表の豊田将、昨年の不振から復調してきた山本に、ベテランの松下の4人が激しく競っており、昨年の大会のように複数の選手が参加標準記録を上回ってくることもあるかもしれない。

勿論女子5000mの勝負の行方からも目が離せない。東京五輪代表の廣中、萩谷、田中が揃い踏みし、加えて木村、佐藤が参加標準記録を突破しており代表3枠をめぐっての激戦が予想される。

また、個人では世界とはまだまだ記録の差があるが、男子砲丸投のアツオビン・ジェイソンに日本人選手初の19m台への期待が掛かり、数は同じ3種目でも田中希実よりもきついかもしれない女子1500m、3000m障害、5000mにエントリーしている森智香子(積水化学)の走りにも注目しておきたい。

この日本選手権を終えて何人の代表内定選手が誕生しているか、非常に楽しみだ。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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