ロードシーズン開幕を告げる学生三大駅伝初戦、 第34回出雲全日本大学選抜駅伝競走のみどころ

ロードシーズンの幕開けを告げる第34回出雲全日本大学選抜駅伝競走が10月10日に迫ってきた。出雲大社正面鳥居前をスタートし、出雲ドーム前をフィニッシュ点とする6区間45.1㎞のコースに今年も全国の地区学連から選抜された20チームが集結し覇を競う。最長区間の6区でも10.2㎞と学生三大駅伝のなかでは距離が短いのが最大の特徴だ。
関東学連の有力校は箱根を睨み、夏場の合宿では長い距離を走るための体力強化に主眼を置いて多くの距離を踏んでいるため、その上での短い距離でのスピード面での整合性が求められてくる。トラックスピードの裏付けのある選手が起用され、大きな差が付きにくいスリリングな展開となる事が多いが、距離が短い故に序盤から前に見えるチームを追ってオーバーペース気味に突っ込んで、ラスト勝負で却って離されるといった事も起こりやすい。
また時には25℃近くとなるまだ暑さの残る10月初旬という開催時期に加えスタート時刻も13時05分と走り始めてから気温も上昇していくため思わぬアクシデントに見舞われる事もあり、なかなか事前の下馬評通りとはならない、一筋縄では行かない大会でもある。

今年の出雲も激戦必至の様相だが、そのなかで優勝争いを演じるトップグループと見られるのは、昨年の大会を制した東京国際大、今年の箱根覇者の青山学院大に、東京五輪3000m障害7位入賞で今季はオレゴン世界陸上の後ダイヤモンドリーグを転戦し、ファイナルでは4位と健闘した三浦龍司を擁する順天堂大、オレゴン世界陸上10000m代表の田澤廉がエースとして控える駒澤大学の関東学連の4校か。

東京国際大は昨年に1区、2区を任されて流れを作り、初優勝に大きく貢献した山谷昌也(4年)と佐藤榛紀(2年)がエントリーを外れたが、ロードでもトラックでも桁外れの爆発力を見せる大砲Y・ヴィンセント(4年)に加え、ロードで無類の強さを見せる丹所健(4年)の存在が非常に大きい。他チームにとってはおそらくヴィンセントが任される最終区間までに出来るだけリードを稼いでおきたいところなのだが、昨年同様に中盤の重要区間で丹所が起用されるようであればそれも難しく、ライバル校の区間編成に重圧を掛ける存在と言えるだろう。懸案は1区、2区となるが、昨年は1年生ながら4区を担って好走した白井勇佑(2年)、今年の箱根で6区を担った林優策(3年)、箱根7区6位の冨永昌輝(2年)、8区6位の村松敬哲(3年)ら人材は豊富だ。

青山学院大はエース格の一人、岸本大紀(4年)や箱根の山登り5区で3位と好走した力のある2年生若林宏樹を欠くが、岸本と並ぶもう一人のエース、近藤幸太郎は日本インカレ5000mで二連覇を飾るなど健在。
箱根9区で区間新をマークした中村唯翔(4年)、箱根で1区を任された志貴勇斗(3年)の実績組に加え、昨年5区を担い、5000m13分37秒93とチーム有数のスピードを誇る目片将大(4年)や、今年2月の別大に挑戦したスタミナを誇る横田俊吾(4年)はトラックスピードも付いてきてメンバーに入り、同じく別大に挑戦した宮坂大器(4年)が故障で出遅れていたものの学内選考会で3位に入ってメンバーに滑り込むなどロード経験を積んでいる3年、4年の上級生を中心にバラエティーに富んだ布陣で勝負を賭ける。

どうしても三浦に目が行きがちな今年の箱根駅伝総合2位の順天堂大だが、箱根3区3位の伊豫田達弥(4年)を中心に、4区2位の石井一希(3年)、5区5位の四釜峻佑(4年)、一昨年の箱根で2区を担った野村優作(3年)らが三浦の存在に刺激を受けてロードの強さにトラックスピードを兼ね備える選手に成長を遂げており、そんな選手たちのレースぶりからは世界を舞台に活躍をする三浦に必要以上の負担を掛けまいとする意志と意地が強く滲み出ており、結果として三浦に大きく依存しなくとも戦えるだけのチーム力が整うことに繋がっている。
「加えて」久々のロードとなる三浦がどの区間に配置され、どういった走りでチームに貢献を果たすのかに注目してみたい。

オレゴン世界陸上10000mに出場し、学生長距離界のエースから国内長距離トラックのエースへと成長を続ける田澤廉(4年)を擁する駒澤大学だが、その田澤の世界陸上後の疲労度が懸念される。10000mで27分41秒68の自己記録を持ち、田澤に次ぐ力の有る鈴木芽吹(3年)もエントリーされたが、8区18位に終わった箱根以来の実戦となるため出場自体が微妙なところ。今年2月、中止となった丸亀ハーフに代わって招待された実業団ハーフで1時間00分40秒の日本人学生記録を打ち立てた山野力(4年)の存在は頼もしく、今年8月に行われたカリU20世界選手権3000m、5000m代表のスーパールーキー佐藤圭汰の学生駅伝デビューは楽しみだが、優勝を手にするには今季5000mで13分37秒01まで記録を伸ばしながら日本インカレで13位に終わった安原太陽(3年)や、箱根4区9位の花尾恭輔らの奮起も必要となってきそうだ。

この4校を追いかけるのが國學院大、東洋大、中央大の3校。
國學院大は4年生エースの中西大翔が日本インカレ5000mで青山学院の近藤に次ぐ2位に入りこの秋の充実ぶりが伺えるうえ、関東インカレ2部ハーフマラソン優勝の伊地知賢造(3年)実業団ハーフで1時間00分43秒をマークした山本歩夢(2年)、昨年の大会で1年生ながらアンカーを務め、箱根駅伝では9区を区間2位で走った平林清澄(2年)と力の有るランナーが揃う。

東洋大は8月の北海道マラソンで柏優吾(4年)が2位、清野太雅(4年)が6位と快走していることから、この夏の合宿で相当な距離を踏み、ロードシーズンに備えた体力強化を図ってきた事が伺える。児玉悠輔(4年)、石田洸介(2年)とスピードにロード力を兼ね備えた主力は順当にエントリーされたが、エースの松山和希(3年)が柏、清野と共にエントリーを外れたのがマイナス材料。距離は長いほど良いタイプのキャプテン前田義弘(4年)や箱根3区8位の佐藤真優(3年)らの走りが優勝争いに絡んで行けるかのポイントになりそうだ。

中央大学は吉居大和(3年)、駿恭(1年)の吉居兄弟に中野翔太(3年)、溜池一太(1年)が先週新潟で行われたAthletics Challenge Cup 2022の5000mに、千守倫央(4年)が日体大記録会5000mに出場と多くの選手が直前に強めの刺激を入れてきた事が結果としてどう出るか。
特に今や押しも押されもせぬエースとなった感のある吉居兄は、新潟ではハイペースを刻んだPMに付いていったためレース後半に動きが鈍って14分19秒19の13位に留まっており、やや消耗も感じられたところが懸念材料だ。この短期間で立て直すことが出来ているかが中央大の浮沈に直結しそうだ。

関東学連の代表校とその他の学連の代表校の間ではチーム力に開きがあるが、個人を見ていくと、昨年の日本インカレ10000mで日本人選手のトップとなった関西学院大の上田颯汰(4年)や、今年の日本インカレで日本人選手トップとなった関西大学の亀田仁一路(3年)は関東学連の主力クラスとも互角に渡り合える力が有り、実力者を抑えての区間賞獲得となるかにも注目したい。

学生駅伝はそれぞれその特性が異なるとは言え、出雲での好走は1か月後に控える全日本大学駅伝に向け、チームに勢いを齎すことが出来る。
母校の襷を胸に、出雲ドームに真っ先に姿を現すのはどのチームか、今年も学生ランナーの熱い戦いは出雲路から始まる。

*区間エントリー発表の前に書かれた記事です

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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