六連覇の懸る名城大、注目選手は山本有真!拓殖大・不破聖衣来の復調なるか!
第40回全日本大学女子駅伝対校選手権大会のみどころ

第40回全日本大学女子駅伝対校選手権大会が10月30日、仙台市の弘進ゴムアスリートパーク仙台をスタートし、仙台市役所前市民広場をゴールする6区間38.1㎞のコースで行われ、昨年大会上位7校に(8位の松山大学は欠場)に各地区学連代表の12校、これらの大学を除く5000m6名の合計記録上位の6校を加えた25校に、オープン参加の地元東北学連選抜チームを加えた計26チームが今年の大学駅伝日本一を賭けて、街路樹の色づき始めた杜の都を駆け抜ける。

優勝候補の筆頭は大会五連覇中の名城大だ。
直前のコロナウィルス感染で出場は叶わなかったが、オレゴン世界陸上10000m代表に選ばれたエース小林成美(4年)に加え、今季トラックで自己記録を伸ばし、小林と並ぶ2枚看板となるまで力を付けてきた山本有真(4年)の成長が非常に頼もしい。


山本は、昨年は1区区間賞で流れを作り優勝に貢献、今年に入ると4月に行われた学生個人選手権の5000mを制し、5月4日のゴールデンゲームス延岡での5000mでは自身初の15分30秒切りとなる15分23秒30の好タイムで日本人選手トップに入るなど春先から好調をキープ。
秋に入って9月の日本インカレ5000mを制すと、10月10日に行われたとちぎ国体の5000mでは、オレゴン世界陸上10000mの激走後の調整段階であるとはいえ、5000m日本記録保持者で東京五輪10000m7位入賞の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)をラスト1周で7秒千切る15分16秒71の大会新記録の激走で優勝を果たし、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
昨年には一時期「普通の女の子のような学生生活を過ごしたい」と休部して陸上から距離を置いたこともあったようだが、そうした経験で迷いが吹っ切れたのか部に戻ると「今は陸上が一番」としっかりと意志を持って走り込むなど、ひたむきに競技に向き合いながら練習に打ち込んできたことが結果にも表れている。
国体の直前、名城大のある名古屋の中京テレビの密着インタビューの中で、「格上」の廣中と競う事になるがと尋ねられ「そうはいっても同い年なので、ラスト1周まで付いて行き、ラストスパートで勝負が出来れば」と語っていたその通りの走りを見せつけた気持ちの強さも魅力の一つだ。


小林、山本の他にも昨年の大会4区を担った谷本七星(2年)最終6区を任された増渕祐香(3年)の「区間新記録コンビ」も健在なうえ、日本インカレ10000mで拓殖大の不破聖衣来(2年)には屈したものの2位に飛び込んだ原田紗希、日本選手権の1500mで4位と健闘した柳樂あずみの1年生二人に、スパールーキーの呼び声が高かった米澤奈々香も10月1日に行われた日本GP新潟大会の5000mで15分31秒63と自己記録に0秒3まで迫る好走を見せるなど調子が上がってきており、六連覇へ向けて盤石の布陣を組むことが出来そうだ。

名城大の優位は揺るぎそうもないが、待ったを掛けたいのが2011年から2015年まで大会五連覇を含む10度の優勝を誇る立命館大だろう。2020年の第38回大会で4位となり、2003年の第21回大会から17回連続で死守してきた3位表彰台の座を明け渡し、挽回を期して臨んだ昨年も4位。
日本インカレ5000mで名城大山本に続く2位に入った村松灯(2年)、日本インカレ10000m3位の飛田凛香(4年)を中心に前半3区までに出遅れることなくレースの流れに乗り、名城大に食らいついていきたい。

昨年の大会で最長区間の5区9.2㎞を28分00秒と破格の区間新記録をマークし、その後トラックの10000mで当時の日本歴代2位となる30分45秒21を叩き出し、女子長距離界のホープとして脚光を浴びている不破聖衣来を擁する拓殖大は、4年となった牛佳慧に加え、近藤萌子(2年)、古沢日菜向、新井沙希(共に1年)といった選手たちが今月に入り日体大記録会や静岡県記録会で自己ベストやそれに近い記録をマークして順調な仕上がりを窺わせ、不破の活躍が大きな比重を占めた昨年3位からの上積みへの期待が膨らむが、それでもやはり、今春故障と持病の貧血で大会出場もままならなかったエース不破のコンディション次第。
「良い時から見れば50%ほどの仕上がり」で臨んだという日本インカレの10000では前半は探り探りコンディションを確認するような走りではあったが、7000mでペースを上げるとそのまま押し切り、2位に14秒の差を付ける32分55秒31で優勝を果たし、力の違いを見せている。
現状は「6割から7割」の出来とも伝えられている事も有り、順調に来ていた昨年の走りを求めるのはやや厳しいようにも思われるが、今年も5区を走るのであれば同区間で相まみえることになりそうな、昨年からトラックで数々の名勝負を演じている名城大の小林も夏場のコロナウィルス感染から復帰後も本来の走りには至っておらず、もう一人のエース格で勢いのある山本もトラック10000mの経験がなく、力は有るがこの距離での走りは未知数な面もあり、名城大から1分以内の差で襷が不破に渡り、5㎞地点までに背中が見えるくらいまで差を詰めるような展開になれば、駅伝ブーストであわやの場面が訪れる可能性がないとは言えない。

昨年2位の大東文化大は、エース鈴木優花(現第一生命グループ)の卒業で抜けた穴を埋め切れておらず、オレゴン世界陸上3000m障害代表の吉村玲美や昨年アンカーを務めた山賀瑞穂ら力の有る4年生がいるものの、悲願の初優勝はやや厳しいか。世界陸上以降は実戦から遠ざかる吉村のコンディションも懸念材料だ。

むしろ表彰台を巡っては、日本インカレ1500mで2位、5000mでも3位と共に表彰台に上った尾方唯莉(2年)や5000m日本インカレ4位で昨年の日本インカレ1500mを制した実力者保坂晴子(3年)を擁する昨年5位の日本体育大に勢いが感じられる。この秋まだ実戦がないが、5000mで15分33秒49の自己ベストを持つ山崎りさ(2年)もエントリーされており、上位争いに加わる陣容は整っている。

上位8位までに与えられる来年の大会への出場権争いを巡っては、昨年6位の大阪学院大や7位の城西大は今年も有力、部員不足のため出場が叶わなかった昨年8位の松山大に変わって、地道な強化が身を結び始めている昨年9位の東北福祉大や、エース北川星瑠に力が有る大阪芸術大学、昨年10位の関西大学などが絡む混戦となりそうだ。

個人に目を向けると、これまでに名前を挙げた名城大の山本や小林、拓殖大の不破、大東大の吉村の他に、筑波大の樫原沙紀(3年)、澤井柚葉(3年)、川島実桜(2年)、順天堂大の小野汐音(4年)といったトラックシーズンでは中距離路線で学生トップクラスの活躍を見せる選手たちが、距離も長く、勝手も違うロードレースでどのような走りを見せるのかにも注目したい。

杜の都に笑顔の花を咲かせるのはどの大学となるか、10月30日12時10分、号砲と共に38.1㎞の熱き戦いの幕が上がる。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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