オレゴン世界陸上男子10000m代表田澤廉らがブダペスト世界陸上参加標準記録に挑む!
八王子ロングディスタンス2022のみどころ

陸上界は既にロードシーズンの真っ只中にあるが、男子トラック10000mではこの時期恒例の八王子ロングディスタンスが、今年は昨年行われた八王子市上柚木公園陸上競技場から町田市の町田GIONスタジアムに舞台を移し、11月26日に開催される。
東京五輪10000m代表の相澤晃(旭化成)や昨年の大会で好結果を残した東京五輪、オレゴン世界陸上同種目代表の伊藤達彦(honda)の名前こそないが、今年も来年のブダペスト世界陸上代表やパリ五輪代表を目指す実業団、学生のトップ選手や、国内実業団所属のケニア人選手が多数エントリーし、記録面での期待も高まる。

エントリー選手の顔ぶれを紹介する前に、男子10000mを取り巻く現在の状況を簡単に説明すると、まずブダペスト世界陸上の参加標準記録が27分10秒00と、東京五輪、オレゴン世界陸上の標準記録の27分28秒00から大幅に引き上げられて相澤の自己ベスト27分18秒75を上回る水準となっており、これはこの夏のオレゴン世界陸上に向けて標準記録を突破する選手が出場枠の27に迫る人数に上ったためと考えられる。
WAの発表している2022年のシーズントップリストを参照すると、現在のところアメリカのG・フィッシャーの26分33秒84を筆頭に、11人の選手がこの記録を上回ってきている。
また、ブダペスト世界陸上でも東京五輪、オレゴン世界陸上に引き続きWAランキング上位選手にも出場資格が与えられるが、現在日本人選手で資格記録の適用期間となる2022年1月以降のランキングで出場圏内の27位までに入っている選手はおらず、相澤が1190ptの29番手で日本人最高位にランクされ、ボーダーラインまでは14pt差となっている。因みにボーダーラインとなる1204ptはWAのスコアリングポイントに当てはめると、27分14秒18となる。(但し大会のカテゴリによって付与される順位ポイントは考慮していない。)

また、日本人選手の2022年男子10000m10傑は次の通りとなっている。
①清水歓太(SUBARU)27:31.27(3月6日、アメリカ・Sound Running TEN)
②伊藤達彦(Honda)27:42.48(4月9日、金栗記念)
③相澤 晃(旭化成)27:42.85(5月7日、日本選手権)
④市田 孝(旭化成)27:48.22(4月9日、金栗記念)
⑤塩尻和也(富士通)27:53.00(10月1日、日体大記録会)
⑥大池達也(トヨタ紡織)27:53.79(5月7日、日本選手権)
⑦太田智樹(トヨタ自動車)27:54.88(5月7日、日本選手権)
⑧大石港与(トヨタ自動車)27:57.32(10月8日、中部実業団選手権)
⑨松枝博輝(富士通)27:57.72(5月7日、日本選手権)
⑩菊地駿弥(中国電力)27:57.95(7月13日、ホクレンDC網走大会)

今年の八王子ロングディスタンスも例年通り、目標タイム別に7組の番組設定となっており、この10傑に入る選手では最も速い27分30秒のタイム設定となった最終7組に塩尻、太田智が、28分切りを目指す第6組に清水、菊地のエントリーが有り、この他、最終組にはオレゴン世界陸上代表で27分23秒44の日本人学生記録を持つ田沢廉、27分41秒68の日本人学生歴代3位の鈴木芽吹の駒澤大コンビに、昨年の大会で27分48秒42の好記録をマークした田村友佑(黒崎播磨)、今年の箱根駅伝1区21.3㎞で1時間40秒と驚異的な区間記録を打ち立てた吉居大和(中央大)が最終組にエントリーしている。

注目選手の筆頭はやはり田澤だ。今年のトラックシーズンでは東京五輪出場を目指し、27分台を連発していた昨シーズンの反動もあってか、10000mではなかなか本来の走りを見せる事が出来ず、初の代表となった7月のオレゴン世界選手権でも28分24秒25の20位と世界の壁に跳ね返された。
しかしこの貴重な経験を経たこの秋、出雲駅伝こそ4区で創価大のP・ムルワに次ぐ区間2位だったが、全日本大学駅伝6区では区間新記録の快走でムルワにリベンジ、いずれの大会も優勝に大きく貢献しエースとしての役割もしっかりと果たし、コンディション的にも自己記録を出した昨年12月の日体大記録会当時と比べても遜色ないところまで戻ってきているようだ。
ブダペスト世界陸上の参加標準記録の27分10秒にどこまで迫れるか、或いは一気に突破することはあるのか、このタイムを目指すのであれば26分台のベストタイムが有るS・ワイザカ(ヤクルト)やB・コエチ(九電工)が今回エントリーをしておらず、余裕を持って引っ張り切れる選手を欠く事になるのでやや厳しいように思われるが、G・ロノ(GMOインターネット)やC・ワンジク(武蔵野学院大)らケニア人選手特有のハイペースの中での小刻みな駆け引きを耐え抜き、R・ヴィンセント(東京国際大)を振り切った昨年12月の日体大のような最後の絞り出しを見せる事ができれば、その可能性も出てくるのではないだろうか。

また、塩尻は10月の日体大で自身3度目の27分台を出して好調さが感じられ、この春の10000m日本選手権を回避していた田村友佑も、先日の九州実業団駅伝では1区を担い区間賞の走りを見せて復調してきており、共に自己記録の更新に期待が懸る。
駒澤大の鈴木は出雲駅伝で箱根駅伝以来の復帰を果たしたが、全日本大学駅伝は出場を回避しており、コンディション面がやや気懸り。
中央大の吉居大和はトラック10000mに関しては、ロードで見せるような圧倒的な走りを見せる事が出来ていないので、まずは自身初となる27分台を確実に記録しておきたいところだ。
今年、日本人選手で最も速いタイムで10000mを走っている清水はコンディションが整わなかったか、27分30秒を目指す最終組にエントリーしてこなかったのは残念だが、ここを走って少しでもコンディションを上げ、来年には代表を争うレベルまでまた上がってきて欲しい。

昨年はB組で8名、A組で14名と計22名の日本人選手が27分台を記録し、その中から鎧坂哲哉(旭化成)がその後マラソンに挑んで7分台、相葉直紀(中電工)、古賀淳紫(安川電機)が8分台、野中優志(大阪ガス)も9分台をマークと結果を残しており、トラックの記録に留まらず、日本長距離界の取り組みの成果を感じさせる大会だった。そうした観点からみれば、6組に出場予定の今季途中から旭化成に移籍したマラソンで2時間6分25秒の記録を持つ土方英和、この秋にロンドンマラソンで2時間7分50秒を叩き出した丸山竜也(トヨタ自動車)、シカゴマラソンで2時間8分6秒で6位となった細谷恭平(黒崎播磨)、さらに吉田祐也、下田裕太(ともにGMOインターネットグループ)といったすでに来年秋に予定されているパリ五輪マラソン代表決定選考会となるMGCへの出場権を手にしている選手たちが次のフルマラソンに向けてどのような走りを見せてくれるのか、といったところにも注目しておきたい。

今年の八王子ロングディスタンスでも昨年同様に実り多き大会となるか、その結果が楽しみだ。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

記事への感想お待ちしております!twitterもやっています。是非フォローおねがいします!(https://twitter.com/ATHLETE__news

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close