最注目は女子5000m、廣中、田中の五輪代表に名城大の山本が挑む!エディオンディスタンスチャレンジin京都2022のみどころ

福岡国際マラソン、防府読売マラソンが終わり、年内の陸上競技の大会も残り僅か。
来年夏にはハンガリー・ブダペストで開催される世界陸上を控えるが、昨年の東京五輪で複数の入賞選手が誕生したトラック長距離で、ブダペスト世界陸上の参加標準記録を突破している選手は男子3000m障害の三浦龍司(順天堂大)と女子10000mの廣中璃梨佳(日本郵政グループ)の二人と、標準記録が昨年の東京五輪や今年7月に開催されたオレゴン世界陸上より高い水準となったためか、ここまでのところやや寂しい数字に留まっている。
このような状況の中、昨年の大会で女子5000mの木村友香(資生堂)、女子10000mの五島莉乃(資生堂)の二名が世界陸上参加標準記録を突破した、エディオンディスタンスチャレンジin京都が12月10日にたけびしスタジアムで開催される。年内に記録を狙う事の出来る絶好の機会とあり、多くの有力選手がエントリーしている。

女子3000m、男女の5000m、男女の10000mの5種目が実施される今年の注目は女子5000m。
東京五輪10000m7位入賞の廣中、東京五輪1500m8位入賞の田中希実(トヨタ自動織機)の年内最後のライバル対決が実現しそうだ。
今期廣中は体調不良が有り、初戦が5月の日本選手権10000mからとなり、オレゴン世界陸上では順位こそ12位と東京五輪に続く入賞は果たせなかったが、30分39秒71と自身初の30分台となる自己ベストでブダペスト世界陸上の参加標準記録を突破。その後は国際大会が毎年続く今後の日程を見据えつつ蓄積した疲労の回復を優先しながら大会に出場しているようで、9月は1500mや3000mの出場に留め、10月には5000mを二本走って日本GP新潟大会で田中に続く日本人選手2番手、栃木国体でも山本有真(名城大)に敗れて2位となり、11月の全日本実業団女子駅伝ではエース区間の3区10.9㎞で僅か1秒新谷仁美(積水化学)に後れを取り駅伝での不敗記録を止められるなど、リザルトに2の数字が続いているが、内容としては少しずつ調子を上げてはいるようだ。

田中は今年、800m、1500m、5000mの3種目で世界陸上に出場することを目標に掲げ、思い悩みながらもその偉業を達成。800mでは予選敗退、1500mで東京五輪に続く決勝進出を果たせなかったが、東京五輪で予選通過を果たせなかった5000mでは決勝に進出して12位となり、すべてのレースを終えた後には涙を見せていたという。
廣中ともども東京五輪入賞者としての期待や重圧を受けるシーズンの中で、オレゴンの後もブダペスト世界陸上代表へ向けて、9月には全日本実業団選手権の5000mに出場し、ラスト1周から猛烈なスパートを見せて自己記録となる14分58秒60、その翌週の日本GP新潟大会でも同じような展開で14分59秒95をマークしたが標準記録の14分57秒00には僅かに届かず、レース後には「今シーズン、記録を狙って走るのはこれが最後」と語り、以降は1マイルのロードや全日本実業団女子駅伝1区、甲佐5㎞ロード等を走ったが、この大会への出場にも踏み切ってきた。

これまでの二人の対決は2018年の日本選手権での田中の先着を皮切りに田中の5勝、廣中の2勝、2020年の12月には東京五輪の代表を巡り激しい鍔迫り合いを繰り広げ、食い下がる廣中を残り200mからのラストスプリントで田中が突き放した名勝負も有った。
今期も田中が2戦2勝だが、自己記録は勿論14分52秒84の日本記録を持つ廣中が上。8度目の対決からどのようなドラマが生まれるか、世界陸上参加標準記録に届くのか、注目したい。

今期自己記録を大きく伸ばし成長著しい山本有真(名城大)も同い年の廣中を強く意識する一人。
4月の金栗記念では1500mで4分18秒52、5月のゴールデンゲームズのべおかでは5000m15分23秒30の自己記録をマークするなど春先から好調で、秋には日本インカレの5000mも初制覇。国体出場を前に地元愛知県のテレビ局のインタビューで廣中について尋ねられ、「向こう(廣中)はずっと先を進んでいて、自分の事は知らないかもしれないけど、言っても同じ人間なのでずっと勝てない訳ではないと思う、いつかは勝ちたい」と答えていたが、その栃木国体では15分16秒71の自己記録更新で調整途上だったとはいえ廣中を抑えて優勝を果たし、そのいつかは早くも訪れた。
その後は全日本大学駅伝で3区区間新記録をマークして名城大の史上初の六連覇に大きく貢献、12月3日に行われた日体大長距離記録会の3000mでは再び廣中に先着している。
陸上ファンの注目度も上昇している山本が、勢いのまま田中、廣中の2強の争いに割って入る事も有りそうだ。

萩谷楓(エディオン)もオリンピアンとしてのプレッシャーと闘う1年を過ごした一人。昨年の全日本実業団女子駅伝1区での転倒のアクシデントの後、なかなか本来の走りを取り戻すことができないまま挑んだオレゴン世界陸上は予選敗退となり、その後も苦闘が続いているが、今年の全日本実業団女子駅伝では昨年と同じ1区を任され、順位こそ4位ながら、6選手による激戦を切れ味のあるラストスパートで制しており、不振の底から抜けつつある。来年以降も続く国際大会を見据え、完全復調への手応えを得ておきたいレースだ。

今年女子3000m障害で日本歴代3位の9分38秒95をマークした関西外語大卒、実業団1年目で飛躍的成長を遂げた西出優月(ダイハツ)は、1500m、3000m、5000mでも自己ベストを更新し、全日本実業団女子駅伝では、3.3㎞の2区を任され一時は4位集団から離され8位まで順位を落としながら、中継点では4位から4秒差の6番手で襷を渡す粘りを見せるなど、地の走力も着実に上がってきている。持久力の向上や体力強化に主眼を置いた出場と思われるが、ここでも更に15分43秒09の自己記録を上回ってくるようであれば、来シーズンには主戦場である3000m障害での日本記録更新や、世界陸上参加標準記録突破が楽しみとなってくる。

その他、全日本実業団1区を好走した岡本春美(ヤマダHD)、全日本大学駅伝1区区間賞で名城大に勢いを付けた米澤奈々香も要注目だ。

女子10000mはエントリーの有った、昨年12月の関西ディスタンスチャレンジで当時の日本歴代2位となる30分45秒21をマークして脚光を浴びた不破聖衣来(拓殖大)、昨年の大会で5000mのオレゴン世界陸上標準記録を突破し、今年の全日本実業団駅伝では1区を任されてスタート直後から飛び出し、田中希実を大きく引き離す区間賞で資生堂の優勝に貢献した木村友香の欠場が明らかになっている。
木村と同じく昨年の大会の10000mで標準記録を突破し、今年5月の日本選手権で3位となってオレゴン世界陸上に出場した五島莉乃にとっては競い合えるライバルを欠き、記録を狙うには好条件とは言い難くなってしまったが、オレゴン世界陸上後は10月に31分44秒52のシーズンベストをマーク、全日本実業団駅伝でも5区10㎞を31分40秒と自身の持つ区間記録に迫る走りを見せて区間賞と調子を上げてきており、昨年の大会で見せたように単独走となってもしっかり走る事の出来るタイプなので、30分40秒00のブダペスト世界陸上参加標準記録にどこまで迫ってくるか、期待をしたい。

男子は2週前に八王子ロングデイスタンスが開催されており、男子有力選手のエントリーは女子に比較して少なかったが、更に男子5000mでは昨年の大会で好記録をマークしていた塩尻和也(富士通)、砂岡拓磨(コニカミノルタ)が欠場となり、持ちタイムで見れば東京五輪5000m坂東悠汰(富士通)が一人突出した存在となった。
坂東はオレゴン世界陸上代表を逃したが、10月の日本GP新潟大会の5000mを13分21秒94で制し、調子は上がってきている。N・ワウエル(中国電力)、M・サムウェル(kao)らケニア人実業団選手に食らい付き、13分07秒00のブダペスト世界陸上標準記録を目指したい。
この坂東に1500mの日本記録保持者の河村一輝(トーエネック)前日本記録保持者の荒井七海(honda)がどこまで絡んで行けるか、また今年2月の大阪マラソンで2時間7分52秒をマークしMGC出場権を獲得した浦野雄平(富士通)の久々のトラックレースでの実践にも注目したい。

昨年の大会で5000mに出場し、13分16秒40の好タイムをマークして日本人選手最先着となった遠藤日向(住友電工)は10000mにエントリー。2017年以来となる久々のトラック10000mでどのような記録を叩き出すのか、5000mの実績からやはり27分台を期待したくなる。
2020年12月の東京五輪選考会で当時の日本記録を上回る27分28秒92で3位となりながら東京五輪参加標準記録に0秒92届かず、東京五輪出場を逃した田村和希(住友電工)その後故障が長引き、復帰後もなかなか記録が上がっていなかったが、夏のホクレンDC千歳大会の5000mでは13分27秒56をマークするなど、少しづつ本来の姿を取り戻してきており、東京で叶わなかったオリンピック出場をパリで果たすため、完全復活の足掛かりとなるレースにしたいところだ。

ブダペスト世界陸上の参加標準記録はオレゴン世界陸上時よりハイレベルな設定となり、これまで以上に高い壁となったが、東京五輪、オレゴン世界陸上同様にWAランキング上位での出場の道も有る。昨年の大会の五島、遠藤がそうだったように、この大会をきっかけに飛躍する選手が出てくることを期待したい。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

記事への感想お待ちしております!twitterもやっています。是非フォローおねがいします!(https://twitter.com/ATHLETE__news

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close