エディオンディスタンスチャレンジin京都2022が12月10日、たけびしスタジアム京都で行われ、東京五輪10000m7位入賞の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)と東京五輪1500m8位入賞の田中希実(豊田自動織機)のライバル対決で注目を集めた女子5000mは、15分06秒42で全体5位に入った田中が先着、廣中は15分17秒30で全体6位でゴールした。
また10月の栃木国体で15分16秒71の日本学生記録を打ち立て廣中に土を付けこちらも注目選手の一人だった山本有真(名城大)は15分25秒92で日本人選手4番手の全体8位、樺沢和佳奈(資生堂)が15分24秒79の全体7位で日本人選手3番手に食い込んだ。
男子5000mでは東京五輪5000m代表の坂東悠汰(富士通)が残り1周から切れの有るスパートを見せ、13分25秒16でM・サムウェル(Kao)らケニア人実業団選手を抑えて1着となり、マラソンでMGC出場権を獲得している浦野雄平(富士通)が13分29秒37で2着に続き、ここまでの順調な調整ぶりをアピールした。
女子10000mではオレゴン世界陸上10000m代表の五島莉乃(資生堂)が31分22秒38で、男子10000mは吉田圭太(住友電工)が28分13秒34でそれぞれ制した。共にペースメーカーが外れた8000m以降単独走となったが、ペースの落ち込みを最低限に留める後半の粘りを見せた。
昨年は二人がオレゴン世界陸上参加標準記録を突破した同大会だったが、来夏に行われるブダペスト世界陸上の参加標準記録を新たに破る選手は現れなかった。
14分57秒00のブダペスト世界陸上参加標準記録の突破を目指すペース設定となった女子5000mは、1000mの入りが2分56秒、2000mの通過が5分57秒、3000mも8分57秒と日本記録も充分狙えるペースで推移していたが、3000m手前で山本が集団から遅れ、3000mを過ぎたところで廣中も追走が厳しくなり、田中もJ・ジュプングティチ(資生堂)、A・ムカリ(京セラ)、K・P・カベケ(ルートインホテルズ)の残り4周からのペースアップに対応出来なかった。

田中としては10月の日本グランプリ新潟大会で14分59秒95をマークした際に「今シーズンは記録を狙うレースはこれが最後」と一度は話していたように、その後に開催が打ち出された今大会は当初の予定外だったと思われ、11月に1マイルのロードレースを2度走った後はクイーンズ駅伝の1区、その翌週の12月4日も熊本の甲佐ロードレースの5㎞に出場とロードレースが中心のスケジュールで、こうした中でもう一度記録を目指すためのスピード面での強度のあるトレーニングを行う時間が足りていなかったのかもしれない。
この日の田中のタイムは廣中との競り合いとなった、2020年12月に行われた東京五輪代表選考会の日本選手権5000mでの田中の優勝タイム、15分05秒65とほぼ同じ水準だったにも関わらず、それでも物足りないように感じてしまうのは、この間二人がこの種目の競技レベルをそれだけ押し上げてきた事の証左に他ならないのだが、世界の記録のレベルが上がってきているのもまた事実だ。
廣中は、現状やや苦戦を強いられているようにも感じられるが、昨年は9月の全日本実業団で1500mを走って以降トラックレースに出場していなかった事を考えれば、今年はオレゴン世界陸上以降もレースに出場し、ここ最近もクイーンズ駅伝で3区10.9㎞を走った後、その翌週の12月3日には日体大記録会の3000mに出場、そしてこの大会と3週連続の実戦となり少なくとも今年の春先のような体調面の不安は解消されてきており、来年以降も国際大会が続く事を念頭に置きながらの長期視野での調整途上とも考えられる。
自己ベストに及ばず順位も8位に終わった山本にとって、学生最後のトラックレースは悔しい結果となったが、初めて経験するハイペースに臆せず挑戦できた事自体が成長の大きな証で、今回は跳ね返されはしたがこうしたペースを体感し、田中や廣中のレベルに追いつくには何が不足しているのか、学んだことも多かったのではないだろうか。
東京五輪、オレゴン世界陸上の両大会で5000m代表となった萩谷楓(エディオン)は、クィーンズ駅伝の1区4位で不振の底を抜けたように感じられたが、この日は1000mを過ぎて先頭集団から離されると踏み止まることが出来ず15分55秒04で21位と、本来の実力からすれば精彩を欠いており、コンディションや精神的な面を含めて気懸りとなる内容だった。

男子5000mを制した坂東は、4000mを過ぎてから一度ペースを落として足を溜め、ラスト1周の爆発的なスパートに繋げる、昨年の大会で日本人選手1着となった遠藤日向(住友電工)と同じようなレースを見せた。
現在のコンディションでより速いタイムを出せると踏んでのレースの組み立てだったとは思うが、この走り方では海外の選手達に勝負所で置き去りにされる可能性が高い。
10月の日本グランプリ新潟大会の5000mも制しているように安定感は増してきているので、4000m以降もペースを維持しつつ、この日のような切れの有るラストスパートを繰り出すことが出来るかが今後の課題となってくる。
年内で記録を狙う最後の機会となるエディオンディスタンスチャレンジだったが、この大会を設定した実業団連合側の企画意図と、女子10000mの五島を含め出場した選手たち、特に来年のブダペスト世界陸上の代表を目指す選手たちのこの大会の位置付けに微妙な隔たりが感じられるようなレースも有り、また世界陸上参加標準記録の突破選手も現状維持に留るなど、課題の残る大会となった。
文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)
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エディオンディスタンスチャレンジin京都2022 結果
女子5000mタイムレース1組 上位8名
①青木奈波(岩谷産業)16:03.21
②花房百伽(九電工)16:04.98
③不破亜莉珠(センコー)16:05.00
④酒井 想(シスメックス)16:08.60
⑤前田海音(資生堂)16:12.31
⑥尾崎 光(シスメックス)16:14.74
⑦江口美咲(エディオン)16:18.06
⑧鎌田幸来(大阪学院大)16:18.34
女子5000mタイムレース2組 上位8名
①座間 栞(しまむら)15:57.22
②鈴木 葵(ニトリ)15:58.91
③藤村晶菜(ノーリツ)16:01.79
④佐藤千紘(大阪学院大)16:05.87
⑤小笠原朱里(デンソー)16:11.97
⑥真也加ジェルーシャ有里(大塚製薬)16:13.86
⑦齋藤 暁(しまむら)16:16.13
⑧伊東明日香(埼玉医科大学G)16:16.26
男子5000mタイムレース1組 上位8名
①坂本亘生(関西大)14:35.88
②坂東壮琉(関西大)14:38.50
③谷村恒晟(関西大)14:38.88
④秋山翔太朗(関西大)14:44.48
⑤多賀井悠斗(びわこ学院大)14:44.56
⑥磯尾友規(team F.O.R)14:46.49
⑦山﨑大空(環太平洋大)14:49.50
⑧松石啓輔(中部実業団連盟)14:51.09
女子5000mタイムレース3組 上位8名
①E・ムソニ(ニトリ)15:14.56
②D・ブルカ(デンソー)15:16.63
③北川星瑠(大阪芸術大)15:45.39
④川村 楓(岩谷産業)15:47.47
⑤猿見田裕香(ユニバーサル)15:47.51
⑥唐沢ゆり(九電工)15:48.39
⑦中島紗弥(エディオン)15:49.49
⑧Z・フーサン(デンソー)15:51.13
男子5000mタイムレース2組 上位8名
①井上亮真(中電工)14:08.19
②兵頭拓真(びわこ学院大)14:15.76
③山﨑皓太(立命館大)14:16.12
④松尾拓実(和歌山陸協)14:18.73
⑤近藤啓太(team F.O.R)14:25.65
⑥髙畑祐樹(トーエネック)14:25.78
⑦中田千太郎(立命館大)14:26.83
⑧岩田直人(大阪体育大)14:33.50
※8位以降の注目選手
⑨金子魅玖人(中央大)14:34.52
女子10000mタイムレース1組 上位8名
①関谷夏希(第一生命グループ)32:51.14
②安井絵理奈(岩谷産業)32:51.71
③大塚英梨子(キヤノン)33:25.94
④朝比奈亜妃乃(センコー)33:36.45
⑤堀尾和帆(ベアーズ)33:36.87
⑥藤村晴菜(ノーリツ)33:41.44
⑦杉浦穂乃加(ニトリ)33:48.97
⑧尾方星華(ユニクロ)34:26.62
女子3000m決勝 上位8名
①道下美槻(立教大)9:27.17
②立迫志穂(天満屋)9:29.43
③河辺友依(しまむら)9:29.52
④櫻川響晶(第一生命グループ)9:32.97
⑤飯島理子(埼玉医科大学グループ)9:33.74
⑥森山七海(京セラ)9:35.52
⑦高橋明日香(日本郵政グループ)9:35.91
⑧土田佳奈(ヤマダホールディングス)9:43.03
女子5000mタイムレース4組 15分30秒切りまで
①J・ジェプングティチ(資生堂)14:50.20
②A・ムカリ(京セラ)14:51.35
③K・P・カベケ(ルートインホテルズ)14:54.19
④M・アキドル(コモディイイダ)15:02.15
⑤田中希実(豊田自動織機)15:06.42
⑥廣中璃梨佳(日本郵政グループ)15:17.30
⑦樺沢和佳奈(資生堂)15:24.79
⑧山本有真(名城大)15:25.92
⑨佐々木梨七(積水化学)15:27.26
⑩岡本春美(ヤマダホールディングス)15:27.88
⑪渡邊菜々美(パナソニック)15:28.41
※11位以降の注目選手
⑫林田美咲(九電工)15:38.49、 ⑭信櫻空(パナソニック)15:39.15、⑮米澤奈々香(名城大)15:43.62、⑱和田有菜(日本郵政グループ)15:51.34、⑲谷本七星(名城大)15:52.35、⑳増渕祐香(名城大)15:53.58、㉑萩谷 楓(エディオン)15:55.04、㉓西出優月(ダイハツ)16:06.03、㉔ 田中華絵|(第一生命グループ)16:09.06、㉖ 酒井美玖(肥後銀行)16:10.48
男子5000mタイムレース3組 上位8名
①坂東悠汰(富士通)13:25.16
②浦野雄平(富士通)13:29.37
③M・サムウェル(Kao)13:29.49
④N・ワウエル(中国電力)13:29.83
⑤キサイサ・L(Kao)13:31.94
⑥塩澤稀夕(富士通)13:34.88
⑦荒井七海(honda)13:37.60
⑧河村一輝(トーエネック)13:53.80
※8位以降の注目選手
⑨ 飯澤千翔(東海大)14:17.78
女子10000mタイムレース2組 33分切りまで
①五島莉乃(資生堂)31:22.38
②川口桃佳(豊田自動織機)31:57.81
③逸木和香菜(九電工)31:58.59
④高島由香(資生堂)31:59.60
⑤柳谷日菜(ワコール)32:01.25
⑥佐藤成葉(資生堂)32:03.48
⑦兼友良夏(京セラ)32:39.13
⑧平井見季(ユニクロ)32:46.36
⑨西田美咲(エディオン)32:47.44
※9位以降の注目選手
⑪竹本香奈子(ダイハツ)33:17.67、⑭矢田みくに(エディオン)34:13.92
男子10000m
①吉田圭太(住友電工)28:13.34
②長谷川柊(Kao)28:44.72
③服部弾馬(NTT西日本)28:46.71
④北村友也(OBRS)28:58.45
⑤亀田仁一路(関西大)29:10.82
⑥城越勇星(NTT西日本)29:11.14
⑦加藤 淳(住友電工)29:25.35
※出場7名