天皇盃第28回全国都道府県対抗男子駅伝競走大会が、1月22日、広島平和記念公園を発着点とする7区間48㎞のコースで行われる。
1週間前に京都で行われた全国女子駅伝とは異なり、高校生と大学社会人選手が混在する区間はなく、全7区間は中学生区間が二つ、高校生区間が三つ、大学・社会人区間が二つの構成となっている。
前半の主要区間3区、最長のアンカー区間7区を任される大学・社会人区間にも増して、高校生区間は流れを呼び込みたい7㎞の1区、スピードが要求される5㎞区間の4区、勝負強さが求められる距離の長い8.5kmの5区と区間の特性がはっきりしており、バラエティに富んだ適材適所の選手配置を行う事が出来るかが、全国制覇を目指すうえで大きなウェイトを占めているといっても過言ではない。
また中学生区間は女子同様に3㎞と区間距離は短いながらもタイム差が付きやすく、ここに強い選手がいるチームはレースを有利に運んでいる事が多いように感じられる。
コロナ禍が日本列島を覆い尽くす直前に行われた2020年の第25回大会以来、3年ぶりの開催となる今年の大会の優勝争いは、MGC出場権を得る最後のシーズンとなり、マラソンに比重を置く社会人選手の回避も見られるため「決め手」を欠くチームが多く、前週の女子以上の混戦が予想される。
全国最多となる8度の優勝を誇る長野は、高校駅伝の強豪校、佐久長聖高校の選手とそのOBの大学、社会人選手を中心に例年安定したレースぶりを見せているが、今年のチームは、前回レースの行われた第25回大会で中学生区間の6区で区間新記録をマークしてトップに立ち、優勝に大きく貢献した吉岡大翔(佐久長聖高)が5000mを13分22秒19と高校記録を更新するまでに成長し、大学、社会人勢を含めてもエース格の活躍が期待され、同じ佐久長聖高の永原颯磨、山口竣平も5000mで13分台の記録を持ち、高校生区間は盤石。アンカーを務めると予想される、立教大学駅伝監督として学生を指導しながら今なお現役選手として活躍を続ける大ベテランの上野裕一郎(セントポールクラブ)に余裕を持って襷を繋ぐために、なるべく多くのリードを作っておきたい。

10年ぶり7度目の優勝を目指す兵庫は、全国高校駅伝1区区間賞の長嶋幸宝(西脇工業高)、中学生にも全国中学3000m2位で、全国中学校駅伝1区区間賞の新妻遼己と全国中学3000m4位の新妻昂己(共に平岡中)の双子の兄弟がおり、どちらが2区を担っても前半に主導権を握る可能性が高くなるものと思われ、4区、5区にも5000m13分56秒65を持つ前田和摩(報徳学園高)、13分57秒45の熊井渓人(須磨学園高)、新妻兄弟の兄で全国高校駅伝4区6位の玲旺(西脇工業高)のうちから二人を注ぎ込めるので、そうなってくるとカギを握ってくるのは3区とアンカーを担う大学・社会人勢となる。エントリーされている箱根駅伝1区7位の目片将大(青山学院大)、日本体育大のエース藤本珠樹、ニューイヤー駅伝ではスピードの要求されるインターナショナル区間の2区を任された西川雄一朗(住友電工)の3人は実力が拮抗しており、それぞれの調子を見極めていずれの区間に起用するのかもポイントとなるだろう。

京都も全国高校駅伝では1区12位と本領発揮はならなかったが、5000m13分57秒02を持つ柴田大地(洛南高)、全国中学3000m3位の奥野恭史(藤森中)、体調不良で箱根を走る事が出来なかったU20世界選手権5000m代表の佐藤圭汰(駒澤大)と並べてくる事が予想される前半3区間は強力で、第2回大会以来の優勝へ、大阪ガスの成長株西研人に全ての浮沈を賭けたアンカーを託す事になる。
愛知は箱根駅伝2区2位で、今大会ではアンカーを務める近藤幸太郎(青山学院大)に力が有り、この近藤に襷が渡るまで、トップから40秒くらいの差で抑えることが出来れば、逆転もあり得る。愛知は駅伝強豪高が鎬を削り、有力選手が各校に分散する傾向が有るため、ワンチームで挑む高校駅伝とは異なり、有力な選手をピックアップ出来る事も有利に働くだろう。

箱根駅伝4区2位の太田蒼生(青山学院大)ハーフマラソン1時間00分43秒をマークしている山本歩夢(國學院大)と強力な大学生をエントリーした福岡は、上位進出へ向けてU20日本選手権1500m3位の谷本昂士郎(大牟田高)、高校駅伝1区16位の舩津類生(福岡第一高)ら高校生の奮起を期待したいところ。
U20クロスカントリー日本選手権2位で5000m13分54秒90を持つ南坂柚汰を軸に全国高校駅伝を制した倉敷高勢を中心とする岡山、同じく3位の八千代松陰高勢を擁する千葉、4位の埼玉栄勢のエントリーする埼玉の3チームも、岡山が箱根駅伝2区4位の石原翔太郎(東海大)に10000m27分50秒64の自己記録を持つ岡山雄大(サンベルクス)、千葉がニューイヤー駅伝4区4位の横手健(富士通)に学生駅伝三冠を達成した駒澤大の主力メンバー篠原倖太朗、埼玉は10000m27分44秒74の荻久保寛也(ヤクルト)、27分55秒97の川瀬翔矢(Honda)と大学生・社会人も力の有る選手を揃え、優勝候補の一角だ。
東京農大二高勢に、3区には富士通の塩尻和也が控える群馬、仙台育英勢にOBの吉居駿恭(中央大)、進学校の仙台三高から国立の千葉大学を経てGMOインターネットグループに進み、昨年才能を一気に開花させた今江勇人が加わる宮城の力も侮れない。
東京も1区担う鈴木耕太郎(國學院久我山高)、3区の茂木圭次郎(旭化成)、アンカーを務める嶋津雄大(創価大)に加えて中学生にも力が有り、各世代のバランスが整い上位を窺う。
先週の女子とのアベック優勝を狙う大阪は、ハーフマラソン自己記録1時間00分44秒の小林歩(住友電工)と駅伝で無類の強さを発揮する葛西潤(創価大)が共に区間エントリーを外れ、苦しい陣容となった。
個人では青森のアンカーが予想されていた田澤廉(駒澤大)もエントリーを外れ、7区の区間賞や優秀選手賞を巡っての争いも混戦の度が増しているが、MGCへの出場権を得ている鳥取で3区を担う岡本直己(中国電力)、広島のアンカー相葉直紀(中電工)、熊本のアンカー赤﨑暁(九電工)がどのような走りを見せるのかといったところにも注目をしておきたい。
今大会は例年以上に各チームの力が拮抗しており、ふるさとの期待を背負う選手たちの激しい競り合いで寒波を弾きとばすような、熱いレースとなる事を期待したい。
文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)
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