安藤友香が2時間22分59秒で日本人選手トップの3位、初マラソンの𠮷川、4年振りマラソンの前田ら4選手がMGCへ!第42回大阪国際女子マラソンの結果

1月29日、第42回大阪国際女子マラソンが、ヤンマーフィールド長居を発着点とする42.195㎞のコースで行われ、エチオピアのH・デッセが2時間21分13秒の女子限定レースとしての大会新記録(※昨年ダイハツの松田瑞生がマークした2時間20分52秒は男子選手がペースメーカーを担ったため、混合レースの扱いとなる)で優勝を果たした。2着にも2時間22分12秒でM・シセイが入りエチオピア勢のワンツーフィニッシュとなった。

日本人選手最先着はワコールの安藤友香で2時間22分59秒で3位に入り、今夏に行われる世界陸上ブダペスト大会の日本陸連が定めた派遣設定記録2時間23分18秒を突破した。また、今年10月に開催されるパリ五輪マラソン代表選考会、MGCの出場権を既に獲得しているスターツの上杉真穂が2時間25分18秒で日本人選手2番手の4位に続いた。
今大会では、2時間25分20秒で5位となった初マラソンのユニクロのベテラン𠮷川侑美、出産後初、2019年以来4年ぶりのマラソンながら2時間25分24秒の6位で追えたダイハツの前田彩里、2時間25分59秒の自己記録で7位に入った日立の池田千春、ネクストヒロイン選手で自己記録を大幅に更新する2時間26分09秒で8位の大東優奈の4名がMGC出場権を獲得した。
その一方で、昨年9月のベルリンマラソンで2時間22分13秒をマークし優勝候補の一人に挙げられていた積水化学の佐藤早也伽は7㎞過ぎにデンソーの岩出怜亜と接触し転倒、その後立ち上がり走り続けたものの、18㎞過ぎの大阪城公園内で野口英盛監督に制止されてリタイア、岩出も中間点過ぎにレースを終えている。

1㎞3分20秒設定の第1ペーサーの集団に付いた日本勢は安藤と上杉のみ、最初の5㎞が16分40秒と設定より遅めだったところを次の5㎞で16分17秒に上げて「調整」するなど序盤にペースが安定せず、また歩道側にあるかと思えば、次の地点では中央分離帯側に設置されたりと、統一されていない給水ポイントに混乱が生じ、それらに加え7㎞過ぎには接触、転倒のアクシデントも起こるなど荒れたレースとなった。頑張っていた上杉も20㎞手前、1周目の大阪城公園内を過ぎた辺りで遅れ始めた。中間点を昨年の松田の記録より12秒ほど速い1時間09分45秒と、2時間19分台ペースで通過したが、安藤はデッセ、シセイのエチオピア勢を従えるようにPMを務めるケニアのD・チェロティッチ、コモディイイダのM・アキドルの直後に位置する意欲的な走りを見せる。アキドルが役割を終えるとチェロティッチに疲労が見え始め、25㎞からの5㎞が16分53秒と引っ張り切れなくなったところでレースを外れると、徐々に安藤に並びかけるところまで位置取りを変えていたデッセが1㎞3分05秒にまでペースを上げる早めの仕掛けで、安藤を引き離した。その後は追い縋るNNランニングチームの同僚、シセイも振り切り、残り5㎞からは苦しい走りに変わったが、2時間21分13秒で真っ先にゴールテープを切った。

安藤は35㎞まではデッセから26秒差と踏ん張っていたがそこから粘り切れず。勝負に行っている分残り5㎞に脚を残せなかったが、この辺りのまとめ方が今後の課題となるだろう。

日本人選手2位の上杉は、昨年も経験しているペースを堪えられなかった点は残念だったが、追い上げてきた𠮷川ら第二集団に追いつかれてからは驚異的な粘りを見せ、競技場手前で突き放した辺りに底力も感じられるレースだった。

初マラソンのベテラン𠮷川は、世界選手権派遣設定記録を狙ってのレースとの事だったが、そこには届かなかったもののきっちりとMGC出場権を獲得して見せた。ここに至るまでにじっくりと時間を掛けて地道に重ねてきた努力が結晶となった。

4年ぶりのマラソン復帰となった前田はスタートを切ってしまえばかつての姿を取り戻した、水を得た魚とでも形容したくなるようなブランクを感じさせない流石の走りで力を見せた。これまでの豊富な経験もさることながら、一度走ってレース勘を取り戻した事によって、MGCへ向けて更なる上積みも期待できそうだ。

池田もタイムはクリアしながら順位で届かなかった昨年の名古屋のリベンジとなるMGC獲得を果たすなど、キャリアの長い選手が揃って好結果を残し、女子長距離界の成熟を感じさせた一方で、若手はネクストヒロイン選手として出場し、後半の粘りでMGC出場権を獲得した大東の健闘が光るのみと勢いが感じられなかった。
エントリー選手の減少も含め、女子単独大会として伝統を誇る大阪国際女子マラソンに、次代を担う選手が積極的に挑戦出来るような後押しがより必要となっているのではないだろうか。

30㎞地点、結果を恐れず勝負に挑んだ安藤

ペースの上がり方が想像以上だ。付いて行けば、最後まで持たないかもしれない。これが力の差なのか。でも、容易くそれを認めてしまったら、ここで離されてしまったら、レースの決着がついてしまう。行くしかない。

ペースメーカーがレースを離れた30㎞を過ぎて、エチオピアのデッセが狙っていたようにペースを上げたその時、安藤友香にはこのような葛藤が有ったのではないだろうか。

腕振りを極力抑えた効率の良いランニングフォームが「忍者走り」と称される安藤が、ラストスパートのようにしっかりと腕振りを入れ、ぐんぐんとスピードを上げて前を行くデッセと、その後に続いたシセイを懸命に追った。
30㎞からの1㎞のスプリットは3分05秒と瞬間的に男子並みのスピードまで上がり離されはしたが、安藤も目測で4秒から5秒ほどの差で追っているように見えた。
次の1㎞でエチオピア勢は3分20秒とペースを落ち着けたが、30㎞からの1㎞で力を使ってしまったのか安藤も3分23秒にペースを落として詰める事が出来ず、35㎞までは前の5㎞と同じスプリットの16分53秒と何とか堪えていたが、残り5㎞辺りから身体は動いてはいるもののストライドが伸びなくなり、力尽きた。
40㎞までの5㎞のスプリットは18分13秒かかり、ゴールタイムは2時間22分59秒、初マラソンだった2017年名古屋ウィメンズでマークした2時間21分36秒の自己記録更新はならなかった。
優勝したデッセとの差はスパートの爆発力とその時にかかった身体への負担、消耗度の差、という事になるのだろう。

或いは勝負に拘らず、タイム狙いに切り替えていたら自己記録更新も有ったかもしれず、またデッセも最終盤でペースを落としており、ゴールタイムも思いの他伸びていなかったので、ここに迫る事も出来たかもしれない。だが、安藤はその道は選ばなかった。

昨年の名古屋ウィメンズに続き、今年の大阪でもハーフ通過時点で日本記録も狙えるスピードレースでありながら果敢に勝負を意識した走りを貫いたところを見るにつけ、事前インタビューでは「自己記録更新が目標」と口にしながらも裏腹に、ここぞの場面では一歩も引かず、結果を恐れず勝負を挑む事にアイデンティティを見出しているのが安藤友香というアスリートなのかもしれない。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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第42回大阪国際女子マラソンの結果

①H・デッセ(エチオピア)2:21:13※女子単独レースでの大会新
②M・シセイ(エチオピア)2:22:12
③安藤友香(ワコール)2:22:59※ブダペスト世界陸上派遣設定記録突破
④上杉真穂(スターツ)2:25:18
⑤吉川侑美(ユニクロ)2:25:20※MGC出場権獲得
⑥前田彩里(ダイハツ)2:25:24※MGC出場権獲得
⑦池田千晴(日立)2:25:59※MGC出場権獲得
⑧大東優奈(天満屋)2:26:09※MGC出場権獲得
⑨竹山楓菜(センコー)2:29:20
⑩棚池穂乃香(大塚製薬)2:29:45
⑪A・ライト(イギリス)2:29:50
⑫筒井咲帆(ヤマダホールディングス)2:32:04
⑬清田真央(スズキ)2:33:01
⑭佐藤奈々(スターツ)2:33:32
⑮松田杏奈(三井住友海上)2:34:33
⑯矢尾桃子(関西外国語大)2:34:48
⑰K・メイソン(オーストラリア)2:35:15
⑱近江衿香(TTランナーズ)2:35:27
⑲岡田 唯(大塚製薬)2:36:10
⑳古賀華実(大阪芸術大)2:36:40
㉑小林香菜(前橋陸協)2:36:54
㉒R・へサブワ(メキシコ)2:37:56
㉓大塚英梨子(キャノン)2:38:51
㉔松村幸栄(コモディイイダ)2:39:02
㉕兼重志帆(GRlab山口)2:39:12
㉖藤澤 舞(札幌エクセルAC)2:41:22
㉗大井千鶴(NARA-X)2:42:30
㉘西原加純(シスメックス)2:42:56
㉙合田なぎさ(東京陸協)2:44:31
㉚大渕芽亜里(ユナイテッド)2:44:56

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