男子は60mHの高山峻野、女子は三段跳の船田茜理に注目!アジア室内代表組の仕上がりは?第106回日本陸上選手権大会・室内競技のみどころ

第106回日本陸上選手権大会・室内競技を兼ねる、2023日本室内陸上競技大阪大会が、2月4日より二日間の日程で大阪城ホールで行われる。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、一昨年、昨年と2年続けて一か月遅れの3月に実施されており、3年ぶりの2月初旬の開催となった。選手たちにとっては冬季トレーニング期間とシーズンインを分かつ節分のような大会であり、シーズンオフの間に積み重ねたトレーニングを実践し、確かな手応えを得て本格的屋外シーズンに臨むために、福を呼び込むような大会としたいところだろう。

日本選手権として実施されるのは60m、60mHの男女トラック4種目と、走高跳、棒高跳、走幅跳、三段跳の男女跳躍8種目の計12種目、2月10日に開幕するアジア室内陸上の代表選手を含めた多くのトップ選手がエントリーしている。

男子で最も注目の選手は60mHにエントリーしている高山峻野(ゼンリン)。
昨年はシーズン序盤はなかなかエンジンが掛かってこなかったが、110mHで4着に終わった6月の日本選手権終了後に復調、布勢スプリントでは13秒31とオレゴン世界陸上参加標準記録を突破して優勝を果たした。日本選手権の結果により代表には届かなかったが腐らず、8月の実学対抗では自己記録でオレゴン世界陸上決勝に当てはめても3位に相当する13秒10を叩き出してブダペスト世界陸上参加標準記録を突破、その後さらに更新することは無かったが13秒3台から13秒4台前半のリザルトを残し、好調のままシーズンを終えている。
代表に選ばれながら不完全燃焼に終わった2021年の東京五輪イヤーも含め、準決勝まで進んだドーハ世界陸上の行われた2019年以降は故障を抱えている事が多かっただけに、昨年の好調が維持できているのか、大事な初戦となる。 また同種目にはアジア室内代表の野本周成(愛媛県スポーツ協会)もエントリー。昨シーズンは世界室内選手権の60mHで準決勝に進むまずまずのスタートを切っていたが、屋外シーズンに入ってからは、日本選手権の準決勝で敗退するなど思うような結果が残せずに終わっており、悲願の世界陸上代表へ向けて好スタートを切っておきたい。

走幅跳にエントリーしている鳥海勇斗(日本大)は昨年10月、シーズン最終戦となった日本大学記録会でこれまでの自己記録7m88から一気に記録を伸ばす8m11をマークして8mジャンパーの仲間入りを果たした。この大会でビッグジャンプを再現できれば、橋岡優輝(富士通)や山川夏輝(佐賀県スポーツ協会)ら世界の舞台を経験しているOBに続く代表候補としての期待や存在感も一層高まるだろう。

男子60mは昨年100mで記録を伸ばした原田暁(福岡大)、本郷汰樹(名古屋大)の学生二人に期待したい。原田は昨年7月に行われた福岡大競技会で100mの自己記録を10秒51から一気に10秒11に伸ばして驚かせたが、勇躍臨んだ日本インカレでは3着に留まっており、今季は真価が問われる一年となりそうだ。
本郷は昨年4月の出雲陸上の100mで桐生祥秀(日本生命)、多田修平(住友電工)に続く3着に入る好スタートを切りながら、その後は故障で日本選手権を欠場、日本インカレも全快とはいかず準決勝敗退に終わっていたが、10月になって田島記念を10秒29で制し、GPシリーズ初優勝を遂げると、11月のエコパトラックゲームスでは10秒12に自己記録を更新し、好調のうちにシーズンを終えている。エントリーの有ったアジア室内陸上代表の鈴木涼太(スズキ)は出場を回避しており、また近年故障禍に見舞われる事の多くなった桐生、山縣亮太(SEIKO)らに世代交代を迫る代表候補として名乗りを上げるためにも、優勝のチャンスをしっかりものにしておきたい。

走高跳の赤松諒一(アワーズ)、瀬古優斗(滋賀陸協)、三段跳の伊藤陸(近畿大学工業高専)のアジア室内代表組は翌週に控える「本番」へ向けて結果を残し、弾みを付ける事ができるか、その調整ぶりが注目となる。

その他、男子棒高跳は5m70の自己記録を持つ竹川倖生(丸元産業)、5m61の澤慎吾(きらぼし銀行)、5m60の松澤ジアン成治(新潟アルビレックスRC)の5m60オーバーの3選手に、昨年8月のU20世界選手権7位入賞の若手、原口篤志(東大阪大)がどこまで迫る事ができるかが見どころだ。

女子の最注目は三段跳の船田茜理(武庫川女子大)。昨シーズンは6月の日本選手権で自己記録を大きく更新する13m46を跳んで2位に食い込み勢いに乗ると、8月のトワイライトゲームズでは日本歴代2位の13m81にまで記録を伸ばして注目度が高まった。
その後、森本麻里子(内田建設AC)がドイツの大会で13m82をマークした後、10月の田島記念では13m84まで記録を伸ばし、シーズンランク1位の座を譲ったが、その森本が今季既にヨーロッパの室内大会を転戦中で、2月2日に行われたチェコ室内ガラで13m53の日本室内記録を叩き出した事は、船田にとっても大きな刺激になっている事だろう。
今期も昨年の好調を維持して結果を残していけば、WAランキングでのブダペスト世界陸上代表の可能性も出てくるものと思われ、その意味でも重要な一戦だ。
また同種目の髙島真織子(九電工)も森本、船田の陰に隠れてしまったが、昨シーズンは13m50まであと一歩に迫る13m48まで記録を伸ばしており、船田同様に森本の活躍は刺激となっていると思われ、今大会は森本を追う二人によるハイレベルな優勝争いが展開されるだろう。

女子60mHは、エントリーの有った昨年のオレゴン世界陸上100mH代表で日本記録保持者、既にブダペスト世界陸上の参加標準記録を突破している福部真子(日本建設工業)が残念ながら欠場となったが、東京五輪、オレゴン世界陸上代表でアジア室内の代表にも選ばれている青木益未(七十七銀行)、青木と同じくアジア室内代表の清山ちさと(いちご)の二人がスタートリストに名を連ねた。100mH13秒00の自己ベストを持つ鈴木美帆(長谷川体育施設)、昨年の日本選手権の100mHで3位に入るなど力を付けてきている鈴木の同僚、中島ひとみ(長谷川体育施設)、昨年の田島記念で13秒17に自己記録を伸ばした大松由季(愛教大クラブ名古屋)も加わり、一昨年の大会で青木がマークした8秒05を巡る激戦となる事が予想される。

女子60mも、東京五輪4×100mリレー代表の青山華依(甲南大)が欠場となり、昨年2着の三浦由奈(筑波大)、一昨年優勝でスタートの良い三浦愛華(園田学園女子大)の二人の三浦を中心に、昨シーズン高校時代の切れ味を取り戻してきた石堂陽奈(環太平洋大)、三浦愛と同様にスタートの良さに定評の有るベテラン名倉千晃(NTT)らが絡む混戦となりそうだ。

女子のアジア室内代表組は上記の青木、清山の他、棒高跳の那須眞由(KAGOTANI)がエントリー。
昨年は4月に行われた兵庫リレーカーニバルで日本歴代4位の4m33をマークする好スタートを切りながらその後はやや息切れ気味のままシーズンを終えていたので、新たなシーズンでの巻き返しに期待したい。

その他の種目では、走幅跳で自己記録を6m29にまで伸ばしている七種競技が専門の若手選手、熱田心(岡山陸協)、走高跳では昨シーズン最終戦のとちぎ国体で1m84を跳び、今季更に記録を伸ばしてきそうな気配が漂う高橋渚(メイスンワーク)に注目だ。

一昨年の大会では女子60mHで日本記録をマークした青木がその後に東京五輪代表を勝ち取り、昨年の大会では男子60mで優勝した坂井隆一郎(大阪ガス)が勢いをそのままにオレゴン世界陸上代表にまで登り詰めるなど、ここでの活躍がその後に繫がっており、ほとんどの選手がシーズン初戦となるこの大会で、幸先の良いスタートを切る事は、思いのほか重要なのかもしれない。

またU16、U18、U20の選手が出場するジュニアの部も実施される。特に男子スプリント種目から、ニュースター候補の台頭が望まれる。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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