世界歴代2位のチェプンゲティチが再び名古屋に、目指すは女子単独レース世界最高記録!地元愛知で絶大な人気を誇る鈴木亜由子が名古屋ウィメンズ初登場、東京五輪代表の前田穂南はMGC出場権獲得に挑む!名古屋ウィメンズマラソン2023のみどころ

名古屋ウィメンズマラソン2023が3月12日、バンテリンドームナゴヤ前をスタートして名古屋市街地を巡り、バンテリンドーム内をゴールとする42.195㎞のコースで行われる。
昨年の大会は2019年ドーハ世界陸上金メダリスト、ケニアのR・チェプンゲティチが10㎞手前からペースメーカーを置き去りにする独走となり、猛烈に追い上げてきたイスラエルのC・サルピーターに一時追い付かれはしたが再び突き放し、当時の世界歴代4位、女子の単独レースでは世界歴代2番目の記録となる2時間17分18秒の大会新で圧勝、日本の選手も計8人がMGC出場権を獲得する活況をみせたレースとなった。
今年もその昨年の覇者、チェプンゲティチが再び招待され、パリ五輪代表を目指す国内勢にとってはMGCチャレンジ指定大会の最終レースとなる今大会に彩を添える。

世界歴代2位、チェプンゲティチの記録に注目
チェプンゲティチは昨年7月のオレゴン世界陸上では、連覇が有力視されながら途中棄権に終わったが、10月のシカゴマラソンでは、B・コスゲイ(ケニア)の世界記録にあと14秒に迫る世界歴代2位となる2時間14分18秒を叩き出しており、よりパワーアップして名古屋に帰ってきた。
今年も昨年同様にぶっちぎりの独走となる事が濃厚だが、昨年に自身が記録した大会記録やケニアのM・ケイタニーが2017年のロンドンマラソンで樹立した女子単独レースでの世界記録、2時間17分01秒の更新なるかに注目だ。

国内招待選手は鈴木亜由子、前田穂南、上杉真穂、谷本観月、鈴木優花の5名と少数精鋭

国内招待選手は東京五輪代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)、前田穂南(天満屋)に、ドーハ世界陸上8位入賞の谷本観月(天満屋)、2時間22分29秒の自己記録を持つ上杉真穂(スターツ)、大東文化大4年時の昨年の大会で2時間25分02秒の日本学生記録をマークして5位に入り、MGC出場権をマークした鈴木優花(第一生命グループ)の少数ながら精鋭の5名、チェプンゲティチと勝負することは現時点では厳しいが、それぞれの目標を目指してのレースとなるだろう。

鈴木亜由子は19位となった東京五輪以降、心配された故障の再発もなく駅伝やトラックレースに姿を見せていたが、昨年9月には五輪後初、夏場以外のスピードレースのマラソンも初めてとなったベルリンマラソンで2時間22分02秒の自己記録でMGC出場権を獲得し、一層の充実ぶりを示している。もう一度五輪の舞台に臨むためには、今年1月、新谷仁美が2時間19分24秒に引き上げた現役選手の最高記録を乗り越えていかなければならないが、まずは10月に行われるMGC本番へ向けて、実績面で先行している一山や松田にプレッシャーを掛けられる記録を一つ残しておきたい。愛知出身で名古屋大学卒、地元での人気は非常に高いが、名古屋ウィメンズは初めて。大声援の後押しには自己記録更新、出来れば20分台で応えたい。

前田穂南は33位に終わった東京五輪後の再起の年となった昨年、5月の仙台国際ハーフで1時間9分08秒、7月の函館ハーフでも1時間8分28秒と冬場のレース並みの好タイムで立て続けに優勝を飾り、またホクレンDC千歳大会の5000mでは函館ハーフから2週間後のタイトなスケジュールながら15分26秒39の自己記録をマークするなど、課題のあったスピード面でも進境示す絶好調のうちに過ごしていた。
ところが8月の北海道マラソンはコロナウィルスに感染し欠場を余儀なくされると、今年1月の大阪国際女子もくるぶしを痛めて欠場となり、五輪後初のマラソンもここまで持ち越しとなっており、MGC出場権獲得もMGCチャレンジ指定大会最後のレースである今大会に賭ける事となった。
久々のレースでも有り、まずは確実に走って、MGC出場権を手中に収める事が優先事項だ。

上杉真穂は昨年、大阪国際女子で自己記録を2時間22分台に乗せるなど成長を見せ、記憶に新しい今年の大阪国際女子では日本記録を上回るペースの先頭集団で勝負したものの20㎞手前で脱落、2時間25分18秒の4位に終わったが、前半ハーフで突っ込んだ分、大きく崩れても不思議ではなかったところを、このレースでMGC出場権を獲得した𠮷川侑美(ユニクロ)、前田彩里(ダイハツ)らで形成する第2集団に吸収されてから渋太く粘り、ヤンマースタジアム直前では再び集団から抜け出すなど気持ちの強さ、地力の違いを見せている。過去にも大阪国際女子から名古屋ウィメンズの連戦の経験のある選手で、或いは当初の予定通りのスケジュールなのかもしれなが、MGC出場権を既に持ち、無理をする必要のない立場にありながら敢えてここに挑んできているところから、大阪国際女子で達成できなかった日本陸連の定めるブダペスト世界陸上の派遣設定記録、2時間23分18秒の突破を目指しての参戦と考えられ、日本人選手トップ争いのカギを握る存在だろう。

谷本観月も昨年の大阪国際女子で2時間23分11秒の好記録で4位となり2度目のMGC出場権を獲得、その前回はMGCを回避してドーハ世界陸上代表を選択して8位に入賞を果たしており、その実績にふさわしいフルマラソンの記録がようやく追い付いてきた。昨年の秋以降のロードシーズンは、プリンセス駅伝、クイーンズ駅伝ともう一息の結果で、ここへ向けてのステップレースとして挑んだ2月の香川丸亀ハーフでは日本人2番手となる1時間11分48秒の7位に入ったが、フルマラソンで谷本より劣る持ちタイムながら3位に入った今大会にも招待選手として出場するオーストラリアのI・バットドイルの1時間9分27秒からは遅れをとっており、ここからのコンディションの上積みが出来ているかが結果を左右しそうだ。上杉同様に高校卒業後、実業団でコツコツと努力を積み重ねてきた、いわばマラソンの叩き上げで、その意地に期待したい。

大東大時代、まずトラックの10000mで好記録をマークして将来を嘱望され、卒業間際の昨年の大会で日本学生記録で5位に入りその期待に応えた鈴木優花は、第一生命入社後、9月に行われた全日本実業団陸上選手権まではトラックの5000m、10000mのレースに出場して力を蓄え、ロードシーズンに入ってからも10月のプリンセス駅伝まではエース区間の5区で6位とまずまずの結果を残したが、クイーンズ駅伝ではメンバーから外れており、コンディション面が気懸りだ。

一般参加の有力選手

この5人の招待選手の他、一般参加選手として池田千晴(日立)、和久夢来(ユニバーサルエンターテインメント)、池満綾乃(鹿児島銀行)、筒井咲帆(ヤマダ電機)、竹山楓菜(センコー)、 棚池穂乃香(大塚製薬)らが名を連ねている。
池田は今年の大阪国際女子では2時間25分29秒をマークして日本人5番手の7位に入りMGC出場権を獲得したがそこに満足せず、もう一段上の記録を目指してこの大会にエントリーしてきたところに、意気込みのほどが伺える。
JMCシリーズ上位選手としてMGC出場権を獲得した和久は、ステップレースとして出場した1月の大阪ハーフは1時間11分12秒で4位、フルマラソンの自己ベストは2時間26分30秒で、池田同様にあとワンランク上の実力を身に付けてMGCへと臨みたい。
前回のMGC出場権を獲得し、谷本同様にドーハ世界陸上を選択しながら途中棄権となった池満は、今回はまだMGC出場権を獲得できておらず、ラストチャンスに復調を賭けて挑む。
筒井、竹山、棚池はMGC出場権獲得がならなかった大阪国際女子に続く挑戦となる。
中でも竹山はその大阪国際女子で、35㎞手前までMGC出場権を争う第2集団に食らい付く惜しいレース内容を見せており、今回は後半の落ち込みを克服したいところ。
もう一人、早稲田大学の競走部ではない同好会の所属ながら、大阪国際女子では中間点までMGC出場権を争う第2集団に加わっていた小林香菜(前橋陸協)も、どのようなレースを見せるか楽しみなランナーだ。

レース展開は
こうした招待、一般参加の日本人選手達が、2時間19分31秒の自己ベストを持つケニアのN・ジェラガド、丸亀ハーフで好走し、調子の良さが伺える先述のバットドイルらと集団を形成し、レースが展開されるものと思われる。
M・セイデル(アメリカ)、K・スタインラック(ドイツ)の欧米からの招待選手二人が欠場となり有力選手の人数が多くは無く、集団から一度遅れてしまうとその先は長く、苦しい一人旅が待っている。
MGC出場権獲得を目標とする選手は出来るだけ長く集団の中で走るのがベストだが、単独走となってから、自身のペースで落ち込みを最小限に食い止める粘り強さも要求される事となるだろう。
また、海外招待選手の一人、中国の張徳順は持ちタイムは2時間27分01秒ながら、オレゴン世界陸上では11位に入る健闘を見せており、このクラスの選手にはきっちりと先着しておきたい。

東京マラソンが行われた先週とは打って変わって、ここ数日の名古屋は気温20℃を上回っており、心配されるのは気象コンディション。レース当日は曇りの予報で、スタート時の気温は14℃と少し下がりそうだが、それでも選手たちはかなり暑さを感じる気温でもあり、給水の成否も非常に重要となってくる。
過酷なサバイバルレースが予想されるが、MGC本番でも有力視される選手たちがどのような結果で手応えを得られるか、何名がMGCファイナリストとなるか、今年の名古屋は暑く、また熱くなりそうだ。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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