国内の精鋭が、海外のトップ選手たちに挑む!女子やり投北口榛花の日本記録更新、男子400m勢の45秒切りなるか、新たに世界陸上参加標準を切る選手は!セイコーゴールデングランプリ陸上のみどころ

セイコーゴールデングランプリ陸上2023が5月21日、横浜市の日産スタジアムを舞台に行われる。
国内では唯一のWAコンチネンタルツアーゴールドラベルの同大会には、男子100mのF・カーリー(アメリカ)や走幅跳の王嘉男(中国)、女子やり投のJ・バーバー(オーストラリア)の昨年に行われたオレゴン世界陸上の金メダリストを始めとする世界のトップアスリートが名を連ね、国内からはオレゴン世界陸上女子やり投銅メダリストで代表に内定している北口榛花(JAL)や、東京五輪走幅跳6位の橋岡優輝(富士通)、3000m障害7位の三浦龍司(順天堂大)、女子1500m8位の田中希実(New Balance)ら、男女の100m、3000m、やり投、走幅跳、男子400m、110mH、400mH、3000m障害、走高跳、女子1500m、100mHの実施15種目の国内トップアスリートが招待されている。
世界水準のハイレベルのパフォーマンスと共に、順位が重要視されるブダペスト世界陸上選考会となる日本選手権を前に、新たに世界陸上参加標準記録を突破する国内選手が出てくるのか、とりわけ昨年の8月のオレゴン世界陸上の男子走高跳8位入賞の真野友博(九電工)は参加標準記録の2m32をクリアすれば代表内定となるだけに、記録面も注目される大会となる。

世界との勝負、という観点から最も期待できるのは、やはり女子やり投の北口だろう。
けして天候が良いとは言えなかった4月の織田記念で記録した64m50は現時点でシーズントップリストで堂々の世界1位、シーズンベストに限定しないパフォーマンスリストを見ても、木南記念で記録した64m43が2位と1位、2位を独占する安定感を見せている。今回招待された海外勢はバーバーの他にもオレゴン世界陸上5位のM・リトル(オーストラリア)、同6位のL・ムゼ(ラトビア)とブダペストでも上位を争うライバルになるメンバーが揃い、本番へ向けて強さを印象付けておきたいところ。
木南記念からさらにギアを上げて、自身の持つ66m00の日本記録を更新できるかにも注目だ。
またこの種目は2017年のロンドン世界陸上代表の斉藤真理菜(スズキ)が織田記念、木南記念と61m台を連発し、60m台の壁をなかなか破ることができていなかった長麻尋(国士館クラブ)も木南記念で61m10を投じて一気にブレイクを果たし、昨年のオレゴン世界陸上で決勝に進んで11位となった武本紗栄(佐賀県スポーツ協会)、予選通過はならなかったが二大会連続代表を狙う上田百寧(ゼンリン)の4人が世界陸上代表の残り2枠を争う激戦の様相を呈してきており、こうした選手たちの中からいち早く63m80の世界陸上参加標準記録を破り、一歩抜け出す選手が出てくるのかもみどころとなるだろう。

女子走幅跳の秦澄玲(シバタ工業)も木南記念で世界陸上の参加標準記録まであと10㎝に迫る6m75の自己記録をマークし、世界との勝負ができるところまで迫ってきている。
昨年の世界陸上はWAランキング上位での出場権獲得でもあり、ここまで来たのなら標準記録を突破して2度目の世界陸上代表を手にしたいところだろう。
昨年の世界陸上の決勝進出ラインは6m64、トップ8は6m84、メダルラインは6m89であり、参加標準記録の6m85や1㎝上回る池田久美子の持つ6m86を超えることができれば、即ち世界でのメダル争いが見えてくることにもなる。
木南記念と同様に3回目までに好記録を残して主導権を持ち、6m76のPBを持つS・シン(インド)を筆頭に、L・サンダラドゥラ(スリランカ)、谈梦怡(中国)らアジアのライバルとの争いを制し、さらに3月のブリスベン・トラック・クラシックでは秦の連覇に立はだかる壁となった、自己ベスト7m13、オレゴン世界選手権は6m87で5位入賞のB・ブッシュキールに一矢を報いて大会連覇となれば、今後の展望はより明るいものとなるだろう。

東京五輪では1500mで決勝に進出し世界との真っ向勝負に挑み、8位入賞の結果を残した田中希実(New Balance)は今期からプロ選手となり新たな道を進み始めた。
コロナウィルスの蔓延により、政府から緊急事態宣言が発出され、スポーツを含むあらゆる社会活動が制限を余儀なくされた2020年、その活動制限明けの夏のホクレンDC千歳大会の1500mで4分08秒68の自己記録をマーク、次戦の深川大会の3000mで日本記録を更新して以降、トラックシーズンでは休むことなくひたすらに走り続けて今や日本が世界に誇る中長距離の代表選手となったが、そんな田中も今季に入り、4月23日の兵庫リレーカーニバルの1500mを4分9秒79で制して以降、5月前半のGPシリーズには出場しておらず、春のトラックシーズンでこれだけの期間国内のレースから離れたのはコロナによる活動自粛が明けてからは初めてといって差し支えないだろう。その間アメリカで高地トレーニングに励み、当地で2度ほどレースに出場してはいるものの、ほぼひと月ぶりの国内レースとなる今回、この間の取り組みが、田中にどのような効果を齎し、結果としてどのように現れるかも注目ポイントのひとつだ。

男子ではオレゴン世界陸上の4×400mリレーで4位入賞とメダルまであと一歩に迫ったことにより、400mの選手たちの目の色が変わってきた。
リーダー格のウォルシュ・ジュリアン(富士通)のエントリーこそないものの、東京五輪のマイルリレーでは中心選手の役割を果たしながら昨年は調子が上がらず、世界陸上代表入りを逃した佐藤拳太郎(富士通)が静岡国際陸上で45秒31と8年ぶりに自己記録を更新、昨年の世界陸上でアンカーを務めた中島佑気ジョセフ(東洋大)も木南記念で45秒39をマーク、学生の今泉堅貴(筑波大)、地主直央(法政大)もそれぞれ45秒65、45秒76まで記録を伸ばしてきており、マイルリレーメンバー入りに手が届くところまで来ている。
また今期はここまでまだ調子が上がってきていないが、昨年は45秒台を7度マークし、世界陸上では準決勝に進んだ佐藤風雅(ミズノ)もこのまま黙っている訳にはいかず、こうした選手達が44秒43のベスト記録を持つP・デドゥオ(アメリカ)ら海外勢との競い合いの中から、高野進(当時東海大クラブ)が1991年記録した44秒78の日本記録にどこまで迫ることができるか、日本人選手による久々の45秒切りに期待をしたい。

昨年はダイヤモンドリーグファイナルの3000m障害で4位に入る健闘を見せた三浦龍司(順天堂大)は今季ここまで1500mや5000mで総合的な走力を高める事に取り組んできており、本職の3000m障害での今季初戦でその効果がどれほどのものなのか、期待を持って見てみたい。

また東京五輪男子走幅跳6位の橋岡優輝(富士通)も今季国内初戦を迎える。このオフはアメリカに渡り、助走の改良に取り組んだといい、アメリカでの競技会では8m11を跳び、まずまずの手応えを得たようだ。オレゴン世界陸上金メダルの王嘉男との対決となるが、持ち前のここ一番での集中力がいきなり発揮されることがあれば、8m25の世界陸上参加標準記録突破や、城山正太郎の持つ8m40の日本記録更新の可能性も出てくるだろう。1回目の跳躍から目が離せない。

男子走高跳の真野にとって、自己ベストを1㎝上回る2m32の世界陸上参加標準記録をクリアして代表内定を得ることは、容易ではないが、オレゴン世界陸上銀メダリストの禹相赫(韓国)らいずれも2m30以上の自己記録を持つ海外勢に食らいついていくことから活路を見出したい。アジア室内で禹相赫との競い合いを制し、見事に金メダルを獲得した赤松諒一(アワーズ)の例もあり、決して勝てない相手でもなく、また届かない記録ではないと、自らを鼓舞して欲しい。

男子100mにはオレゴン世界陸上金メダルのF・カーリーが出場、今季10秒03をマークしている桐生祥秀(日本生命)や木南記念を制した坂井隆一郎が千両役者に一泡吹かすことができるか、期待したい。

ゴールデングランプリはコロナ禍で一時実現していなかった海外勢の招待も昨年から解禁され、今年はさらに行動制限が全面的に解除となったため、スポーツ会場においての声を出しての応援も可能となった。
ファンの声援の後押しが選手を奮い立たせる、スポーツの持つ素朴な感激もまた、ゴールデングランプリに戻ってくる。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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