世界陸上代表へのラストスパート!女子400mHの宇都宮、男子400mHの岸本、筒江、小川、黒川、男子三段跳の池畠らが勝負を賭ける!第20回田島直人記念陸上競技大会の展望

第20回田島直人記念陸上競技大会は、男女の200m、400mH、走高跳、三段跳、砲丸投、ハンマー投の12種目に、男子の400m、走幅跳、女子は100m、300m、棒高跳の計17種目が7月29日から二日間に渡り、山口の維新みらいふスタジアムで実施される。
ブダペスト世界陸上出場資格獲得へ向けてラストチャンスの日本グランプリシリーズとあって、男女の400mH、男子200m、走幅跳、三段跳には、現在ランキングで出場圏内に位置する選手、あと数ポイントで出場圏内に届く選手がエントリーしており、こうした選手たちが更にポイントを積み増ししてランキングを押し上げることに成功し、8月2日の出場資格者リストの公開を迎えることができるかが今大会の最大の焦点と言えるだろう。現時点での出場資格取得選手と、ランキングスコア上位で出場可能なターゲットナンバー(以降はTNと表記)内の選手を表すRoad to Budapest 23のリストについては、前回のANG福井の展望を参照頂きたい。今大会に世界陸上代表の座を賭ける選手の一番手として登場するのは、大会初日の14:30から行われる女子400mHタイムレースにエントリーのある宇都宮絵莉(長谷川体育施設)。
宇都宮は、それまでの参加標準記録を突破した選手に出場資格が与えられる方式からランキング制度が導入され、その上位選手も出場資格が得られる資格システムに変更になった東京五輪、昨年のオレゴン世界陸上と、二大世界大会で連続して最終盤まで出場圏内を維持していながら、最終的な出場資格者リストに名前が記されること無く代表を逃している。
ブダペスト世界陸上の代表を巡っては、アジア選手権の大会のさなかランキングの更新があり、一度は出場圏外に押しやられながら、レースでは序盤から積極的に飛ばしていく攻めのスタイルを貫き、57秒73で銀メダルを獲得してすぐさま出場圏内に復帰したのだが、またここにきてTN40位の選手とは3pt差(1166pt)で、8月1日から陸上競技の始まるワールドユニバーシティゲームズの同種目の代表に選ばれている山本亜美(立命館大)の2pt差に次ぐ「キャンセル待ち」選手の2番手となっている。
今大会に57秒半ばの記録で優勝すれば、Eカテゴリの大会優勝で得られる順位ポイント25ptの加算で出場圏内に三度目の返り咲きを果たせるが、宇都宮とはptの差がなくキャンセル待ち3番手に位置するカナダのB・オーバーホルト、4番手に付けるスウェーデンのM・グラントも今週末にナショナルチャンピオンシップを控えており、大きくランキングスコアを伸ばしてくる可能性が高く、自己ベストの56秒50を更新して届くか、というレベルにボーダーラインが上がってくるだろう。
宇都宮にとっては競技人生を変えるレースとなるか、ここが勝負の大一番だ。続いて15:00から行われる男子400mHタイムレースも、1組に現在1203ptで39位とTNぎりぎりに位置する岸本鷹幸(富士通)、でキャンセル待ち1番手、岸本を1pt差の1202ptで追う筒江海斗(STW)、日本選手権ではまさかの予選落ちとなったが、TNまで4pt差(1199pt)でキャンセル待ちの3番手に踏み止まっている東京五輪、オレゴン世界陸上代表の黒川和樹(法政大)、そして学生個人選手権、関東インカレを連勝した勢いで日本チャンピオンにまで上り詰めた小川大輝(東洋大)が揃う大一番だ。
やはり女子と同じくボーダーライン近辺にはナショナルチャンピオンシップが残されているフランスのV・カローラ、フィリピンのE・クレイといった選手が犇めいており、岸本としては、ランキングでの世界陸上がほぼ確実な児玉悠作(ノジマ)に続く二人目の代表へ、そのボーダーラインを出来るだけ上げておきたいところ。
筒江にとってもそれは同じで、出来る限りスコアを上積みして、出場圏内に入りたい。
日本選手権優勝の小川は、この大会で48秒70の参加標準記録を突破すれば、日本陸連の定める選考要件を満たし、代表が確実となる。
日本選手権で決勝進出を逃した黒川は非常に厳しい立場に追い込まれているが、参加標準記録を突破し、この種目で出場資格を得られる日本人選手が3人に満たなければ、大逆転での世界陸上代表の可能性が残される。16:00からは男子200m予選が予定されており、現在TN48位の選手が1188ptのところ、1197ptで43位に位置している上山紘輝(住友電工)が登場する。
上山は7月22日に行われたダイヤモンドリーグロンドン大会の4×100mリレーのメンバーとして急遽召集されながらアンカーの重責を任され、今シーズンのワールドリードとなる37秒80での優勝に大きく貢献した。
昨年のオレゴン大会に続く200mでの世界陸上の代表は、現時点では安全圏にいるとまでは言えず、アジア選手権から続く強行軍ながら最後の一押しで出場圏内を維持したいところだ。
ダイヤモンドリーグロンドン大会のリレーメンバーに召集されながら、控えに回った水久保漱至(第一酒造)は、TNの選手まで26ptとランキングでの出場圏内が遠ざかってしまったが、日本選手権では3位に入っており、20秒16の参加標準記録突破での代表入りに賭けることになる。フィールドでは16:45から行われる男子三段跳に、現在Road to Budapest 23のリストで1161ptの34位に位置する池畠旭佳瑠(駿河台大)が出場する。TN36位の選手までは19pt差があるが、順位的にはあと二人参加標準記録を突破する選手が出れば出場圏外となる厳しい状況となっている、しかしながら33位の選手とは1点差、31位の選手で5点差と、僅差で選手が犇めき合っており、アジア選手権で記録した16m73を再現出来れば、1173ptまでスコアが伸び、現在の出場資格者のリストに当てはめれば26位辺りまでランキングが上がることになる。
出来れば自己記録の16m75を上回る優勝で、世界陸上出場を引き寄せたい。
また男子三段跳では6月に韓国・醴泉で行われたU20アジア選手権で、16m38のU20日本記録を叩き出した宮尾真仁(東洋大)も注目の存在。
伸び盛りの大学1年生で、池畠と競い合い、パリ五輪代表へ向けての飛躍となる結果を期待したい。二日目のフィールドでは12:25から男子走高跳が競技開始の予定で、ここには、出場資格リストの16位、1226ptの真野友博(九電工)、25位で1196ptの長谷川直人(新潟アルビレックスRC)、日本人選手4番手で31位相当、1174ptの瀬古優斗(滋賀陸協)がエントリーしている。
真野は現状のままでも二大会連続の代表は、今大会には出場しない赤松諒一(アワーズ、1244ptで13位)とともに有望となってきているが、昨年のオレゴン大会では7位入賞を果たしており、参加標準記録の2m32をクリアできれば日本陸連の選考要件を満たし、代表がより確実になる。
長谷川も、アジア選手権後にフィンランドの大会に出場し2位となってスコアを伸ばした甲斐が有って、世界陸上出場の安全圏に入りつつある。
世界の舞台で闘うことを視野に入れ、自己ベストの2m26を上回る、2m30はクリアしておきたいところだ。
瀬古は36位のTN圏内で、31位に相当する1174ptを積み上げてきたが、長谷川との差、22ptを1大会で覆すのは厳しく、パリ五輪へ向けてランキングスコアの基盤とするためにも優勝を目指したい。13:00開始予定の男子走幅跳には、参加標準記録を突破している吉田弘道(神崎郡陸協)がエントリーしている。日本選手権でトップ8に残れず、代表内定を逃し厳しい立場に追い込まれているが、現在この種目で出場圏内に位置する選手は橋岡優輝(富士通)、城山正太郎(ゼンリン)の二人に留まり、代表の可能性が全くない訳ではない。日本選手権後も思うような跳躍は出来ていないが、復調を望みたい。その他、大会初日の16:30から行われる女子300mには、400mで世界陸上の出場圏内まで16ptとなっている久保山晴菜(今村病院)がエントリーしている。
300mは、400mのランキングにも反映される種目であるが、残り一大会での16ptを跳ね返すのは厳しく、コンマ1秒でも速いタイムを記録して天命を待つ他はなさそうだ。女子300mに続いて初日の17:00から予定されている男子400mには、昨年のオレゴン世界陸上4×400mリレー代表の川端魁⼈(中京大クラブ)、混合4×400mリレー代表の岩崎⽴来(三重県スポーツ協会)、河内光起(大阪ガス)がエントリーしており、ブダペスト世界陸上代表争いに一歩及ばなかった悔しさをぶつける舞台と言えそうだ。
末⻑智幸(近畿大)、森貫太、川北脩⽃(ともにびわこ成蹊スポーツ大)の力を付けてきている関西の学生のエントリーも有り、45秒台のゴールタイムで競技レベルの上がってきているこの種目のパリ五輪代表争い、4×400m代表争いに、更なる厚みを齎してほしい。また、ANG福井、田島記念のグランプリシリーズ以外の大会でも、日本大学競技会の男子走高跳では、1164ptにスコアを伸ばし、TN36位の1174ptまで10点差に迫ってきた澤慎吾(きらぼし銀行)がラストチャンスに挑む。二日間、他国で開催される大会の結果も気になる中で選手たちのラストチャンスを見届けることになるが、陸上競技ファンとして、やはり一人でも多くの選手が世界の舞台へ挑むことになることを、願っている。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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