前回の男子編に続き、女子編をお届けする。<女子>
*100m
君嶋愛梨沙(土木管理総合)②
PB:11.36 SB:11.37(220)
WAランキング 103)1174pt
昨年は東京五輪4×100mリレー代表の兒玉芽生(ミズノ)と数々の名勝負を繰り広げながら、オレゴン大会の4×100mリレーメンバーの座を勝ち取り、第二走者として43秒33の日本記録樹立に貢献。今年は昨年の調子を維持し、2015年北京大会の福島千里(当時セイコー、引退)以来の女子スプリント個人種目代表として世界の舞台に挑む。
*200m
鶴田玲美(南九州ファミリーマート)初
PB:23.17 SB:23.27(215)
WAランキング 106)1147
東京五輪4×100mリレーメンバーも昨年はやや奮わずにオレゴン世界陸上4×100mリレー代表を逃したが今季は復調、アジア選手権200mでの予選から23秒台三連発と、ラストチャンスとなった田島記念での優勝で猛烈に追い込み、世界陸上個人種目代表に。今月初めの富士北麓でも23秒27をマークし、絶好調の状態でブダペストに乗り込む。

*1500m
田中希実(New Balance)③
PB:3:59.19 SB:4:06.75(89)
WAランキング 28)1248pt
昨年は日本人女子選手として史上初めて同一大会で800m、1500m、5000mの三種目の代表となり、5000mでは決勝に進出するも、東京五輪で8位入賞を果たした1500mで決勝に進めず、壁にぶつかったと感じたようだ。今年は自信を取り戻すべくケニアでの合宿を敢行し、その効果もあってか7月にはフィンランドの大会で5000mに出場し、14分53秒60の日本歴代3位の好タイムをマーク、ブダペストでは1500mと5000mの二種目で8位入賞の偉業を狙う。
後藤夢(ユニクロ)初
PB:4:09.50 SB:4:09.61(149)
WAランキング 64)1188pt
西脇工業からND28ACを経てトヨタ自動織機TCと、練習を共にしてきた田中の陰に隠れがちだったが、豊田自動織機の所属となった昨年は7月のホクレンDCで自身初の4分10秒切りとなる4分09秒41をマークするなど力を示し、10月に新潟で行われたアスレチックスチャレンジカップでは田中を抑えて優勝を果たした。今季、ユニクロに所属を変え、New Balance所属のプロランナーとなった田中とも袂を分かつこととなったが、ブダペストではまた「共に」世界へ挑む。
*5000m
田中希実
PB:14:53.60 SB:14:53.60(36)
WAランキング 24)1224pt
山本有真(積水化学)初
PB:15:16.71 SB:15:30.70(167)
WAランキング 45)1178pt
名城大では全日本大学駅伝で母校の連覇に主力として貢献をしてきたが、4年時だった昨年は国体の5000mで廣中を破り、15分16秒71の自己記録をマークすするなどトラックでも力を付け、アジア選手権で優勝を果たし、初の世界選手権代表に。まずは決勝進出を目指したい。
廣中璃梨佳(日本郵政グループ)②
PB:14:52.84 SB:15:18.77(97)
WAランキング 69)1151pt
東京五輪では5000mで14分52秒34の日本記録をマークして9位、10000mでは7位に入賞、昨年のオレゴン大会では5000mで決勝進出を逃がすも10000mでは12位ながら30分39秒71の自己記録でブダペスト世界陸上参加標準記録を突破と健闘してきたが、今季は「勤続」の疲れもあってか、大会に出場はするが調子は上向かず、といった状態が続いたが、ホクレンDC第4戦の北見大会5000mでは15分18秒77をマーク、ブダペストでは上り調子で5000m、10000mに挑めそうだ。
*10000m
廣中璃梨佳
PB:30:39.71 SB:32:11.15(69)
WAランキング 19)1250pt
五島莉乃(資生堂)②
PB:31:10.02 SB:31:59.00(52)
WAランキング 42)1200pt
昨年のオレゴン大会は32分08秒68で19位。今季のシーズンベストが31分59秒00と、絶好調だった一昨年の秋から昨年春辺りの勢いは感じられないが、2度目の世界選手権に合わせてコンディションを上げることが出来ていれば、昨年を上回る結果を出すことも可能だろう。できるだけ集団に食らいつき、後半は落ちてくる選手を粘り強く拾って順位を上げていきたい。

*100mH
寺田明日香(ジャパンクリエイト)③
PB:12.86 SB:12.86(56)
WAランキング 28)1255pt
2019年に現役に復帰、日本人選手として初めての12秒台となる12秒97をマークするとドーハ世界選手権にも出場、2021年には東京五輪への出場も果たした。昨年は大会出場をセーブしてオレゴン世界陸上は目指さず、心身のリフレッシュとメンテナンスに充て、今季は3度目の世界陸上切符を掴んだ。シーズンベストの12秒86を出した木南記念後には「ブダペストで12秒6台を出せるよう取り組んでいる」と語っているが、有言実行となるか。
青木益未(七十七銀行)②
PB:12.86 SB:12.90(65)
WAランキング 32)1247pt
東京五輪とオレゴン世界陸上を経験、今季は2月のアジア室内選手権の60mHで優勝を飾るも、その後は記録も12秒90に留まり、なかなか勝ち切れていない。ブダペストにピークを合わせることが出来ているかが準決勝進出へのカギとなり、そこで決勝へ向けての勝負が出来るかに注目だ。
田中佑美(富士通)初
PB:12.89 SB:12.89(61)
WAランキング 37)1236pt
今シーズンは1月末から欧州の室内シリーズを転戦、3月には屋外シーズンに入ったオーストラリアの大会に出場するなど始動を早め、その効果もあってか4月の織田記念で自身初の13秒切りとなる12秒97をマークすると、5月のGGPでは12秒89に記録を伸ばして2位に入るなど、ランキングでの出場権争いをリード。勝負の日本選手権では既に参加標準記録を突破していた福部真子(日本建設工業)を抑えて3位に入り、初の世界選手権代表を有力とした。今季の成長が世界の舞台でどこまで通用するか、期待も膨らむ。

*400mH
宇都宮絵莉(長谷川体育施設)
PB:56.50 SB:56.65(107)
WAランキング 52)1168pt
東京五輪、オレゴン世界陸上と最終盤までランキングでの出場圏内に留まりながら最終発表で涙を呑んでいたが、今大会は最終発表後の出場者調整を経た繰上りで出場資格を得て、3度目の正直で悲願の初出場となった。アジア選手権で2位となった後、ラストチャンスの田島記念で、ゴール直前での逆転優勝を遂げた執念が実った。ブダペストでは思いの丈のすべてをぶつけ、自己ベスト更新を目指してもらいたい。

山本亜美(立命館大)
PB:56.06 SB:56.06(67)
WAランキング 54)1167pt
宇都宮同様に世界陸上出場圏内には少し届かす、出場は難しいかと思われたが、ワールドユニバーシティーゲームズの期間中、中国にて吉報が届いた。そのユニバでは予選から3レース立て続けに57秒台をマークと仕上がっていたが、もう一段ギアを上げ、56秒07の自己記録を更新できれば準決勝進出も見えてくる。

*走幅跳
秦澄美鈴(シバタ工業)②
PB:6m97 SB:6m97(5)
WAランキング 10)1264pt
昨年はオレゴン大会に初出場も予選敗退。今季は静岡国際で6m75に自己記録を更新すると、7月のアジア選手権ではついに日本記録更新となる6m97で世界陸上参加標準記録を突破、アジアチャンピオンとして2度目の世界陸上に挑む。6m97は今季シーズントップリストの5位でメダルが見えてきているとも言えるが、まずは6m70前後になると予想される決勝進出ラインを、予選の3回で確実に跳べるかが一つの壁となる。決勝に進出しトップ8に残り、7mオーバーでアジア記録更新という夢のようなストーリーを現実にできる力が、いまの秦には有る。走高跳でも2017年のアジア選手権では代表となった実績を誇り、それが助走からの踏切や、高さのある跳躍に生かされている。

*三段跳
森本麻里子(内田建設AC)初
PB:14m16 SB:14m16(17)
WAランキング 15)1207
2019年から日本選手権で3連覇を果たした国内無敵の女王は、昨年世界レベルへの飛躍を遂げるためにドイツに拠点を移すと、8月にはコンチネンタルツアーレバークーゼン大会で日本歴代2位となる13m82に自己記録を更新、今季も4月の織田記念で13m68、続く木南記念も13m80で連勝果たすと、日本選手権では遂に日本人選手二人目の14m台となる14m16の日本記録を樹立、アジア選手権でも14m06で優勝と勢いに乗って初の世界の舞台、ブダペストへと乗り込む。自己記録をさらに伸ばせれば、決勝進出も有り得る。

髙島真織子(九電工)初
PB:13.82 SB:13.82(56)
WAランキング 39)1151pt
女子三段跳は船田茜理(武庫川女子大)が昨年8月のトワイライトゲームズで13m81の好記録をたたき出したのをきっかけに森本が13m82で続き、俄然活況を呈してきたが、その流れに乗り遅れた感のあった髙島も、今季に入って自己記録更新を重ね、5月の木南記念では13m75、そして日本選手権ではその時点では日本歴代2位の森本に並ぶ13m82をマーク(直後に森本が14m16の日本記録を打ちたて歴代3位に)と躍進。その際の悔し気な表情からは、あるいは日本人選手二人目の14m00台を跳べる手応えがあったものと思われ、世界の大舞台でその実現がなるか、期待をしたい。
*円盤投
齋藤真希(東海大)初
PB:57m43 SB:56m80(93)
WAランキング 51)1060pt
昨年5月の関東インカレで日本歴代3位となる57m43をマーク、今季はそこには届いていないが日本選手権を56m63で制し、オールスターナイト陸上でも56m80で優勝と、55mから56m台を安定して投じ、アジア選手権こそ54m14で4位に留まったがスコアを上昇させ、宇都宮らと同様に繰上りで出場資格を獲得し、世界選手権出場となった。大舞台での自己記録更新に期待。

*やり投
北口榛花(JAL)③
PB:67m04 SB:67m04(1)
WAランキング 1)1359pt
東京五輪は12位とトップ8に残れなかった悔しさを胸に、昨年は6月のダイヤモンドリーグで初優勝を果たすと、オレゴン世界陸上では63m27で銅メダルを獲得と躍進、今季は日本選手権の取りこぼしはあったが、DLパリ大会で2連覇、ポーランド大会では67m04のシーズントップの記録で優勝を果たし、WAランキング、シーズン記録共に1位の押しも押されもせぬ堂々の優勝候補として、ブダペストに乗り込む。
斉藤真理菜(スズキ)②
PB:62m37 SB:62m07(14)
WAランキング 14)1190pt
2017年ロンドン大会の代表は、その後故障もあり低迷が続いたが、昨シーズン最終戦のとちぎ国体を60m81で2位に入って復調のきっかけを掴むと、今季は4月の織田記念でセカンドベストの62m07をマークするなど、60mをオーバーを安定して投じ、久々に世界への切符を掴んだ。自己記録を上回る63mに届けば、決勝進出、トップ8が見えてくる。
上田百寧(ゼンリン)②
PB:61m75 SB:60m54
WAランキング 34)1119pt
昨年世界陸上に初出場も、直前で負ったひざの故障もあり不完全燃焼に。今季は5月のGGPで60m54を投じて5位に入りランキングを浮上させ、日本選手権で3位入って世界陸上への希望をつなぎ、アジア選手権6位等でランキング上位を維持し、2度目の代表に漕ぎつけた。ばねが弾むような、あるいはゴムまりのようなスピードを生かした助走からの、やや低めの鋭いやりの弾道に特徴がある。
*マラソン
松田瑞生(ダイハツ)③
PB:2:20:52 SB:2:21:44(30)
WAランキング 42)1282pt
マラソンでは初めての出場となったオレゴン大会では、ハイペースの先頭集団には加わらず後方から追っていくレースとなり、40㎞過ぎには8位の選手に並びかけるも突き放され、9位と入賞はならなかった。より強い選手となるために、世界陸上に全力で挑んだあとも、10月のパリ五輪選考会のMGCで2位までに入り、代表内定を目指す予定だ。
加世田梨花(ダイハツ)初
PB:2:21:55 SB:
WAランキング 90)1226pt
初マラソンとなった昨年東京マラソンを2時間28分29秒で走ったあと、9月のベルリンマラソンで2時間21分55秒の当時歴代9位の好記録をマークしてトップ選手の仲間入りを果たした。この冬シーズンはマラソンでの出場はなかったが、2月の丸亀ハーフでは1時間8分11秒の好タイムをマーク、トラックシーズンに入ると5000mや10000mでスピードを磨いた。マラソン練習と並行しての5000m15分21秒72や、10000m31分49秒56は、トラック長距離を主戦場とする選手にも劣らず、地力が上がってきていることを感じさせ、代表選手の中でも特に注目して欲しい選手の一人だ。
佐藤早也伽(積水化学)初
PB:2:22:13 SB:
WAランキング 170)1120pt
初マラソンの2020年名古屋で2時間23分27秒と好走してから、記録的には足踏み状態が続いていたが昨年秋のベルリンマラソンでは、前半から加世田を上回るハイペースで入る積極性を見せつつ後半も粘って自己記録を更新。続けての記録更新を目指して挑んだ今年1月の大阪では他選手と接触して転倒する不運もあり途中棄権となったが、世界陸上代表に選ばれた。転倒後のコンディション面は気になるところだが、7月のホクレンDCの10000mでは32分38秒71とまずまずのタイムで走っており、初の世界陸上でも、身上の積極性と、後半の粘りを見せてくれそうだ。
*20km競歩
藤井菜々子(エディオン)③
PB:1:28:58 SB:1:29:54
WAランキング 9)1228pt
初出場となったドーハ世界陸上の20㎞競歩では暑さと湿度の高い過酷な条件のなか7位に入賞、東京五輪は13位と入賞を逃したが、昨年のオレゴン世界陸上ではドーハから一つ順位を上げて6位入賞と、着実に力を付けている。WAランキングも9位に付けており、3大会連続の入賞が期待される
柳井綾音(立命大)初
PB:1:30:58 SB:1:30:58(43)
WAランキング 43)1129pt
世界ランキングにより出場権を獲得。代表決定が大会直前となった点は気掛かりだが、今月5日のワールドユニバーシティゲームズでは6位といったん仕上がっており、後は疲労が抜けているか。若さで初の世界陸上に挑む。
梅野倖子(順天堂大)初
PB:1:33:38 SB:1:33:38(79)
WAランキング 62)1082pt
7月のアジア選手権20㎞競歩で銅メダルを獲得してランキングを上げ、世界陸上代表に。暑いタイでのレースの後だけに、柳井同様疲労からの回復具合が気になるが、やはり若さで乗り切りたい。
*35km競歩
岡田久美子(富士通)⑤
PB:2:44:11 SB:2:44:11(9)
WAランキング
昨年のオレゴン大会では20㎞で14位、5回目の世界陸上となるブダペストでは初めて35㎞の出場となる。シーズントップリストでは9位と上位につけており、入賞も期待される。オリンピックではリオ、東京と2大会連続の代表で、世界選手権では2019年ドーハ大会20㎞の6位が最高成績。
園田世玲奈(NTN)②
PB:2:44:25 SB:2:44:25(10)
WAランキング 11)1249pt
昨年のオレゴン世界陸上は初出場ながら入賞まであと一歩の9位と健闘。パリ五輪の実施種目から35㎞が外れたことに無念の思いを口にする一人で、その思いをぶつけ、世界陸上初入賞を目指す。
渕瀬真寿美(建装工業)⑥
PB:2:54:29 SB:2:54:29(38)
WAランキング 39)1105pt
出場6回目は今大会の日本代表選手で男女を通じて最多を誇り、初出場は2007年の大阪大会の20㎞と、これだけ長く国内トップ選手の地位を維持しているところが素晴らしい。今年に入って11位でゴールした2012年のロンドン五輪20㎞競歩で、ドーピング違反による失格が相次いだことにより8位に繰り上がり、女子競歩で初の五輪入賞選手となった。50㎞で11位となった2019年ドーハ大会以来の世界陸上となるが、ベテランの味を発揮しての入賞がなるか、注目をしたい。
以上で男子48名、女子28名の選手名鑑を閉じたい。
3連覇を目指す男子20㎞競歩の山西や、金メダルを争う位置にある女子やり投げの北口、メダル獲得を目指す男子100mHの泉谷、3000m障害の三浦、一発大ジャンプの可能性を秘める女子走幅跳の秦など、代表選手の競技力の高さは過去最高レベルと言って良い。日本からの応援が一層の熱を込めてブダペストに届く、この名鑑がその一助となれば、との思いで筆を進めた。
文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)
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