女子は本命なき混戦も、東京五輪10000m代表の安藤に初の五輪マラソン代表のチャンス到来!鈴木亜由子、前田穂南、一山麻緒は連続代表を目指す!細田、加世田ら若手の台頭は!?パリ五輪マラソン代表選考会、MGCのみどころ女子編

パリ五輪代表選考会、MGCのみどころ男子編に続き、男子の10分後、8:10にスタートする女子編。

女子はベルリンマラソンで日本記録更新に挑むことを表明していたMGCファイナリスト最速記録、2時間19分24秒を持つ新谷仁美(積水化学)が出場を辞退しエントリーを行わず、またMGCチャレンジ期間中、新谷に次ぐ2時間20分52秒の二番手のタイムを記録し、今夏のブダペスト世界陸上で2時間29分15秒の13位で日本人選手最上位となった松田瑞生(ダイハツ)も故障により欠場と有力選手の回避が有り、またエントリー選手中最速タイムの2時間20分29秒を持ち、東京五輪女子マラソン8位入賞の実績を誇る一山麻緒(資生堂)も、昨年のオレゴン世界陸上の女子マラソンをコロナウィルス感染により欠場して以降は、今年3月の東京マラソンで2時間31分52秒で日本人選手7番手の14位に終わるなど順調とは言えず、代表2枠を巡る争いは男子以上に混沌としている。

東京五輪10000m代表、安藤友香にマラソン五輪代表の大チャンス
このような状況の中で、2019年のMGCに敗れ東京五輪マラソン代表には届かなかったものの、ターゲットを10000mに変えて見事に代表の座を掴み、五輪後も大きな故障なくマラソンで安定した成績を残している安藤友香(ワコール)に初の五輪マラソン代表の大チャンスが来ていると見ている。
2017年の名古屋でマークした2時間21分36秒の自己ベストをなかなか更新できていないことが本人としては歯痒いようだが、東京五輪で10000m代表を目指したことにより、その当時よりスピードは磨かれ、2022年の名古屋ウィメンズでは、5㎞過ぎから独走となったR・チェプンゲティチ(ケニア)を、15㎞過ぎから5㎞のスプリットタイムを16分16秒に上げて追いかけ始めたL・サルピーター(イスラエル)に食らい付き、中間点を過ぎてから突き放され単独走となりながらも25㎞までの5㎞のスプリットを16分14秒と更に上げる果敢な走りを見せている。その後は20℃を上回る暑さも有りタイムを落として2時間22分22秒でのゴールとなったが、当時世界歴代8位のサルピーターの急激なペースアップに10㎞近く食らい付き、単独走となってからも大きく崩れず粘り切ったレース内容は高い評価に値するものだった。
MGCチャレンジが始まって以降の安藤は、名古屋ウィメンズ、大阪国際女子の女子限定レースのみの出場で、集団の人数も早い段階で少なくなり、レース後半は競う相手がいなくなるなど展開に恵まれない分、タイムが伸びていないが、自己記録更新や2時間20分台を記録する実力は既に備わっているだろう。
また、男子の助けを得られる東京マラソンを選択しなかった点には、選手としてのある種の潔さを感じる。
今年に入って出場した大阪国際女子マラソンもハーフ通過が1時間9分45秒と女子単独レースとしては速い展開となったため、後半に優勝争いから脱落して以降は厳しい走りとなり2時間22分59秒に留まったが、以降はトラックシーズンに入っても7月のホクレンDCでは5000mで15分22秒74、10000mで31分46秒85の好タイムをマークするなど調整は順調、MGCまでのプロセスはほぼ完ぺきで、目に見える状態の良さにかけては一番手でレース当日を迎えるのがこの安藤ではないだろうか。

鈴木亜由子、前田穂南、一山麻緒の東京五輪マラソン代表組
前回のMGCで2位を死守し、東京五輪代表となった鈴木亜由子(日本郵政グループ)は、その東京五輪の疲れが抜けるまでに時間を要したが、昨年9月にベルリンでパリ五輪へ向けての再出発となるフルマラソンに挑むと2時間22分02秒の自己記録で8位に入り、続く今年3月の名古屋ウィメンズマラソンでも2時間21分52秒と更に自己記録を更新、ようやくフルマラソンでレースを重ねる事ができるようになり、また東京五輪まではMGC出場権を獲得した2018年の北海道、2019年のMGCと夏場のマラソンの経験しかなったことから、高速マラソンにおいてもまだまだ伸びしろはあると思われる。
名古屋ウィメンズ以降実戦から遠ざかっている点は割引材料だ。

前回のMGCでは中間点過ぎで鈴木亜由子を引き離すとそのまま押し切って2時間25分15秒で優勝を果たし、東京五輪代表を手中に収めた前田穂南(天満屋)は、東京五輪後は故障に悩まされ、レースに出場するまでにコンディションを戻すことがなかなか出来ずにいたが、今年3月の名古屋ウィメンズでようやく東京五輪後初のフルマラソン出場に漕ぎ着け、2時間22分32秒の自己ベストで3位に入りラストチャンスで二大会連続五輪マラソン代表への道を切り拓いたのは流石だった。
鈴木同様故障に大成を阻まれているが、その潜在能力は依然として高く、コンディションさえしっかり整えば、かつての男子の日本記録保持者、中山竹通を彷彿とさせるスケールの大きな走りと足捌き、勝負どころと見れば早めの集団からの飛び出しも厭わない思いきりの良さが、大きな武器となるだろう。

一山は前述の通りエントリー選手中ナンバーワンの実績を誇るが、東京マラソンでの失速は、力を出し切れずに終わった前回のMGC以来のことで、その後にトラックレースの出場が無い点も、これまで一つのマラソンから次のマラソンへ至るプロセスにおいて、5000m、10000mのトラックレースや、駅伝などのロードレースを挟みながら力を付けてきた一山の姿勢とは異なっており、仮に永山コーチの課す鬼メニュー、鬼鬼メニューのトレーニングを充分に積むことができていたとしても実戦の感覚まで戻るものなのか、順調さを欠き不安を抱えている分、優勝候補の筆頭として強く推すことが躊躇われる。

東京五輪後に台頭してきた細田あい、上杉真穂、加世田梨花
むしろ、昨年秋のロンドンマラソンで2時間21分42秒の自己記録をマークし、今年3月の東京マラソンでも2時間22分08秒と好記録を連発した細田あい(エディオン)の再現性の高さ、パリ五輪代表を目指し長期計画でフルマラソンに取り組み、MGCチャレンジが始まって以降のフルマラソン出場は6回と実戦を積み重ねることで力を付けてきた上杉真穂(スターツ)の思いの強さに魅力を感じている。

また、ブダペスト世界陸上代表の加世田梨花(ダイハツ)は、昨年のベルリンマラソンで2時間21分55秒で7位と鈴木亜由子に先着、力を付けてきた今後の女子長距離界を担う若手選手の一人だが、世界陸上からの間隔が短い事はやはりネガティブファクターで、それを跳ね返す力があるかが試されるレースとなる。

吉川侑美、前田彩里のベテラン勢にも注目
学生時代に主戦場としていた800mから距離を伸ばし、近年5000mや10000m、ハーフマラソンで次々に自己記録を更新、そして満を持して挑んだ初マラソンの今年の大阪国際女子で2時間25分20秒で5位に入りMGCまで辿り着いた吉川侑美(ユニクロ)、前回のMGCはその切符を掴んだものの、本番は故障により欠場、出産を経て吉川と同じく今年の大阪国際女子で2時間25分24秒で6位となり、2回目のMGC出場権を獲得した前田彩里(ダイハツ)のベテラン勢がどのような走りを見せるのかも楽しみだ。

女子は上位候補の選手とそれ以外の選手との力に開きがあるため、おそらく早い段階で集団の人数が絞られる展開になるものと思われる。
男子同様にペースメーカーの起用はなく、初マラソンから2戦続けて積極的なレースを見せている若手の鈴木優花(第一生命)辺りが序盤から先頭を引っ張ることになるだろうか。
あるいは出場選手を複数抱え、有力選手も擁する天満屋辺りは、エースを後押しするようなチームオーダーが取られる可能性もある。
いずれにしても上位を窺う選手たちの現状はこれまで述べてきたように一長一短が有り、確固たる本命のいない混戦を断ち切る選手は誰なのか、24名の選手がスタートを待つ。

文/芝 笑翔 (Emito SHIBA)

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MGCファイナリストのベストタイムランキング
※はMGCチャレンジ期間最速タイムとランキング
女子
1)新谷仁美(積水化学)2:19:24 ※1)2:19:24
2)一山麻緒(資生堂)2:20:29 ※3)2:21:02
3)松田瑞生(ダイハツ)2:20:52 ※2)2:20:52
4)安藤友香(ワコール)2:21:36 ※8)2:22:22
5)細田あい(エディオン)2:21:42 ※4)2:21:42
6)鈴木亜由子(日本郵政グループ)2:21:52 ※5)2:21:52
7)加世田梨花(ダイハツ)2:21:55 ※6)2:21:55
8)佐藤早也伽(積水化学)2:22:13 ※7)2:22:13
9)上杉真穂(スターツ)2:22:29 ※9)2:22:29
10)前田穂南(天満屋)2:22:32 ※10)2:22:32
11)前田彩里(ダイハツ)2:22:48 ※18)2:25:24
12)松下菜摘(天満屋)2:23:05 ※11)2:23:05
13)渡邉桃子(天満屋)2:23:08 ※12)2:23:08
14)谷本観月(天満屋)2:23:11 ※13)2:23:11
15)岩出玲亜(デンソー)2:23:52 ※28)2:27:03
16)阿部有香里(京セラ)2:24:02 ※14)2:24:02
17)鈴木優花(第一生命グループ)2:25:02 ※15)2:25:02
18)福良郁美(大塚製薬)2:25:15 ※16)2:25:15
19)吉川侑美(ユニクロ)2:25:20 ※17)2:25:20
20)川内理江(大塚製薬)2:25:35 ※19)2:25:35
21)市田美咲(エディオン)2:25:51 ※20)2:25:51
22)大西ひかり(日本郵政グループ)2:25:54 ※21)2:25:54
23)太田琴菜(日本郵政グループ)2:25:56 ※22)2:25:56
24)和久夢来(ユニバーサルエンターテインメント)2:25:58 ※23)2:25:58
25)池田千晴(日立)2:25:59 ※24)2:25:59
26)大東優奈(天満屋)2:26:09 ※25)2:26:09
27)竹本香奈子(ダイハツ)2:26:23 ※26)2:26:23
28)森田香織(パナソニック)2:26:31 ※27)2:26:39
29)山口 遥(AC・KITA)2:26:35 ※29)2:29:52

出場辞退:新谷仁美、大西ひかり
欠場:松田瑞生、佐藤早也伽、渡邉桃子

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