サイトアイコン ATHLETE News

ウガンダのチェサンが2時間19分31秒で優勝!東京世界陸上10000m代表の矢田みくにが2時間19分57秒の初マラソン日本最高記録で才能開花!第45回大阪国際女子マラソンの結果

第45回大阪国際女子マラソンが1月25日、大阪市のヤンマースタジアム長居を発着点とする42.195㎞のコースで行われ、東京世界陸上10000m代表の矢田みくに(エディオン)が日本人選手6人目の2時間20分切りとなる、2時間19分57秒の初マラソン日本最高記録で4位に入り、2027年に開催されるロサンゼルスオリンピックマラソン代表選考会MGCの出場権を獲得した。

2時間23分07秒で日本人選手2番手の5位となった上杉真穂(東京メトロ)、第2集団から順位を押し上げ、2時間24分16秒で6位に続いた川内理江(大塚製薬)、20㎞までに第1集団から遅れる苦しい展開となった過去3度の優勝を誇る松田瑞生(ダイハツ)も、本調子を欠きながらもレース後半で粘り強く順位を上げ2時間26分16秒で日本人選手4番手の7位と条件をクリアしてMGC出場権を獲得、8位の伊澤菜々花(スターツ)は2時間27分45秒でMGC出場ラインに届かず、昨年12月の防府読売マラソンで優勝し、既にMGC出場権を得ていた21歳の若手、西村美月(天満屋)は2時間28分21秒の9位に留まった。
若手選手の育成を目的とするネクストヒロイン選手では、立命館大の陸上サークルに所属する20歳の深田望友が2時間34分41秒の11位でフィニッシュ、30㎞地点を2時間23分を切るペースで通過していた東北福祉大の村山愛美沙は、途中棄権となった。
残り3㎞で4人の先頭集団から抜け出した、パリオリンピック7位のS・チェサン(ウガンダ)が2時間19分31秒で優勝、B・ヒルパ(エチオピア)が2時間19分54秒で2位に入り、大会三連覇を目指したW・エデサ(エチオピア)は2時間19分56秒で3位だった。

レースの中でマラソンランナーとして覚醒した矢田みくに

4か月前、国立競技場で世界の壁に跳ね返された東京世界陸上10000m代表の矢田みくにが、初マラソンでマラソンランナーとしてのポテンシャルを一気に開花させた。

1999年生まれの矢田は、1500m、5000mなど数々の日本記録を持つ田中希実(New Balance)やパリオリンピック女子マラソン6位の赤﨑優花(クラフティア、当時鈴木姓、所属は第一生命グループ)とは同い年。
ルーテル学院高校時代はインターハイや国体などの大きなタイトルには恵まれなかったが、高校2年時の2016年に5000mで今も高校歴代3位にランクされている15分25秒87をマーク、将来を嘱望される選手の一人だった。

高校卒業後はデンソーに入社し、全日本実業団女子駅伝等で主力として活躍、3年目の2020年12月には東京オリンピックの代表選考会として行われた第104回日本陸上選手権長距離の10000mに出場、このレースで30分20秒44の日本記録を打ち立てた新谷仁美(積水化学)のペースには付けなかったが、2番手を走る既にマラソン代表に内定していた一山麻緒(当時ワコール、現資生堂)を追い、佐藤早也伽(積水化学)、楠莉奈(積水化学、当時は鍋島姓で日本郵政グループ)と3番手グループを形成し、参加標準記録突破が視野に入るペースで引っ張った。
ラスト1周で佐藤、楠に突き放されて31分34秒39の5位、オリンピック参加標準には届かなかったが自己ベストを30秒以上更新する力走に、翌2021年5月に行われる最終選考会に向け、手応えを得た筈であったが、第105回日本選手権10000mのスタートラインに立つことは無く、東京オリンピック出場は叶わなかった。

2022年の冬には青木涼真(Honda)、清水歓太(SUBARU)といった男子の国内トップクラスのトラック中長距離選手と共に海外トラックチームの練習に加わり、ボストンで行われた室内競技会では当時の5000mアジア室内記録となる15分23秒87を記録する収穫を得たが、帰国後の4月に心機一転エディオンに移籍した後も、2023年12月の日本選手権10000m8位、パリオリンピック最終選考会となった2024年の日本選手権10000mでは4位と、あと一歩代表に届かない状況が続いていた。

東京世界陸上の開催を9月に控えた2025年になって、4月に行われた日本選手権10000mで31分20秒09の自己記録をマークして廣中璃梨佳に続く2位に入ると、続く5月に代表として出場したアジア選手権の10000mでは31分13秒78に自己記録を更新して3位となり、WAランキングも大幅に上昇し世界陸上代表の座を掴み取ったが、自身初の世界の舞台では20位と海外勢の壁に跳ね返された。
このようやく辿り着いた世界の舞台での悔しい経験を次のステージに進むための糧として、自身の殻を破るために、リスタートの舞台として大阪国際女子マラソンを選んでいた。

スタート時のヤンマースタジアムの気温は5.9℃、風も有り、エデサ、チェサン、ヒルパの海外勢と松田瑞生、上杉真穂、伊澤菜々花、そして矢田の7人で形成された第1ペーサーの集団は、最初の5㎞こそ1㎞3分19秒、5㎞16分35秒目安の設定ペースから遅れたが、10㎞以降はほぼ設定ペース通りでレースは推移。
20㎞手前で大会3度の優勝を誇る松田が集団から遅れ、中間点通過が1時間10分13秒と2時間20分切りも望めるハイペースに、25㎞までに伊澤、上杉が次々に脱落して行ったなか、初マラソンの矢田が、日本勢では唯ひとり優勝争いに残った。

20㎞からの5㎞のスプリットが16分29秒、25㎞からの5㎞は走路が狭まる2回目の大阪城公園の周回があった中、30㎞でのペースメーカー離脱を前に16分22秒まで上がっていたが、ここからの矢田の走りは凄まじかった。
ペースメーカーがレースから離脱すると間髪入れずにペースを上げてレースの主導権を奪いに行き、巧みにペースを上下させる海外勢の駆け引き勝負をまず封じた。
給水地点で更にペースを上げて本格的に仕掛けると、エデサもこれを追い掛け、矢田を先頭にエデサ、ヒルパ、チェサンの縦4人の隊列がしばらく続く。

矢田のペースが緩むとエデサが先頭に出掛かったが、その都度走りに力を入れて抑え込んだ。
30㎞からの5㎞のスプリットはここまで最速の16分20秒まで上がり、さすがに矢田にも疲れの色が見え始め、エデサを抑えることが出来なくなって先頭を譲ると位置取りも4人の最後方に下がり、厳しい局面を迎えたように見えたが、1㎞ほどでエデサが今度はチェサンに先頭を譲りペースが落ちつくと、息を吹き返した矢田は残り5㎞手前で勝負を仕掛けた。

勝負を決めに行ったスパートは残り3㎞を切って矢田のペースが緩む隙を伺っていたチェサンに被せられ、これに続いたエデサ、ヒルパにも離されて一時は10mほど差を付けられたが、40㎞を過ぎてチェサンを追い切れなかったエデサ、ヒルパに矢田が追い付き、2位争いに加わった。
この時点で矢田は自身の限界を既に越えていたと思われるが、ヤンマースタジアムへの取り付け道路に入ってからのエデサのスパートにも、「絞り出し」であったり「執念」とも異なる、言葉では形容し難い、矢田の心身から抑え切れず湧き出したとしか思えない、恐るべき「根性」で食い下がり、スタジアムに入ってからも一度は外からエデサ、ヒルパの二人を抜きに掛かった。

最後は健闘及ばず順位は4位となったが、安藤友香(当時スズキAC、現しまむら)が2017年の名古屋ウィメンズマラソンで記録した、2時間21分36秒の初マラソン日本最高記録を2時間19分57秒に更新してのフィニッシュとなった。

これまで駅伝などでのロード10㎞の経験はあっても、ハーフマラソンすら走ったことのなかった矢田の快走は、チームの初優勝に貢献した全日本実業団駅伝以降、この日のために入念に準備を行ってきた成果であり、初めてのマラソンへの取り組みが思いのほかフィットした結果でもあるが、ここまでのプロセスの中で壁にぶつかり、結果を残せない日々が続いても、男子選手とともに海外のクラブチームの練習に参加するなど、向上心と競技への熱い思いを保ち続けていたことも、レースの中で自身のリミッターを越えて、殻に閉じ込められていたポテンシャルを発揮するに至った要因の一つなのではないだろうか。

矢田みくには大阪国際マラソンのレースの中で、マラソンランナーとして覚醒した。
今後は本格的にトレーニングの強度をあげることで、今回のようなレースを続け、更に上まわる結果を残すことができるか、その真価が問われる事になるだろう。

レース後のインタビューで、ロサンゼルスオリンピックは夢ではなく、目標と答えたその表情は、数分前まで激闘を繰り広げていた矢田とはまるで別人で、放心状態からまだ戻り切れていないようにも見えた。
それだけ、このレースに全てを出し尽くしたのだろう。

文/芝 笑翔

記事への感想お待ちしております! X もやっています。是非フォローおねがいします!(https://twitter.com/ATHLETE__news

1/25
第45回大阪国際女子マラソン
上位20名
1)S・チェサン(ウガンダ)2:19:31
2)B・ヒルパ(エチオピア)2:19:54
3)W・エデサ(エチオピア)2:19:56
4)矢田みくに(エディオン)2:19:57※初マラソン日本最高記録、MGC出場権獲得
5)上杉真穂(東京メトロ)2:23:07※MGC出場権獲得
6)川内理江(大塚製薬)2:24:16※MGC出場権獲得
7)松田瑞生(ダイハツ)2:26:16※MGC出場権獲得
8)伊澤菜々花(スターツ)2:27:45
9)西村美月(天満屋)2:28:21
10)中野円花(岩谷産業)2:29:29
11)深田望友(R-United)2:34:41
12)豊田由希(愛媛銀行)2:37:18
13)守内美結(Team Hally)2:37:50
14)八木美羽(岩谷産業)2:38:14
15)嶋田早紀(十勝陸協)2:38:22
16)山﨑夢乃(京都陸協)2:38:22
17)坪倉琴美(ワコール)2:39:00
18)小田美月(立命館大陸上競技同好会)2:38:36
19)遠藤知佐(PACER TC)2:39:22
20)中島知美(火曜日練習会)2:39:53
※DNF 筒井咲帆(ユニバーサルエンターテインメント)、村山愛美沙(東北福祉大)

女子マラソン日本歴代10傑
1)前田穂南(天満屋)2:18:59
2)野口みずき(グローバリー)2:19:12
3)新谷仁美(積水化学)2:19:24
4)渋井陽子(三井住友海上)2:19:41
5)高橋尚子(積水化学)2:19:46
6)矢田みくに(エディオン)2:19:57
7)一山麻緒(ワコール)2:20:29
8)細田あい(エディオン)2:20:31
9)松田瑞生(ダイハツ)2:20:42
10)佐藤早也伽(積水化学)2:20:59

女子初マラソン歴代10傑
1)矢田みくに(エディオン)2:19:57
2)安藤友香(スズキAC)2:21:36
3)坂本直子(天満屋)2:21:51
4)松田瑞生(ダイハツ)2:22:44
5)関根花観(日本郵政グループ)2:23:07
6)渋井陽子(三井住友海上)2:23:11
7)佐藤早也伽(積水化学)2:23:27
8)小崎まり(ノーリツ)2:23:30
9)原裕美子(京セラ)2:24:19
10)清田真央(スズキAC)2:24:32

モバイルバージョンを終了