第110回日本陸上競技選手権大会・混成競技が6月7日から二日間の日程で、岐阜メモリアルセンター長良川競技場で行われる。
今大会は9月に開催される名古屋アジア競技大会の最重要競技会に指定されており、各選手は優勝と共に、男子十種競技は7918点、女子七種競技は6019点の派遣設定記録を意識して競技に挑むことになる。
アジアの混成競技の近況を踏まえても、男子十種競技では過去3年に遡って、派遣設定記録を上回るリザルトを残しているのは2024年に8021点、昨年に8054点、そして今年4月に日本記録となる8321点を叩き出した丸山優真(住友電工)のみ、女子七種競技ではカナダから中国に国籍を移した鄭妮娜力(ジン ニナリ)が2024年に記録した6164点のみと、やや水準の高いターゲットとなっているが、これをクリアして優勝を果たし、アジア大会代表を確実にする選手が出てくるかが今大会の焦点だろう。
また、アジア大会代表選考要項の選考条件には「本大会においてメダルまたは入賞が期待され、強化委員会が推薦する競技者」とも記されており、派遣設定記録に届かなくとも、そこに迫り、メダル争いをする力があると認められれば代表となる可能性はある。
今季はまだシーズンに入って日が浅いため、昨年のアジアのトップリストを参照すると、十種競技の3位は7826点、七種競技は5869点であり、この辺りの得点を記録することも一つの目安となってくるものと思われる。
男子十種競技では、先述の通り今年4月にアメリカ・カリフォルニア州で行われたマウントサックリレーズの混成競技で8321点の日本記録を叩き出した丸山優真(住友電工)が、5月30日、31日にオーストリアで行われたWAのコンバインドツアーゴールド大会のハイポミーティングに出場(※結果は日本記録更新を目指せるペースで推移しながら、右ひじの痛みのためやり投げの1投目のあと競技を棄権)するため、あらかじめ今大会のエントリーを見送り、昨年の大会を制した右代啓欣(エントリー)は欠場で本命不在の混戦が予想されるが、実績面で抜けているのは、2022年秋、丸山に先んじて国内の選手として3人目の8000点オーバーとなる8008点をマーク、2023年のアジア室内選手権の七種競技、昨年のアジア選手権の十種競技代表の奥田啓祐(ウィザス)だ。
奥田は元々はやり投の選手で、助走でのスピードを買われて十種競技に転向した経緯があり、100m10秒53の脚力と、60mを優に超えてくるやり投が大きな武器となっているが、昨年は5月に行われたアジア選手権を7602点の3位で終えた後、7月の日本選手権では最初の種目の100mで脚を痛めて途中棄権、今年に入ってからも丸山が日本記録を樹立したマウントサックリレーズに出場したが、ここでも100m出場後に棄権と、近年は脚部の故障に悩まされがちで、ここまでに回復してきているのか、どれだけの準備を積むことができたかが、2022年の第106回大会以来、4大会ぶりの優勝を果たすための大きなカギとなるだろう。
実績で奥田に続くのは7764点の自己ベストを持つ2023年のアジア大会代表、田上駿(ファンアンドラン)だが、田上も近年故障に悩まされ、なかなかベストのコンディションで競技ができておらず、奥田同様に万全な状態で臨めるかどうかが結果を大きく左右しそうだ。
勢いを感じるのは、今年の関西インカレで国内では丸山に次ぐ2番目の記録となる7468点で優勝を果たしている山本湧斗(大阪体育大)。
この選手の最大のセールスポイントは安定して5m00を記録できる棒高跳で、関西インカレでは十種競技に優勝した翌日に単独種目の方でも5m10で3位に入賞、先週に行われた記録会では自己記録を5m15に伸ばすなど好調で、十種競技でも7468点の自己ベストからの大躍進を期待したい。
そのほか、2023年の第107回大会で2位、一昨年、昨年は3位と3年連続で表彰台に立っている森口諒也(オリコ)、アジア大会の参考競技会として行われた東京選手権を制した山岸幹(MAX)も上位争いに加わる力は十分あり、昨年の日本インカレで7508点をマークした松下怜(順天堂大)のポテンシャルにも期待したい。
また、前日本記録保持者で、ロンドン、リオデジャネイロオリンピック代表の右代啓祐(国士館クラブ)が7月に40歳を迎える今年もエントリーしており、この種目を牽引してきた大きな背中を、後輩たちにもファンにも見せてくれそうだ。
女子の七種競技は、今季5807点の自己ベストをマークしている昨年の大会の優勝者、田中友梨(スズキ)、昨年の日本選手権、10月に行われた10&7 Championships、そして今年4月の東京選手権と3度にわたり最終種目の800mで田中に逆転を許すこととなった梶木菜々香(ノジマ)の争いに、日本歴代3位の5907点の自己記録を持ち、過去4度の日本選手権優勝を誇るヘンプヒル恵(アトレ)、5720点の自己ベストがある大玉華鈴(日体大SMG)が加わることができるか。
田中友梨は1日目の四種目で出遅れたように見えても、多くの選手が疲労のピークを迎える2日目の最後の2種目、やり投と800mを得意としており、やり投で大きくポイントを加算して順位を押し上げての800mでの大逆転が必勝パターンとして定着しつつある。
加えて先月には関西実業団選手権の100mHにオープン参加し、自身初の14秒切りとなる13秒99をマークし、自己ベストの5807点から更なる上積みも見えてきており、日本記録の5975点、更にその先にある6019点のアジア大会代表派遣設定記録を見据え、やや不得手にしている走高跳、走幅跳の跳躍種目でどの程度まとめることができるかが重要なポイントとなりそうだ。
アジア大会の開催地、名古屋の出身でもあり、代表への思いは強いだろう。
昨年の大会で田中に敗れはしたものの、5693点の大幅自己ベスト更新で2位となった梶木菜々香も力を付けてきている。
最大の長所は13秒33の自己ベストを持つ100mHで、この種目と5m98を跳ぶ力のある走幅跳で、可能な限り田中を引き離しておきたい。
ヘンプヒルは膝の手術からの復帰戦となった東京選手権で、5272点の5位ながら七種目をやり遂げ、ここからの上積みが期待できそうで、豊富な経験や何度も故障を乗り越えた精神力がここ一番で他の選手にはない強みとなるだろう。
大玉はここ数年、故障もあって得意の走高跳でポイントを得られていないが、この種目でかつての力を取り戻すことができれば、優勝争いに加われるだけの力は十分に持っている。
ほかでは、先月の関東インカレを5359点で制した仮屋愛優(日本体育大)は、溌剌とした競技ぶりがひときわ目を引く存在だ。
また、今年も例年同様に、U20日本陸上競技選手権大会・混成競技が並行して行われる。
昨年に八種競技の高校記録、6325点を叩き出している十種競技の宮下輝一(筑波大)の7000点オーバーなるかに注目だ。
繰り返しとなるが、今年は十種競技の丸山優真が日本記録を更新しており、多くの選手が大きな刺激を受けていると思われ、丸山に続き好記録を出し、国内の混成競技の水準を一段と上げることができるのか、選手たちの奮起に期待したい。
文/芝 笑翔
記事への感想お待ちしております! X もやっています。是非フォローおねがいします!(https://twitter.com/ATHLETE__news)

