5月28日から31日にかけて、U20アジア陸上競技選手権大会が香港で行われ、連日気温30℃を超える暑さとなった中、日本陸上界の未来を担う若き選手たちが躍動した。
大会初日
大会初日の午前中のセッションでは、昨年9月に今大会と同じく香港で行われたU20東アジア選手権で銀メダルを獲得しているアツオビン アンドリュウ(九州共立大)が70m64で代表選手団に最初のメダルとなる銅メダルを獲得。
また、今大会最初の決勝種目となった女子5000m競歩では、岡田佳乃(国士舘大)が24分42秒67で4位入賞を果たした。
午後のセッションでは、男子3000mに学法石川高2年時の2024年に行われた前回大会で金メダルを獲得した増子陽太が出場。
スタート時の気温が33℃に上る中、極端なスローペースとなることを嫌い、自らレースを引っ張って行ったが、仙台育英高から中央大に進んだ台湾の簡子傑、カタールのM・A・サイード(カタール)がぴたりと背後に付く。
ラスト1周まで隊列が変わらぬままレースが進んだが、残り200mで終始脚を溜めていたサイードが満を持してスパート。ここまで「脚を使わされた」格好となった増子は対応する力が残っておらず、一気に差が拡がった。
そのままサイードが真っ先にフィニッシュラインに飛び込み、7分56秒08で金メダル。増子は簡子傑との競り合いに僅かに遅れを取ったが、8分00秒86で銅メダルを獲得した。
この日最後の種目となった男子100m決勝では、予選を全体5位、準決勝を全体7位で通過していた安川飛翔(東洋大)の動きが一変し、素晴らしいスタートの反応から先行。中盤までトップで突き進んだが、追ってきた中国の代泓宇に並び掛けられると動きが硬くなり、突き放されるとフィニッシュの態勢を取るのがやや早くなり、タイミングがずれてバランスを崩しながらフィニッシュライン通過となった。
金メダルは10秒28で代泓宇、長い写真判定の末、香港の郭俊廷が10秒35で銀、安川は0.004秒差で銅メダルとなった。
その他の決勝種目では女子ハンマー投の長谷川有(中京大)が51m75で5位入賞、男子砲丸投の大垣尊良(厚真高)は17m36で4位入賞と健闘した。
大会二日目
午前のセッションでは、この日最初の決勝種目の男子5000m競歩で、小幡千尋(飯田高)が20分06秒73で銅メダルを獲得。
女子三段跳では岡島奏音(関西福祉大)が12m17で7位に入賞した。
午後のセッションでは女子100mH決勝で、昨年のインターハイで13秒30、滋賀国民スポーツ大会で13秒29と立て続けに日本高校記録を更新した石原南菜(白鴎大足利高)が13秒76で今大会日本勢初の銀メダルを獲得すると、続いて行われた男子110mH(※U20規格)決勝では、昨年のインターハイ南関東予選で13秒45の日本高校記録をマークし、日本選手権でも5位と健闘した古賀ジェレミー(順天堂大)が圧巻のハードリングで大会新記録の13秒05で日本勢初の金メダルを獲得。更に髙城昊紀(宮崎西高)も13秒24の大会タイ記録で続き銀メダルを獲得と、日本勢がワン・ツーフィニッシュ。
古賀は前年秋に行われたU20東アジア選手権では、東京世界陸上の同種目で準決勝に進出していた中国の陳圓将に敗れており、今大会はその陳圓将の出場はなかったが、同じ香港でアジアのタイトルを獲得し、雪辱を果たした。
更に女子3000m障害でも10分06秒59の日本人選手高校最高記録を持つ田谷玲(大阪薫英女学院高)がスタートから飛び出して独走態勢を築き、終盤はやや差を詰められたがそのまま押し切って10分22秒52で金メダルを獲得と、トラックでは日本勢のメダルラッシュが続いた。
フィールドでは女子砲丸投の米川佳里奈(筑波大)が13m76で4位に入賞、そして女子円盤投の近田ココ(東京女子体育大)は49m74で銅メダルを獲得した。
また、大会初日から二日間にわたって行われた十種競技では、井原虎太郎(九州共立大)が総合6569点で5位入賞を果たしている。
大会三日目
午前のセッションでは男子5000m決勝が行われ、気温は29℃と30℃は超えなかったものの湿度は83%とかなり蒸し暑いコンディションの中、栗村凌(中央大)が2位に50秒以上の差を付け、14分39秒31で圧勝。日本勢3つ目の金メダルをもたらすと、女子棒高跳では渡邊紗莱(日本女子体育大)が銅メダルを獲得した。
午後のセッションのトラック決勝種目では、男子400mHで前年のインターハイを49秒84の大会新記録で制し、今年に入って5月10日に行われた日本グランプリシリーズの木南記念で49秒34に自己記録を更新していた高校2年生の後藤大樹(洛南高)が序盤から他の選手を全く寄せ付けず、為末大が1996年にマークした49秒09に次ぐ日本高校歴代2位となる49秒25の大会新記録で金メダルを獲得。
後藤と共に決勝に進出した家入俊太(福岡大)は52秒25で8位に入賞した。
男子3000m障害決勝では、加藤結羽(神奈川大)が積極的なレース運びを見せ、トップでラスト1周に入ったが、やや疲れが見えてきたところをインドのN・チャンドラシェカルが一気に差を詰め、最後の水濠を越えると更にギアを切り替えて加藤を抜き去り9分25秒44で逆転の金メダル。加藤は9分27秒30で悔しい銀メダルとなった。
男子1500mも各選手が牽制し合う中、押し出されるような形となった新妻遼己(早稲田大)がラスト1周のバックストレートまで先頭に立っていたが、大会初日の3000mを制したカタールのM・A・サイードがスパートをすると、それを追う脚が残っておらず、3分51秒72の5位でのフィニッシュとなった。
サイードは3分44秒40で3000mと合わせ二冠を獲得。中央大に在籍する台湾の簡子傑も3分45秒58で3000mに続き二つ目の銀メダルとなった。
また男子200m決勝では、伴野智星(静岡市立高)が21秒30で5位入賞を果たした。
フィールド種目では男子走高跳の中村佳吾(筑波大)が2m09で6位、女子やり投の鈴木彩夏(大阪体育大)が50m40で5位に入賞。
男子棒高跳は井上直哉(日本体育大)と、中国の曾亮の一騎打ちとなった。井上が5m30をクリアすると、1回目に失敗していた曾亮はこの高さをパス。勝負を賭けた5m35を一発でクリアすると、今度は井上が1回目に失敗すると2回目をパスし、クリアすれば自己ベスト更新となる5m40への挑戦を選択。1度失敗のあと、追い込まれた2回目でクリアと、駆け引きを行いながら互いの意地がぶつかり合う。
井上は5m45を曾亮が1回でクリアするとこの高さをパスし、5m50に勝負を賭けたがクリアはならず、3時間以上に及んだ勝負は曾亮が5m45で金メダル、井上は5m40の銀メダルで決着した。
大会最終日
午前のセッションでは男子円盤投の東琉空(九州共立大)が49m82で9位、七種競技では1日目を総合3313点のトップで終えた江口美玲(東海大付属相模高)が、2日目最初の種目の走幅跳の1回目の試技でファウルとなった際に脚を痛め、以降の試技を行わず、途中棄権となった。
午後のセッションは女子800mで決勝に進出した佐々木葉音(筑波大)が2分5秒44で今大会日本勢5個目の金メダルを獲得。続く男子800mでも渡辺敦紀(筑波大)が1分49秒29で銅メダルと、日本勢ラストのトラック種目をメダル獲得で終えると、フィールド種目でも女子走幅跳の成澤柚日(中央大)が5m93で銅メダルを獲得すると、日本勢で最後の出場となった男子やり投の岩坂レオン(九州共立大)が70m46で銀メダルを獲得し、今大会を締めくくった。
日本代表のメダル獲得は金5、銀5、銅8の計18。金メダルは中国の14、インドの10に続く第3位、総メダル数も中国の25、インドの19に続き第3位だった。
アジアの陸上大国、中国に次ぐ金メダル獲得、総メダル数となったインドは「古豪」から脱却し、今後は世代、種目にかかわらず世界を目指す日本勢のライバルとして立ちはだかることが予想され、今以上の警戒が必要となってくるだろう。
ただ、アンダーカテゴリの大会では必要以上に目先の結果にとらわれることなく、得られた経験を今後どのように生かし、成長につなげていくかがより大切なのかもしれない。
先日行われた日本選手権では、今回のU20アジア選手権代表の中から男子400mHの後藤大樹が為末の日本高校記録を大幅に上回る48秒09のU20日本記録で優勝しアジア大会代表に内定と更に成長を遂げ、男子棒高跳の井上直哉も5m50で2位、女子円盤投の近田ココが51m80で3位と表彰台に上る躍進を果たした。
今後、高校生は7月にインターハイ、大学生は9月に日本インカレを控えており、後藤大樹らに刺激を受けた選手たちがどのような活躍を見せてくれるか、楽しみだ。
文/芝 笑翔
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香港2026 U20アジア陸上競技選手権大会
DAY1モーニングセッション
女子5000m競歩決勝
4)岡田佳乃(国士舘大)24:42.67
男子100m予選3組(+1.5)
1)安川飛翔(東洋大)10.41※準決勝進出
女子400m予選3組
5)今峰紗希(立命館大)56.50※予選敗退
男子400m予選
2)小澤耀平(法政大)46.74※準決勝進出
男子ハンマー投決勝
3)アツオビン アンドリュウ(九州共立大)70m64
男子十種競技三種目終了時点総合成績
5)井原虎太郎(九州共立大)2101
※100m:4)11.15(827)LJ:6m58-0.4(716)SP:7)11m20(558)
DAY1イブニングセッション
日本代表選手の結果
男子100m準決勝1組(+0.5)
3)安川飛翔(東洋大)10.42※決勝進出
同決勝
3)安川飛翔 10.35
男子3000m決勝
3)増子陽太(早稲田大)8:00.86
女子ハンマー投決勝
5)長谷川有(中京大)51m75
男子400mH予選2組
2)家入俊太(福岡大)51.76※決勝進出
同3組
1)後藤大樹(洛南高)50.80※決勝進出
男子砲丸投決勝
4)大垣尊良(厚真高)17m36
男子400m準決勝1組
4)小澤耀平(法政大)47.04※準決勝敗退
男子十種競技五種目終了時総合成績
5)井原虎太郎(九州共立大)3521
午前中三種目:5)2101、HJ:6)1m81(636)400m:4)50.66(784)
5/29
DAY2 モーニングセッション
男子5000m競歩決勝
3)小幡千尋(飯田高)20:06.73
女子800m予選1組
1)佐々木葉音(筑波大)2:10.72※決勝進出
男子800m予選3組
2)渡辺敦紀(筑波大)1:51.14※決勝進出
男子200m予選4組
3)伴野智星(静岡市立高)21.00※準決勝進出
男子110mH予選1組(+0.9)
1)髙城昊紀(宮崎西高)13.31Q
同2組(-0.3)
1)古賀ジェレミー(順天堂大)13.49※決勝進出
女子三段跳決勝
7)岡島奏音(関西福祉大)12m17(+1.7)
男子十種競技七種目終了時点総合成績
8)井原虎太郎(九州共立大)4824
※五種目終了時 5)3521、110mH:8)15.73(763)DT:6)33m83(540)
DAY2 イブニングセッション
男子三段跳決勝
後藤大輔(中央大)記録なし
女子砲丸投決勝
4)米川佳里奈(筑波大)13m76
女子100mH決勝(+0.4)
2)石原南菜(白鴎大足利高)13.76
男子110mH決勝(-0.5)
1)古賀ジェレミー(順天堂大)13.05※大会新
2)髙城昊紀(宮崎西高)13.24※大会タイ
女子3000m障害決勝
1)田谷玲(大阪薫英女学院高)10:22.52
男子十種競技 総合成績
5)井原虎太郎(九州共立大)6569
七種目終了時:8)4824、PV:3)3m90(590)JT:3)47m98(559)1500m:5)4:53.87(596)
女子円盤投決勝
3)近田ココ(東京女子体育大)49m74
5/30
DAY3 モーニングセッション
男子5000m決勝
1)栗村凌(中央大)14:39.31
男子200m準決勝2組(+0.4)
2)伴野智星(静岡市立高)21.09※決勝進出
女子七種競技二種目終了時点総合成績
1)江口美玲(東海大付属相模高)1863
※100mH:1)13.70(1021)HJ:2)1m69(842)
女子棒高跳決勝
3)渡邊紗莱(日本女子体育大)3m80
DAY3 イブニングセッション
男子走高跳決勝
6)中村佳吾(筑波大)2m09
女子やり投決勝
5)鈴木彩夏(大阪体育大)50m40
男子走幅跳決勝
DNS 後藤大輔(中央大)
男子400mH決勝
1)後藤大樹(洛南高)49.25
8)家入俊太(福岡大)52.25
女子七種競技1日目四種目終了時総合成績
1)江口美玲(東海大付属相模高)3313
二種目終了時:1)1863、SP:1)10m82(583)、200m:1)25.22(867)
男子棒高跳決勝
2)井上直哉(日本体育大)5m40
男子3000m障害決勝
2)加藤結羽(神奈川大)9:27.30
男子200m決勝(-1.6)
5)伴野智星(静岡市立高)21.30
男子1500m決勝
5)新妻遼己(早稲田大)3:51.72
5/31
DAY4 モーニングセッション
男子円盤投決勝
9)東琉空(九州共立大)49m82
女子七種競技走幅跳
江口美玲(東海大付属相模高)記録なし
※やり投は欠場
DAY4 イブニングセッション
女子七種競技総合成績
江口美玲(東海大付属相模高)途中棄権
※四種目終了時:1)3313、LJ:記録なし、JT:DNS、800m:DNS
女子800m決勝
1)佐々木葉音(筑波大)2:05.44
男子800m決勝
3)渡辺敦紀(筑波大)1:49.29
女子走幅跳決勝
3)成澤柚日(中央大)5m93(+0.6)
男子やり投決勝
2)岩坂レオン(九州共立大)70m46

