400mHの小田将矢が自身初の48秒台となる48秒84をマークし北京世界陸上代表に名乗りを上げる!第74回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会より

9月13日、第74回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会の最終日。
男子400mHタイムレース5組には、パリオリンピック、東京世界陸上代表の豊田兼(トヨタ自動車)をはじめ、東京世界陸上代表の井之上駿太(富士通)、パリオリンピック代表の筒江海斗(スポーツテクノ和広)、ブダペスト世界陸上代表の児玉悠作(ノジマ)、東京オリンピック代表の山内大夢(東邦銀行)、ドーハ世界陸上代表の豊田将樹(富士通)という、オリンピック、世界陸上代表経験者6人が顔をそろえ、ハイレベルな激戦が予想された。
スタートの号砲が鳴ると、他の選手と比べると小柄に見える選手が勢いよく飛び出し、スピードに乗った果敢な攻めの走りでリードを奪う。

最終コーナーを過ぎても勢いは衰えず、トップで9台目のハードルを越えると、井之上駿太、豊田兼らが差を詰め、10台目のハードルを跳び終えると、さらに山内、今季好調の岡村州紘(長野県信用組合)が猛然と追いすがったが、最後のもうひと伸びで突き放し、前半のリードを守り切ってフィニッシュ、右手を高々と突き上げた。
フィニッシュタイムは大会新記録となる48秒84。これまで幾度となく力走しながらその壁に阻まれてきた、小田将矢(豊田自動織機)がついに49秒切りを果たした。

1995年5月生まれの31歳。競技の世界ではベテランの域に入ってきている小田は、名古屋大工学部4年時の2017年、東海インカレで50秒07を叩き出して優勝を果たし、日本選手権に初出場を果たした。
その後、2018年まで2年続けて決勝進出を阻まれていたが、2019年に3度目の出場で初めて決勝に進出すると、49秒60で5位に食い込む健闘を見せた。
この日本選手権は、小田の滝中学・高校時代からの1年後輩で、名古屋大医学部の真野悠太郎も6位となっており、ちょっとした話題となったことを覚えているファンもいるのではないだろうか。
この年の秋、日本インカレでは49秒83で2着と、49秒32で優勝を果たした同年のドーハ世界陸上代表・豊田将樹に敗れたが、10月の茨城国体成年の部では49秒42の自己ベストを叩き出し、国内主要大会初優勝を果たした。

翌2020年、名古屋大の大学院を修了し、豊田自動織機に入社。自動車用コンプレッサーの開発に携わる技術者として働きながら競技を続ける道を選び、コロナ禍での活動制限が明けた秋に行われた日本グランプリシリーズの木南記念を49秒79で制している。
2021年から2023年春は欠場が多く、コンディション面に不安があったことがうかがえるが、2023年7月に行われた愛知県選手権で49秒29の自己ベストで優勝と復調。
2024年は3年ぶりに日本選手権に出場すると決勝に進出し49秒44で7位。7月に行われた実業団学生対抗では、パリオリンピック代表の小川大輝(当時東洋大、現富士通)の49秒09に続き、49秒32で2位。秋に入って9月のYogibo Athletics Challenge Cupでは49秒22で総合2位、10月の佐賀国民スポーツ大会では自己ベストの49秒21で3位と、49秒台前半で上位に食い込む安定感を見せた。

2025年は東京世界陸上代表を目指し、48秒台を狙ってこれまで以上に序盤から突っ込んでいくレースをしていたが、その分終盤で脚が止まることも多く、シーズンベストは8月の富士北麓での49秒70にとどまった。
それでも本人も自分の持ち味と語る「前半からの攻めの走り」を貫き、今季は日本選手権の予選で49秒12の自己ベストをマークすると、8月の富士北麓で49秒30、東海選手権でも49秒29と48秒に迫る走りを見せ、全日本実業団選手権で48秒84と、ついに48秒台を記録するに至った。

朝8時半からのフルタイム勤務で、練習は水曜、日曜を除く週5日。平日は長くて3時間ほどしか時間が取れず、ハードルを並べるのにも時間を割いてしまうため、その分100m、200m、300mに取り組むことで、「前半からの攻めの走り」を生かすためのスピードを磨き上げてきた。

今年の日本選手権を制した高校生の後藤大樹(洛南高)は、決勝進出を決めた際、決勝を闘う代表経験のある選手たちを「大人の、プロの選手」と評したが、それには当てはまらない。制約の多い中、創意工夫で自身を高めてきた小田のような選手が北京世界陸上代表候補に名乗りを上げたことで、その争いはさらに激しくなり、国内の400mHはますます活性化することになりそうだ。

小田は全日本実業団の優勝インタビューで、「初めて48秒台で走り、年内はこれを安定させて闘い切って、来シーズンは世界陸上へ向けて頑張りたい」と語っている。
エントリーをしているYogibo Athletics Challenge Cup 2026で、再び48秒台をマークできるか、注目だ。

文/芝 笑翔

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9月13日
第74回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会 最終日
男子400mHタイムレース上位8名
1)小田将矢(豊田自動織機)48.84※大会新
2)山内大夢(東邦銀行)49.03
3)岡村州紘(長野県信用組合)49.04
4)豊田兼(トヨタ自動車)49.09
5)井之上駿太(富士通)49.16
※ここまで5組
6)渡邊脩(東京エネシス)49.35※4組1着
7)筒江海斗(スポーツテクノ和広)49.49※5組6着
8)山本竜大(SEKI A.C.)49.97※4組2着

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