日本グランプリシリーズ第13回木南道孝記念陸上競技大会が5月10日、ヤンマースタジアム長居で開催される。
本年度の大会では、グランプリ種目として男女の100m、400m、400mH、棒高跳、走幅跳、円盤投、男子110mH、女子800m、女子100mHの15種目と、ノングランプリ種目ながらアジア大会代表選考の最重要競技会に指定された男女の10000mが実施される。
アジア大会選考最重要レースとして行われる男女10000m
その男女の10000mは、男子がケニア人実業団選手のE・マル(トヨタ紡織)を除き12人、女子もA・ムカリ(京セラ)を除き10人と少人数のエントリーとなったが、男子は2枠、女子は東京世界陸上で6位入賞を果たした廣中璃梨佳(ユニクロ)が既に代表に内定しているため、残り1枠となった代表の座を争う。
男子のエントリー選手では、昨年11月に行われた八王子ロングディスタンスで鈴木芽吹(トヨタ自動車)が日本記録の27分05秒92、吉居大和(トヨタ自動車)が27分21秒45、また女子では昨年12月のエディオンディスタンスチャレンジで田中希実(豊田自動織機)が30分54秒40、樺沢和佳奈(三井住友海上)が31分03秒14と、日本陸連の定めたそれぞれ27分31秒27、31分14秒63の代表派遣設定記録を上回るタイムを選考期間内にマークしているが、選考対象のレースではなかったため、この4選手も他の選手同様に、代表派遣設定記録をクリアしての優勝が今大会での代表内定条件となっている。
男子の鈴木は26分台が目前に迫っているかのように近年の充実ぶりが素晴らしく、冬季に比べて気温が上がるこの時期のレースも、東京オリンピック最終選考会となった2021年の日本選手権で27分41秒68の3位、パリオリンピック代表選考会となった2024年の日本選手権で27分26秒67の4位、昨年の日本選手権では27分28秒82で優勝と、全く苦にしておらず、あえて不安があるとすれば、今季屋外トラックシーズンに入って1500mの1レースのみという実戦感覚だけだろう。
吉居大和は4月11日に行われた金栗記念の5000mで13分23秒92の自己ベストをマークするなど好調で、ここからのコンディション面での上積みも期待できそうだ。
鈴木、吉居に次ぐ存在は西澤侑真(トヨタ紡織)。
2024年の実業団ハーフマラソンで1時間00分54秒の好タイムを叩き出して以降、駅伝を含めたロードで頭角を現し、今年の香川丸亀国際ハーフマラソンでも1時間00分26秒と強さを見せた。
トラック10000mでも昨年の八王子ロングディスタンスで自己ベストの27分36秒61と、ロードの強さに見合うタイムが出せるようになっており、代表争いに加わることができるか、注目したい。
また、学生では唯一のエントリーとなった藤田大智(中央大)は、昨年11月のMARCH対抗戦で27分40秒50の自己ベストをマークしたあと、箱根駅伝では1区を担い、吉居大和が持っていた1時間00分40秒の区間記録を上回る1時間00分37秒で2位となっており、若さと勢いに期待したい。
27分28秒18と派遣設定記録を上回る自己ベストを持つ小林歩(SUBARU)は、4月11日の金栗記念の10000mで28分49秒30と本来の走りができず、ここから立て直しができているかが、代表争いに絡めるかどうかのポイントとなりそうだ。
女子は優勝争いの本命と見られていた田中希実が、5月4日に行われたゴールデンゲームズinのべおかの5000mで16分00秒89の15位と思わぬ結果に終わり、ここに来て風雲急を告げてきた感がある。
田中は昨年4月にも、ジャマイカのキングストンで行われたグランドスラムトラックの5000mで、暑さもあって15分31秒93と力を発揮できなかったレースはあったが、日本記録を持つ5000mでのここまで苦しい走りは、2019年のドーハ世界陸上で決勝進出を果たす以前、頭角を現し始めた2018年まで遡っても記憶になく、延岡で何が起こっていたのか、今大会を控えて無理をしなかったのかは気になるところで、場合によっては欠場もあり得るのではないだろうか。
まずは田中がスタートラインに立つのかどうか、注目される。
パリオリンピック5000m代表の樺沢和佳奈は、ロサンゼルスオリンピックに向けての本格的なマラソン転向を見据え、3月の名古屋ウィメンズで初マラソンに挑み2時間27分20秒の13位と不本意な結果に終わっているが、4月29日に行われた織田記念では5000mに出場し、15分19秒50とフルマラソン後の疲労を感じさせない走りを見せている。
ただ、この先もフルマラソンとトラックの両にらみで競技に取り組んでいくのか、アジア大会の代表をトラックで目指すのであれば、バーレーンやカザフスタンはケニアから国籍を変更した選手を代表として送り込んでくることも予想されるため、中途半端ではメダル争いは難しくなるだろう。
一度は取り組んだマラソンから、トラックにどれだけ気持ちを切り替えることができているかが、今大会の結果に現れるのではないだろうか。
かつてこの種目で30分45秒21をマークした不破聖衣来(三井住友海上)は、その後長く故障に悩まされたこともあり、トラックスピードを追求することとマラソンに取り組むこととで、どちらが身体に負荷がかかるかを慎重に見極めたうえで、本格的なマラソン転向を決めたものと思われ、今大会の出場は年内を予定している初マラソンの準備の一環としてだろう。
若手選手では、不破と同じく大卒実業団2年目の山﨑りさが、昨年のエディオンディスタンスチャレンジで日本人選手トップ争いに加わって31分18秒54をマークし、代表派遣設定記録の突破も見えてきている。
グランプリ種目の展望

グランプリ種目での注目は、村竹ラシッド(JAL)が国内初戦を迎える男子110mH。
村竹は5月17日開催のゴールデングランプリの欠場が既に発表されており、おそらく次のレースは今月に開催される上海か厦門でのダイヤモンドリーグとなることが予想され、そちらへ向けてどのような仕上がりぶりを見せるか楽しみだ。
もちろん、今年の織田記念を制した泉谷駿介(住友電工)も簡単には引き下がるわけもなく、記録面でもレベルの高いレースとなることが期待される。
女子100mHにも東京世界陸上代表の福部真子(日本建設工業)、中島ひとみ(長谷川体育施設)が出場し、織田記念では届かなかった12秒台が出るか期待したい。
男子100mでは今月3日に行われた世界リレーの4×100mで、アンカーに抜擢されながら、2走から3走でのミスのため、自身にバトンが渡った際には既に決着がつき、来年の北京世界陸上の出場資格を得られず悔しい思いをした井上直紀(大阪ガス)がスタートリストに名を連ねた。
織田記念を制した中国の東京世界陸上代表、鄧信鋭に先着できるかが、井上がアジア大会代表を目指すうえでの試金石となる。
出雲陸上、織田記念2連勝と波に乗る山本匠真(広島大学)、静岡国際を制したデーデーブルーノ(セイコーAC)も上位争いに加わりそうだ。
女子800mには1分59秒52の日本記録保持者で東京世界陸上代表の久保凛(積水化学)がエントリー。東大阪大敬愛高卒業後の社会人デビューとなる今季初戦に注目が集まる。
男子400mでは、世界リレーで男子4×400mリレーの1走を担い、北京世界陸上出場権獲得に大きく貢献した林申雅(筑波大学)がどのようなタイムを叩き出すのか楽しみで、静岡国際の400mHを自己ベストの48秒50で制し復活した黒川和樹(住友電工)には、更なる記録更新を期待したい。
フィールド種目の男子走幅跳では、8mオーバーが期待される東京世界陸上代表の伊藤陸(スズキ)、津波響樹(大塚製薬)のほか、4月の学生個人選手権を7m92で制した関根拓真(国際武道大)、日本大学競技会で7m91をマークしている北川凱(センコー)といった国内の選手たちの前に、8m32の自己ベストを持つC・ミトレフスキ(オーストラリア)が立ちはだかる。
男子円盤投は今月3日に行われたアジア投擲選手権で銀メダルを獲得した日本記録保持者の湯上剛輝(トヨタ自動車)と、5日の水戸招待陸上でその湯上を撃破した幸長慎一(四国大AC)が再び激突。水戸招待では見ることができなかった60mオーバーを期待したい。
女子円盤投は、60m72の日本記録保持者の郡菜々佳(ニコニコのり)と、アジア投擲選手権では郡の4位を上回り銅メダルを獲得した齋藤真希(太平電業)が、オーストラリアのパリオリンピック代表、T・ゴルシュースキーを迎え撃つ。
3日に行われた静岡国際では男子800mで落合晃(駒澤大)が1分43秒90の日本記録を打ち立て、エコパスタジアムからどよめきが起こったが、木南記念でも好記録が続き、ヤンマースタジアムに詰めかけた観衆が沸き上がることを期待したい。
また、先述したように、3日に行われた世界リレーでは、リオデジャネイロオリンピックでの銀メダル獲得以降、日本陸上界のフラッグシップとなってきた男子4×100mリレーが来年の北京世界陸上出場権を得られず、今後ランキング上位で資格を得るためにも立て直しが急務で、井上、山本、デーデーブルーノだけでなく、リレーの主力を担えるだけの力を示すことができる選手の台頭が望まれるところだ。
文/芝 笑翔
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