日本グランプリシリーズ熊本大会、第34回金栗記念選抜陸上中長距離大会2026が4月11日、熊本市のえがお健康スタジアムで行われる。
2026年の陸上界は、コロナ禍のために1年延期されての開催となった2021年の東京オリンピック以降、2022年のオレゴン世界陸上、2023年のブダペスト世界陸上、2024年のパリオリンピック、そして昨年の東京世界陸上と、5年続いたオリンピック、世界陸上の二大世界大会の開催が途切れるが、9月には自国開催の名古屋アジア大会を控えており、今年の金栗記念にも昨年の東京世界陸上代表選手ら多くの国内トップ選手が顔を揃え、ここからアジア代表争いが本格化していくことになる。
今大会で実施されるのは男女の800m、1500m、5000m、10000m、3000m障害の10種目。
取り分け、昨年の東京世界陸上女子マラソンで7位入賞を果たし、今大会では10000mに出場する小林香菜(大塚製薬)、男子3000m障害8位入賞で今大会では5000mに出場する三浦龍司(SUBARU)、女子1500m代表となった木村友香(積水化学)や、既にアジア大会男子マラソン代表に内定している5000mに出場する山下一貴(三菱重工)の現時点での調整ぶりが注目されるが、他にもアジア大会代表を目指す各種目の選手たちが、それぞれに設定されている代表派遣設定記録にどこまで迫れるか、あるいは突破ができるかが、今大会の重要なポイントとして挙げられるだろう。
男子各種目のみどころ

各種目のみどころだが、男子800mは、ペンシルベニア州立大に留学している相洋高校卒のクレイ アーロン竜波が世界室内選手権で6位入賞を果たしたことに、国内の選手たちも刺激を受けているものと思われ、記録水準の向上も期待されるところで、日本記録保持者の落合晃(駒澤大)のエントリーはないものの、昨年の日本選手権で2位に入った四方悠瑚(4DIRECTIONS)、ユニバーシティゲームズ代表の岡村颯太(鹿屋体育大)、今年2月にオーストラリアのパースで行われたWAコンチネンタルツアーの大会で既に1分46秒37を叩き出している松本純弥(成洋産業)といった1分45秒に迫る持ちタイムのある選手たちがエントリーしており、1分46秒28のアジア大会派遣設定タイムをクリアして、代表争いに割って入りたいところ。
特に昨年のホクレンDCで1分46秒25を記録するなど急成長を見せた山鹿快琉(育英大)は今年のブレイク候補として注目したい。
男子1500mにはこの春に駒澤大を卒業、大会後にアメリカに拠点を移す佐藤圭汰(京都陸協)が出場する。
駒澤大在学中、トラックでは5000mや10000mに軸足を置いていた佐藤だが、東京オリンピック開催が目前に迫った2021年7月のホクレンDC千歳大会で、当時洛南高校3年生ながら積極的な攻めのレースで3分37秒17の現在も破られていない高校記録を打ち立ててその逸材ぶりを示した過去がある。
今回は2022年の日本インカレ以来の1500mのレースとなるが、アメリカに拠点を移す今後はトラックでの世界との勝負を公言しているなかで、この種目もその「勝負」に含まれているのか、いずれにしても楽しみな参戦だ。
他では、昨年のアジア選手権の同種目で飯澤千翔(住友電工)に次ぐ2位となったイ ジェウン(韓国)もエントリー、昨年のホクレンDC北見大会で記録した3分36秒01の韓国記録は、昨年の日本人選手シーズントップだった荒井七海(Honda)の3分36秒58を抑えてのものであり、アジア大会でもライバルというだけでなく、日本の選手に先んじての3分34秒台まで可能性さえ見えてきているだけに、佐藤のほか、3分35秒42の日本記録保持者の河村一輝(トーエネック)、2023年のバンコクアジア選手権代表の高橋佑輔(山陽特殊製鋼)、昨年の日本選手権3位の森田佳祐(SUBARU)からしてみれば、あっさりと勝ちを譲る訳にはいかないだろう。
また5000mが主戦場でラストスパートの切れには定評がある遠藤日向(住友電工)はこの種目でも上位争いに加わる力が有り、有力選手が揃う最終組ではなく3組での出場となるが、中村晃斗(志學館大)は昨年の全日本大学駅伝の1区で居並ぶ関東勢の有力選手を抑えて区間賞を獲得しており、どのようなタイムを叩き出すのか楽しみだ。
5000mに出場となった三浦龍司だが、この距離を走る際は昨年11月の日体大記録会のように、概ね残り1周のスパートに重点を置いて走っている印象だが、今大会ではケニア人実業団選手も多くエントリーしており、こうした選手たちとの勝負に挑むのかが、まず注目される。
塩尻和也(富士通)は昨年、2024年のパリオリンピックに続き、東京世界陸上の代表も逃し、再起を賭けるシーズンだ。
言わずと知れた10000m27分09秒80の日本記録保持者で、5000mではブダペスト世界陸上代表となっており、国内のケニア人実業団選手に敢然と勝負を挑めるだけの力を有し、昨年5月のゴールデンゲームズでは13分13秒59の自己ベストをマーク、アジア大会派遣設定記録の13分14秒36は当然視野に入っているだろう。
他では、この冬のロードシーズンでは好調で、秋に行われる世界ロードランニング選手権のハーフマラソン代表に内定している荻久保寛也(ひらまつ病院)、西澤侑真(トヨタ紡織)、昨年11月の八王子ロングディスタンスの10000mで27分21秒45の自己記録をマークした吉居大和(トヨタ自動車)、3月14日に行われたWAコンチネンタルツアーブロンズ大会、アデレード招待の1500mで優勝を飾っている山口智規(SGホールディングス)に加え、早稲田大のスーパールーキー、増子陽太がどこまで上位に食い込めるかにも注目だ。
少人数レースとなった男子10000mは27分28秒13の自己記録を持ち、昨年11月の八王子ロングディスタンスで27分36秒00のセカンドベストをマークした小林歩(NTT西日本)がエントリー。おそらくアジア大会の最重要選考競技会となった5月10日に開催される木南記念の10000mに向けての試運転の位置付けのレースと思われるが、昨年11月15日の日体大記録会で27分52秒09を叩き出した楠岡由浩(帝京大)とともに、28分台は切っておきたい。
ベテランの河合代二(トーエネック)や東京オリンピックマラソン代表の服部勇馬(トヨタ自動車)は、この冬のマラソンシーズンではMGC出場権獲得に至らず、今後に向けてスピード強化に主眼を置いての出場だろう。
三浦龍司が5000mに回った3000m障害は、その三浦を追い掛ける選手たちが顔を揃え、優勝争いが激しくなりそうだ。
特に東京、パリの二大会連続オリンピック代表の青木涼真(Honda)や、昨年に8分19秒54と日本人選手5人目の8分20秒切りを果たした新家裕太郎(愛三工業)は、昨年の東京世界陸上では一時はランキングでの出場圏内に位置したものの、資格期限の締め切り直前にベルギーで行われた国際大会で参加標準記録を突破する選手が続出して出場権内から押し出されており、今年はアジア大会ではあるが代表への思いは強いものと思われ、勝負だけでなく8分25秒83の派遣設定記録を念頭に置いてのレースとなるだろう。
昨年6月に8分22秒16の自己記録をマークした小原響(GMOインターネットグループ)は青木、新家に割って入るだけの力が有り、昨年のワールドユニバーシティゲームズ7位入賞の佐々木哲(早稲田大)の成長や、2023年ブダペスト世界陸上代表の砂田晟弥(SUBARU)の復調にも期待をしたい。
女子のみどころ

女子800mは今年から積水化学の所属となった久保凛の今季初戦が5月の日本グランプリシリーズの見込みで不在となったなか、昨年8月にスイスで行われたWAコンチネンタルツアーの大会で2分01秒01をマークした塩見綾乃(岩谷産業)が、2分01秒67のアジア大会派遣設定記録のクリアなるかに注目したい。
女子1500mでは、東京世界陸上代表の木村友香が昨年の7月に4分09秒88の自己ベストをマークしており、4分07秒68のアジア大会派遣設定記録が見えてきているほか、田島愛理(順天堂大)は昨年8月、ベルギーの国際大会で4分11秒02を記録しており、日本人選手7人目の4分10秒切りが期待される。
女子5000mは田中希実(豊田自動織機)、山本有真(積水化学)の世界陸上代表組の出場がなく、男子と比較すると有力選手のエントリーが少なくなったが、その中にあっては、本格的にマラソンに取り組むなかで、自己ベストの15分16秒70を昨年のGGPでマークした伊澤菜々花(スターツ)の力が、エントリーしている国内選手の中では1枚も2枚も抜けており、L・ドゥータ(肥後銀行)やK・タビタジェリ(三井住友海上)ら14分台の自己記録を持つケニア人実業団選手にどこまで食らい付けるかが注目となる。
また、昨年11月の日体大記録会で15分31秒14をマークした本間香(城西大)、12月のエディオンDCで15分35秒84をマークした尾方唯莉(京セラ)、最終組ではなく2組での出場だが、全日本大学女子駅伝や富士山女子駅伝で本間とともにチームを優勝に導く快走を見せた大西由菜(城西大)には、15分30秒切りを期待したい。
女子10000mに出場する小林香菜は、気温も湿度も高かった東京世界陸上激走後のシーズンとあって、この冬は大事をとってマラソンへの出場はなかったが、この春のトラックシーズンは、スピードを強化して更なるレベルアップを遂げることに主眼を置いているものと思われる。
男子同様少人数レースとなるが、O・D・ニャボケ(ユニクロ)に食らい付く事が出来れば31分台前半は見えてくるだろう。
女子3000m障害も、東京世界陸上代表の斎藤みう(パナソニック)のエントリーはないが、日本歴代4位の9分38秒95を自己記録に持つ西出優月(ダイハツ)は世界クロスカントリー選手権の男女混合8㎞リレー代表を経験し、また日本選手権クロスカントリーでもこれまで余り経験のなかった10㎞で5位入賞と粘り切り、総合的な走力がかなり上がって来ている印象がある。
女子3000m障害は日本グランプリシリーズでも実施が少なく、昨年の日本選手権を制した日本歴代5位の9分39秒28の自己ベストがある西山未奈美(三井住友海上)とともに、貴重な機会のなかでアジア大会派遣設定の9分37秒26を目指していくことになる。
また、男子5000mの1組には稲垣翔訓(洛南高)、2組には吉田星(東海大札幌高)の高校生がエントリーしており、各種目に出場する高校選手の成長ぶり、活躍にも期待をしたい。
文/芝 笑翔
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