日本選手権連覇と6m50オーバーが4年で途切れた走幅跳の秦澄美鈴、5年連続制覇中の兵庫リレーカーニバルで輝きを取り戻せるか

多くのアスリートにとって、その競技のトップに立つことは、ごく自然な目標なのだと思う。そして、目標を達成したその先で、その地位を維持していくためには、それまでの努力以上に困難を伴うことは想像に難くない。
にもかかわらず、一度その座を失う事になったとき、やれ誰それは衰えた、もう終わったとの心無い声を上げる者はどこかに必ず潜んでいるものだったが、近年はそうしたアスリートへのリスペクトに欠ける声なき声がSNSの発展により可視化され、また安易に拡散されてしまうことから、競技者本人の目に触れることは避けられず、精神的に追い込まれてしまう事もあるのではないかと思われ、こうしたことも今の時代にトップアスリートであること、トップアスリートであり続けることの難しさに拍車をかけているのかもしれない。

日本の女子走幅跳の第一人者、秦澄美鈴(住友電工)が2021年から続けていた、国内トップアスリートの証である日本選手権の連覇と、6m50オーバーを記録しての国内年間トップリスト1位が昨年、4年で途切れた。

秦は武庫川女子大に入学した2015年、現在6m97の日本記録を保持する走幅跳ではなく、並行して取り組んでいた走高跳で1m81をクリアして、まずこちらの種目で頭角を現し、2017年にはアジア選手権代表となり、サンライズレッドのユニホームを身に付けて戦った。
走高跳と、走幅跳、ともに助走の伴う跳躍種目ではあるが、踏切後の運動方向が異なるこの2種目を高いレベルで競技するのは簡単なことではないはずだが、秦は2018年頃から走幅跳でも日本インカレを制すなど力を示し始め、大学を卒業した2019年には6m43で日本選手権を初制覇。

翌2020年からは競技種目を走幅跳一本に絞り挑んだ日本選手権では優勝を髙良彩花(当時筑波大、現JAL)に譲ったものの、4月の兵庫リレーカーニバルで自身初めて公認記録での6m50オーバーとなる6m65を記録した2021年に日本選手権を再び制すと、2022年には自己記録を6m67に更新してオレゴンで行われた世界陸上に初出場を果たし、2023年5月の静岡国際では6m75に伸ばし、同年7月のアジア選手権では7mにあと3㎝に迫る6m97の日本新記録で優勝、日本の女子選手として初の7mジャンパーとなる事も時間の問題かと思われた。

その後、自身2度目の出場となった同年8月のブダペストでの世界陸上では期待されながら決勝進出を果たせなかったこともあり、パリオリンピックでの決勝進出、メダル獲得に向けて助走の改良に着手し、2024年5月の木南記念を6m72で制し、6月の日本選手権も6m56を跳んで連覇を4に伸ばしてパリオリンピック代表に選ばれ、本番直前のオールスターナイト陸上でも6m61をマークし勇躍挑んだパリオリンピックだったが、6m31と力を発揮しきれず予選B組13位でオレゴン、ブダペスト世界陸上に続き、三度目の世界の舞台でも決勝進出は叶わなかった。

この結果から、昨年は速度の上がった助走のパワーを跳躍に繋げるための踏切を模索するなか、焦りもあったのか思うような結果を残せず、東京世界陸上代表の懸かった日本選手権も6m38の3位に終わり五連覇を逃し、世界陸上へは自国開催枠の選手として出場となり、6m45を記録したものの決勝進出には届かず、この年の最終戦となった全日本実業団選手権でも優勝とはなったが記録は6m27、4年間続けてきた6m50オーバーを記録することが出来ず、年間トップリスト1位の座も日本選手権で6m48を記録した髙良に明け渡した。

今年の初戦となった3月の沖縄春季記録会で、秦は5.9mの強い追い風が吹く中だったが、6m56を記録し、復調を予感させるスタートを切った。
自身初めて公認記録で6m50オーバーの6m65を記録した2021年の兵庫リレーカーニバルでは、3.0mの追い風で参考記録となったが6m69を跳んだ直後の跳躍で、6m50オーバーの感覚を掴んだのか、風が弱まっても見事に再現をしてみせていた。

秦にとってコロナ禍により中止となった2020年を挟み、2019年から継続中の大会七連覇の懸かる今年の兵庫リレーカーニバルは、期間は空いたが沖縄で得られた6m50オーバーへの手応えを再現し、輝きを取り戻す試金石となる大会であり、世界の舞台へとまた返り咲くきっかけとなるような結果で、周囲の雑音を断ち切って欲しい。

文/芝 笑翔

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