ハーフマラソン競歩世界記録認定第1号でアジア大会代表に内定、山西利和が「王者の誇り」を取り戻す!第109回日本陸上競技選手権大会・ハーフマラソン競歩の結果

第109回日本陸上競技選手権大会・ハーフマラソン競歩が、2026名古屋アジア大会代表選考会を兼ねて2月15日、神戸市の六甲アイランドで行われ、男子は山西利和(愛知製鋼)が1時間20分34秒で、女子は梅野倖子(LOCOK)が1時間35分01秒でそれぞれ優勝を果たし、アジア大会代表に内定した。

男子優勝の山西は、今年からWAの国際大会で20㎞競歩に変わり採用された新種目のハーフマラソン競歩の世界記録認定基準として設定された1時間21分30秒を世界で初めて破り、同種目の初代世界記録保持者となる見込みで、1時間20分50秒で2位の吉川絢斗(サンベルクス)、1時間20分57秒で3位の野田明宏(自衛隊体育学校)、1時間21分25秒で4位の丸尾知司(愛知製鋼)の計4人が世界記録認定基準を上回る高速決着となった。
東京世界陸上20㎞競歩金メダリストでオープン参加のC・ボンフィムは全体5番手の1時間21分44秒でフィニッシュ、東京世界陸上35㎞競歩で銅メダルを獲得した勝木隼人(自衛隊体育学校)が1時間22分6秒で5位に入った。
女子は優勝の梅野に続き、柳井綾音(立命館大)が1時間35分57秒の2位でフィニッシュ、3位には1時間39分43秒で杉林歩(大阪大)が入った。

続けて行われた第37回U20選抜競歩大会の男子10㎞競歩はフィニッシュ直前まで4人が絡んだ激戦を井上俊弥(長野日本大高)が40分49秒で制し、インターハイチャンピオンの山田大智(西脇工業高)が40分51秒で2位、胎中隆太(山梨学院大)が同タイムの3位に入った。
女子10㎞競歩は、内山由菜(本庄東高)が44分46秒のU20日本新記録、大会新記録で優勝を果たし、46分13秒で2位となった石田紗也(玉野光南高)、46分42秒で3位の奥野紗(関西大)も従来の大会記録を更新するレベルの高いレースとなった。

山西利和、王者の誇りを取り戻す圧巻の世界記録

男子のレースの序盤はややゆったりとしたペースで始まったが、1㎞の周回コースの2周目を過ぎたあたりから土屋温希(立命館大)、原圭佑(京都大)の二人の学生がペースを上げて、山西利和、丸尾知司らの集団はこの二人を見ながら2、3m後方で、またボンフィム、勝木隼人は追走集団から更に10秒ほど後方でレースを進める展開となり、徐々にエンジンが温まり始めた追走集団は3周目過ぎには土屋、原を吸収して5㎞は19分19秒、20㎞換算で1時間17分16秒と世界記録認定基準の1時間21分30秒を目指せるペースでの通過となった。

5㎞を過ぎるとレースの主導権を山西が握り始め、土屋、原の飛び出しと、それを追い掛けて上がっていたペースを一旦落ち着かせて10㎞を38分46秒で通過、この間にペースを落とした分、後方から数名が集団に追い付いて5㎞通過時点の7名から13名となり、その14秒差で勝木、髙橋和生(ADワークスグループ)らのグループ、更に9秒の差でボンフィムが10㎞を通過した。

10㎞を通過した後山西は、ペースを一気に上げて集団の篩い落としに掛かると、優勝争いは山西のほか、丸尾、原、吉川絢斗、野田明宏、古賀友太の6人に絞られ、14㎞過ぎには古賀が脱落して15㎞の通過は57分40秒と世界記録認定基準を切る水準に戻し、16週目に入ると更にペースを上げて集団から抜け出した。

山西は20㎞を1時間16分26秒とこれまで行われていた20㎞競歩の自身の持つ世界記録の1時間16分10秒に次ぐ歴代2位に相当するタイムで通過、懸命に追いかける吉川が1時間16分38秒、野田が1時間16分42秒と世界歴代3位に相当するタイムで通過する世界水準のレースを見せていたが差は縮まらず、山西利和が世界記録認定基準を切る、1時間20分34秒で優勝し、アジア大会代表内定を勝ち取った。

2位に続いた吉川絢斗が1時間20分50秒、3位の野田明宏が1時間20分57秒と1時間20分台でフィニッシュし、4位の丸尾知司も1時間21分25秒と世界記録認定基準を上回った。
1時間21分44秒でフィニッシュしたオープン参加のC・ボンフィムを挟み、終盤追い上げを見せた勝木隼人が1時間22分06秒で5位、パリオリンピックの男女混合マラソンリレー代表の髙橋和生(ADワークスグループ)が1時間22分25秒で6位、15㎞手前まで先頭集団でレースを進めた古賀友太が1時間22分40秒で7位、オレゴン世界陸上の20㎞競歩で8位に入賞した住所大翔(富士通)が1時間22分46秒で8位、山西が16週目に抜け出すまで優勝争いに加わっていた原圭佑は1時間22分50秒で10位となった。

山西は20㎞の世界記録保持者でありながらパリオリンピック代表を逃し、金メダル獲得を期待された東京世界陸上でも28位と結果を残せていなかったが、その要因はいずれも高速化への対応を意識する余り歩型が乱れ、警告を取られていた事が要因だった。
今大会では序盤の落ち着いた入りから、5㎞を過ぎてレースの主導権を奪うとペースを巧みにコントロールし、中盤以降に一気にペースを上げて抜け出すと後続の追撃を許さなかった圧巻のレース運びを見せると共に、新種目の世界新記録を樹立しながら歩型違反の警告を一度も受けることなくフィニッシュし、失いつつあったドーハ、オレゴンの世界陸上二大会連続金メダリストとしての「王者の誇り」を取り戻すに十分な内容だった。

東京世界陸上の20㎞競歩で7位に入賞した吉川も、世界記録認定基準を切るタイムで一段と成長を示し、ブダペスト世界陸上の35㎞競歩で6位入賞を果たした野田が復調し、またハーフマラソンという距離で新境地を開いたことは、国内男子競歩の活性化という点で非常に大きな意味を持つ。
更に20㎞競歩での自己ベストを上回るペースで世界記録認定基準を切った丸尾や、古賀、髙橋和生のパリオリンピック代表組、野田と共に復調を感じさせた住所、そして残り5㎞まで優勝争いに加わった学生の原も含め、山西に続く二枠目のアジア大会代表争いは激しく、世界レベルに限りなく近くに迫る国内選手層も充実の度を増している。

また勝木も20㎞の自己記録を大きく上回るペースでフィニッシュして35㎞競歩で銅メダルを獲得した東京世界陸上後の充実ぶりを感じさせ、35㎞に変わる新たな主戦場となるマラソン競歩での世界記録樹立がなるか、来月15日に石川県能美市で行われる日本選手権・マラソン競歩への期待が高まるレースとなった。

女子優勝は梅野倖子、2位は柳井綾音

一方の女子はパリオリンピック男女混合競歩リレー代表の柳井綾音との一騎打ちから18㎞付近で抜け出した東京世界陸上代表の梅野倖子が1時間35分01秒で優勝。
20㎞の通過タイムの1時間30分6秒は自己記録の1時間31分2秒を1分近く上回る内容の伴ったレースだったが、レース後のインタビューでは、来月の日本選手権マラソン競歩で優勝して代表を取りに行きたいと宣言しており、ニュアンスとしてはそちらを重視しているようにも感じられ、むしろマラソン競歩でのスピード強化の観点からは、次のレースに期待の膨らむ結果だったと言う事ができる。

残り2周までレースを引っ張りながら勝ち切れなかった柳井は、東京世界陸上で銅メダルを獲得した藤井菜々子(エディオン)や、昨シーズン限りで競技の第一線から退いた、リオ、東京、パリの三大会連続オリンピック代表の岡田久美子(富士通)に続く選手としての期待に応えることが今大会では出来なかった。
意欲的なレースを見せていただけに終盤粘り切れなかったのは勿体なかったが、この後に残るアジア大会選考競技会である日本選手権マラソン競歩と同日に行われる全日本競歩能美大会のハーフマラソン競歩で再び代表を取りに行くのであれば、そこが正念場になるだろう。

女子のハーフマラソン競歩ではアジア大会代表の核となる、あるいは藤井や岡田に続く世界基準に届く選手が見出し得たとは必ずしも言えない結果となったなかで、続けて行われたU20女子10㎞競歩で内山由菜がこのカテゴリの日本記録を44分46秒に更新したことは、国内女子競歩界の大きな収穫で、従来の大会記録を更新した石田紗也、奥野紗と共に、今後の飛躍が楽しみだ。

文/芝 笑翔

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2月15日
第109回日本陸上競技選手権大会・ハーフマラソン競歩
男子ハーフマラソン競歩 上位20名
1)山西利和(愛知製鋼)1:20:34※世界新、アジア大会代表内定
2)吉川絢斗(サンベルクス)1:20:50※世界新
3)野田明宏(自衛隊体育学校)1:20:57※世界新
4)丸尾知司(愛知製鋼)1:21:25※世界新
5)勝木隼人(自衛隊体育学校)1:22:06
6)髙橋和生(ADワークスグループ)1:22:25
7)古賀友太(大塚製薬)1:22:40
8)住所大翔(富士通)1:22:46
9)岩井和也(自衛隊体育学校)1:22:50
10)原 圭佑(京都大) 1:22:50
11)土屋温希(立命館大)1:23:23
12)諏方元郁(愛知製鋼)1:23:29
13)中島佑之(山梨学院大)1:23:54
14)栁原 隼(西川ローズ)1:24:21
15)石田理人(社会福祉法人八康会)1:25:00
16)萬壽春輝(自衛隊体育学校 )1:25:07
17)髙田智生(立命館大) 1:25:50
18)赤澤晃成(山梨学院大)1:26:13
19)石田 昴(自衛隊体育学校)1:26:47
20)金子 陸(国士舘大)1:26:52
※OPEN C・ボンフィム(ブラジル)1:21:44

女子ハーフマラソン競歩
1)梅野倖子(LOCOK)1:35:01※日本最高記録、アジア大会代表内定
2)柳井綾音(立命館大)1:35:57
3)杉林 歩(大阪大)1:39:43
4)大山 藍(自衛隊体育学校)1:39:49
5)立見真央(田子重)1:41:21
6)中村綾花(日本体育大)1:42:16
7)谷 純花(金沢学院大)1:42:51
8)石田さつき(武庫川女子大)1:42:57
9)勝間 緑(香川大) 1:44:00
10)吉住友希(船橋整形外科)1:44:17
11)高橋七琉(陸歩クラブ)1:45:29
12)村手香里(SMILEY)1:45:30
13)阿部優生(金沢学院大)1:45:35
14)山田佳花(中京大)1:45:53
15)林 奈海(Team SSP) 1:46:00
16)西山こと乃(東京学芸大)1:46:11
17)宇佐見和奏(金沢学院大)1:46:13
18)大賀羽和(中京大)1:47:53
19)林 千華(立命館大)1:48:16
20)川邉のぞみ(名古屋大)1:48:29

第37回U20選抜競歩大会
U20男子10㎞ 上位10名
1)井上俊弥(長野日本大高)40:49
2)山田大智(西脇工業高)40:51
3)胎中隆太(山梨学院大)40:51
4)本木直斗(新潟食料農業大)40:53
5)原田桧直汰(神辺旭高)40:54
6)馬場康成(鳥栖工業高)41:04
7)小幡千尋(飯田高)41:08
8)野田京汰(旭野高)41:17
9)辻那悠太(市立西宮高)41:48
10)及川集雅(保土ケ谷高)41:50

U20女子10㎞ 上位10名
1)内山由菜(本庄東高)44:46※U20日本新、大会新
2)石田紗也(玉野光南高)46:13※大会新
3)奥野 紗(関西大)46:42※大会新
4)田畑晴光(西城陽高)46:55
5)荒井夏希(春日部女高)47:05
6)西本結恵(自由ケ丘高)47:23
7)皆口万笑(金沢学院大)47:49
8)佐多茉奈美(鹿児島高) 鹿児島 48:14
9)金野真綾(早稲田大)48:23
10)杉本由乃香(長野東高)48:44

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