大阪マラソン2026が2月22日、大阪府庁前をスタートし、大阪城公園内にフィニッシュする42.195㎞のコースで行われる。
大阪マラソンといえば、びわ湖毎日マラソンと統合された2022年大会で星岳(コニカミノルタ)が2時間7分31秒で優勝を果たして以降、2023年には2時間6分45秒で日本人選手トップの6位となった西山和弥(トヨタ自動車)、2024年は2時間6分18秒で優勝した平林清澄(当時國學院大、現ロジスティード)、そして昨年、2時間5分39秒で日本人選手トップの2位に入った近藤亮太(三菱重工)と4年連続で初マラソン日本記録が更新されており(※前身の2021年びわ湖毎日マラソンでの作田将希(JR東日本)の2時間7分42秒を含めると6年連続)、その継続がなるかも一つの焦点となるが、その筆頭候補が吉田響(サンベルクス)だ。
吉田は創価大4年時の昨年、箱根駅伝で各校のエースが集う花の2区(23.1㎞)を担い、前年に区間賞を獲得した黒田朝日を1秒抑え、1時間5分43秒の日本人歴代トップタイムをマーク、プロランナーとしてサンベルクスの所属となって初めて迎えた今年のニューイヤー駅伝でもエース区間の2区(21.9㎞)を任されると1時間01分01秒と従来の記録を30秒以上更新する破格の区間新記録、このタイムを単純計算でハーフマラソンに換算すれば、太田智樹(トヨタ自動車)の持つ59分27秒の日本記録を遥かに凌ぐ58分47秒となり、また昨年の箱根で競り勝っている黒田が直後の大阪マラソンで2時間6分5秒をマークしていること、吉田響自身が大学卒業後、トレイルランなどを取り入れながらよりパワーアップしている事を勘案すれば、昨年に近藤が叩き出した2時間5分38秒の初マラソン日本記録更新への期待は膨らむばかりだ。
また、今大会には東京オリンピック、オレゴン世界陸上代表のトラックの実力者、伊藤達彦(Honda)も満を持しての初マラソンに挑む。
10000m27分25秒73は日本歴代9位、5000m13分13秒56は同7位と伊藤のスピードは折り紙付きだが、苦しい表情になってからの粘りや、その上でラストでは猛烈な絞り出しが出来る走りの特徴は、マラソンに転向しても国内トップ層に食い込んでくるのでは、と思わせるだけの魅力を持っている。
東京国際大時代は箱根2区で後に10000m日本記録保持者となる当時東洋大の相澤晃(旭化成)と激しい鍔迫り合いを演じたこともあり、もともと長い距離への適性を感じさせていたうえで将来のマラソン転向に向けてトラックスピードを磨き上げてきており、昨年の全日本実業団ハーフマラソンで学生時代の2019年以来のハーフマラソンながら1時間0分27秒の好タイムを叩き出した後も、1年を掛けてじっくりと準備を進めてきた。
事前レースのニューイヤー駅伝ではアンカー区間の7区を走り、従来の区間記録を上回る4位と上々の仕上がりを見せており、30㎞まで先頭集団に付き、そこから持ち味である粘りを発揮することができれば、タイムも自ずと付いてくるものと思われる。
この力のある初マラソンの二人に立ちはだかるのが、平林清澄、細谷恭平(黒崎播磨)、西山雄介(トヨタ自動車)らの国内招待選手だ。
一昨年優勝の平林は、2度目のフルマラソンとなった昨年の別大では、PMの外れた30㎞以降にペースを上げて優勝を争う集団を篩にかけるなど主導権を握りに行く強気なレースを見せたが、36㎞地点で先頭集団から遅れると、40㎞以降は大きくペースを落とし、2時間9分13秒で9位と、寄せられた大きな期待に十分応えることが出来ず、雪辱を期す3度目のマラソンだ。
吉田響とは昨年の箱根駅伝2区、今年のニューイヤー駅伝3区と苦杯を喫しているが、自身もマラソンに軸足を移す過程において昨年11月の八王子ロングディスタンスの10000mで27分37秒13の自己ベストをマークするなど走力が上がって来ており、ここではマラソン優勝経験もある先達として、吉田に簡単に勝利を譲る訳にはいかないだろう。
昨年の大会で2時間5分58秒でフィニッシュし、近藤亮太に続く日本人選手2番手の4位となった細谷恭平は、そのレースでも見せたように、一度集団から離れてもそこから立て直すことができ、最終盤には順位を上げている渋太く走り抜く姿勢に定評があるが、悲願のフルマラソン初優勝のためには、先頭集団の中にあっても粘り抜くことも必要となるだろう。
昨年はその大阪マラソンのあと、9月に挑戦したベルリンマラソンではこの選手としては珍しく、2時間18分15秒と大敗を喫したが、12月の福岡国際マラソンでは一度先頭集団から遅れながら優勝争いに加わり、2時間8分9秒の3位でMGC出場権を獲得と、細谷らしい走りで立て直しを見せた。
その後はニューイヤー駅伝で5区8位とまずまずの結果を残したが、2週間前の全日本実業団ハーフでは1時間6分00秒に留まっており、連戦を考慮しての軽めの調整だったのか、疲労が残っているのかは気になるところだ。
西山雄介は初めてフルマラソンに挑んだ2022年の別大で、2時間7分47秒で制した勝ち方を知っているランナーであり、またフルマラソンでは過去6戦中、6分台が2度、7分台が2度、8分台が1度とアベレージも高い。
昨年12月の福岡国際では終盤に2度、3度と揺さぶりを見せた後、勝負に行ったロングスパートを被せられて、2時間7分56秒の2位に甘んじたが、ここでも自ら仕掛けを行う攻めの姿勢を貫いて、今度こそ勝ち切りたいところだろう。

安定感で言えば西山に引けを取らないのが2時間5分59秒の自己ベストを持つ其田健也(JR東日本)で、フルマラソンは過去12回走って5分台1度、6分台1度、7分台2度、8分台が4度と悪くても8分台に纏める力が有ると言ってよい。
ただ、パリオリンピック代表選考のファイナルチャレンジとなった2024年の東京マラソンで2時間6分54秒を記録していて以降は3度8分台が続いており、今大会は巻き返しを図る一戦となる。
一般参加選手も、昨年3月のソウルマラソンで2時間7分39秒をマークした作田直也、7月のゴールドコーストマラソンを2時間7分33秒で制した竹井祐貴の海外マラソンで結果を残した二人に、1昨年の東京マラソンで2時間7分25秒の自己記録を持つ横田俊吾を加えたJR東日本勢、昨年の大会で2時間7分34秒をマークしたベテランの定方俊樹(三菱重工)、2時間7分47秒でフィニッシュした元公務員ランナーの細谷翔馬(ロジスティード)、昨年12月の防府読売マラソンで2時間8分19秒の2位となりMGC出場権を獲得した、2時間7分57秒を自己ベストに持つ小山裕太(トーエネック)など多士済々だが、特に注目したいのは、今回が2度目のフルマラソンとなる今江勇人(GMOインターネットグループ)だ。
今江の自己記録は初マラソンとなった昨年のゴールドコーストでの2時間10分51秒だが、今年のニューイヤー駅伝2区では1時間1分11秒で吉田響に続く区間2位、これは吉田と同様にハーフマラソンに換算すれば58分56秒で走っていることになる。昨年の八王子ロングディスタンスで10000m27分33秒84にまでトラックスピードも上がって来ており、一度マラソンを経験している点からも今大会では先頭集団に加わっての大幅自己記録更新も期待できそうだ。
また、10000mで27分13秒24の自己記録を持つ相澤晃(旭化成)、同じく10000mの自己記録は27分31秒27の清水歓太(SUBARU)は共に昨年初マラソンを経験しながら結果を残せず、巻き返しを図る二度目のマラソンとなる。
相澤は常に故障の不安は付きまとうが、42.195㎞を走り抜く脚が出来ていれば、東京オリンピック10000m代表、元日本記録保持者として真価を発揮することも可能だろう。
清水は昨年11月末の日体大記録会での10000mで27分47秒13、1月の大阪ハーフマラソンで1時間0分52秒と本格的なマラソンへの移行の過程のなかで好記録を残しており、ここに合わせての順調な調整ぶりが窺える。

更に2度目のフルマラソンとなった昨年の延岡西日本を2時間9分43秒で制した湯浅仁(トヨタ自動車)も、今年のニューイヤー駅伝の5区では46分00秒で区間記録を更新した太田蒼生(GMOインターネットグループ)に続く1秒差の2位と地力が増しているダークホースの一人で、昨年の平林、昨年の黒田朝日や別大での若林宏樹(当時青山学院大、引退)に続き、今年も別大で溜池一太(中央大)が2時間7分59秒をマークするなど躍進している学生選手では、昨年の別大で2時間8分50秒と結果を残した高山豪起(國學院大)が箱根駅伝の7区で区間新と更に走力が上がっており、昨年の大会で2時間8分17秒の町田康誠(中央発條)、2時間8分19秒の西脇翔太(JR東日本)の初マラソンで結果を残した実業団の2選手とともに、自己記録更新だけでなく、一気に2時間6分30秒のMGC参加標準記録の突破を目指すだけの力は有りそうだ。
優勝を争うのは勿論国内の選手ばかりではなく、大阪マラソンは過去に2023年の大会で2位となったV・キプランガット(ウガンダ)がブダペスト世界陸上で、同じく2023年3位のF・シンブ(タンザニア)が東京世界陸上のマラソンを制するなど持ちタイムに捉われることなく高い実力を誇る選手を招いてきた大会でもあり、昨年の覇者、Y・アダン(エチオピア)の他、パリオリンピックで2時間9分7秒の11位と、2時間9分25秒で13位だった現日本記録保持者の大迫傑(Nike→ Li-Ning)に先着したE・ゲラント(南アフリカ)や、2時間9分31秒で大迫に次ぐ14位に入ったI・ハッサン(ジブチ)、そして初マラソンの昨年1月のドバイマラソンで2時間4分51秒を記録したB・ゲメチュ(エチオピア)といった実力者が招待されており、こうした選手たちと優勝を争いながら、昨年にアダンが記録した2時間5分37秒の大会記録を更新し、大迫の日本記録にどこまで迫る事が出来るのかも、大きな注目ポイントとなるだろう。
レース展開のポイントは、30㎞でPMが離脱したあとに控える上本町の上り坂で、一昨年の大会では平林がスパート、昨年の大会でも3位に入ったA・トラ(エチオピア)が一気にペースを上げて集団を篩にかけており、今年も平林か、早めに自身のレースに持ち込みたい吉田響、あるいは2023年のMGCで4位となり、同年の12月に防府読売マラソンを2時間8分32秒で制して以降、長引く故障に悩まされていた川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)が今月1日の丸亀ハーフで1時間4分25秒と復調を感じさせる走りを見せており、過去の大阪マラソンでPMが離脱した直後に集団を割る動きを試みていることから、更に調子が上向いてこの時点まで先頭集団に付けているようなら何らかの仕掛けがあるものと思われ、ここで多くの選手が牽制し合うようだと、優勝はともかく、記録への期待は遠のいてしまう。
好記録へのカギには気象条件も挙げられる。
この点に関しては、これまで比較的恵まれていた大阪マラソンだったが、今年は当日の最高気温が20℃に上ることが予想されており、午前中の9時5分のスタートでエリート選手のレース中に最高気温までは達しないと思われるが、気になるところだ。
スタート後に気温が上がっても15℃~16℃くらいであれば、2024年の福岡国際マラソンでは吉田祐也(GMOインターネットグループ)が、スタート時の気温が15.8℃の条件で2時間5分16秒をマークしている例もあるが、それ以上上がって来ると厳しくなるだろう。
男子と同時スタートなる女子はM・ディババ、S・クメシの2時間20分を切る持ちタイムの有るエチオピア勢が優勝を争い、国内招待の川村楓(岩谷産業)、平島美来(天満屋)、黒田澪(京セラ)の3人は2時間27分を切ってのMGC出場権獲得を目指す。
周知の通り、男女ともにロサンゼルスオリンピックへ向けてのMGCシリーズは既に始まっているが、男子については国内の指定大会ではまだ2時間6分30秒のMGC参加標準記録を切った選手はおらず、また初マラソン日本記録更新の継続も懸っており、当日、出来れば雲が出て日が陰り、少しでも走りやすいコンディションとなることを願わずにはいられない。
文/芝 笑翔
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